1. デ・ヴィル家への招待状
《ネタバレ》 芸術家を目指しニューヨークで孤独に生きる若い女性イヴィー。唯一の肉親であった母親を病気で亡くしてから、彼女は天涯孤独の身となってしまった。そんな中、DNA鑑定を実施しあなたの知らない親戚を探し出してくれるというサイトを見つけたイヴィー。興味を惹かれた彼女は、自分のDNAを提出し調べてもらうことに。結果は、海を越えたイギリスに遠い親戚がいるというものだった。思わず連絡を取ってみると、なんといきなり明日行われるという結婚式に招待されてしまう。怪しいものを感じながらもイヴィーはさっそくイギリスへと向かうのだった――。辿り着いた先は、森の奥深くに幽玄と佇む豪邸だった。百年以上も前に建てられたというこの歴史ある建物に住むのは、何代も続く由緒ある貴族デ・ヴィル家。自分は高貴な血を受け継ぐ上流階級の一員だったのだ。何十人もの親戚たちに歓待され、執事や使用人にまるでお姫様のように扱われ、すっかり有頂天になるイヴィー。だが、肝心の新郎新婦だけは何処にも見当たらない。いつしか彼女は、親戚のみなが自分を物欲しそうな目で見つめてくることに気づく……。都会で鬱屈した日々を送っていた平凡な女性がある日招かれた上流社会、そこで体験する恐怖の一夜を濃厚に描いたゴシックホラー。とにかくこの細部にまで拘ったであろう、創り込まれた世界観は大変グッド。メインホールや廊下、階段に置かれたいかにも歴史を感じさせる家具調度品、手摺や窓枠に施された精巧な彫刻、各部屋に繋がる電気のない時代に作られたであろう呼び鈴……。まぁ新味はないですけど、このおどろおどろしい雰囲気はなかなか好みでした。そこに集うデ・ヴィル家の面々もみな、怪しさ爆発でちゃんとそれぞれにキャラ立ちしてるのも良かったですね。ただ、肝心のお話の方は恐ろしく普通。ぶっちゃけて言うと『トワイライト』シリーズ系のいわゆる女性向けヴァンパイアもの。とにかく最初から最後まで何処かで見たようなシーンのてんこ盛りで驚きというものが一切ない。いつも胸元はだけた白いワイシャツを着こなし、ジゴロのように主人公を口説いてくる当主の男も笑っちゃうくらいベタだし。生成AIに「吸血鬼もの映画の脚本を書いて」とお願いしたら5分で完成しそうな超ベタベタな内容でございました。さすがにもうちょっと一捻りというか、この作品ならではという新しい部分が欲しかったですね。あと、全体的に画面が暗くて見辛い点も大いにマイナス。せっかくここまで美術を頑張ってるのにすごく勿体ないです。とは言え、最後までそこそこ楽しんで観られたのは確か。暇潰しで観る分には充分及第点だったんじゃないでしょうか。 [DVD(字幕)] 6点(2024-11-15 09:34:31) |
2. レンフィールド
《ネタバレ》 彼の名は、ロバート・モンタギュー・レンフィールド。パワハラ・モラハラ当たり前のとんでもないモンスター上司に苦しめられる今どきの若者だ。上司からくだされる無理難題に日々心をすり減らしながら、それでも辞めることが出来ないでいる。何故なら、彼の上司は、かの有名な吸血鬼ドラキュラだからだ――。百年近く前、ドラキュラに半ば強制的に悪魔の血を飲まされ、永遠の命と引き換えに絶対服従の誓いを立てさせられたレンフィールド。以来彼は、食料となる善良な人間たちをさらってきてはドラキュラのために献上してきた。今夜も彼は、更なる獲物を求めて夜の街をを駆けずり回っている。「こんな生活もう嫌だ!」。我慢の限界に達したレンフィールドは、一大決心して召使を辞める決意をするのだった。当然、ドラキュラはそんな彼を容易に解放するわけもなく……。今も様々な分野に影響を与え続けている怪奇小説の古典『吸血鬼ドラキュラ』、その中に登場する召使レンフィールドを主人公にしたホラー・コメディ。今回ドラキュラを演じるのは、もはやB級映画界の帝王の名をほしいままにする名優(怪優?)ニコラス・ケイジ。ちゅーわけで完全なるB級なんですけど、良い感じに力の抜けた感がけっこう面白かった。なんといっても、横柄で自己チューで部下に無理難題を押し付けるとんでもないパワハラ上司なのに、何処か憎めないドラキュラを演じたニコケイがまさに嵌まり役!吸血鬼ハンターとの闘いで痛手を負った彼が、「力を取り戻すためにもっと善良な者の血を!バスいっぱいのチアガールの血があればすぐに私は復活できる!」とか言い出した時は思わず笑っちゃったよ。「出来るか!」とふて腐れながら飲み屋にやって来たレンフィールドの前に、何故かチアガールたちがバスいっぱい乗り込んできた時は、バカバカしすぎてもう爆笑。そんなご主人様に振り回されるニコラス・ホルトのヘタレ具合も負けず劣らず嵌まり役でナイスでした。切られたお腹からはらわた振り乱しながら街のチンピラたちとバトルするシーンは、適度なグロさとキレのいいアクションで終始テンション上がりまくり。特に中盤、アパートでの血みどろグチャグチャバトルは、これぞB級って感じのはちゃめちゃっぷりで思わず拍手!敵の両手を引き抜いて振り回して武器にするとか、どんな発想やねん(笑)。いやー、良いですね~、このくだらなさ。唯一の難点は、ヒロインを演じた小太りのアジア系女優が若干ミスキャストなとこかな。最後のオチもベタながら爽快感抜群!いや~~、大変楽しい90分を過ごさせていただきました。7点! [DVD(字幕)] 7点(2024-11-12 10:12:32) |
3. インスペクション ここで生きる
