21.後にも先にも劇場で観た唯一の大林宣彦監督作品。いきなり「なごり雪」を作詞した伊勢正三が自ら弾き語る映像から始まるというのが凄いインパクトだったし、この映画に対する期待をグッと引き上げてくれた。
この唄が作られた28年前の大分県臼杵市が物語の舞台となっていて、歌詞のイメージにぴったり合った内容になっている。
大分県では1年に1度雪が降るかどうかという割合で、滅多に見られないものらしい。
その為、雪が降った時の感動はやっぱり凄いんだろうなぁ。
また、電車がとても重要な役割を果たしており、東京を離れる事になる主人公が親友と別れる場面と、28年後に時を経て戻る事になる場面でも象徴的である。
この物語の主人公にとって電車は過去と未来を繋ぐタイムマシンのようなものなのだろう。
SNSなど無い時代ならではのどうしようもない距離感を感じて、そこに切なさを感じる。
とても美しい青春物語ではあるが、主人公に想いを寄せるヒロインの言動と行動がちょっと狂気染みていて怖くもあった。部屋の窓から雪を降らせるシーンとか特に。
でもまあそうだよね。好きな先輩が大学デビューして故郷にあんなイケイケの恋人連れて来たらおかしくもなるわよね…。
主人公の無神経さに腹が立ったし、この期に及んでまだ雪子に対して未練を感じているのがミエミエでそのどっち付かずの態度が駄目だなと思った。
それと学生時代を演じたキャストの演技がいかにも昭和というか、棒読みが酷くてわざとらしかった。
須藤温子は“新人“とあるが、映画初出演は「シベリア超特急2」なのを忘れてはいけない。
また当時13歳の長澤まさみも出ていて、とても大人っぽい落ち着いた演技で、短いながらもすごく印象に残った。
ただ、全体を通して見るとあまりにも嘘臭く、そんなに面白いとは思えない。
臼杵市のロケーションはとても美しく、大林作品にとてもマッチしていた。