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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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761.  ロック・スター 《ネタバレ》 
さほど話題になった映画でもなく、名高いスタッフが関わっているわけでもないので「多分つまんないんだろうな」と思っていたのですが、これがなかなか面白くて感心しました。やっぱり映画は見るまでわかりませんね。直球勝負のタイトルからも察しがつくように内容的には何のひねりもなく、スターを目指す音楽青年が成功をつかむものの、浮世離れしたスターの生活で大事なものを失い元の音楽好きに戻るという、似たような話ならいくらでもありそうなストレートなものです。最初から最後まで本当に思った通りに話が進んでいくのですが、手を抜いて作られているわけではないのでこの予定調和が快感にすらなります。ボンクラ青年が憧れのスターから直々に呼び出しを受け、最初のステージに立つまでの展開などは、ベタながら最高に盛り上がります。オーディションではガチガチに緊張してミスを連発、「もうダメか」と思わせながら、いざ歌唱力を披露すると聞いている全員の顔色が変わるという定番中の定番のようなシーンも、本作は見事なまでにバチっと決めてきます。こういう王道の話を作らせると、ハリウッドは本当に良い仕事をするものです。。。役者については、マーク・ウォルバーグのロン毛はやはり厳しいものがありましたが、さすがは元ミュージシャンだけあって音楽への過剰な愛に生きる姿には妙な説得力があったし、ステージ上のパフォーマンスも板についたものでした(てっきり本人が歌ってると思っていたので、このサイトで口パクであることを知った時には軽くショックでした)。ジェニファー・アニストンについても、撮影当時すでに30代のアニストンが音楽青年の彼女という役柄ですから最初はかなり厳しい印象だったのですが、見ているうちに違和感は消えていき、中盤以降はかなり良かったと思います。彼女はテレビ出身なので映画に出演するとどうしても華が足りないように感じるのですが、本作ではショービズの世界に相対する普通の世界の恋人という役柄だったので、華の足りない彼女にはうってつけでした(誉めてます)。テンポを大事にするためか、クリスと家族の関係や、他のロックメンバーとの絡みは相当削られているように思いましたが、そんな中で最初はイヤな業界人として登場しつつ、ラストにかけてクリスの心境に影響を与えるマネージャーのマッツは良い味を出しており、構成要素の取捨選択も的確です。
[DVD(字幕)] 8点(2009-10-12 20:46:06)(良:1票)
762.  プレデター
「コマンドー」でアクション映画のひとつの最終形を提示した後は、「レッドソニア」「ゴリラ」「バトルランナー」と箸にも棒にもかからない映画に出演していた州知事。アクション俳優としての適性がありすぎるためキャラが立ちすぎてしまい、彼が暴れるに足る敵がいなかったのです。共産主義国と戦っていたスタローンとは違い、東欧出身で激しい訛りのある州知事ではソ連を相手にするにも違和感があることも大きなネックでした。そんな中、「1000人の敵もひとりで倒してしまうコマンドーと、宇宙から来た凶悪エイリアンが戦ったら?」という中学生レベルの企画を持ってきたジョエル・シルバーは、アクション映画のプロデューサーとしてまたしても百点満点すぎる仕事をしています。カレーライスにトンカツをのせてみよう、ハンバーグに目玉焼きをのせてみよう、単純だがその豪快なサービス精神に惚れてしまう、そんなナイスな企画です。以上、着想の段階では冗談のような趣旨の本作なのですが、一方で映画の作りは意外なまでに丁寧なもので、このサジ加減、プロとしての誠実な仕事ぶりは大変評価できます。。。まず脚本。州知事のみならずひとりひとりのキャラが立ちまくった特殊部隊の面々はよく作り込まれています。序盤にて彼らの圧倒的な強さを見せつけ、そんな彼らが得体の知れない敵に狙われていることを認識し、やがて壊滅へと追い込まれていくという展開はバランスの良い配分となっています。プレデターがなかなか姿を現さないという焦らし、そしていよいよ全貌を現すタイミングも良く、アクション映画の脚本としてはかなり完成度の高いものと言えるでしょう。次にプレデターのデザインですが、これは全盛期のスタン・ウィンストンが担当し、さらにジェームズ・キャメロンがスケッチに手を加えたという贅沢な過程で生み出されただけあって、そのインパクトは強烈なものがあります。ハイテクを使いこなし、一方で屈強な体力も有する野獣というありそうでなかった特性のエイリアンなのですが、ハイテクと野性味のバランス、見た目の異様さ、そして他に似たもののない斬新さが同居した、非常に秀逸なデザインとなっています。。。唯一残念なのはマクティアナンの演出が一本調子なことで、プレデター発見→特殊部隊が銃を乱射という同じようなアクションを何度も見せるだけなので、画にメリハリがありません。もう少し工夫が必要だったでしょう。
[地上波(吹替)] 6点(2009-10-12 00:41:05)
763.  コマンドー
