521. インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説
《ネタバレ》 シリーズ最高のアクション、ホラー、馬鹿馬鹿しさ全回の2作目。 絶叫と弾丸飛び交う激闘、 秘境に伝わる呪いと儀式の風習、 シリーズ随一の不死身振りを見せるインディ。絨毯の性能がヤバいのかインディたちがイカれてんのか(褒め言葉) トロッコのシーンが楽しすぎるんだが。 [DVD(字幕)] 8点(2014-08-18 07:51:51) |
522. 廿日鼠と人間(1939)
《ネタバレ》 ルイス・マイルストンは苦手だが、この作品は中々良かった。 ジョン・フォードの傑作「怒りの葡萄」を思い出す作品だ。確かに役者の深みは本作の方が上。でも、俺はリメイクの「二十日鼠と人間」の方が好きかな。 [DVD(字幕)] 8点(2014-06-25 19:41:50) |
523. 夕陽のギャングたち
《ネタバレ》 原題は頭を下に、もしくは「伏せろ!(Giù la testa)」、あるいは「伏せろマヌケ野郎!(Duck, You Sucker!)」、あるいはジェームズ・コバーンを指して「一握りのダイナマイト(A Fistful of Dynamite)」、あるいはワンス・アポン・ア・タイム三部作を飾る「昔々の革命(Once Upon a Time... the Revolution)」か。 レオーネの作品は「夕陽のギャングたち」以前の大成功と高い評価、以降の再評価によって大多数が傑作と称賛されている。本作は他の作品ほど評価されていないが、俺個人は結構好きな作品だ。 ロッド・スタイガーの強盗とジェームズ・コバーンの爆弾魔。二人の悪党が次第に友情を結んでいく過程が楽しい(流石に回想シーン多すぎ&長すぎるとは思ったが)。利害の一致から腐れ縁、漢の友情へ。 戦闘面も銃撃戦と爆弾の使い方、特にファーストシーンが良い。 走る駅馬車、乗り込む乗客、巻き起こる事件。子供軍団と一緒に死線を潜り抜けてきたであろう野獣のようなスタイガー。レオーネの映画における駅馬車は無事では済まないのである。 今回のコバーンは爆弾魔。 趣味は爆破(ジェームズ・ドカーン)、好きな飲み物はニトログリセリン(嘘)。 ヒゲがあまりにも似合ってなかったが、ヒゲの無かった過去とヒゲのある現代の対比。ヒゲの無いコバーンの若々しさが、アイルランド時代の青臭さを出していて良かったと思う。 金目当てで突撃したら実は・・・知らず知らずの内に臨まぬ英雄&もっとヤバい奴に狙われる。コバーンと二人で小高い丘から機関銃で迎撃するワクワク感・戻って来た先に拡がっていた絶望。 救出劇は「善玉・悪玉・卑劣漢(続・夕陽のガンマン)」のイーストウッドとウォラックを髣髴とさせる! 列車でのやり取りは「善玉・悪玉・卑劣漢(続・夕陽のガンマン)」から「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト(ウエスタン)」へと受け継がれる。本作は列車もドカーンの標的となる。 コバーンはあの終わり方以外考えられなかったような気がする。友を失い、想い人とも離れ離れ、旅路でも散っていく仲間・・・コバーンは先に行った仲間たちに会えたのだろうか。 そして「俺はこれからどうすりゃいいんだよ」という表情を見せるロッド・スタイガーの何とも言えない顔が忘れられない。何もかも失ってしまった漢たちの旅・・・。 [DVD(字幕)] 8点(2014-04-09 21:47:59) |
524. 大いなる西部
