1.私は普通にビデオで観て「なんだこの映画!」と思ってしまったのですが、パッケージを見る度に内容を反芻して、今では「いい映画だったんじゃないか。」と思えるようになりました。記憶の風化の中で、冗長した間延びの部分が嫌でなくなり、いい部分だけが強調されるのですから、普通に考えるとダメな映画評ですね。ストーリーはシンプルすぎるほどシンプル。というよりも無いに等しいです。出演はたった二人。他に登場人物もありません。ロケーションも、ほとんどただの草っ原。刺激のないことこの上ない。しかし、そのぶん会話や表情の動き、心の動きはきちんと表現されています。爆笑問題の太田はお笑い芸人ですが、普通のお笑い芸人がチョイ役で出演するようなものではなく、きちんとした演技を披露しています。ちょっと意外ですが、本人が無類の映画好きというのもあると思います。「こんなこと日常ではありえないよな」と、映画を観たらつい思ってしまうような人は、この映画を観て欲しいなと思います。保坂和志の小説を好んでいるような人が当てはまるのでしょうか。とにかく、とても不思議な映画です。