四半世紀にも渡って毎年テレビで放送され続け、細かい筋まで全部知ってるのに毎回見てしまうという麻薬のような映画です。そして、そんな人気作の割にビデオ屋では絶対に貸し出し中になっていないという不思議な映画でもあります。。。サイボーグという設定すら必要ないと州知事の底知れぬ素質を見抜いたジョエル・シルバーはさすがの慧眼で、本作は頭から尻尾まで州知事の魅力満載です。丸太を担いでの登場からすでに千両役者ぶりを発揮。タイトルバックではアイスクリームを味わう州知事、鹿にエサをやる州知事、川釣りを楽しむ州知事、プールで馬鹿笑いをする州知事と、他の映画ではなかなか味わえない州知事の姿を堪能できます。本編では設定について軽い説明が入ると、その後は州知事がひたすら暴れまわるという素直な仕上がりになっていて大変好感が持てます。その暴れっぷりについても、十数人の警官相手に格闘して余裕で勝ったり、車のシートをいとも簡単にもぎ取ったり、悪役を電話ボックスごと投げ飛ばしたりと、スタローンやヴァン・ダムでは成立しない、州知事だからこその見せ場が続きます。本作を作った人たちはキャメロン以上に州知事のポテンシャルを理解していたんだなぁと感心します。島での戦闘の前には、流れ的にまったく不要であるにも関わらず州知事はビキニ姿を披露。股間に目が釘付けなのです。ガシャッ、ガシャッと装備を身につけるかっこよすぎるシーン(今ではアクション映画の定番ですが、これをはじめてやったのは本作ではないでしょうか?)に続き、重装備でいよいよ乗り込む場面には「待ってました!」と声をかけたくなります(重装備で茂みから現れる様は、花見の場所取りみたいでしたが)。この辺りの盛り上がりは、アクション映画としての本作の正しさを証明しています。いかに大勢の敵を相手にしても絶対に弾が当たらない、これも州知事の魅力でしょう。もはや人徳すら感じさせます。州知事の相手となるベネットもまた素晴らしく、「タイマンで決着をつけようぜ」と素手の対決に持ち込もうとする州知事の挑発に顔をくしゃくしゃにして心揺れ、「じ、銃なんか必要ないもん!」と強がるオーバーアクトぶりは隠れた見せ場なのです。。。なお、本作の続編への出演を州知事は断ってしまったのですが、その企画が流れに流れて「ダイハード」となったのはアクション映画史上のちょっといい話です。
[地上波(吹替)] 7点(2009-10-11 23:05:00)(笑:2票) (良:1票)
764.  2010年 《ネタバレ》 
これはすごいです。誰がやっても文句の付く企画を本当に引き受けてしまったという、ピーター・ハイアムズの根性が。絶対に危ない企画とあってはスタッフも及び腰で、結果ハイアムズは製作・撮影・脚本・監督のなんと4役もやってしまっています。なぜここまで入れ込んだのでしょうか?「2001年宇宙の旅」のレビューでキューブリックは根性の据わったクリエイターだと評価しましたが、こっちはこっちですごい根性だと思います。まず間違いなく飛んでくるであろう評論家からの批判や、偉大なるキューブリック先輩の怒る顔が怖くなかったんでしょうか。作品のアプローチにしても、前作のやり方を完全に無視してやりたい放題。この方針変更はエイリアン1→2をも超えています。徹底して言葉を使わず映像で見せることにこだわり抜いた前作から一転、本作はしゃべるしゃべる。異様なまでに説明的なセリフの上にさらにナレーションまで加わり、すべてのことをご丁寧に説明してくれます。しまいにはモノリスもメッセージをくれます。しかもその内容が「人類はケンカせずに仲良くしなさいよ。土星に弟も出来たんだし」。さすがにこれには腰が砕けそうになりました。モノリスは人智を超えた存在じゃないといけないだろと。米ソのケンカにコメントしてどうすんだと。さらに驚いたのがボーマンの扱いで、前作のテーマは人類の進化であり、彼が人類のあらたな段階へ到達したことで映画は終わりました。しかし今回登場するボーマンは完全に幽霊扱い。進化した人類ではなく、デミ・ムーアにお節介を焼きたがるパトリック・スウェイジみたいになってます。スターチャイルドは一瞬しか登場せず、基本的には進化前の格好でうろうろします。地球に残した奥さんやお母さんにも会いに行ってしまいます。宇宙の誕生から現在に至る歴史をモノリスに教わり、既存の人類を超越した存在へと生まれ変わった前作の後半は一体何だったんでしょうか?HAL9000ともあっさり和解し、レオノフ号のクルーの安全を確認すると「じゃ、俺は天国に帰るわ」と言わんばかりの爽やかさで退場。他にも、前作が大事にしていた科学考証を台無しにしてしまったり(宇宙空間で音が…)、滅多にないほど無神経な映画でした。最初と最後に流れる「ツァラトゥストラはかく語りき」すら前作への冒涜に感じさせてしまうのですから。
[DVD(字幕)] 1点(2009-09-28 00:47:17)(良:1票)
765.  ブレイド(1998) 《ネタバレ》 
シリーズが3本も作られ、テレビシリーズ化までされた作品だけあって、ブレイドのキャラが魅力的です。日本刀を振り回し、もう片方の手では銃を乱射、黒コートにサングラスの出で立ちでカンフーを決めるという、男子の憧れの結晶のような素敵なキャラクター。彼が登場するナイトクラブの乱闘は、その素晴らしすぎる武装とアクションに大興奮でした。そのかっこよさは「リローデッド」のモーフィアス、「アンダーワールド」のセリーン、「リベリオン」のクラリック達に受け継がれましたが、やはり最高なのはブレイドです。このキャラはウェズリー・スナイプスが演じたことが最大の強みで、この人はベルリン映画祭主演男優賞受賞者にしてマーシャルアーツの達人(12歳ではじめ、空手は5段の腕前)、動ける役者がアクションをやったことで、後続のキャラ達にはない凄味や説得力があります。また、まるでマフィアのようなバンパイア社会の作りこみも面白く(「アンダーワールド」に丸パクリされましたが)、バンパイアは何百年間も人間社会を裏で牛耳っており、警察権力も掌握しているため人を殺しても事件にならないという設定には、「我々が知らないだけで、この社会の裏側ではバンパイアとブレイドが戦っている」という他のアメコミ作品とは違った感覚があって新鮮です。ブレイドは社会から外れた無法者であり、警官に暴力行為を働くは、襲ったバンパイアから「活動資金がいる」と言って金品を奪い取る(ヒーローものに付きまとう活動資金の謎をうまくクリアー)はのやりたい放題。こうしたブラックな面も魅力的なのです。。。と、見るべきところは多いものの、お話の方がイマイチどころかイマニぐらいなのが残念。夜のシーンばかりでブレイドがデイウォーカーである設定がまったく活かされておらず、「ヴァンパイア最期の聖戦」のように、お休み中のバンパイアのアジトに襲撃をかけ、日光の下に引きずり出すという気の利いた展開があってもよかったように思います。またバンパイア社会にしても、チンピラを従えたフロストがいとも簡単に下克上できてしまうのでは、せっかくの設定が死んでしまいます。ブレイドと母親のエピソードはなくてもいいぐらいに印象に残らないし、フロストが血の神を蘇らせようとする動機は説明不足です。ついに蘇った血の神も意外と簡単に退治してしまい、計ったように尻すぼみに盛り下がって映画は終了してしまいました。