《ネタバレ》 ドナルド・ハミルトンの小説を原作とする人間ドラマに富んだ西部劇。 ジェローム・モロスのテーマ曲に合わせて広大な大地を駆け抜ける馬車の疾走感。 後の「ベン・ハー」で見せた躍動感が、この映画には詰まっている。 チャールトン・ヘストンとグレゴリー・ペックの共演、バール・アイヴスの演技が光る。 「ビッグマディ」の水源地を巡って対立するテリル家とヘネシー家。 ヘンリー・ハサウェイ「丘の一本松」を彷彿とさせる構造だ。個人的には「丘の一本松」の方が凄い作品だと思うし、ワイラーにしても「友情ある説得」や「砂漠の生霊」の方が好きだ。 しかし本作最大の見所はやはり「水の乏しい西部においていかに水が貴重であるか」というテーマだ。 ジョセフ・H・ルイスの「テキサスの死闘」が石油を巡る対立を描いたように、本作は水を中心に対立を深めていく。人間を撃つよりも、貴重な水を保存する貯水タンクに穴を開けられる方が大打撃だ。一滴の水が村人数百人の命を左右する重み。 セシル・B・デミルの「大平原」は、その水圧で列車を破壊する「爆弾」代わりに使われてしまう。 東部出身のジム・マッケイは博愛主義の塊という感じでイライラする。俺は善良一本筋のペックが嫌いだ(大根だし(ry)。 「白昼の決闘」みたいに無理に悪ぶってみせるペックや、「ローマの休日」のように徐々に本音を打ち明けるペックの方が演技者としても深みがあるし大好きだ。「レッド・ムーン」の老将ガンマンや「アラバマ物語」の父親役も素晴らしいが、ジョン・ フランケンハイマーの「I Walk the Line」みたいなペックは滅多に見られない。 が、本作の諦めない根性や覚悟のある男気は認めざる負えない。 二人のヒロインの存在と演技もグッド。 キャロル・ベイカーの髪を結んだ時の色っぽさ、 ジーン・シモンズの服を着ていても解る腰元のエロさとふくよかな胸ゲフンッゲフッ 恋人の居ない間に人妻に接吻するような男かと思ったヘストンも、いざ戦いとなれば恩人のために共に死を覚悟する戦士としての表情を見せてくれる。危険と解って岩場に歩み寄る男たちの何と頼もしき事。ロングショットで撮られたヘストンとペックの殴り合い、ラストの決闘も中々。 アクションとして見るにはやや不足だが、西部劇の人間ドラマと馬車のスピード感を堪能できる1作。 [DVD(字幕)] 8点(2014-04-09 21:36:13)(良:1票) |
525. 十誡(1923)
《ネタバレ》 「現代篇」の部分は退屈だが、古代篇は良いと思う。確かに同時期のデミルにしてはレベルが落ちるのかも知れないが、1956年の「十戒」は自分には長すぎて退屈だった。コッチは2時間弱のコンパクトさ。ニタ・ナルディも美しい。 海や天空(現代篇)が割れるシーンは音が聞こえてきそうな迫力だ。大量のエキストラによる群衆シーン、廊下を歩く光と影のコントラストが際立ったシーン、エジプト軍の大群が一気に駆け抜けるシーンのグリフィスや後のジョン・フォードを思わせるスピード感!これぞ豪華絢爛なスペクタクル史劇。 特に海が割れるシーンは、56年版の「十戒」のレビューでも書いた事だが岩肌が露出するほどの割れっぷり。岩肌から水が滴る感じ、エジプト軍が膨大な水によって木っ端微塵に飲み込まれるシーンは圧巻だ。海のうねり具合を出すためにゼリーを徐々に溶かしながら撮影したらしい。 だが、人によっては古代から現代に切り替わる“瞬間”のインパクトの方が強烈だという人もいるだろう。 神を信じる者と信じないもの。天井が崩落する場面やモーター・ボートが暗礁に激突する瞬間の戦慄。エレベーターが登っていくシーンのカメラ・ワークも凄い。そう、単体だったら凄く良いのかも知れない。ただ、古代のスペクタクルと絡ませるとどうしても比較して見てしまうのだ。グリフィスの「イントレランス」がそうだったように。アレは物語が交互かつ、ところどころ繋がる部分があって見応えがあったけどさ。 [DVD(字幕)] 8点(2014-04-07 21:50:17) |
526. ラブ・アクチュアリー
