14.三が日の最終日、正月らしく国産の芳醇な娯楽を堪能できる映画を観ようと思い、この岡本喜八作品をチョイス。
数多の名作の中で、今作の評価が高くないことは認識していたけれど、日本映画史が誇る稀代の大巨匠による痛快な娯楽性を楽しめるのではないかと期待した。
結果、全く面白くなかったとは言わないけれど、世間の評価に違わず、かなり「微妙」な映画であることは否めない。
時代は幕末、米国から開国を迫られた幕府の使節団の中に密命を受け潜り込んでいた攘夷派の水戸浪士が主人公。
真田広之演じる脱藩浪士が、アメリカ西部に降り立ち、自身の使命と運命に挟まれながら奮闘する。
即ち、サムライとガンマンとニンジャによる夢の攻防戦を娯楽色豊かに描き出すことが最大のコンセプトの映画企画だったのだと思う。
実際、その通りの映画に仕上がってはいるのだが、正直言って全編通して上手くいっていない。
先ず、主人公の立ち位置が冒頭からいまひとつ確立されていないのが気になる。
彼が、どういうバックグラウンドを持っていて、どれ程の使命感を持って使節団の中に潜り込んでいたのかが、極めて曖昧なままストーリーは展開されるので、一つ一つの言動に厚みを感じることが出来ず、故に熱さも感じない。
「用心棒」のような主人公の流浪感を狙っていたのかもしれないが、それを表現するには全体的な演出が雑過ぎたと思うし、主演俳優のキャリア的にも浅かったのではないかと思える。
個人的に最大の雑音に感じてしまったのは、竹中直人演じる忍者が出自の下僕の存在。
演技プラン自体は、今尚続くお決まりの「竹中直人」そのものなので、彼のパフォーマンス自体を非難すべきではないと思うが、それを是とし、全編通してまかり通させてしまった演出には物凄く疑問が残る。
前述の通り、主人公の人物描写に深みが欠けているため、この映画は文字通り終始“精力的”にはしゃぎ回る竹中直人演じる“為次郎=トミー”のドタバタコメディ映画になってしまっている。
クライマックスの対決シーンも、展開的な面白さもなく、焦点も全く定まっていないため、盛り下がる。
恐らくは、「七人の侍」とそのリメイク作である「荒野の七人」をミックスしたような映画世界を見せたかった筈だ。
監督をはじめスタッフ的にも、キャスト陣的にも、本来それが可能な布陣だったと思うが、実現されなかったことは今更ながら残念だ。
ただし、二十数年の年月が経ち、国内外で素晴らしいキャリアを積み重ねてきた今現在の真田広之が、再び今作の主演を務めたならば、全く別物のクオリティの映画に生まれ変わるとは思う。
ストーリー上、主人公“上條=ジョー”はアメリカの地に留まっているわけだから、その後の彼の生き様を描いた続編の企画が持ち上がっても良いのではないかと思える。
年老いた“ジョー”のピンチに、ニンジャからインディアンに転身した“トミー”が大群を引き連れて助太刀する様を想像すると、馬鹿馬鹿しくもあるが、それはそれで胸熱だがな。