[DVD(字幕)] 5点(2009-09-21 19:43:01)
766.  300 <スリーハンドレッド>
原作は未読ですが、すべてのカットに「コミックをまんま実写化してやるぜ!」という作り手の気合が満ちていて、これを見てしまえば原作を読む必要はないのではないかという勢いです。本場のスパルタ教育を見せつけられる冒頭から突っ走ってます。生まれた赤ん坊は選別され、子供の頃から暴力の世界に放り込まれる容赦のなさ。スパルタという国とこの映画の作り手はガチンコですよ、何のためらいもありませんよという心意気をここでガン!と見せつけられます。スパルタの元気な兵士達の如く、この映画はあらゆることに躊躇がありません。エロ、グロ、人種差別、障害者差別、普通のハリウッド映画なら良心的に避けるネタを恐れず扱い、血生臭く生きた古代の男たちの物語を、古代の倫理観で描いてみせます。本作のようにお金のかかった大作であっても、骨抜きにしてはならない企画にはかなり自由を許すハリウッドの柔軟さ、企画の本質を理解して適切な意思決定を下せるそのシステムには、素直に感心します。気合入れてトンチンカンなことをやってしまう我が国の映画産業とはやっぱり違うなぁと。そんな本気の原作・脚本を受け、監督の演出もやっぱりガチンコ。前作「ドーン・オブ・ザ・デッド」もビジュアルで押し切る映画でしたが、本作ではまったく違う画面作りを見せるあたりに監督の底知れぬ才能を感じます。100万人の大軍勢を相手に300人で戦うというムチャな話ながら、スパルタ兵ひとりひとりの強さ、誰かが攻めている時は誰かが守っているという合理的な戦法をわかりやすい形で画面に提示したことで、映画を成立させるだけの説得力は維持できています。多国籍軍たるペルシアが次々と繰り出すマンガチックな軍勢の実写化も見事で、こういうキャラ立ちした敵が多いと男子は燃えるのです。また、こうした敵以上にスパルタ軍の濃いこと。常に目がギラギラ、一言しゃべるにも血管が切れそうな地中海の中尾彬ことレオニダス王を筆頭に、男臭いを通り越した300人の男たち。友軍と合流した際に「たった300人かよ」とガッカリされると、友軍の兵士を指さし「お前の職業は?」「鍛冶屋です」、「お前は?」「パン屋です」…「本物の兵士の数なら俺たちのが多いぞ!うぉ~~~!」終始このテンションなのです。圧倒的なビジュアルと並んで、このまっすぐな男たちについても「珍しいものを見たなぁ」という気分にさせられます。
[映画館(字幕)] 7点(2009-09-17 22:19:34)
767.  ウォッチメン
原作既読です。コミックの枠を超え、アメリカ文学史上の傑作とすら言われる作品なのですが、これが実に338ページに及び、コマの中で一瞬うつる雑誌や貼り紙にも意味があり、さらに各章の最後には世界観を補足するためのこってりとした資料まで付属という凄まじい情報量。こんなものを2時間40分で処理できるのかと思ったのですが(原作者も、最初に映画化を試みたテリー・ギリアムも、一本の映画にまとめることは不可能と語っていた)、驚いたことに原作にあった要素はほとんど捨てておらず、かと言って駆け足感もなくて原作と同じようなテンポを再現しています(退屈だという意見もありますが、当の原作がこのテンポであり、そこまで忠実に作られているのです)。また、登場するキャラクターの印象も原作を読んだ時のまんま、ロールシャッハは相変わらずかっこよく、ナイトオウルは相変わらずのヘタレで、Dr.マンハッタンは相変わらずフルチンです。ミニッツメンとウォッチメンという新旧2つのヒーロー組織が登場し、それぞれのヒーローは本名とヒーロー名の両方で呼ばれるため非常に複雑、原作は何度も前のページに戻りながら読んだのですが、映画版はこの辺りの交通整理をうまくこなしており、はじめて見る人でも混乱しないように作られています。こうした秀逸な脚色の上に、監督のビジュアルセンスが炸裂。「ゾンビ」のリメイクでガンコな旧作ファンを返り討ちにしたツワモノだけあって、本作でも驚異的な仕事をしています。原作のカットを忠実に再現しつつ、実写ならではのアップグレードも加味。格闘時のロールシャッハの素早い身のこなしは原作を超えるかっこよさだし、火星に現れる楼閣の美しさは芸術的ですらあります。役者もよく選んできています。全員原作のイメージ通りであり、特にロールシャッハは、正義に執着することで生きている精神異常者で、背の低いブ男なのにマスクをかぶると猛烈にかっこいいという難役であったにも関わらず、これにハマる俳優を選んできているのが凄いです。以上、「ウォッチメン」の映画化としては完璧な仕上がりだと言えます。ただ、ここまで忠実だとどうしても原作ありきになってしまうので、さまざまな工夫がなされているとは言え未読の方にとっては苦しい出来なのも確か。一本の映画としてどう評価すべきかは難しいところです。とりあえず私は気に入ったので、高得点を付けておきます。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2009-09-17 19:00:41)(良:3票)