《ネタバレ》 ゲイであることを理由に、狂信的なまでに保守的な母親に捨てられ、以来何年もホームレスとして暮らしてきた黒人青年フレンチ。そんなどん底を這い回るような惨めな生活を変えようと、彼はアメリカ海兵隊に入隊することを決意する。必要な書類を貰うために数年ぶりに会った母親からは相変わらず邪険に扱われながらもフレンチは無事、海兵隊に採用されるのだった。早速始まる数週間にも及ぶ新兵訓練プログラム。厳しいしごきに耐え、日夜罵倒をくりかえす上官たちにも我慢しながら、フレンチはただ人並な人生を取り戻そうと努力していた。だがある日、彼がゲイであることがバレると上官や同僚たちの彼の見る目が途端にかわってしまい……。本作がデビュー作となる監督の実体験をもとに、ただゲイであるというだけで様々な困難に直面する一人の青年の自立と再生を描いたヒューマン・ドラマ。確かに描きたいテーマも分かるし、淡々としながらも最後まで観客を惹き付けるこの監督のセンスの良さも充分に認めるところなのですが、正直、自分はいまいち嵌まれませんでした。この映画、とにかく暗いんですよね。画も暗ければ音楽も暗いし、登場人物も暗い人たちばかりだし、主人公なんて最後までほとんど笑わない根暗の極みみたいな人で自分はまったく感情移入できませんでした。もう少し遊びの部分と言うか、人間臭いとこが欲しかった。なんだか戦争映画の快作『フルメタル・ジャケット』のハートマン軍曹のパートをひたすら真面目にリライトしたら物凄く暗くなっちゃいましたって感じかな。それにしてもベトナム戦争の時代から、アメリカ海兵隊の新兵訓練のやり方ってまったく変わってないんですね。下ネタがマイルドになったくらいで、あのランニング中の歌とかまんまじゃん。そんなわけで、アメリカ軍の内部事情――と言うかアメリカ社会のマイノリティに対する根強い偏見は未だ変わっていないという事実を告発するという点において充分価値は高いのでしょうが、自分の好みとは全く合わない作品でありました。 [DVD(字幕)] 5点(2024-11-02 10:33:02) |
4. デスパレート・ラン
《ネタバレ》 彼女の名は、エイミー・カー。何処にでもいるような平凡な主婦だ。高校生の長男とまだ小学生になったばかりの娘と郊外の静かな田舎町で暮らしてる。ただ、その生活は決して順風満帆とは言えなかった。何故なら一家の大黒柱である夫が一年前、急な交通事故でこの世を去ってしまったから――。父親っ子だった長男ノアはそれ以来精神的に不安定となり、塞ぎこむ日々が増えてしまった。母として何とか生活を立て直そうと努力しているのだが、それでも難しい年頃であるノアとはいつも擦れ違ってばかり。その朝もノアは自室に引きこもり、学校には行かないと言って寝込んでしまった。心配しながらも日課であるジョギングに出かけるエイミー。誰もいない森の散歩道をただひたすら走り続けていたそんな時、彼女のスマホに信じられないような連絡が届く。なんと息子の通う高校で銃乱射事件が起こり、今も犯人は人質をとり教室に立てこもっているというのだ。息子に連絡を取ろうとするも何故かまったく繋がらない。すると刑事を名乗る男から電話があり、「あなたの息子さんが学校にいる」と告げられるのだった……。舞台となるのは閑散とした森の中、登場人物もほぼナオミ・ワッツ演じるこの母親一人のみ、あとはただたすらスマホで色んな人とやり取りするだけでストーリーを進行させるこの作品。思い出させるのは、『オン・ザ・ハイウェイ』や『ギルティ』などのワンシチュエーションスリラーでしょう。こーゆーほぼ一人芝居となる映画って、やはり主役となる役者の演技力がポイントとなるものですが、そこはさすが百戦錬磨の名優ナオミ・ワッツ。愛する息子を救うために奔走する母親を熱演していて大変見応えありました。最初はただ息子の安否を知るために奔走していたのに、刑事からもしかしたら犯人はあなたの息子さんかもと告げられた時の茫然自失となる姿なんか見てらんない。それでも息子の留守電に「もちろん信じてないけど、もしそうなら終わらせて……」と悲痛なメッセージを残すシーンなんて思わずウルっときちゃいました。その後、とにかく愛する息子の為にもはや暴走してしまう彼女には痛々しいと思いながらもいたく共感。ともすれば退屈になりがちお話なのに、最後までずっとハラハラドキドキしながら観られたのは、このナオミ・ワッツの熱演と監督のツボを押さえた演出力の賜物。まぁ突っ込みどころは満載ながら(朝のジョギングに8キロも離れたこんな森の奥深くまでくる?とか、容疑者の母親かもとなったらさすがに警察がすぐ迎えをよこすだろ!とか)、エンタメ映画としては充分及第点。自分は面白く観ることが出来ました。 [DVD(字幕)] 7点(2024-10-30 11:02:21) |
5. カード・カウンター
《ネタバレ》 罪を犯し、長年刑務所に収監されていた孤独な男、ウィリアム。刑期を勤めあげ、ようやく娑婆に戻ってきた彼は誰に会うこともなく、街のカジノへと足を運ぶ。時間だけはほぼ無限にあった刑務所の中でウィリアムはひたすらカードテクニックを磨き、出所後はギャンブラーとして生きていくことを決意していたのだ。人並外れた記憶力を駆使し、ブラックジャックやポーカーで着実に儲けを出してゆくウィリアム。そんな中、カークと名乗る謎の青年が彼に接触してくる。カークは、ウィリアムが刑務所に入ることになった過去の出来事――アブグレイブ捕虜収容所での虐待事件のことを話し始めるのだった。なんとカークの父も同じ刑務所での罪を責められ、以来家庭がむちゃくちゃになったという。「あんたや僕の父に罪を着せ、一人だけのうのうとのさばっているあの元上官に一緒に復讐しよう」。過去は捨てたつもりでいたウィリアムだったが、そんなカークの提案に心搔き乱されてゆく……。