絶望的にツマラナイ作品がイギリス映画で、特に最近のは複雑にすれば良いと勘違いしているから更に酷い。ただ、この作品は中々面白かった。 とてもハートフルかつシンプルなラブストーリーで安心して見られるし、理屈抜きに彼らの幸せを祝ってやりたくなる。 ドロドロが苦手という人や、陳腐なメロドラマに嫌気がさしたと言う人に是非とも見て欲しいね。 ただ、登場人物を増やすなら増やした分掘り下げをして欲しかった。ストーリーが解りやすい分、余計なキャラが多すぎて少し集中出来なかったのが残念。 でもお気に入りのジョークがあるぜ。「アメ公はいじめっ子」に座布団をあげたい。流石イーリング・コメディの本場だ、ギャグのセンスが素晴らしい。 [DVD(字幕)] 8点(2014-04-07 19:40:59) |
527. 荒野の決闘
《ネタバレ》 今作は邦題のような荒々しさはあまり無い。 原題の「My Darling Clementine」の通り、詩情に溢れた愛と淡々とした復讐の物語。 伝説の保安官「ワイアット・アープ」兄弟とドク・ホリデイの復讐劇。 静かに草木を揺らす荒野、そして「殺られたら殺り返される」殺伐とした西部の世界。 降り注ぐ雨の描写が、この映画の静けさを物語る。 ワイアットが酒場で無法者を引っ捕まえる場面、 酒場で銃を抜いて場を制する場面、 ダダッ子ドクを連れ戻す疾走感、 クライトン一家の襲撃、 ラストの決闘とこれだけ見せ場があるにも関わらず徹底した静けさ。 「駅馬車」のようなドラマ面の人物像の掘り下げもあまりない気がする(前半のバージルとモーガンは空気)。 ただドク・ホリデイが馬車馬を走らせる頃から物語は「静」から「動」へと移り変わっていく。それまで退屈だったストーリーも、段々締まりを見せてくる。 平和な街にくすぶっていた「火薬」が「銃火」によって炸裂する瞬間。 仲間の仇を討つために、そして保安官として仕事を果たすためにアープたちは決闘の場へと向かう。 が、死が待っている決闘の場に堂々とした出で立ちで歩み寄る男たち! それぞれが失った者のために、正義のため、何より愛する者を守るため、男たちは引き金を引く。 長き静寂の後に訪れる死の瞬間まで・・・。 愛する人を奪われていく主人公たちと、アープたちの手によって平和を取り戻し歓喜する住民たちの対比が生々しい。 今回のマチュアは文字通り捨て身のギャグを披露してくれた。 敵の背後を取っておきながら咳で位置がバレて撃たれるって・・・しかし柵に手をかけ相手を睨みつけての一撃はカッコイイので結果オーライ。 「赤い河」や「リオ・ブラボー」で好々爺だったウォルター・ブレナンも、昔は悪漢老クライトンとして立ちはだかる。 それが輪廻転生してジョン何とかさん(ジョン・ウェイン)の強い味方に生まれ変わったと考えると・・・胸熱。 そして決闘のラストでハンマーを打ち降ろして三連射するワード・バンドのカッコ良さは異常。 20世紀フォックス発売の特別編DVDに収録された「非公開試写版」も必見。 個人的にはこっちの方が好きだったりするのだ。 [DVD(字幕)] 8点(2014-04-05 10:13:17) |
528. 静かなる男
この映画はね、「脂ぎったオッサンたちが延々と殴り合う」という図式が好き(?)という人間のためにある映画です。 アイルランドの美しさとか、ギシアンでベッドがひしゃげているとか、そんな些細な事はどうでもええんです。 個人的には「鉄腕ジム」とか「赤い河」みたいなハードなド突き合いの方が好きだし、フォードにしても「果てなき航路」とか「我が谷は緑なりき」の方が好きだ。 ウェインにしたって脂ぎったワンマン中年より、若気の至りで拉致されて仲間に助け出される人間臭いウェインの方が好きだ。人間らしい弱みを見せる男気の方が惹かれるしさ。 だが、このお祭り騒ぎみたいなエネルギーの塊!こういう映画が好きな俺にはたまらん。 御託はいい、乾いた殴り合いもいいが、たまには湿り気のあるウェットな殴り合いも悪くない。 確かにノリはアイドル映画だな(笑) と言っても「狂った果実」じゃなくなり「黒部の太陽」になった石原裕次郎と三船敏郎が殴り合うような(違うか~) [DVD(字幕)] 8点(2014-03-27 15:44:43) |