768.  ウルヴァリン:X-MEN ZERO
監督:ギャヴィン・フッド…誰だよ?と思って調べてみたら『ツォツィ』の監督でした。初のハリウッド大作、しかも大ヒットシリーズのスピンオフという重大な企画を任されながら、かなり落ち着いた仕事ぶりを披露しています。。。 おかしな格好のキャラが暴れ回る一方で深刻なドラマが展開されるという、他のアメコミ映画と比較するとバランスの取り方の難しいのがX-MENシリーズなのですが、この監督はなかなか器用に作品をまとめています。アメリカが経験した近代戦のすべてを渡り歩いてきたウルヴァリンの半生を冒頭5分で一気にまとめたかと思えば、妻との穏やかな日々や親切にしてくれた老夫婦とのつながりも短時間で簡潔に片付けています。この手際は見事なものだと思いました。見せ場の作り込みも上々で、ミュータントならではの激しいアクションは迫力十分。残念なのは後半になると映画のテンションが一気に下がってしまうことで、ウルヴァリンがストライカー大佐の陰謀を追いはじめてからは、作品が急激に失速します。忍従を重ねた末にいよいよアダマンチウムの爪を出すところがウルヴァリンの見せ場の王道なのですが、そんな彼が積極的に敵を追いはじめると、どうしてもこのカタルシスが半減してしまいます。。。 【2012年7月30日ブルーレイにて再鑑賞】 あらためて鑑賞すると、”ドラマを簡潔にまとめている”という点が本作を中途半端な出来にしているように感じました。ウルヴァリンの人生は悲惨なものです。実の父親を自らの手で殺害し、長い長い人生の大半を戦場で過ごし、唯一血を分けた兄とは敵味方に分かれて殺し合っている。この映画はそんなウルヴァリンの痛みを観客に伝えるべき作品だったのに、ドラマを駆け足で終わらせてストライカーとの確執を中心に据えてしまったために、感情的にピンとこない出来となっています。『X-MEN』第一作の冒頭にて初登場したウルヴァリンの背中にはこの”業”というものが確かに見えていたのですが、本作はその深い闇をすっかり矮小化してしまったという印象です。
[映画館(字幕)] 5点(2009-09-14 23:18:10)
769.  デアデビル 《ネタバレ》 
「X-MEN」「スパイダーマン」の予想を超える大ヒットを受けて急ごしらえで作られた作品だけあって(公開日が決まった時、製作開始のアナウンスからあまりに間を開けず完成したため「もう出来たの?」と驚いた記憶があります)、実に浅い作りとなっています。レーダーセンスの映像表現は美しいもののそれ以外に特に誉めるべきものがなく、数あるアメコミ実写化作品の中でも最低クラスの完成度と言えるでしょう。父親を殺されたマードック少年の怒り、善を名乗りながら人を殺すことの葛藤、素顔では愛し合いながら仮面をかぶると敵同士となるエレクトラとの関係などアメコミにありがちな要素てんこ盛りなのですが、そのどれもが中途半端で消化不良を起こしています。短い上映時間の中で原作にあった多くの要素を詰め込んでしまったため、すべてのイベントが軽く、印象に残らないものとなっているのです。エレクトラの扱いなどは特にひどいもので、父親の仇がデアデビルだと誤解しひと波乱起きるかと思いきや、デアデビルの正体が恋人マードックだと知った途端に誤解が解けてしまうというお手軽さ。新聞記者も何のためにいるのか不明であり、彼の登場シーンは丸ごと割愛してもよかったように思います。ハリウッドの川合俊一ことベン・アフレックもアメコミの主人公には合っていません。体が大きく動きが鈍重であるため、夜の街を飛び回る身の軽さが感じられないのです。キングピンとの最後の戦いに至っては、大きな人ともっと大きな人のただのどつきあい、アメコミヒーローの戦いではありませんでした。キングピンと決着をつけず、ブルズアイも生かしておき、エレクトラの生存も匂わせるという、ヒットしたら続編作るよ!という制作陣の腰の引けた姿勢もグダグダで、さすがにこんないい加減なものは評価できません。
[DVD(吹替)] 3点(2009-09-12 00:10:49)(良:1票)
770.  X-MEN2
第一作公開時、よく出来てはいるが物足りなさの残る仕上がりへの批難は、娯楽作の経験のないブライアン・シンガーに集中しました。あんな生真面目なのじゃなく、面白い映画を撮れる人間に監督させるべきではなかったかと。しかしシンガー、第二作ではやってくれました。冒頭から見せ場の連続。第一作で技術的な経験を積んだことから映像表現を自在に操る術を学び、SFX満載、超能力を操るミュータント達の戦いを想像力の限りを尽くして描きます。火薬満載だが知性を感じさせる見せ場作りはさすがシンガー。他の監督ではここまでのものは作れなかったでしょう。また脚本レベルの完成度も高く、学園を襲撃されたウルヴァリンの反撃、暴力の限りを受けたマグニートーの脱獄と、虐げられるミュータントが、忍従を重ねた末にその特殊能力を発揮して反撃をするという構図のアクションには燃えに燃えましたとも。ストライカーという共通の敵の登場でX-MENとブラザーフッド(と言ってもマグニートーとミスティークの二人だけですが…)が手を組んで闘うというモロ少年マンガの展開にも、やはり燃えてしまいます。難を言えば、ブライアン・シンガーの悪い癖で後半のバトルが冗長になりすぎたことでしょうか。この人は非常に丁寧に作品を作る監督なのですが、やりすぎて観客の生理を無視してしまう傾向があります。後半ももっとコンパクトで畳み掛けるような展開にすれば充実したアクション大作になったと思うのですが、いかんせん長い。あと、X-MENのリーダーでありながら何の役にも立たないサイクロプスと、ミュータントの指導者でありながら敵の手に落ちて足を引っ張るプロフェッサーの扱いは、さすがにどうなんでしょう。「3」ではあんなことになってしまうし。「1」の後で売れっ子になったヒュー・ジャックマン、ハル・ベリー、イアン・マッケランの見せ場を増やすために、彼らの役回りが悪くなったようにも感じます。