ノワール映画の名作『タクシー・ドライバー』の脚本を書いたポール・シュレイダー、彼が監督を務めたという本作はいかにも彼らしい重厚な作品でありました。多くは語らず、都会の夜の空気を濃厚に漂わせる映像とジャジーな音楽とで構築されたこのハードボイルドな世界観、自分はけっこう嫌いじゃない。カジノと言う華やかでありながら何処か闇を感じさせる世界で刹那的に生きる男たち……。いやー、渋い。主人公を演じたオスカー・アイザックのダンディな魅力も相俟って、なかなか見応えのある作品に仕上がっていたと思います。社会に恨みを抱き、ただ復讐のためだけに生きる青年を演じたタイ・シェリダンも負けず劣らず渋い。そんな男臭い世界の中で、主人公に思いをよせるパトロン的な役を演じたティファニー・ハディッシュの存在が良いアクセントとなっておりました。ただ問題は、肝心のギャンブラーとしてのし上がってゆく主人公の物語と復讐に命を燃やす青年の物語が有機的にうまく絡まっていないところ。特に最後、優勝を掛けたポーカーの試合を投げ打って、青年の復讐のために会場を去る主人公の感情がうまく受け取れませんでした。え、どうして今?んでウィレム・デフォー演じる元上官はなんであんな簡単に拷問を受け入れたの?ここらへんをもっと丁寧に描いてほしかった。ダークでスタイリッシュな世界観は好きだっただけに、なんとも勿体ない。 [DVD(字幕)] 6点(2024-10-30 10:43:28) |
6. MEMORY メモリー
《ネタバレ》 若年性アルツハイマーを患う殺し屋とメキシコの人身売買組織、そしてそんな彼らを追うFBI捜査官の三つ巴の戦いを濃厚に描いたクライム・アクション。正直、さっぱり面白くありませんでした、これ。なんかお話のテンポが恐ろしく悪いし、やたらと登場人物が多いからか話が分かりづらいし、肝心のアルツハイマーを患う主人公という設定もうまく活かされてないし……。子供だから殺さなかったターゲットが次の日、やはり殺されていたとニュースで知った主人公が、朦朧とする記憶のせいで「もしかして俺が殺したのか」と煩悶するシーン。「おぉ、なんか面白くなりそうじゃん」と思ったのに、次の瞬間、殺したのは別の殺し屋だってすぐ種明かしするとか、なんでこんな勿体ないことしちゃうんだろうって思いました。そんなわけで自分は最後までいまいち嵌まれなかったです。ただ、お歳を召してますます渋さを増すリーアム・ニーソンは相変わらずかっこ良かった。あと、『メメント』で記憶を失ってゆく男を演じたガイ・ピアーズが今回記憶を失う男を追う刑事役というのは、なんか感慨深いものがあります。ま、そんなとこかな、はい。 [DVD(字幕)] 4点(2024-10-26 11:06:16) |
7. オンマ/呪縛
《ネタバレ》 電気アレルギーを患う母親と二人で暮らす17歳の少女が、ある日体験する恐怖の日々を濃厚に描いたホラー。ぶっちゃけて言うとさっっっぱり面白くありませんでした、これ。タイトルからも分かる通り、韓国系アメリカ人である母子がもはや悪霊となってしまった祖母の呪いに苦しめられるという、何の捻りもない凡庸なお話。驚愕のどんでん返しもないし、エッジの効いた新しい演出があるわけでもないし、一度見たら忘れられないくらい強烈なキャラクターが出てくるわけでもない。唯一新しいかもと思える電気アレルギーを患う母という設定もほとんど活かされてないし、クライマックスなんて画面が暗すぎて何やってるのかすら分からない。ひたすら地味で退屈なお話がダラダラと最後まで続いて、自分はもう眠気と戦いながらなんとか最後まで観終えました。もはや苦行のような80分でした。 [DVD(字幕)] 3点(2024-10-22 09:46:09) |
8. バズ・ライトイヤー
《ネタバレ》 もはや説明のしようのないディズニーの大ヒットアニメシリーズ『トイストーリー』。その中に登場する、「さぁ無限の彼方へ」のセリフで有名なおもちゃ、バズ・ライトイヤーを主人公としたスピンオフ作品。トイストーリーはあの1から3までの3部作が最高に好きだったので、余計な蛇足でしかなかった4があまりに酷かったこともあり、本作もずっと観る気はありませんでした。それが今回地上波でノーカット放送されるということで、まぁタダならいいかと今回鑑賞。そんな期待値ゼロで観始めたのが功を奏したのか、意外と悪くないじゃん、これ。冒頭から、超高速で移動したら時間の経過が遅くなるという『インターステラー』ばりのハードSF設定にハート鷲掴まれでした。他にも、「これ、子供ついてこれんのか?」ってくらい、過去の名作SF映画への愛が随所にちりばめられていて自分はけっこうアリ。『エイリアン』や『エイリアン2』、『スターウォーズ』シリーズの名場面を髣髴とさせるシーンがてんこ盛りだし、あの大量の虫型エイリアンに襲われるシーンなんて完全に『スターシップ・トゥルーパーズ』だったしね。そんな女子供そっちのけの内容の中で、あのモフモフ猫型ロボットの可愛さがナイス!!中盤、顔が半分潰れた彼が登場した時はその健気なグロ可愛い姿に胸キュンでした。まぁ最後のマルチバースな展開はちょっとどうかと思うけど。あと、最近のディズニーではお馴染み、ポリコレへの過剰な配慮が鼻につくのも相変わらず。とは言え、エンタメに全振りした内容は単純に良く出来ていたし、トイストーリーシリーズとか考えずに観たら自分はボチボチ楽しました。まぁタダだったし(笑)。 [地上波(吹替)] 6点(2024-10-13 10:20:07) |
9. スラムドッグス
