1. イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
本作品はエニグマやアラン・チューリングの人生をモチーフにした暗号解読機作製に関するドラマの体裁をとっておきながら、本質的には「価値を誰が判断できるのか」そして「誰の判断が正しいのか」という問題を投げかけてくる作品であると感じました。 セクシャリティに関する善悪の判断の正しさ、救うべき人命とそうでない人命を選別する正しさ。いずれの判断も絶対的な「正しさ」は存在し得ないのでしょう。それでも人間の価値判断によって罪悪が規定され、感情によって誤った判断をし続ける。これに対して機械(エニグマや解読機)の判断には主観はなくブレもない。本作はそうした人間の不確かな「正しさ」の基準によって翻弄された天才の姿が時にコミカルに、また悲哀に満ちて描かれていました。 それでも結末に希望を見出すとすれば、現代という時代が過去の判断の過ちを認め、多様性を包摂する社会へと変わりつつあるように描かれていることではないでしょうか。人間は間違える。それでも、人間は捨てたものじゃないよ、といったメッセージを私は読み取りました。味わい深く素敵な作品でした [映画館(字幕)] 8点(2015-06-10 22:41:57) |
2. ラン・オールナイト
最近のリーアム・ニーソンの作品にはハズレが少ないですね。特にジャウム・コレット・セラとの相性がとてもいいんですね。 作中ではシームレスなカットで場面を切り替える方法で「あっち側」と「こっち側」を対比する演出が多様されているのが印象的でした。 本作品ではリーアム演じるジミーが「あっち側」と「こっち側」の境界線上に位置する存在として描かれており、絶望的な状況のなか、息子を「あっち側」へ行かせまいとする姿がとても切なくスリリングでした。 特にそれを感じさせたのは終盤の『US BEFORE YOU』のメッセージ。あのメッセージによってジミーのbehindに迫る世界と、beforeにある世界を改めて強調し、ジミーの使命に対する意思の強さを感じさせる効果があったと思います。 ずっと家族のことを考えながら生きてきたという描写もさりげなく、しかし効果的になされていて、作品に深みを増していました。しみじみといいサスペンス映画でした! [映画館(字幕)] 7点(2015-06-10 21:09:05) |
3. 悪の法則
《ネタバレ》 本作品は確かに不親切というか、あえて描いていないところ非常に多いと思うのですが、このために「描かれていない」部分に対するイメージが膨らみ、恐怖感が煽られます。そもそも、「カウンセラー」がバイカーの弁護士に選ばれたことが全ての発端ですが、どうやって彼が「国選弁護士」に選出されたのか。その背景を鑑賞後に想像したらおぞましい余韻がこみ上げてきました。映画はストーリーのテンポが速すぎてついていくだけで精いっぱいですが、「あのシーンはどういう意味だったのか、どういうメタファーだったのか」を後で思い返したり議論をすることで味わい深くなる類の珍しい作品かと。ハビエル・バルデムがかませ犬的なポジションだったのも観客の期待をうまい具合に裏切り、絶望感を味あわせるのに一役かってくれたかもしれません。邦題の『悪の法則』というのはあまりピンときませんでしたね。そもそも悪には法則自体が存在しないことを描いた作品だと思います。原題の『カウンセラー』が最初は弁護士先生のことを意味していたのが、最終的には弁護士先生自体が助けを求めるクライアントになってしまうという構図が興味深かったので、原題のほうがテーマ性があるように思われますが、日本語で表現するのは難しいですね。 [映画館(字幕)] 7点(2013-12-26 22:02:27) |
4. ザ・グリード
非常に「お約束」感たっぷりなお下劣海洋モンスターパニックアクション。展開はありがちなんだけれども、イヤミがないので好印象。強いてたとえるなら「コマンドー」や「インデペンデンスデイ」のように、よく考えるとそこまで面白いとは思えないし、自分でDVD借りて観ようとは思わないんだけど、TVでやってるとつい観てしまう不思議な作品。キャラクターの個性もそれなりにあってテンポやノリもいいし、ヘンだけど悪くないと思います。ケビン・J・オコナーがいい味出してます。あと、ファムケ・ヤンセンがピチピチしててすてき。 [ビデオ(字幕)] 6点(2008-01-13 22:34:10) |
5. ジャッカル
《ネタバレ》 この作品、当時映画館で観ておりましたが、途中で帰りたいと思ったはじめての作品です。まぁ、リメイクということで新しいジャッカル像の構築というか、新しい解釈をしたということで100歩譲るとしても、変装が変装になってないとか、ラストの暗殺シーンに特注マシンガン使う意味があったのかとか、ただの殺人鬼にしか見えないとか、一流の殺し屋っぽくない描写が目立つのとかは新解釈が成功していると言えるのでしょうか。ジャッカルが最後に息を吹き返すというアイデアはブルースウィリス本人によるものらしいですが、「ダイハード」とかと出演作品を勘違いしてしまったのかしら。そんなウィリスの提案にリチャードギアが激怒したとかなんとか当時の映画雑誌に書かれていたのを思い出します。 [映画館(字幕)] 3点(2008-01-13 21:45:24) |
6. アタック・オブ・キラートマト完璧版