[映画館(字幕)] 8点(2009-09-10 21:00:46)(良:3票)
771.  X-メン
09年現在まで続くアメコミ実写化ブームの最初の作品であり、本作の成功が後続の企画達の大きな原動力となったという意味で、かなりの重要作です。現在あらためて見返すと、公開時に感じた以上に脚本・ビジュアルともに緻密に作り込まれていることに驚かされます。コミックを実写化する上での最大の問題である、二次元のキャラなら特に問題ないが、いざ生身の役者にやらせるとおかしなことを、どこまで原作に忠実にやるべきなのか?本作に先駆ける「スーパーマン」は怒涛のSFXを売りにすることで、「バットマン」はティム・バートンの独特の世界観を提示することで、この難題からうまく逃げてきました。しかし本作はハリウッドではじめてこの課題に真正面から挑み、かつ成功させており、ある意味で後続作達のガイドライン的な役割を果たしています。ウルヴァリンをはじめとした奇妙奇天烈なルックスのキャラ達を驚くほど原作に忠実に再現。シリアスな世界観の中にあって、あの強烈なルックスのキャラ達を観客に受け入れられるようにまとめているのですから、ブライアン・シンガーは驚異的な仕事をしています。彼らの登場のタイミングや、その能力の表現が細かいところまでよく考えられていて、特に映画の冒頭をマグニートーの少年時代とし、ユダヤ人収容所での悲劇的な物語を頭に持ってきたことは、これはどういう映画であるかを観客にガン!と提示する意味でかなり効果的でした。さすがに擁護しがたいようなおかしな要素は笑いにしていて(変なニックネームのキャラ達を紹介されたウルヴァリンが、プロフェッサーXに向かって「で、あんたは"車イス"?」、コスチュームを渡されて「本当にこれで人前に出るのか?」)、脚本は非常に柔軟です。自由の女神の土産物屋を舞台としたラストのバトルにはさすがに物足りなさがありましたが、技術的にテスト段階にあった作品だけに、下手に大風呂敷広げて失敗するよりも出来る範囲で小さくおさめたことに、制作陣の真摯な姿勢がよく出ています。これについてはアクション大作となった「2」できっちり答えを出しており、シリーズ化のために作品を破綻させないことを重視した第一作の判断は、今となっては好意的に評価すべきでしょう。
[DVD(吹替)] 8点(2009-09-10 18:14:12)(良:3票)
772.  インクレディブル・ハルク(2008)
制作陣の異様なまでの気合は伝わるもののチ~っとも面白くなかった「ハルク」を反省してか、スピーディな展開、明確なライバルの存在と、マンガ映画に徹した本作は十分に面白い出来となっています。アメリカ人なら誰もが知っている物語の発端を数分のタイトルバックで済ませてしまうという、前代未聞の荒業からして光っています。普通、コミックの実写化は「みんなが知っているおなじみの展開をどう実写で表現するか」に全力を挙げて挑むものですが、本作は「どうせみんな知ってるんだからあらためて説明する必要もないだろ」と、コロンブスの卵的発想で切り捨ててしまったこの潔さ。一方で、いくら巨大化しても破れないパンツや、ハルクに変身した後、裸で放り出されたバナー博士は一体何をやっているのかといった、原作がうやむやにしていた部分をキチっと実写化。物乞いをしてとりあえずのお金を入手し、真っ先にパンツを買っていたんですね。変身すると裸になってしまうので、貴重品は事前に飲み込んで胃袋にしまっておくという生活の知恵も面白かったです。以上、刈り込むべき部分は大胆にカットし、説明が必要な部分にはきちんと答えを準備しておくという、よく出来た構成だと評価できます。一方アクションシーンになると、こちらは良い意味でマンガチックな大味さがあります。事情を知らずバナー博士をいじめる街のチンピラ&特殊部隊登場で「ヤバイ、ヤバイ、変身しちゃうよ」というイヤな汗をかかせ、いざ変身すると、それまで横柄に振舞っていた連中をひねり潰すという爽快感。これぞハルクです。ブロンスキーの存在も良く、体力の限界を感じていた軍人が力への羨望に取り憑かれて肉体改造を重ねるという設定なのですが、大袈裟な背景やひねった動機付けをするよりも、こういうシンプルな動機の方がかえって説得力があります。いざ怪物が暴れはじめると、次々と兵器が登場し、物を壊しまくるという腕白ぶり。ラストの怪物バトルは、元がエドワード・ノートンとティム・ロスとは思えないような大プロレスが展開されて目を飽きさせません。怪物がベラベラと話し始め、最後の「ハルクスマッシュ!」にはさすがに驚いてしまいましたが。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2009-09-06 20:48:30)(笑:1票) (良:3票)
773.  マルホランド・ドライブ 《ネタバレ》 