529. 逃亡地帯(1966)
《ネタバレ》 アーサー・ペンによるサスペンス映画。 一つの街で保安官が事件と向き合う様子は西部劇を彷彿とさせる。 毎晩乱痴気騒ぎで腐敗した街、自分だけ正義を貫こうとする保安官。 街から追放された厄介者が再び街に来るのはよくあるパターンだが、今回は厄介者と知り合いの女が街にいる。 「狙いはおまえだろ、俺たちを巻き込むな」てな具合は「真昼の決闘」を思い出す。 ただ「真昼の決闘」と違うのは、街の住民が狂乱的になるという事。 ババーに殺されるのではないかという恐怖と同時に、厄介者と知り合いの女性への異様な好奇心が住民を駆り立てる。そこに描かれる狂気の生々しさが印象的だった。 [DVD(字幕)] 8点(2014-03-17 08:00:03) |
530. 裸の拍車
《ネタバレ》 マン西部劇の傑作の一つになるのだろうが、やはりラストの展開だけはどうも気に入らない。 今まで積み上げた疑心暗鬼と巧みなドラマは何だったのか。 「死んでいった仲間たちは何のために戦ったんだ!!」と思ってしまった。せめてその大金で立派な墓でも建ててやれや・・・。 [DVD(字幕)] 8点(2014-03-17 07:40:33) |
531. 駅馬車(1939)
《ネタバレ》 フォードの傑作は「リバティ・バランスを射った男」や「捜索者」を見てきたが、他のフォード西部劇は余り好きじゃ無い・・・けど面白い。 前半はゆったりした感じで退屈だが、丁寧にドラマを積み重ねるストーリー。登場人物がみんな個性豊かで良いね。 中盤の出産の場面。世の中からつまはじきにされた人間が、本当は誰よりも心の優しい人間だったって場面がさ。 そして終盤の二段構え。8分にも及ぶ駅馬車の爆走シーンは今見ても鳥肌が立つ。 普通ここをクライマックスにして終わるが、凄いのはこの後さらに見せ場があると言う事。 いや、リンゴにとってはコマンチとの戦いは「過程」に過ぎず、復讐こそリンゴにとっての「本番」だ。 一瞬の銃撃までの緊張感が凄い。 保安官のオッサンと医者は本当良いキャラしてるぜ。ラストの去り際も見事だった。 [DVD(字幕)] 8点(2014-03-13 00:13:39) |
532. ウエスト・サイド物語(1961)
ロバート・ワイズのミュージカルはあんま好きじゃないんだよなー。 「罠」とか「地球が静止する日」とか普通の映画の方が面白いし。 それでも、ブロードウェイの狭い空間から飛び出し、のびのびと弾け飛ぶ若き俳優陣の熱気!踊る、踊る、踊る! 腹の底からエネルギーを放出する叫び。 生きる活力をガソリンにして注入されるようなパワーに溢れている。 ストーリーは小さな不良グループ同士の抗争という筋書きだが、 宗教争いや全ての戦争に対するメッセージも刻まれているのだ。 歌唱シーンの吹き替えはかなり残念だけど、それでも体を震わせる熱意をひしひしと感じられる。 ナタリー・ウッドの演技、マーニ・ニクソンの力強い歌声。 文字通り怒りに満ちたものがある。 リチャード・ベイマーの演技、 ジョージ・チャキリスの存在感も凄かった。トレードマークの赤のように燃え上がるダンス、 リタ・モレノの情熱的な踊りも見事。 [DVD(字幕)] 8点(2014-03-13 00:09:45) |
533. 風と共に去りぬ
