1. 陰謀の代償
《ネタバレ》 ほとんど顔面どアップのショットで切り返されているだけで、やっつけ仕事の様にすら見えます。例えば、チャニング・テイタムの階段付きの自宅や娘のベッド、アル・パチーノと少年とが対話する光差し込む室内、ジュリエット・ビノシュが殺害されてしまう駅構内、あるいはラストの一同が会する屋上などのシーンは、せっかく面白くなりそうな場面設定と装置を用意しておきながら効果的に働いておらず、緊張感もありません。パチーノ御大やレイ・リオッタまで召集してこれではガッカリです。 [DVD(字幕)] 5点(2012-02-07 18:26:13) |
2. イングロリアス・バスターズ
《ネタバレ》 「トゥルー・ロマンス」のクリストファー・ウォーケンの役を、タランティーノお気に入りのティム・ロスが演じたらこうなるというような不気味な〝ユダヤ・ハンター〟ことランダ大佐の人物造型が秀逸です(役者の力によるところも大きい)。 多言語にし会話劇を最大限に活かしているのもタランティーノならではでしょう。ということで第1章が一番のお気に入り(地下酒場のシーンも素晴らしいが)。野っ原の一軒家でシーツを干していたら遠くからナチがやって来る入り方からして上手いのですが、さりげなく美しい三人娘たちを登場させたりして不吉な前兆を感じさせたりするもの憎いです。さらに尋問が開始されれば何気ないコチッコチッっという時計の音や万年筆が紙をこする音などをしっかり入れて一層緊張感を高めています(残念なことにDVDではあまり聞こえない)。大佐の手の動きなど何気ない仕草も面白いです(これは誰かと対峙し、こういう仕草が始まるとドキリとさせられるほどだ)。また第1章のラストでは、ドア越しに娘が走って逃げる小さな姿が映し出され、次には大佐が狙いを定める姿が映し出されます。これで人命が虫ケラの如く消されてしまうのねと思わせるのですが、次には娘が大きく映し出され、もしや彼女は虫ケラじゃないのかも?と思うと無事に逃げ切れる…決して会話劇だけではなく、画面の構成も見事です。 [映画館(字幕)] 9点(2009-11-24 18:38:33)(良:2票) |
3. 1408号室
この作品は〝音〟に気を遣っていると思います。例えば特に序盤では、グラスの触れる音やペンを走らせる音…そういった細かい音がちゃんと拾われているのです。こういう音というのは生々しくて神経を鋭くさせ恐怖を体感し易くする効果を促しています。さらに登場は少ないながらもホテルの支配人を演じるサミュエル・L・ジャクソンの怪しさも存分に生かされていますし、あの何の変哲も無いはずの1408号室の孤立した雰囲気も良く出ています。そしてドンドン主人公に迫ってくる危機を演出するCGもまた効果的だったのですが・・・、個人的には最初の方の〝いつのまにかチョコが!?〟や〝不気味な部屋に親父がポツンと座っている〟というシーンの方がずっと怖かったですし、水に襲われるシーンはもっとしっかり見せて欲しかったですし、途中の自殺してゆく幽霊?のCGは、本当に〝ホーンテッドマンション〟かってぐらいのもので本作とマッチしておらず興ざめでした。それでもテンポは良いですし、あの煙草スパッーはやっぱり決まってますね。 [映画館(字幕)] 7点(2008-11-28 18:42:57)(良:2票) |
4. インクレディブル・ハルク(2008)
《ネタバレ》 例えば工場で男にしつこく絡まれる女性に助け船を出すシーンのノートンの佇まいが、危険な香りがあってハルクを連想させます。そしてハルクの顔が映るファースト・ショット、大学内での戦闘で檻を彷彿させる渡り廊下で変身してしまうシーンで煙の中から出てくる手、あるいはヘリから落下した後、地面から突き出てくる手などのハルクの登場のさせ方、等々の瞬間瞬間は印象的です。また、人物設定がはっきりしていて、ノートンは科学者としての責任を果たすためヘリから飛び降り、ティム・ロスは戦士として最強の対戦相手との勝負を求め無線機を外し命令を無視し、リヴは愛する者としてノートンに尽くし肉体関係がもてなくともさめざめと泣いたりしません。誰もが(リヴの新しい彼氏までもが)見返り無しに自らの進むべき方向へ迷いなく前進し、行動基準がぶれないので見ていてスッキリします。・・・しかし、全体的に平坦で盛り上がりがなく、最後の街中での戦闘シーンもいまいち芸がなくて面白味に欠けていますし、わざわざノートンやティムを起用しているのだから変身後も少しは原型を感じさせて欲しかったです。それからノートンとリヴが久方ぶりに再会し、雨の中で抱き合うシーンにキスがないのは物足りません。もちろん、そこには二人の誠実さや時間の隔たりがあるのでしょうが、物語に大きく影響を及ぼしているわけではないので、あれはキスがあった方がずっと感動的だったと思うのです。 [映画館(字幕)] 7点(2008-08-07 18:37:48)(良:3票) |
5. インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国
車が砂漠を駆けていくシーンから導入していくのですが、この始まり方の上手さといったらないと思います。そして、お約束とばかりにいきなりドンパチが始まって冷蔵庫に逃げこむぐらいまでが実に面白いです…と言いますかこの辺りまでが一番良かったと思います…。それでもアクションシーンはそれぞれ工夫されており、軍隊蟻とかおサルさんとか、どれも好ましい過剰さだと思いますし、インディらしい適度な滑稽さだと思います。物語の展開に関しては〝インディファンはこんなの望んでないんじゃないの?〟(少なくとも私は違和感を覚えた!)と思いますが、ハリソン・フォードは60代後半とは思えぬ相変わらずのカッコ良さですし、特異な声で〝ジョンジー〟連発するレイ・ウィンストンも良い味出してます。それに何より敵キャラがショボイ傾向にあるインディシリーズに、旬の女優さんでは最強ではないかと思われるケイト・ブランシェットを起用しているのが大きいです。黒のオカッパ頭に訛り英語を駆使して剣振り回す姿はたまらんですぞ! [映画館(字幕)] 7点(2008-06-24 18:36:14)(良:1票) |