一連のトマトものの中ではこの完璧版をお勧め。お勧めといったって、根本的にどうしようもない出来なのはわかりきっているわけですけれども。それでも全部見たいと思う人は相当なトマト脳なので、もうどうでも好きにすればいいと思います。ほかの映画のパロディのようなシーンもありますが、そのパロり方がなんとも中途半端で泣けます。個人的にはタイトル曲とプレスリーもどきの兵隊さんが踊るシーンが好きですね。あと、大学の学食かなんかで男がニヤニヤしながら「トマト」ってつぶやくところとか、犬がしゃべるところとか。好きなところのほうが嫌いなところより多いのが困りもんです。 [DVD(字幕)] 1点(2008-01-13 21:19:40) |
7. プラン9・フロム・アウター・スペース
この作品には敬意をこめて「サイテー」と評するのが最大の賛辞。サイテーってことは、それより下はないってこと。でも、実際にはこれよりもつまらない映画なんて山のようにあるし、その意味ではこの映画は決して最低じゃあない。サイテーって言葉がほめ言葉になるのは、この作品から彼の映画に対する愛情が、ほかのどの作品にも無いくらいにあふれてるから。「映画だいすき!」って気持ちがここまでストレートに伝わってくる映画をほかに見たことが無い。エド・ウッドは確かに映画作りのプロとしては最低かもしれないけれども、サイコーだ。サイテーだけどサイコーってことでもう評価不能。よって零点。でも、零って絶対的な数字。エド・ウッド自体が映画界において絶対的な存在ということで、もう零点でいいんじゃないかしら。ところで、ルゴシの代役を立てて最初から撮りなおさなかったのは、きっと予算や時間の関係じゃなく、スクリーンに映るルゴシをエドが劇場で観たかったからじゃあないのかな・・・と思ったけど、多分予算や時間の関係だと思う。 [地上波(字幕)] 0点(2008-01-13 16:58:01)(良:3票) |
8. 西部戦線異状なし(1930)
戦争映画に点数をつけるのは難しいけれど、この作品は製作された年代を考えるとものすごい作品だろう。面白いか面白くないかでいえば、面白くはない。戦意高揚するようなかっこいい戦闘シーンは皆無で、ジョン・ウェインのようなヒーローも存在しない。エンターテインメントに走らず、カメラの視線は冷徹で、ドキュメンタリータッチとも言えるような印象がある。とにかく、あの時代においてあのテーマ性と描写力を持ったスタッフがいたことや、それを上映できたことが重大な意義を持っていたと思います。日本では統帥権干犯問題で浜口首相が銃撃された年ですからねえ。 [DVD(字幕)] 10点(2008-01-13 16:40:05) |
9. バートン・フィンク
どこまでが現実で、どこからがフィンクの夢なのか。結局自分にはわからなかった。解釈に関しては諸説あるけれども、そうした議論の中で作品の世界がさらに拡がっていくという面白さがあるし、それだけのネタを提供してくれる作品であることは間違いない。好き嫌いの問題はあるけれども、「わかる」「わからない」という接し方というよりは、どうせ答えなど出ないのだから、無理に分かろうとせず曖昧な立ち位置で観るくらいのほうが、よりフィンクの追体験ぽいという意味で面白いかもしれない。 [DVD(字幕)] 7点(2008-01-13 16:18:05) |
10. ディスタービア
《ネタバレ》 皆さん指摘されているように、キャリー・アン・モスのお母さんっぷりが板につきすぎで、最初彼女だとわからなかった。『マトリックス』のトリニティのイメージしかないので意外でした。明らかなティーンズ用のデートムービーという感じだけれども、大して期待しないで観たのでそれなりにドキドキ。PCや携帯カメラといった小道具の使い方がうまくサスペンスを盛り上げておりました。「彼」が犯人なのか否か疑心暗鬼にさせる展開もなかなか。それにしても、デヴィッド・モースはこういう怪しい隣人役が合うなあ。 [DVD(字幕なし「原語」)] 6点(2008-01-13 12:52:37)(良:1票) |
11. モーテル
《ネタバレ》 スナッフムービーがテーマとなっている割には直接的なグロ描写がないのが意外といえば意外。昨今のホラーは安直にグロ描写に走るのが多い中、硬派ともいえる。舞台設定は非常にシンプルで、犯人役にも何の意外性もないけれども、きちんと怖いと思わせられる内容。オチはちょいとあっさりすぎるきらいもあるけれども、観ている間はそれなりに楽しめるので、悪くはないかと。気楽にドキドキしたい方にはおすすめ。 [DVD(字幕なし「原語」)] 5点(2008-01-13 12:42:02)(良:1票) |
12. 未来世紀ブラジル
テリー・ギリアムによるモンティ・パイソンの異様なアニメが好きな僕としては、彼のアニメ世界がそのまま再現された世界に浸れるだけで満足でした。この作品には、モンティ・パイソンでも度々出現する「パイプ」「翼」「雲」といったモチーフが散りばめられ、ニヤリとすることが度々。官僚制への批判というのは真新しいテーマではなく、あくまで表層的な話題であるように見えます。ストーリー自体も特に目を引くものはありませんが、「彼の脳内のイメージを実写にするとこうなる」ということが理解できるだけで価値のある作品なのだと思います。 [DVD(字幕)] 8点(2008-01-13 12:29:21) |