《ネタバレ》 前半は文句なしの100点。 ジョージ・キューカー、ウィリス・オブライエン等豪華な面々が監督を引き継いでいったそうだが、それぞれがどのパートをやっているのかと注目して見て見るのも面白い。 黒人描写はステレオタイプな部分があって気になったけど、ワガママなスカーレットが一人の女性として成長を遂げていく過程が良い。 表向きは冷酷な女かと思いきや、本当は愛する男の頼みとは言え憎んでいた女性を助けてしまう心の優しい女。 「彼女を死なせたらアンタを殺してやるわ!!!」女中無能すぎバロス。スカーレットまじ良い女で泣いた。 ケバいドレス着るよりも質素な服の方が何倍もキレイだし可愛いしエロ(ry そしてクライマックスの馬車の疾走の迫力! ハワード・ホークスが撮ったんだがウィリアム・ワイラーが撮ったんだか知らんが、映画史に残る名場面だぜ。そう前半は完璧だ。 ただ後半はあまり好きじゃない。冒頭のやり取りこそ良かった。鉛玉ブチ込むスカーレットはカッコ良かった。メラニーが良い女すぎる。 ただ、いくら農園を守るためとはいえアソコまで酷い展開が出来るのだろうか。というより、内容もスピードダウンと言うべきか。少々退屈してしまった。 スカーレットが堕ちていくのに対し、メラニーは誰にでも優しかった。優しすぎた。スカーレットに助けられた恩をずっと忘れなかったんだから。 伊達男レッド・バトラーも狂ったスカーレット。 ただ、ラストのセリフには納得が行かない。「そうだ明日があるわ」 ふざけんなよと。今日の風は今日しか吹かないというのに。 [DVD(字幕)] 8点(2014-03-13 00:02:08) |
534. ラスト・タイクーン
スコット・フィッツジェラルドの「遺作」、そしてエリア・カザンにとっても「遺作」になるとは皮肉なものだ。 1つ違うのは、フィッツジェラルドの原作は未完に終わるが、カザンの映画は未完とされる部分で結末を迎えているところだ。 かつてハリウッドを代表するプロデューサーだったアーヴィン・タルバーグをモデルにしたストーリー。 ロバート・デ・ニーロが相変わらず「誰てめえ」ってくらい名演。 劇中の時代は恐らくトーキー全盛期の1930年代、つまりタルバーグがなくなる直前の最も彼の人生が目まぐるしかった時だ。 物語の主人公モンロー・スター(タルバーグ)は作品を成功させるためなら容赦なくハサミを入れる男。 信頼はあるが、その徹底した商業主義は上層部や監督たちからやや距離を置かれているようにも感じられた。 そんな大物プロデューサーのロマンス、そして破滅。 かつて彼が目をかけた大物女優ディディは「年増」と揶揄されていた。 彼女がモンローにとっての“過去”であり、彼を慕うエドナは「現在」、彼が追うセシリアは彼にとっての「未来」なのだろう。 そんな「未来」は彼のプロシューサーとしての実績に暗い影を落とそうとする。 いや、性格には彼が深入りしすぎたと言うべきか。 どうでもいいけど、例のハゲのオッサンは何度見てもヒッチコック御大にしか見えません。本当にありがとうございます。 [DVD(字幕)] 8点(2014-03-11 21:19:17) |
535. 絞殺魔
《ネタバレ》 フライシャーの緻密な演出とシンプルな面白さが光る。 フライシャーは「バイキング」や「ミクロの決死圏」等アクションものの監督と思っていたが、まさか「ミクロの決死圏」の後にこんなサスペンスを撮っていたとは。 他の作品に比べるとかなり地味な印象もあるが、それでもフライシャーらしい演出が光る作品だ。 「実在のボストン連続絞殺魔事件」をモデルにした作品。 複数のカットを同時に見せる実験的な仕掛け、淡々と殺しのドラマとそれに歯噛みしながら捜査を続ける警察たちの姿を映していく。 ただでさえ得体の知れない「絞殺魔」が襲いかかるってだけで恐怖だし、もっと怖いのが散々ニュースで注意しているにも関わらずドアを開けてしまう人間心理の怖さ。 開けなくても簡単にドアを突破してしまう「絞殺魔」。 後半の展開は衝撃的。延々とシーンが続く感じなのだが、不思議と飽きない。 “もう一人のアイツ”が出てくる瞬間といったらもう。 [DVD(字幕)] 8点(2014-03-11 21:15:15) |
536. アマデウス ディレクターズカット