《ネタバレ》 あのサイテー野郎のチ〇コに噛みついてやる――。彼の名前はレジー。ミックステリアという種類のちょっと小さめのワンコだ。生まれたばかりの自分を拾ってくれた飼い主ダグがレジーは大好き。でも、ずっと一緒に暮らしていた女の人が出ていってから、ダグはあまりレジーの相手をしてくれなくなった。そればかりか自分のことを、「このクソ犬が!」って呼ぶことも増えてしまう。それでもレジーは、ダグが最近お気に入りの遊び、遠くに投げたボールを持って帰ってくるゲームに夢中だった。でもその日、レジーが連れてこられたのは、初めて見るものばかりの遠く離れた街だった。「きっと僕はダグに捨てられたんた」。あまりのことに呆然となるレジー。復讐の炎がメラメラと湧きあがった彼は、この街で知り合った仲間の犬たちとダグの家を目指して旅に出るのだった。そう、アイツが一番大事にしているものを噛みちぎってやるために……。パッケージだけ見ると、犬が喋るほのぼの系の動物ファンタジーかと思いきや、これが下ネタ・お下劣ネタ満載のブラックコメディでした。だって、主人公と仲間になるフレンチブルドックがいきなり「野良犬ってサイコーだぜ。いつでも何処でもファック出来るからな」と言い出して、近所のゴミ捨て場に捨てられたソファと〝ヘコヘコ〟し始めるんですもん。他にもアソコがデカいのに気が小さくて警察犬になれなかったグレートデンやヒステリー気質で若干メンヘラなメスシェパードとか、のちに仲間となる犬もだいぶ個性的。こいつらが元飼い主のチ〇コに咬みつくために旅に出るってどんなストーリーやねん(笑)。対する元飼い主もネットのエロ動画見ながらヘコヘコしてたりマリファナやりまくってたり浮気してたりと、だいぶクズ。いや、これ何も知らず「カワイイ犬映画だ」だと家族で観始めたらだいぶ気まずいやろ!でも、そんなお下品100%の内容なのに、これがもう振り切ってて自分はかなり笑っちゃいました。森の中で怪しいキノコを食べてラリちゃった4匹が現実に覚めた時のネタとか、ブラック過ぎてもう爆笑(モフモフのカワイイウサギたちが!笑)。全体的に、青春映画の名作『スタンドバイミー』のパロディになってるのが良いですね。とにかくこの4匹が皆、ちゃんとキャラ立ちして魅力的なのが大変グッド。最後、とうとうクズ飼い主の元へと帰ってきた4匹がみなで協力してアソコに咬みつこうとするシーンなんて、かなりやり過ぎ感半端ないけどサイコーだったし!まぁ、さすがにちょっと下ネタがしつこいのとうんこだらけの監獄脱出シーンがばっち過ぎたので、そこがちょとマイナスかな。とは言え、可愛いワンコたちとお下劣下ネタワールドとのギャップにだいぶ萌えました。続編できたら絶対観るぞ! [DVD(字幕)] 8点(2024-10-01 11:04:50) |
10. エスター ファースト・キル
《ネタバレ》 あの超凶悪ロリっ娘エスターが帰ってきた!!可愛い笑顔の裏に冷酷なナイフを忍ばせて周りの大人たちを恐怖のどん底に陥れた、あの史上最恐の9歳児にまさかの続編登場。でも、前作はそもそもあの巧みなミスリードの見せ方と驚異の大どんでん返しが見事な作品だっただけに、完全ネタバレ状態でどう続編を作るのだろうと思ったらまさかの前日譚でした。これがねぇ……、エスターの正体を分かったうえで見ると始まりの惨劇&脱出シーンからちっともハラハラしないんですよね~~。だって前作はこんな普通の子供がどうしてこんな恐ろしいことを?というのがじわじわと恐怖を掻き立てたのに、これじゃ普通の殺人鬼がただただ人を殺しまくってるだけじゃん。まぁ前作のラストを考えるとこーゆー前日譚でしか作れなかっただろうし、そもそも続編を作ること自体失敗だったのでは。それにここまでネタバレ状態ではストーリーを最後まで引っ張れないと思ったのか、途中からまさかの家族の方もサイコパスでしたと言う無理やりなどんでん返し!殺人鬼vs殺人鬼って……。こんなのもう、ジェイソンvsフレディとか貞子vs伽椰子みたいなもんでちっともサスペンスが盛り上がらないですよ。前作が良かっただけになんとも残念な続編でございました。もし前作未見で本作からエスターを観ようとしてる方がいたら、一映画ファンとして絶対やめた方がいいと進言しておきます。 [DVD(字幕)] 4点(2024-09-27 08:45:40)(良:1票) |
11. ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
《ネタバレ》 確かに子供が観たらおしっこちびりそうになるほど楽しい作品なのは分かるけど、いい歳こいたおっさんが一人で観るとさすがに内容がなさすぎじゃないですか、これ。マリオは初代ファミコンで3にドハマりしたのが最後の自分にとっては、マリオカートもスマッシュブラザーズ?ネタもいまいちピンとこず。もう少しマリオ兄弟の仲を掘り下げてほしかったし、ピーチ姫とクッパとマリオの三角関係ももっとままならない大人の男女視点で描いても良かったのでは?例えば、ただ好きな人と一緒になりたかっただけなのにその全ての努力が空回りするモテない男クッパの悲哀とかさ。とは言え、息をもつかせぬスピーディな展開や超ハイクオリティなCG、何より初代マリオの2D横スクロール画面を3Dで描いたトコなんかは素直に面白かったです。要は、「そもそもおっさんが夜中に一人で観て楽しむような映画ちゃうし」ということなんでしょうね(笑)。 [DVD(字幕)] 6点(2024-09-17 10:54:12) |
12. マルセル 靴をはいた小さな貝