【猛烈にネタバレします】5年以上前に見たものの、さっぱり意味のわからない映像がダラダラと続く(ファンの方ごめんなさい)中盤で眠くなってしまい途中でリタイア。今回久し振りに再チャレンジし、無事完走しました。要するに、自分を裏切った恋人カミーラを殺してしまったものの、その罪悪感に耐えきれず自殺した女優ダイアンが断末魔に見た妄想ということですね。妄想の世界でダイアンはベティという名の別人となり、一方カミーラは殺し屋襲撃から生き延びるも記憶喪失、ふたりの関係はリセットされ、出会いを一からやり直すこととなります。妄想の世界は、ダイアンの願望が具現化されるパラダイス。現実世界でカミーラを寝とった憎き映画監督は、理不尽なスポンサーに企画を潰されるわ、家に帰れば奥さんが堂々と浮気してるわ、浮気相手から殴られるわのさんざんな仕打ちを受けます。また現実世界でダイアンの演技をまったく認めなかった別の映画監督は、妄想の世界ではベティ(=ダイアン)を絶賛。しかしキャスティングの担当者は「あの監督は老いぼれだから、別の映画に出なさい」とその監督の悪口三昧なのです。意中のカミーラとも結ばれ(誘ってくるのはカミーラの方!)、ダイアンは至福の時を過ごしますが、その後カミーラに連れて行かれた劇場で「ここで起こっているすべてはウソ、幻」ということに気付かされ、これは空しい夢だと認識します。。。この映画の面白いところは、本来はシンプルな話を真ん中でぶった切り、前後を入れ替えたために難解なルックスとなっているところ。何が起こってるのかわからないが、画面で起きていることすべてに何かの意味がありそうな前半の「引き」のうまさはさすがリンチ。話の前後を入れ替え、観客を突如物語のド真ん中に放り込むという荒業の効果がよく出ています。また、謎がつながる後半部分も興味深く見ることができました。しかし問題は、中盤があまりに退屈なこと。ひとつひとつの場面が猛烈に長くて飽きてしまいました。それに、さっぱりわからない伏線がいくつかあって、ファミレスの裏に潜む魔物とか、監督に無茶な要求をするカウボーイなどの意味がいまだにわかりません。丁寧に見てもサッパリわからない謎で感心を引くのは、ちょっと反則じゃないかという気もします。
[DVD(吹替)] 5点(2009-09-04 22:29:34)(良:1票)
774.  スリー・キングス 《ネタバレ》 
湾岸戦争を扱った作品といえば他に「ジャーヘッド」ぐらいしかなく(「戦火の勇気」「クライシス・オブ・アメリカ」は直近の戦争を舞台にしたらたまたま湾岸戦争になっただけの作品)、それほど扱いに困る題材なのでしょうが、本作はこの「戦争映画にしづらい戦争」をうまく料理しています。序盤はコメディを装っていて変化球の映画なのかと思いきや、作り手の主張は大マジメ、あの戦争の本質を暴いてやろうという実に本気で志の高い映画でした(撮影に本物の死体を使って問題になったほど)。「戦争は悲惨なんですよ!」と客の首を絞めて感動させるような古臭い形はとらず、自然に受け入れらるよう知的に作り上げた結果がこの形だったのでしょう。兵士同士の殺し合いがなく当時は「クリーンな戦争」と称されたものの、その裏側では空爆によってイラクの一般市民が大勢死んでいたこと、フセインに武器を与えたのはアメリカだったこと、反フセイン勢力の蜂起を煽りながらこれを見捨てたこと、従軍したアメリカ兵には貧しく教養もない者が多かったことなど、アメリカにとっては耳が痛く、また興味深くもある事実がこれでもかと詰め込まれていますが、オリバー・ストーン作品のような主義主張の発表会にはなっていないのが好印象です。金塊を奪いにやってきたアメリカ兵をイラク軍が進んで手伝うというシュールな場面は、金銭よりもまず反政府勢力を押さえることが先決だった当時のイラクの状況、及び金銭的な利益が確保されれば目の前の惨劇には目をつむるというアメリカ外交を面白い形で示しています。自由だ正義だと言って他国に乗り込みながら、結局は金の問題であることの多いアメリカ外交ですが、「困ってる国は山ほどあるのに、なぜアメリカはクウェートだけを助けるんだ?」というイラク将校の言葉でこの欺瞞が丸裸にされてしまうわけです。最後の最後で主人公達の前に立ちはだかるのもアメリカという国であり、また土壇場で人道に目覚めてアメリカが難民たちを助けるという甘い展開もなく、結局金塊の威光でハッピーエンドを買うというオチのつけ方もよかったです。この知的な脚本をベースに、いざとなれば見応えのあるアクションが挿入されるのですから、これはなかなか満足度の高い作品でした。
[DVD(字幕)] 8点(2009-08-20 21:18:16)
775.  コナン・ザ・グレート
「レイダース」とほぼ同額、「ET」の約2倍の製作費が投入された超大作なのですが、ジョン・ミリアスとオリバー・ストーンが自由にやった結果、血と裸と小難しいセリフに溢れた、ヒットするとは到底思えない作品となっています(DVDのメイキングでは、興行的に成功しなかったにも関わらず、2人ともこの映画について満足げな顔をしています)。当時のラウレンティスは、「エレファントマン」がヒットしただけのデビッド・リンチに洒落にならない額の製作費を与え、これまた暗くグロテスクな「砂の惑星」を作らせており、プロデューサーとして観客に受ける映画を作る気があったのかと不思議になるような仕事をしています。そのような「管理不行届き」の現場で製作されただけあって、本作は娯楽作として成功しているとは言いづらいものの、他に類を見ないようなクセの強い仕上がりとなっており、面白くはないが見応えのある作品にはなっています。コナン少年の村が侵略を受ける序盤からすでに暴力はフルスロットルで、女も年寄りも皆殺しにされるわ、コナンの目の前で母親が首を飛ばされるわと惨い描写が続きます。その後も、奴隷としてのコナンの成長は悲惨極まりないわ、剣闘士となってからも人間扱い受けないわと、鬱になるようなお話が続きますが、こうした容赦のなさが殺伐とした世界観の表現に役立っています。セット教の巨大神殿やかなりの人数のエキストラ、凝りに凝った小道具や衣装など、お金をかけるべきところにタップリ資金を投入することで、世界観の構築がより強固なものとなっています。また、黒澤明をリスペクトするミリアスだけあって、チャンバラの迫力も他の映画とは一線を画すものとなっています。ダンスのような美しいだけの非現実的な殺陣ではなく、重量感や痛みを伴った戦いが展開されるのです。終盤の決戦に至ってははまんま「七人の侍」なのですが、さらに少数の味方で大勢の敵を迎え撃つというウェスタンの要素も加わり、なかなか燃えさせる見せ場となっています。願わくば監督経験の少ないミリアスではなく、娯楽についてもっと小慣れた人物が監督を引き受けていれば、それなりの佳作になっていたかもしれません。