《ネタバレ》 前見た時は退屈だったけど、今回は「未完成交響曲」を見てこの作品を思い出し再見。こんな良い映画だったのか・・・フォアマンに謝りたい。 ミロシュ・フォアマンと言えばチェコ時代に「ブロンドの恋」や「火事だよ!カワイ子ちゃん」といった傑作コメディを撮った事でも知られている。 アメリカ時代なら「ラグ・タイム」の方が好きだけど、この作品もとても素晴らしい映画だった。 とにかくファースト・シーンが強烈かつ完璧。 冒頭からいきなり血まみれになった場面から始まり「『カッコーの巣の上』よりも危険な映画なのか?」という警戒はそこまででOK。 オープニングが終わり、老いた音楽家がある男と自分自身の顛末を語り始めればもう安心だ。二人の人間を中心に繰り広げられる音楽と人の心の狂気をたっぷりと見せてくれるのだから。 天才ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの波乱に満ちた生涯を、努力の音楽家アントニオ・サリエリの視点を通して描く。 元々はブロードウェイ用の劇だったが、舞台をウィーン(撮影場所はプラハ)に写したことで映画さながらの奥行を感じられる。 才能に溢れた奇人として描かれるモーツァルトは、後世に残した「凄まじい」曲の内容を知っていればあまり違和感は無いだろう(「俺の尻を舐めろ」とか)。 音楽の神様、神童として異常に持ち上げられた表の面の裏には、ただ純粋に音楽を追い求めた子供のようにはしゃぐモーツァルトがいたのかも知れない。 色恋沙汰、酒をガブ呑み、即興演奏と遊び放題。音楽が奏でる喜怒哀楽の感情を豊かに堪能させてくれる。その自由な生き方、外に飛び出していくパワーが逆にモーツァルトの想像力を豊かにしたとも言える。 その対極の位置にあるのがサリエリ。 ヴォルフィ(モーツァルトの奥さんが彼を呼ぶ時の愛称)の無垢な純心に知らず知らず傷ついていくサリエリ。 努力によって困難な壁を登ってきた彼にとっては、才能だけで宙を飛ぶように上に行くヴォルフィが許せなかった。 神への信仰を捨て、うら若き乙女を諜報に使わせ、あわよくば宿敵を陥れてやろうと心が歪んでいく。 そんな彼の心を、モーツァルトの曲が度々洗い流してサリエリは良心の呵責に悩み続けた。 最期まで罠に落とそうとするサリエリ、ひたすら音楽に没頭したモーツァルト。 まったく違う性質の人間同士だったからこそ、互いを理解するのに時間がかかりすぎてしまったのだろう。 [DVD(字幕)] 8点(2014-03-06 14:17:04) |
537. ザ・ロック
《ネタバレ》 中学生の頃初めて見た時は素直に感動したさ。 でもこの映画がこれだけ高評価なら、同年代の他の映画ももう少し点があっても良いんじゃないかなと思ってしまう。 おまえらの脳味噌は火薬しか詰まっていないのか? そんなにVシネマが好きなのか? いや、それくらいベイはマジで本当に頭の中に火薬しか無さそうなんだけど。 最近「アルマゲドン」を見て悪い予感はしていたんだ。 まさかこんなにも「コマンドー」並にシリアスな笑いを提供してくれる映画だったとは。 「パール・ハーバー」も「アルマゲドン」もベイをブッ殺してやると発狂していたんだが、この映画はうんざりを追求しすぎて「もう褒めるしかないな」という領域だ。 正直完成度はガタガタ、でもこれほどパワーで押し切り「細かい事は気にするな」と言われているような作品は他に無い。 カーチェイスがくどすぎて笑うしかないとか(親バカが大惨事を引き起こす好例)、 アルカトラズでのやり取りが長すぎてうんざりするとか(味方使えねー)、 アクションがゴリ押しすぎるとか、 音楽が五月蝿いとか、 スローモーションが過剰でウザいとか(「ワイルドバンチ」やジョン・ウー映画並の反吐が出るウザさ(褒め言葉)、 その他にもツッ込みどころが多すぎて諦めるレベル。 セリフの量も尋常じゃない。 「パルプ・フィクション」とか「ヒズ・ガール・フライデー」みたいな映画が好きな人はこういうのどうなんでしょうね・・・って誰かと思ったらやっぱりおまえの仕業かクエンティン・タランティーノ(脚本の一人として参加・クレジットなし)! 