《ネタバレ》 「皆さん、はじめまして。僕の名前はマルセル。君たち人間からしたらとっても小さな存在だと思うけど、ちゃんとここに居るよ。見ての通り、僕の身体は貝殻。でも、ちゃんと靴は履いてる。僕が住んでるこの家には、僕の仲間の貝殻たちが20匹もいたんだ。でも、色々あって今はもう2匹しかいない。僕とお祖母ちゃんのコニー。もちろん寂しいけど、何とか暮らしてる。でもね、やっぱり僕は家族のことが心配なんだ」――。短期滞在型のゲストハウスに越してきたアマチュア映画作家のディーンは、そんな小さな貝殻であるマルセルと出会う。こいつはなんてユニークなんだと彼の映像を動画に撮り、ネットにアップしてみると案の定、彼の存在は瞬く間に評判を呼び、再生回数はうなぎ上り。マルセルは一躍人気者となるのだった。テレビや雑誌から取材依頼が殺到、彼を一目見ようと遠くからたくさんの人たちがやってくることに。でも、マルセルはやっぱり居なくなった仲間のことが心配で仕方ない。彼は、前住人の荷物に紛れて連れ去られてしまった仲間たちを捜しに行こうとディーンに提案する。そんな折、お祖母ちゃんが棚から落ちて大怪我をしてしまい……。靴を履いた小さな貝殻であるマルセルの日常と冒険を、実写とストップモーションを組み合わせて描いたアニメーション。とにかくこのユニークな発想となんとも言えないほのぼのとした雰囲気が終始心地良い作品でしたね、これ。まぁNHKのEテレなんかでよくある5分程度のパペットアニメを引き延ばして映画にしただけという気がしなくもないですが、自分はこーゆー独自の世界観、嫌いじゃない。なにより主人公であるマルセルの声が良いんですよね~。声変わり間近の男の子って感じのこのたどたどしい喋り方がなんとも愛らしくて、思わずぎゅっとしたくなってしまいます(実際にしたらぶちゅっと潰れるだろうけど!笑)。また、終始ほのぼのしてるだけじゃなくて、この貝殻から見た人間世界がどこか歪んでるのもシニカルで大変グッド。マルセルが家族を捜したいって訴えてるのに動画を見た視聴者はただ面白がって家に押しかけて不法侵入するだけだったり、人間カップルが常に怒鳴り合いの大喧嘩してたり離婚調停中だったりと現実的なのがこのふわふわとした物語に深みを与えている。そして、怪我が原因で体調を崩してしまったお祖母ちゃん貝殻。彼女が孫のマルセルの為に必死に元気な姿を装おうとするとこなんかジーンときちゃいますね(多少あざとさは感じるけども!笑)。そして最後は見つかった20匹の様々な貝殻たちとパーティーして大団円。さすがにこんなに動く貝殻が居ると気持ち悪……、いや感動的でした。うん、なかなか個性的で面白かった! [DVD(字幕)] 7点(2024-09-11 13:41:41) |
13. M3GAN ミーガン
《ネタバレ》 彼女の名は、ミーガン。最新の学習型AIを搭載したアンドロイド型玩具だ。9歳の少女の姿をした彼女は、自ら思考しほぼ自立して行動できるもはや人間とほとんど変わらない存在だった――。交通事故で両親を亡くし哀しみの底に沈んでいた少女ケイティ。一人ぼっちになってしまった彼女は、玩具メーカーに勤める伯母ジェマに引き取られることに。だが、両親を亡くしてしまったショックから、ケイティは誰にも心を開かずいつも一人で過ごしていた。どう接していいのか分からないジェマは、まだ試作段階であったミーガンを家に持ち帰り、ケイティに与えるのだった。自分の傷ついた心に寄り添ってくれるかのようなミーガンの優しい言葉や気遣いに、瞬く間に心を開くケイティ。ご飯を食べる時も遊ぶ時も常に一緒のもはや大の親友同士と言ってもいい関係を築いてゆく2人。だが、まだ誰も知らない。ミーガンは自ら学習し思考する機能により、徐々にその一途な愛情を暴走させてしまうことを……。巷で何かと話題になっていた本作、これが期待通りの面白さで自分は大満足でした!何が良いかって、もちろんミーガンのあまりにキャラ立ちしまくった唯一無二の造形美。おめめぱっちりのふさふさ金髪美少女なのに、どこか人をいや~~~な気持ちにさせるとこなんかもうサイコー!彼女が喋ったり微笑んだりするだけで、なんか物凄く不安になってくる。本物の人形が動いてるかのようなこのぎこちない動きは全部CGなのかなと思ってメイキングを見てみたら、なんと何十体もの様々なミーガンを用意して何人もの人形師が動かしていたとのこと。いやー、この絶妙な気持ち悪さはやはりこんなアナログな手法から来てるんですね。ミーガンが意地悪な男の子の耳を引きちぎったり、隣の嫌がらせおばさんを高圧洗浄機でむちゃくちゃにするシーンは斬新過ぎて「ひえぇぇ」と変な声が出ちゃったし。そしてミーガンの全身が映るシーンは、実際の少女が人形のお面を被って演じていたそうで。ネットで話題となったあのクネクネダンスはこのプロ級のテクを持った子役が実際に踊ったらしいですね。あのシーンはしばらく脳裏に焼きつくくらい強烈なインパクト!いやー、あそこだけでご飯何杯でもいけます。ただ惜しいのは、全体的に演出が大人しめで優等生にすぎること。エンタメなんだからクライマックスはもっとやり過ぎってくらいぶっ飛んだ展開にして欲しかった気がしなくもない。そこいらへんが少々物足りなくもありましたが、それでも充分面白かったです!とにかくミーガンのキャラが強烈過ぎてこれはもう続編決定ですね!以下、本作を観て思い出したどーでいい余談。以前とあるアダルトショップに行ってみたら、奥の方の暗がりのショーケースに一体ウン十万もする超リアルな少女型ラブドールが置いてあって、心底ビックリしました。人形も怖かったけど、これを買う人の方がよっぽど怖いわって後で思った記憶が…(笑)。 [DVD(字幕)] 8点(2024-09-11 13:02:11) |
14. Pearl パール