[DVD(字幕)] 7点(2009-08-15 01:28:57)
776.  トゥルー・ロマンス
女にモテず、服装もダサいオタクのフリーターが巨乳の金髪に勝手に惚れられるという、イケてない男子なら誰もがしたことのある妄想が繰り広げられます。エロくて、かわいくて、おまけに趣味の話を聞いてくれる彼女なんて最高ではありませんか!家の外で趣味の話をしないことが大人になることなんだなと学ぶ18の春を男はみな経験するわけですが、このクラレンスは趣味と彼女を両立させるという奇跡を成し遂げます。うらやましい!美人にモテて気が大きくなったクラレンスはバイオレンス一直線に走りますが、これまた学校のヤンキーにビクビク脅えつつ、「こいつらを全員俺の鉄拳で倒し、校内に平和を取り戻してやる」という文科系男子のバイオレントな妄想が素直に実写化されています。ド素人のクラレンスがマフィアや警察を敵に回し、ハリウッドの大物プロデューサー(モデルはジョエル・シルバー?)相手に大きな取引を成功させる展開はうまく行きすぎですが、タランティーノのバイオレントな妄想の実写化であり、オタク青年のファンタジーとして見ると、これは非常に楽しめます。。。「レザボア・ドッグス」で注目されたばかりでまだ「パルプ・フィクション」も世に出ていない時期に製作されながら、意味のない会話、B級趣味、度の過ぎたバイオレンス等、本作はタランティーノ作品の特徴を驚くほどよく押さえています。すでに売れっ子監督だったスコットが、昨日今日注目されたばかりの若手クリエイターの個性を殺すことなく、よくぞここまで「タランティーノらしい」映画を作ったものです。同時期に製作され、一方こちらはオリバー・ストーンが好き勝手にいじり倒してタランティーノを激怒させた「ナチュラル・ボーン・キラーズ」とは対照的です(「ナチュラル~」の後、親友のロバート・ロドリゲスを除いてタラは自分の脚本を他人に監督させなくなった)。トニー・スコットは見せ場だけの大味な映画を作る監督だと思われがちですが、本作を見ると企画の良さを的確に理解し、従来の自分のスタイルにこだわることなく企画本来の良さを活かす工夫のできる、器用で謙虚な監督という印象に変わります。
[DVD(吹替)] 8点(2009-08-14 17:41:57)(笑:1票) (良:1票)
777.  ドミノ(2005) 《ネタバレ》 
ここ10年のトニー・スコットは、「スパイゲーム」や「デジャヴ」など並の監督では手出しできないような困難な企画を器用に作り上げており、リドリー以上にその手腕には注目しているのですが、ここ最近で唯一のハズレ映画がこれでした。大して難しい企画ではなく、普通に撮ってれば面白い映画になっていたのに、どうしてこんなことになってしまったのかと。前作「マイ・ボディガード」(ヘタレなタイトルからは想像もつかない残酷バイオレンスの傑作)で効果を発揮したチラチラ映像を全編でやってしまい、まったく落ち付かないビジュアル。ドミノの生い立ちなどではその効果を感じたものの、全編に渡ってこれはさすがにやりすぎでしょう。また、話を複雑にしすぎていることも問題でした。この映画の核はあくまでドミノ・ハーヴェイという実在の人物であり、彼女の数奇な生き様を堪能することがもっとも大事なことのはず。にも関わらず、タランティーノも呆れるような複雑な犯罪を後半に持ってきたことから、見ている私達の集中力はドミノから犯罪へとシフトすることを余儀なくされます。これにより、せっかく面白かったドミノと仲間たちの物語が中断される形となってしまいました。ラストの銃撃戦も、相変わらずのチラチラ映像のために燃えるような大アクションとなっていません。スコットの手腕があれば余裕でかっこいい銃撃戦を撮れるのに、必要とされていない工夫をしてしまったことが完全に裏目に出ています。良い題材に、良い役者(ミッキー・ロークの最高ぶり!)を得ながら、要らない工夫のために映画をつまらなくしてしまった珍しいケースだと言えます。。。なお、DVDに収録されている眞鍋かをりによる吹き替えはよく出来ていました。ここ数年のユニバーサルはよくタレントを吹き替えに起用し、その大半は恐ろしくダメな仕上がりなのですが(DAIGOによる「ウォンテッド」には倒れそうになりました)、これだけは例外。決してうまくはないものの、その不安定さがお嬢様育ちの賞金稼ぎというキャラクターと偶然にも噛み合っており、作品の意図と一致しているのです。彼女が汚い言葉を吐く時の無理しているような感じなど、完成されたプロの声優では出せない妙な味が出ています。キーラ・ナイトレイのルックスと眞鍋かをりの声質にも不思議な統一感がありました。
[DVD(吹替)] 5点(2009-08-14 11:42:07)
778.  スパイ・ゲーム(2001) 《ネタバレ》 
公開時にはブラッド・ピット主演のアクション大作として宣伝されたため誤解を受けましたが、これは硬派で知的なサスペンスです(だからこそ、アクション大作への出演を嫌がるブラピもこの企画には参加したのでしょう)。「スパイ・ゲーム」は逆説的なタイトルで、これは鮮やかに敵を倒す痛快なアクション映画ではなく、神経を擦り減らすような死と背中合わせの駆け引きを描く作品です。よって派手なアクションはほとんどなく(終盤の救出作戦すら、地味な撃ち合いで終わる)、スパイという世界が持つ極限の緊迫感や、命をかけた「ゲーム」であることから生じる痛みを作品の核としています。序盤のベトナム以外にブラピが銃を撃つ場面はなく、カーチェイスも格闘もなし、敵と顔を合わせることもなし。現地の協力者を口説き、彼らを戦場に送り込む駆け引きがひたすら描かれます。作戦が敵に漏れていたため協力者を置き去りにして逃げたり、作戦の手はずを間違えて死なせてしまったりという痛みのドラマをきちんと描いており、スパイ映画としてはジェイソン・ボーン以上に誠実に作り込まれた作品だと言えます。。。