2.すでに原作を読んだ後で映画を見る場合、「ああ、そうそう!」と記憶がよみがえる場合もあれば、「何だか原作とイメージが違うなあ」と違和感を覚える場合もあります、が、ごく稀に、観ているうちに原作がドンドン頭から消えていってしまうケースがあります。つまり本作です。創元ノヴェルズから出てる原作本を読んだのは、確かにかなり前ではあるのですが、それでも映画を観る前にはそれなりに内容憶えていたハズ、なのに映画が終わった時にゃ、もう頭ン中真っ白。なんだこりゃ? ま、原作がメチャクチャおもろいかと言われれば、答えに窮するのですが、それでも、病原菌に感染した人の症状に関するエグイ描写、殺し屋の追跡など、それなりに読みごたえはあります。しかしこれらは、映画においては見事に削ぎ落とされてまーす。感染症状の描写に目を引くものはまったく無いし、災厄に巻き込まれたはずの主人公たちの姿も、どう見てもピクニックに来たカップル、実にノンビリしてます。何よりイタイのは、原作を盛り上げるのに重要な役を果たしていた殺し屋が、映画ではまるで活躍しない!クライマックスではせめて活躍するかと思いきや、銃撃戦の何とシケてることか。さてさて、私は原作と映画の違いに腹を立てている訳ではありません。いやむしろしんみりしてしまった面が。脚本は原作者レス・スタンディフォード自身のようですが、もし彼が自由に脚本化させてもらえたとしたら、自ら心血注いだ小説の魅力をこのようにすべて切り捨ててしまう訳がない。自分の小説の魅力は自分が一番よく知ってるハズ。とにかく製作費の予算枠内で、というプロデューサーの意向に沿って、泣く泣く書き上げられた脚本なのではないでしょうか。そう思って観れば何となく映画全体が原作者の涙で湿っているように見えてくるではないか・・・私もサラリーマン、お互いつらいよねえ(泣)。と一定の理解を示しつつコメントを終わろうと思ったが、最後に一言、映画のラストで唐突に社会派サスペンス風にしちゃったのはあまりに強引、失敗の上塗りではないかと思いマス。