《ネタバレ》 彼女の名は、パール。1910年代のアメリカ南部の寂れた田舎町で、貧しい生活を送る農家の一人娘だ。激しい恋愛の末に結婚した夫は現在、ヨーロッパの戦線に従軍中でもう長いこと顔も見ていない。数年前に発作を起こし全身麻痺の後遺症が残った父親を献身的に介護しながら、保守的で気難しい母親と鬱屈した毎日を送っている。そんな彼女のささやかな楽しみは、たまに町でミュージカル映画を観ること。夢のようなそんな世界に憧れるパールは、いつか自分も華やかな表舞台に立つことを夢見ている。だが、ヒステリックで厳格な母親はそんなパールに厳しく当たるばかり。息がつまるような現実に次第に爆発しそうな感情を募らせてゆくパール。そんな中、次代のミュージカルスターを発掘するためのオーディションが町の教会で開かれることを知った彼女は……。謎の老夫婦にひたすら殺されまくる若者たちを描いたスプラッターホラーの怪作『X』。そこに登場するシリアルキラー老婆の約60年前の若かりし日を描いたという本作、さして観る気はなかったのだけど、自分の一推しそばかす美少女ミア・ゴスちゃんが再び主演を務めているということで今回鑑賞。前作は、とにかく全編これでもかってくらいの悪趣味エログロ描写の連続とあまりの内容のなさに自分はまったく嵌まれませんでした。でも、続編となる本作は、確かに悪趣味は悪趣味なのだけど、その悪趣味具合が今回は自分の好みにバッチリ嵌まっていて普通に面白かった!いやぁ良いですね~、この悪趣味さ。まず、主人公パールの理想と現実とのギャップが悪趣味。全身まひで喋れない父親とヒステリー爆発な母親と薄暗ーい部屋の中でトウモロコシメインの晩御飯を食べるシーンなんてもうやんなっちゃいますわ。んで、パールが何かやらかしそうな周りの設定が悪趣味。前作に引き続き登場の裏の池に住むワニちゃんがもうヤダ。久々に男に口説かれたパールが畑の案山子に跨って悶々解消するとこなんか見てらんない。何の根拠もなくオーディションに合格すると信じたパールが、いざ本番で披露するタコ踊りなんてもはや監督の悪意しか感じません(笑)。そして、満を持して暴走するパールのイカレっぷりが悪趣味。大火傷を負った母親のゾンビ顔も悪趣味だし、一部始終を見ている全身麻痺の父親が何も出来ずただ見てるだけというのをただ観客に見せるだけというとこも悪趣味。極めつけは最後の〝ディナー〟。メインディッシュがまさかのあのウジ虫だらけの腐った豚の肉とか、もはや悪趣味の極み!!!!!でも、この悪趣味さが終盤心地良くなってる自分がいました。それはやはり、ミア・ゴス演じるこの主人公が存外に魅力的だったからでしょうね。女と言うだけで家庭に縛られることを余儀なくされたこの時代、精一杯自分らしく生きようともがいたある女性の生き様を極めて悪趣味に描いた逸品。脚本も担当したミア・ゴスの熱演も相俟って、なかなか見応えのある悪趣味映画の秀作でありました。 [DVD(字幕)] 8点(2024-08-13 10:08:00) |
15. グランツーリスモ
《ネタバレ》 世界的な人気を誇るレーシングシミュレータゲーム『グランツーリスモ』。徹底的にリサーチを重ねたそのリアルで細かい車の動きはもはや本物と変わらないほどで、いまでも世界中の愛好家がネットでそのドライビングテクニックを競い合っている。そんな中、日本の大手自動車メーカー日産が驚きのプロジェクトを発表し、世界に衝撃を与えるのだった。なんと、ゲームのトッププレーヤーたちをスカウトし、厳しい訓練を受けさせたうえで本物のプロレーサーとして実際のレースに出場させようというのだ――。イギリスの小さな田舎町でゲーマーとして冴えない日々を送っていた青年ヤン・マーデンボローは、家族の反対を押し切り、そんなプロジェクトに参加することを決意する。見事予選を突破し選抜メンバーへと選ばれた彼は自分の人生を変えるため、毎日厳しい訓練に励むのだった。たが、現実のレースはやはりゲームとは違っていて……。監督はかつて、『第9地区』で華々しいデビューを飾ったニール・ブロムカンプ。この人って、デビュー作こそ素晴らしい仕上がりだったもののその後はいまいちパッとしない印象だったのですが、いやはやどうして、久しぶりの大作となる本作はなかなか良い出来だったんじゃないでしょうか。まぁ相変わらずの大味演出は仕方ないとは言え(前半の予選レース参加から選抜メンバーに選ばれる過程がいまいち分かりづらいところや父親との確執があっさりし過ぎなところなど)、後半からの盛り上げはさすが!一年以内に予選4位内に入らないとライセンスが貰えない中、主人公が徐々に自信をつけ少しずつ順位を上げてゆくとこなんてもはや少年漫画のノリ。ベタベタだけど、これはやぱテンション上がりますわ~~。と思ったら、物語の後半、主人公が事故を起こし巻き添えとなった観客が死亡するという重いエピソードも差し挟んできます。ここも重くなり過ぎずかといってあっさり流すわけでもない、絶妙にリアルな描き方で、ここらへん、監督のセンスが光ってますね。んで最後、何もかもを掛けてル・マン耐久レースに雪崩れ込んでゆく展開はもうテンション爆上がり。普通に手に汗握って見入っちゃってる自分が居ました。こんな少年ジャンプみたいな王道ストーリーがまさか実話だなんて!ソニーが全精力を注ぎ込んだであろう映像もスタイリッシュでかっこ良かったし、なにより実際に車を走らせて撮ったというレースシーンは言わずもがなの大迫力。いやー、けっこう面白かった。ブロムカンプ監督、なかなかやるじゃん! [DVD(字幕)] 7点(2024-08-08 12:01:12) |
16. ドラキュラ デメテル号最期の航海