と、このように硬派な作風であり、なおかつ過去の回想と現在の救出作戦が並行して語られるという厄介な構成をとるため、作りの誠実さの代償として娯楽性という意味では問題のある脚本だと言えるのですが、これがスコットの手腕により十分面白く作られていることには驚きます。派手な見せ場は少ないものの、美しいビジュアルにかっこいい音楽、キレのある編集により、勢いのあるアクションを見たような高揚感を味わえます。脚本にあったと思われる泥臭さは調度いい具合に抑えられており、必要以上に重い作品にしていません。ラスト、作戦名を聞いて師匠の仕業だと知るブラピと、ポルシェで颯爽と退場するレッドフォード、この締めはまさに痛快でした。話の交通整理もうまいもので、ややこしい構造の作品でありながら、特に混乱することがありません。困難な企画にあって、水準レベルのアクションは寝てても撮ることができ、プラスαの工夫に頭を使う余裕のあるトニー・スコットを引っ張って来られたことは幸運でした。そこいらの監督に任せていたら、観客の頭を混乱させるだけの映画になっていたことでしょう。頭空っぽの映画ばかり撮る監督だと思っていたトニー・スコットの見方が変わった一作です。
[DVD(吹替)] 9点(2009-08-14 10:52:10)(良:1票)
779.  スリーピー・ホロウ
特殊メイク界の大御所ケビン・イエーガーがなぜか脚本を担当し、「セブン」のアンドリュー・ケビン・ウォーカーがさらに手を加えたという極めつけの脚本だけあって、この映画の残酷ぶりはすさまじいものがあります。拷問で断末魔の母親と目が合うイカボッド少年(直後、大量の血を浴びるという徹底ぶり)、ご丁寧にも妊婦のおなかの胎児にまで剣を突き立てるホースマン、枝を折り、表皮をはがすと血を流す「死人の木」を掘っていくとゴロっと現れる生首、ホースマンに体を真っ二つに引き裂かれるキャスパー・ヴァン・ディーン等々、枚挙に暇がありません。この凶悪な脚本を得たことで、性根が残酷なティム・バートンの演出が水を得た魚のように冴え渡ります。残酷描写を包み隠さずバンバン見せてくるのです。残酷絵巻を明るい色調でやって顰蹙を買った「マーズ・アタック」の反省もあってか、本作は残銀処理により色調を抑え、芸術的なルックスにすることで残酷シーンに対する観客の抵抗感を軽減しています。一流スタッフを動員して残酷描写を芸術的に見せるのはスピルバーグのお家芸ですが、本作においては「トゥモロー・ワールド」も担当した撮影監督のエマニュエル・ルベッキ、及び美術監督のリック・ハインリックスがバートンの共犯者でしょう。とにかく本作のルックスは美しく、世界中でバートンにしか作れない映像をたっぷりと堪能できます。しかしここぞという時は真っ赤な血の飛び散る地獄絵図。無名スタッフが低予算で作るのが相場の残酷映画を、メジャー監督が潤沢な資金と優秀なスタッフを率いて作るとどんなことになるかという興味深い見本市となっています。また、剣と斧の二刀流で暴れ回るホースマンの殺陣のかっこよさにも(相手にとどめを刺す際の一瞬の決めポーズは最高)、良い意味で子供っぽいバートン演出の良さが出ています。首なし状態よりも首のある時の方が怖いクリストファー・ウォーケンの怪演もあり(オスカー俳優なのにセリフなし!)、ホースマンはキャラ立ちした素晴らしい悪役となっています。ただし本作で残念なのは、ビジュアルに集中しすぎたためか、謎解きやロマンス部分がまったく面白くないことです。村の秘密や陰謀などは大して難しい話でもないのになぜか頭に入って来ず、「で、今は誰の話をしてるんだっけ?」と何度も話を見失いそうになります。
[DVD(字幕)] 5点(2009-08-07 21:17:10)
780.  逃亡者(1993) 《ネタバレ》 
バリバリの娯楽アクションでありながらオスカー作品賞ノミネートという快挙を成し遂げた作品だけあって、面白さはズバ抜けています。この栄誉、公開当時はアンドリュー・デイビス監督の手柄とされていましたが、本作によりAクラス入りして後に撮った「チェーン・リアクション」「ダイヤルM」を見ると、やはりこれは実力以上の作品だったようです。真の功労者は、「ダイハード」でもジョン・マクティアナンに実力以上の仕事をさせた脚本家のジェブ・スチュワートでしょうか。「ダイハード」同様、本作も作りの精巧さが光っています。派手なアクションはあるもののご都合主義のウルトラCはなく、すべての行動が理にかなっているのです。またジェラード保安官の作り込みが素晴らしく(オリジナルのテレビシリーズでは感情移入しがたい人物だった)、「俺は無実だ」と言うキンブルに対し「知ったことか」と切り返す様は最高にかっこよく、また「ヘリを飛ばして、パトカーを2台よこせ。3キロ先まで封鎖だ」などと恐ろしく的確に指示を出す様は本物よりもプロっぽいわけです。キンブルを追う公権力の立場にいながら真実の究明についてフラットであり、キンブルの冤罪の可能性が高くなると、柔軟にその姿勢を変えるあたりも好印象でした。この役に巡り合えたトミー・リーは幸運だったと言えます。…と、すぐれた作品であることを前提としつつ難を言えば、前半のハイテンションな逃亡劇と比較して、後半の謎解きに入ると途端に作品の勢いが衰えることでしょうか。後半部分も通常の作品と比較するとそれなりのレベルを保っているものの、前半の圧倒的な面白さとの落差でどうしても見劣りしてしまいます。また、キーパーソンであるはずのニコルズ医師の存在感が驚くほど薄く(すべての黒幕なのに、特に印象に残らない素晴らしさ)、彼をより際立たせれば、ドンデンの衝撃度がより増したはずです。
[DVD(吹替)] 7点(2009-07-30 20:25:02)
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