6. インベージョン
ニコール・キッドマンが見たかっただけで事前情報ゼロ、ドン・シーゲルのオリジナル版も未見の状態で鑑賞。・・・で率直に言いまして〝キッドマン見たい〟という欲望はそこそこ満たされたのですが、それ以外は作品としてかなり酷い出来かなと。確かに観客を退屈させない方法は心得ているようですが見るべき所は皆無に近かった印象です。レビューしようと思って本サイトで気付いたのですが、本作の監督さんは「es[エス]」や「ヒトラー 最期の12日間」などのドイツ映画を撮っている方ですね。どうやら環境により変化し得る人間の本質を描き出そうとしているみたいですが、今回などはラストでロシア外交官?の言葉をリフレインさせるなど取って付けた様な感じで少々滑稽な気がします。ということで奇麗なキッドマンがこれでもかとたくさん映っていたことを加点して5点で。 [映画館(字幕)] 5点(2007-10-29 18:37:37) |
7. イカとクジラ
《ネタバレ》 珍妙で滑稽なセリフや人物造型に視点とあらゆる面でユニークな本作は、実は活字媒体の方がより面白かったのではないかと思うのですが、映像作品としてもどこか吸引力を持つ本当に奇妙な作品です。一家族を第三者が覗き見しているようなカメラの存在が強過ぎる気もしますが、役者も良くて他者と関わっているにもかかわらず漂う孤絶の匂いなど家族の表現が抜群ですし、性的な場面も多々あるのですがこれは文字化してしまうともっと下品な感じになってしまって絶妙な世界観が損なわれてしまうのではないかと思うのです。それにラストで青年がイカ対クジラの模型を見に向かうところなど肯定的に受けとれるイメージを提示してくれたことは答え欲しがりな〝俗物〟の私には嬉しい限りです。 ・・・それから〝イカとクジラ〟という妙な題名についてですが、これは特に何かのメタファーになっているわけではなく、ただその楽しかった思い出を指しているのだと思います。ジェフ・ダニエルスとローラ・リニーが最後の別れ際に交わす〝最低〟という言葉と同義語であり、修復不可能な亀裂がはいり崩壊した家族にしても確実に絆が存在しているのだという悲劇的に寂しくもハート・ウォーミングで率直なメッセージなのではないかと思います。 [映画館(字幕)] 7点(2007-10-26 18:24:25) |
8. イン・ザ・スープ
《ネタバレ》 いただけないショットが多い気はするが・・・率直に言ってこれは好きな作品だ。さえない映画屋と協力者の奇妙な友情、モノクロが良い雰囲気を醸し出しているところは「エド・ウッド」と似ているが、こちらの方が少しばかり先だ。真剣に手を伸ばせば届くかもしれないけれど、うたかたの如く不確かな夢。夢を追いかけるのは素晴らしい事だけど、〝誰と一緒に見るか〟というのも大切なんだと思わせてくれる。本作はアレクサンダー・ロックウェル監督が実際に体験した出来事を基にしているらしく監督の思いが詰まっているので、どこか優しい感じがするのだろう。嘘から始まった真の友情、新たな船出に思いを語る中、隣で死んでゆくのは「真夜中のカーボーイ」を彷彿させる、喜劇であり悲劇でもあるが観終わった後、心がほんのり温まる心地の良い作品だ。アルドルフォとジョーの二人の人物造形が実に面白く、ブシェーミのチャチャチャの練習場面やジョーが路地で元気いっぱい踊りまくる場面などとても良い。ユーモアに富む素敵な台詞も随所にありハッとさせられる。ちなみに私の最も好きなシーンはアルドルフォに天使だと言われたアンジェリカが始めて彼に見せる笑顔で、その表情が驚くほど美しい。 [映画館(字幕)] 8点(2007-06-04 18:27:22) |
9. イージー・ライダー
《ネタバレ》 ミュージシャン合同企画のミュージッククリップのような感じなのですが、イージーライダーの彼らの視点からハイセンスに当時のアメリカを写したロードムービー。自由に生きたいけれどそうはいかない現実社会。集団リンチして撲殺や通り魔のように銃殺と何とも衝撃的なシーンに不条理さを感じさせます。しかし麻薬の密売も彼らの自由の定義に含まれるのならば、トラックからの狙撃もまた自由であり当然の結末を向かえたとも思えます。傑作と思いますが…残念ながら私自身がこの年代に無縁であり全く思い入れがないのでこの点数までで。 [ビデオ(字幕)] 7点(2006-06-02 18:17:46) |
10. インソムニア
《ネタバレ》 アラスカの白夜と良心の呵責、心の葛藤により不眠症におちいる様がよく描かれていると思います。証拠捏造がバレたら犯人が釈放されてしまう。→だからハップに証言されるわけにはいかない。→ハップを射殺してしまったのは誤射であったのか、故意であったのかわからなくなってしまう。という図式もなかなかだと思います。ドーマーはフィンチに罪をなすりつけましたが、一つ嘘をつけばそれを隠すための次の嘘が必要になってしまって、どんどん泥沼にはまっていくのです。 ロビン・ウィリアムスの悪役ぶりも良かったですが、やはり何と言ってもアル・パチーノ!とにかく存在感が圧倒的です。ということで少しオマケして。 [DVD(字幕)] 8点(2005-11-05 00:07:35)(良:1票) |