登場人物にしたってニコラス・ケイジなら「フェイス/オフ」の方が狂気地味てて面白かったし、 ショーン・コネリーも「アンタッチャブル」「最後の聖戦」の方が好きかな。 ・・・しかし、そんな事を気にしなければアクション映画としては申し分ない。 「007」がそのまま豪快かつパワフルになった感じの頭空っぽにして楽しめるアクション!ニコラス・ケイジの場違い振りが良い意味で発揮されていたと思う。 ラストシーンの“死ぬ”場面は印象的。 今頃は農夫か詩人にでもなってこっそり娘に会ってたりすんじゃねえの。 [DVD(字幕)] 8点(2014-03-02 18:40:40) |
538. 西部戦線異状なし(1930)
《ネタバレ》 前に見た時は、余りに哀しく何も得られないこの映画が酷く退屈で、息苦しく思えたんだ。余り心に響かなかったんだ。 でも、再見して、いや見れば見るほどマイルストンに謝りたいという気持ちが大きくなった。 俺のように最初見た時はダメだったという人も、最後の、最後の2分間だけでももう一度見て欲しい。レマルクの素晴らしい小説が、映画としてもあの最後の2分間に凝縮されたと言ってもいい。 故郷に帰ったパウルの部屋には、子供の頃夢中になって追いかけた蝶の標本が飾られていた。俺はその蝶を忘れ・・・いや見逃していた。 観客にとって、標本の蝶なんてほとんどの人が忘れてしまうのかも知れない。 でも、パウルにとっては故郷の妹や家族、友達との思い出が詰まった、それを見た瞬間に思い出すような掛け替えの無い宝物だった。 パウルは蝶が好きだった。それの命を“奪う”だなんて意識もしなかった。 戦争に慣れていく事への恐怖、大切な友人を奪っていく戦争への失望。 何処を見ても土埃と煙、瓦礫、泥水、屍の山。そんな地獄に綺麗な綺麗な蝶がふわりと降りてきた。 パウルは、地獄に希望の灯火を見てしまった。 河の上を歩く女たちや、戦場で出会った掛け替えの無い友人たちの笑顔よりも、もっとキラキラと輝って見えた。 その灯火が消えようとしている。パウルは、無意識の内に飛び出してしまった。 カットのおっちゃんが無意識にパウルを守ってくれたように、パウルもあの蝶を守りたくてつい飛び出しちまったんじゃないだろうか。 今まで散々奪ってきた。もう沢山だよ・・・なんてさ。 ま、そんな事を敵が親切に思ってくれるワケがない。そんな余裕なんて無いよな。 相手だってパウルのいる敵の軍隊に仲間を殺されているもん。蝶よりも横に転がるライフルの方に眼が行っちまうよなあ。 パウルが蝶を守ろうとしたように、敵だって・・・いや、最初から何処にも敵なんていなかったんだ。仲間のために命掛けで戦った人々しかそこにはいなかったんだ。 万の言葉なんか無くてもいい。そこに一生が刻まれた一瞬があればそれで良かったんだ。 後年の原作に沿った「TVスペシャル」も見て欲しい。 [DVD(字幕)] 8点(2014-02-15 23:25:29)(良:1票) |
539. 市民ケーン
《ネタバレ》 「フォルスタッフ」「黒い罠」「オセロ」と随分楽しませてもらったウェルズだが、この作品はどうも退屈だった。というか、この映画1本だけでウェルズを語るのは「市民ケーン」以外のウェルズへの過小評価にも等しい行為だ。そのせいで日本における、いやアメリカでもウェルズは過小評価されてきたのではないだろうか?だからハッキリ言っておきたい。ウェルズは絶対に「市民ケーン」以外も見ろ、と。この映画を楽しめなかった人・楽しめた人すべてに。 この映画もワンシーンワンシーンは好きなんだけどさ。 新聞社に乗り込んでどんどん成長させていくシーンとか、 ケーンと奥さんの冷え切った会話、 鳥が飛び立つような場面転換、 終盤で怪獣のように室内で暴れる様子は「ゴジラ」へ、その暴走を止める「薔薇の蕾」、 鏡の前を歩き幾人にも分裂するケーンの姿・・・。 