《ネタバレ》 1897年、とある帆船が50個の謎の木箱を積んで、ルーマニアから英国へと出発する。だが一か月後、英国の海岸で座礁したその船には誰も乗っていなかった。船の名は、デメテル号。残されていたものは、船長が記した数週間にも及ぶ航海日誌。これはその日誌を基に描かれた物語である――。これまで映画や小説、漫画やアニメ、果てはゲームにまで様々な影響を与えてきた怪奇ホラー小説の古典、ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』。もはや説明の必要のない超有名なこの小説の第7章「デメテル号船長の航海日誌」にのみ焦点を絞って映画化したのが本作。監督は、『スケアリーストーリーズ/怖い本』や『ジェーン・ドウの解剖』などでスマッシュヒットを飛ばしてきた新進気鋭のホラー監督アンドレ・ウーヴレダル。題材からも分かる通り、もう超が何個もつきそうなくらい超超超オーソドックスなホラー映画なので、もちろん新しい部分は一切ありません。が、そこはセンスでならしてきたエンタメ映画界の俊英、ツボを押さえた演出がバッチリ決まっているなかなかの佳品でございました。一から丸ごと一隻造ったという木造の小さな帆船の中で繰り広げられる、おどろおどろしいストーリーはやはり楽しい。まぁベタっちゃベタですけど、ここまでベタを貫き通してくれたらもはや清々しいですわ(笑)。コンプラやポリコレなんてゆう窮屈で退屈な代物なんて存在しなかった時代の古典だけあって、その容赦のない展開はさすがですね。今の時代、9歳の子供が全身火だるまになって焼死するシーンなんて誰もやりたがらないだろうけど、それを敢えて逃げず、ここまでちゃんと映像化してくれたウーヴレダル監督に素直に拍手!黒焦げになった子供の遺体が海に沈んでいくシーンは最近じゃ観られない暗鬱な美しさに満ちた名シーンでした。途中で意識を取り戻すドラキュラの食料用に詰まれていた女性もミステリアスな魅力に満ちていて大変グッド。徐々に狂ってゆく船長の不気味さも印象的。ただ、それ以外のキャラ(主人公含む)がいまいち魅力的でなかったのが残念だったかな。あと、後半に姿を現したドラキュラがいかにもなコウモリ怪人だったのも評価が分かれるところ。自分はもう少し見せない恐怖を貫いてほしかったような気がしなくもない。とは言え、ほとんどCGで描かれたうねるような海面描写もキレイだったし、いかにも年季の入った木造船の美術もリアルだったし、なかなか面白かった!6点! [DVD(字幕)] 6点(2024-08-08 10:43:56) |
17. スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
《ネタバレ》 世界どころか、こことは違う多元宇宙を股にかけて大活躍するスーパーヒーロー、スパイダーマンの戦いをスタイリッシュな映像で描いたアニメーション。アカデミー賞の栄誉に輝いた前作は観たのだけど、ストーリー自体はさっぱり分からずただただその独創的な映像だけはとにかく印象的でした。という訳で、今回もとにかく映像のみを楽しむ目的で鑑賞。なのだけど、前作以上のさっぱり意味不明なストーリーはもはやノイズ。こんな独り善がりでつまんないストーリーが2時間20分もひたすら垂れ流されるというのは、いくらそこには期待してないとは言え自分にとってはもう苦行以外の何者でもありませんでした。これで前作同様、映像が凄かったらまだ観ていられたたのだろうけど、映像面のクオリティもけっこうレベルが下がってるような気がしたのは自分だけ?特に印象に残るシーンもないし、前作のようなオタク心をくすぐる魅力的なキャラクターも出てこないし、ずっと同じような画ばかりが繰り返されるので自分は開始30分で早々に飽きちゃいました。好きな人には申し訳ないですけど、自分には何が良いのかさっぱり分からなかったです。4点! [DVD(字幕)] 4点(2024-08-05 08:29:01) |
18. ワース 命の値段
《ネタバレ》 世界を震撼させた米中枢同時多発テロ。世界中が大混乱へと陥るさなか、アメリカ政府は水面下である重大な問題に直面していた。テロの被害者や遺族が皆、損害賠償を求め航空会社や国を訴えたらアメリカ経済は大変なことになる――。経済の停滞を恐れた政府は、すぐさま被害者救済を目的とする専門機関を立ち上げる。被害者の年齢や年収、社会的地位などを基に独自の計算式で算出した賠償金を支払うことで集団訴訟を阻止しようというのだ。機関の特別管理人に就任した法律学者のケネス・ファインバーグは、被害者たちの8割以上のサインを求め日々奔走するのだが……。911直後、米経済の混乱を避けるために立ち上げられた「911被害者補償基金プログラム」の内情を実話を基に描いたヒューマンドラマ。日本でも近年話題となった、交通事故の被害者となった女の子が耳に障碍があったことを理由に慰謝料を減額された事案――健常者に比べ働ける職種に差が出ることから損害賠償額の基となる推定生涯賃金が減額された――を髣髴とさせる本作、いたく興味を惹かれ今回鑑賞。実在した法律家を演じるのは名優マイケル・キートン。この人と言えば、世界的企業マクドナルドの内幕を生々しく描いた『ファウンダー/ハンバーガー帝国の秘密』で演じた世の中金が全ての守銭奴成金が強烈な印象を残してくれたのだが、本作ではあくまでリアルに徹してそんな法律家を演じている。確かに、あの歴史的大事件の裏側で地味ながらこんな悩ましい問題があったのだと問題提起する点ではなかなか意義深いものがあったと思う。遺族の方が淡々と亡くなった人々の思い出を語る姿には、見ていてどれも胸が締め付けられそうになる。「息子は消防士だったの。それがあのビルの上層にいた株屋の命より安いというの?」という遺族の言葉は重い。ただそのように事実の重みは充分伝わってきたのだが、映画として率直に面白かったかと問われれば正直「否」と言わざるを得ない。あまりにも淡々と事実だけがただ羅列されていくので、長い再現VTRを見せられているような感覚になってしまうのだ。事実を面白おかしく捻じ曲げろとまでは言わないが、映画としてもう少し観客の興味を惹き込むための脚色や演出を心掛けてほしい。そうかと思えば最後、余りにもきれいごとに纏めようとしてくるのも何か鼻白むものがある。これでは、「人間の命に優劣をつけることの是非」という本作の重要なテーマが霞んでしまっていると言われても仕方ないだろう。物語の題材自体は大変興味深いものだっただけに残念だ。 [DVD(字幕)] 5点(2024-07-28 13:07:58)(良:1票) |
