1.《ネタバレ》 第2次大戦末期、オスロを極秘に脱出し南米へ逃亡を図った一隻のドイツ軍潜水艦の内部で繰り広げられる息詰まるような人間ドラマ。ドイツの敗報を機に互いのエゴを剥き出しにして対立を深める地獄絵図をクレマンは一切情緒に流されぬドライな所謂ドキュメンタリー・タッチで強烈に描く。艦内での権力を掌握したヨー・デスト扮するゲシュタポ幹部フォルスターが、嫌気がさして艦を脱出しようとする仲間を次々と無造作に殺す場面の静かな狂気。裏切り者のダリオを刺殺するオークレール扮するチンピラ・ウィリーの異様な殺気。フローランス・マリー扮するナチ高官の愛人ヒルデが、脱出し損ねて潜水艦と補給船に挟まれ圧死する場面の何とも即物的な処理。敗戦を受け入れず味方船舶に容赦なく魚雷を撃ち込ませる場面でのフォルスターの冷酷さは出色。大仰なセリフ回しも用いずに淡々と描写する事に徹したのが吉と出た形に。名カメラマン、アンリ・アルカンによる閉塞感に満ちた潜水艦内部のカメラワークも素晴らしい。原作も無しに、類似作品すらロクに出ず終いの秀逸なオリジナリティを打ち出したジャック・コンパネーズ&ヴィクトル・アレクザンドロフのシナリオも見事だが、それもクレマンの大胆にして緻密なディレクション&脚色あればこそココまでの迫力を得られたのは間違いない。ただ…矢張り、余りの重苦しさに個人的に1点マイナス。潜水艦モノにハズレなし!