8.《ネタバレ》 徐々に忘れられつつある作品だけど、好きな人は好きな作品だけあって、素晴らしいラブストーリーだった。
ゲイを毛嫌いするサム(レスリー・チャン)が、ウィン(アニタ・ユン)のことを男と信じきっている。
だが、同居しているうちにやがて惹かれていく。
自分はゲイなんかでは決してないのに、男に惹かれてしまうレスリー・チャンの悩み。
燃える恋心とは別に、「男だから」と一歩ひいてしまう切ない心の迷いを描いた設定が秀逸である。
俳優であるレスリー・チャン自身が、ゲイであったことは周知の事実だが、その点を踏まえると、そのレスリー・チャンがこの様な複雑で難しい役柄を難なく演じきったことには合点がいく。
その、直接映画とは関係のない、俳優としてのレスリー・チャンを意識して観てみると、更に味わい深さも増してくる。
結果としては、悩みきった末に、「男でも女でもいいから、君を愛してる」と告白するレスリー・チャン。
これはとても解釈が難しくて、性別とは関係なく「人間として」君を愛してる、ということだから、平たく解釈してしまうと、まるで「友達として」みたいな気持ちなのではないかと思ってしまうが、そこには明確に「愛」というものが生まれており、やはり、同性愛的なものを肯定している気がする。
だけど、同性愛とは文字通り同性を愛することであって、「男でも女でもいいから愛してる」とは、また異なるわけで、よくよく考えていくと、やっぱりとても解釈の難しい作品だと思う。
「相手が男だから」という先入観を超えて、男と思い込んでいる相手に対して、はたして恋心のようなものが生まれるのだろうか?
とても興味深いテーマだった。
あの時代の香港ファッションのダサさが出ていて、今観ると決してファッショナブルなラブストーリーには感じない。
しかし、それはうわべだけの問題であって、時代を超えて感動できるラブストーリーの傑作であることは間違いない。