1.こういった作品を隠れた名作というのだろう。ヴェルディの歌劇『椿姫』を題材にした作品ではあるが、予備知識を必要とする内容ではなく、寧ろ歌劇に興味を持つ入り口となる作品と言える。特に松坂慶子が披露する歌声は賞賛に値する素晴らしさである。物語はオペラ好きのタクシー運転手が客として乗せた有名オペラ歌手とその弟子に対して、自分の恋物語を話して聞かせるという形で進むのだが、やはりこの構成が素晴らしいとしか言いようがない。単なる恋愛映画だったなら、それほど観客を引き込むことはできなかっただろうが、加藤健一の語り口の上手さに吸い寄せられるようにもっと続きを聞かせて欲しいと思うようになってしまう。肝心の物語自体も秀逸で、どんどん話に引き込まれていって、最後はどうなってしまうのだろうと興味津々。本当によく出来た作品である。たまたま乗り込んだタクシーの運転手が加藤健一だったら、是非その話を聞いてみてくださいね。感動できますよ。