2.1964年以降、コンサート活動を停止し、スタジオ録音活動に専念した名ピアニスト、グレン・グールドの若き日のドキュメンタリー。革命的バッハ演奏と、数々の奇行により、彼は伝説の存在となってます(例えばこの映画の最後に、彼が自ら握手を求めるシーンが。グールドは握手しないとかいう噂もあったようですが、ウソだったのかなあ、なんて事を思ったり)。私もバッハ・ファンの端くれ、グールドは避けて通れない。正直言うと、彼の演奏の「作為的な気まぐれさ」みたいなものが気になってしまう部分もあるのですが、81年のゴールドベルク変奏曲などは私の座右の盤と呼びたいもののひとつ。さてこのグールド、ステージからは退いたとは言え、彼自身のTV番組などで演奏を披露していたこともあり、独特の演奏(鼻歌まじり、異常に低い椅子に座り体を揺らしながらとりつかれたように演奏する)は今でも目にする事ができます。が、さらにこの記録映画の場合、スタジオ内の彼の姿を収めているという点で非常に貴重です。で観てみると・・・? グールド以外の人が何故か妙に芝居臭く見える気が。ホントに記録映画なのか? あのタクシー内の映像はどうやって撮影したんだ? 何とも妙な映画であります。クライマックスは、あの反則スレスレともいうべき鮮烈さのイタリア協奏曲の収録場面。ナルホド、あの「作為的気まぐれさ」は、こうやって練り上げられていったものだったんですね。恐れ入りました。しかし相変わらず周囲のエンジニアの表情がウソ臭く見えるのは何故? あと、あの第3楽章の最後のテイクは本当にレコードに採用されたのでしょうか。気になったので、手持ちのCDと同時に鳴らしてみたら、ちょっとズレてたよ。ハハハ(←しょうもないことを・・・)。という訳で、何となくヘンな映画。