3.《ネタバレ》 エリック・ロメールの「六つの教訓物語」シリーズ第3作。
本作は1,2作目のような若い男女の物語ではなく、恋愛経験も豊富な登場人物たちによって展開される、しかも“パスカル”や“カトリック”・“唯物的”・“秘蹟”などといった哲学的なキーワードが物語を彩る、ちょっと大人の物語。かなり敷居の高い映画なのではと思いきや、そんな専門知識など全くなくてもストーリーには十分に入り込める。
さて、人は生きていく上でいつどんな局面に立たされるかわからない訳で、つまりこの映画で言うならば、友人のヴィダルと一緒にモード家を訪れた時にヴィダルが先に帰ってしまい、特別に好きでもない女性と同じ部屋で一晩を過ごさなければならなくなってしまったというシチュエーションや、雪が積もった道を車で走っていたらタイヤがスリップして前にも後ろにも進めなくなってしまい、そのまま車を置いて同乗していた女性の家に入り込むことになってしまったというシチュエーション(やや故意的だが)がストーリーの中に出てくる。
前者の場合、相手の女性は着ている物を全て脱いで完全無防備な状態をつくり、主人公に、自分の主義を貫くか、それとも“男としての妥当な行動”に出るかのギリギリの選択を迫られる局面に遭遇する。
また、後者の場合も似たような局面に出くわすのだが、この対照的な場面をよくよく見てみると、さほど自分の好みではないモードという女に対しては、最初に自分の主義を貫いた結果失敗を招いたが、主人公好みのブロンド女フランソワーズに対しては、行動に出たとしてもうまくいかなかっただろうというところが面白い。
最後、何年か後にフランソワーズとの間に出来た子供と3人で海水浴に出かけたところで一悶着。その少し前の雪の中でのシーンで、フランソワーズが過去を懺悔したところである程度の予測がつくかもしれないが、数年後の思わぬ再会による思わぬ繋がりが発覚。そして最後、妻を気遣う軽い嘘が何とも綺麗で格好良い。
海水浴といえば夏なのに、この寒々しさ。しかし、何だか美しい。