重厚な音楽と共に始まるオープニング。侵入を阻む柵、鉄格子、まるで城のようにそびえる不気味な黒い建物。 窓の灯りが消えたり付いたり、雪が降り続ける丸い球体が手から転げ落ち、砕け散る。「薔薇の蕾」の言葉を残して・・・。 続いてたった今くたばった人間の生涯を語るニュースフィルム。城主に君臨する新聞王としてのケーン。 およそ10分に渡るニュースフィルムが終わると、続いて新聞記者が“本当のケーン”探しに出かける。劇中の人物は時折黒いシルエットのように映される。 夫としてのケーン、雪の中で無邪気に遊ぶ子供だったケーン、養子としてのケーン、野心を燃やして新聞社に乗り込む若者としてのケーン、共に仕事をした仕事仲間としてのケーン、ライバルとしてのケーン。様々なケーン像が明らかにされ、過去を語る場面と共に蘇っていく。 映画そのものが偽りであるように、世間に知られるケーンもまた偽りの存在でしかない。劇中の記者は、観客は本当のケーンを知る事が出来るのか、出来ないのか。様々な要素を持った謎解き映画でもある。 残された夥しい遺品に蟻のように群がる人々、街のビル群のようにも見える遺品の山。そして何も知らない人々に焼き尽くされる“真実”。黒い煙はケーンのいるあの世にまで届くのだろうか。 すべてを奪われ、すべてを手に入れたつもりになって、本当に欲しかったものは最後まで得られなかった。 修復版で意図的にザラザラにしたニュース・フィルムの演出まで修復してしまったのは残念でならない。 [DVD(字幕)] 8点(2014-01-31 11:20:55) |
540. 2001年宇宙の旅
《ネタバレ》 アーサー・C・クラークとタッグを組んで作り上げた超迷作。 「迷える名作」を撮らせたらアメリカ無双のキューブリック渾身の作品。 これは子供にこそ見せたい映画だね。 子供は何の抵抗もなく、取り敢えずありのままを受け入れようとする。 感受性の豊かな子供は何を思うのか。 そして大人になって再び見る・・・この映画はそれだけ難解でもあり、至極単純な映画でもある。 何者かが知識を得て何かに目覚め、それを繰り返して心理に迫る。ただそれだけ。 その過程が問題だ。 類人猿が「モノリス」に触れて知識に目覚めるファーストシーン。 動きだけで伝えるその世界観は流石。 アフリカの荒涼とした大地と類人猿を「創造」したその美術。 これ役者が演じてんだぜ? メイクと俳優たちは人間国宝になっていいよ。 猿が放った「武器」は、近未来では宇宙を駆ける「武器」となった。 現代の宇宙時代の描写も中々。 宇宙船が音もなく飛び交う宇宙。 この頃は既に「宇宙は暗黒」って認識があっただろうけど、やっぱり絵的に見栄えが悪いよな。 実際こんなに光ってたら怖いわ。 超巨大恒星がどんだけ密集してんだってくらい。 宇宙空間における描写も、今見ると科学的交渉が食い違った部分も多いが、上下の無い宇宙空間、何処までも見渡せる広大な空間、無音の世界観の表現は今観ても凄い。 月の裏側の描写がほぼ完璧ってのが凄い。 だって公開当時は誰も月の裏側に行ってなかったんだぜ?やっぱキューブリックは宇宙人だわ。 月面のモノリスでの騒動、ちょっと長く感じた。 どうせなら「HAL」と木星星団の掘り下げに時間を割いて欲しかったなー。あるいわ上記の部分を削るか。 本作は何といっても「HAL」の反乱。 虚空の宇宙は言わば「密室」。 鬱憤が溜まるのは人間だけじゃない。 機械もいずれは「オーバーヒート」がやって来る。 まして人工知能の発達したコンピューターだ。 自分を排除する=船全体の危機と結びつけちゃうんだろうな。 プログラムに忠実だったのか、それとも本当に心が宿ったのか。 あの真っ赤なランプで、無言で語りかけるような感じが怖かった。 キューブリックは本当こういう「怖さ」を描かせたら天才。 ラストは多種多様な解釈が出来るだろう。 [DVD(字幕)] 8点(2014-01-31 10:48:51) |