4.《ネタバレ》 ウェス御大とゆーのは、ワリとムラっ気のある監督かとも思いますが、今作製作時の彼は間違い無くやる気に満ち溢れていた、と思うのですね。脚本も自身で担当している今作、これでもか!と放り込まれるアイデア(=思い付き)の数々に関しては、質はともかく量とゆーのは中々凄まじいものがあります。お話はおおよそ3パートに分けられるかと思いますが、最初とゆーのが(生身の)殺人鬼ピンカーが大量殺人を繰り返しており、それを主人公が父親の刑事と共に追い詰めるというパートです。これって正直前置きだと思ってたのですが、この間主人公は家族を殺され恋人を殺され、そして見出した自身の能力「予知夢」を駆使して遂にピンカーを逮捕する…て正直これだけでも映画一本撮れそうなくらいにアイデア的にはボリューミーじゃねーですか。少なくとも数年前のウェス監督自身の作品『サランドラⅡ』よりは、この時点でも中身のある映画になるコトは請け合いっちゅう感じですね。
御用となったピンカーは(数十人殺しているにも関わらず裁判描写もナニも無く)即座に電気椅子送りとなりますが、ここでトラブル発生!電撃を喰らったピンカーがなんと「電流と一体化」してしまったのです…!て、私はここからが本番で、きっとジョジョ4部の「レッチリ」的な話になるのだろうと大いに期待していたのですケド然に非ず。この時点でのピンカーは電流とゆーよりは単なる幽体的な存在で、人に乗り移る能力しかないよーなのですね。結果ここから繰り出される第2パートは「レッチリ」とゆーよりはむしろ『ヒドゥン』に近いものでした。ピンカーが色々な人間に乗り換え乗り換えしつつ主人公を追いかけ回し、何故か幽霊となった恋人がピンカーに対抗するためのアイテムとかくれたりしながらも(?)、最終的には父親に乗り移ったピンカーと電波塔的なトコロのテッペンでの決闘!へと話は展開してゆきます。
ここで更にトラブル発生!電波塔上でナニがあったかは(演出が下手で)よー分かりませんが、ここでピンカーは最終形態である「レッチリ」的存在に進化して…とゆーのが最終パート。辛くも逃げ延びた主人公は、ピンカーの奇襲を掻い潜りつつ対抗手段を整えいよいよ最終決戦に臨みます…が、ソレは何故か主人公とピンカーがテレビの世界の中で殴り合う、という珍妙なものでした。ピンカーをビデオのリモコンで操ってボコボコにしたり(?)前述の恋人のくれたペンダントを込めた拳でブン殴ったり(?)して弱らせて、で待機させたテレビクルーのカメラから自分だけ脱出したら(?)最後は変電所に忍び込んだ仲間が機材を壊して停電を発生させ、目出度くピンカーはテレビの世界に封じられたのでした………(?)
率直に言って(特に第3パートは)メチャクチャすね。あらすじだけでもシッチャカメッチャカですが、更にコイツを支離滅裂で供給過多なアイデア(=思い付き)の嵐が襲います。前述どおり彼女の幽霊は何回も思いっ切り登場しますし(無意味に血ミドロだったり水中で出てきたり)、ピンカーが電気椅子を耐え延びたことの理由付けなのでしょうが処刑直前のピンカーは意味不明なパチモン宗教的儀式を行ってたり、そもそも主人公とピンカーが実の親子、て設定は何の意味があったのでしょーか?とにかく詰め込み過ぎたシナリオを表面上繋ぎ合わせるため、或いはほんの一シーンを挿入するためだけに、かなり疑問のある変な設定を毎回ひとつふたつ盛り込んじゃってる、とでも言いますか。
ただ、だからとゆーか作品は全体としてエラい高密度&ハイテンポですし物語に勢いもあります。そして、ミッチ・ピレッジ演じるピンカー自体の凶悪で粗野な悪役ぶりも率直に見事だったり、主役のピーター・バーグも爽やかイケメンで非常に魅力的だったり、これって愛すべき素晴らしいB級、というよーにも思えるのですね。支離滅裂さが逆にユニークに感じられることも含め、B級として好きか嫌いかで言えば、確実に私は好きです(愛してます)。なのでやっぱり1点足しておきます。以上。