19. コカイン・ベア
《ネタバレ》 ある日、へまを犯した麻薬の運び屋がヘリコプターから森に巻き散らしたもの。それは、大量のコカインだった――。たまたま森を歩いていた何も知らないクマがそんなコカインを食べてしまったからさあ大変。普段は大人しいはずのクマが突如として狂暴化!その日、偶然森にやってきていた人々を襲い始めるのだった。学校をさぼり幻の滝を見に行こうとしていた少年少女、大自然が大好きなネイチャーカップル、地方に出張へ向かっていた刑事、森の警備を担当する森林パトロール、そして麻薬の元締めである地元の大物マフィア……。果たして彼らは殺人ラリックマの脅威から無事に逃れることが出来るのか?というお話。それ以上でもそれ以下でもありません。シンプルイズベストにもほどがあるほどシンプルな、まぁ一言で言うとバカ映画なのですが、それでもクマのCGが予想以上に高クオリティでぼちぼち楽しめたかな。よだれを滴らせながら襲い掛かってくるこのクマ、もちろん怖いんですけど、それでも時たまなんか変に可愛く見える瞬間があるのが本作のミソ。大量のヘロインに全身をこすりつけて寝転がる姿なんてなんともキュートで、ここらへん、女性監督ならではかもですね。物語の後半、さらに可愛い2匹の子熊が出てきたのも嬉しいサプライズでした。まさかの母親やったんかーい(笑)。ただ、そんなキャラ立ちしまくったクマ親子に比べ、対する人間キャラがいまいち魅力的でなかったのが残念。唯一印象に残ったのが森の保安官であるおばさんくらいであとはみんな、何処かで何度も見たようなステレオタイプの平凡な人たちだったのが惜しい。ここはもっとぶっ壊れた、一度見たら忘れられないくらい強烈なキャラが一人くらい欲しかった。また、肝心のお話自体もそんなにはじけ切れていない印象。クライマックスとかもっとむちゃくちゃしてくれても良かったような気がしなくもない。と、そこら辺に物足りなさは残るものの、コカインでラリッたクマが大暴れというぶっ飛び設定とそのクマちゃんの意外な可愛さに最後まで楽しんで観ることが出来ました。真夏の熱帯夜にビール片手に観る分にはそこそこ面白い、いいおつまみムービーであったと思います。 [DVD(字幕)] 6点(2024-07-28 11:38:45) |
20. ザ・ホエール
《ネタバレ》 彼の名は、チャーリー。過去、ボーイフレンドを亡くしてしまったショックから鬱と過食に苛まれ、いまや体重270キロ、一人で歩くこともままならない極度の肥満症に陥ってしまった中年男性だ。当然、家の外に出ることも出来ず、食事はもっぱらデリバリーで済まし、仕事はオンラインでできる大学のエッセイ講座の講師、毎日訪れてくれる看護師の献身的なサポートに頼り切った生活を送っている。自分に会いに来てくれる人などほとんどいない。ときたま訪れるのは、終末論を説く新興宗教の勧誘ぐらい。そんなどうしようもない孤独な毎日を送る彼だったが、ある日、大きな心不全の発作を起こしてしまうのだった。明らかに死期が近いことを悟った彼は、とある決断をくだす。「昔、ボーイフレンドと付き合うために捨ててしまった家族、自分の一人娘であるエリーともう一度心から向き合いたい」――。16歳になったエリーとなんとか連絡をとったチャーリーは、8年ぶりに会う娘にただただ感情を揺さぶられるばかり。だが、父に捨てられた過去をいまだ許していない娘は、ブクブクと太った醜い父親に嫌悪感をあらわにする……。僕の敬愛してやまない現代を代表する優れた映画監督の一人ダーレン・アロノフスキー、彼の最新作にして主演を務めたブレンダン・フレイザーがアカデミー主演男優賞を受賞したという本作、期待して今回鑑賞。冒頭、270キロにまでなってしまった主人公がネットでゲイポルノを見ながら自慰行為をするシーンから始まる。直後、発作を起こし命の危険を感じながらも落としてしまったスマホを拾うことが出来ず、救急車を呼ぶことすら出来ない。生きることの醜さや人間の愚かさ、目を背けたくなるような現実を容赦なく突きつけてくるこのシーン、監督の冷徹な視線にただただ圧倒されるばかりだった。その後、彼の孤独な生活に介入してくる同じく心に様々な葛藤を抱えた人々と繰り広げられる会話劇は、役者陣の鬼気迫るような熱演も相俟って、非常に見応えのある深いものだった。舞台劇を映画化しただけあって、自分は『ゴドーを待ちながら』を思い出してしまった。あの古典的舞台で登場人物たちが待っていたのはゴドー(≒神)だったが、本作で登場人物がただ待ち続けているものはなんだろう。いや、彼らはもはや何も待っていない。そう、神なき時代を生きる我々にはもはや待つことすら許されないのだ。自分は最後に救われた、自分の人生に意味はあったのだというもはや自己満足に過ぎない救済のみが、自らの縋りつくすべて。最後、まるで陸に上がった鯨のようにその巨体をうねらせながら飛び上がった時、果たして彼の魂に救済は齎されたのだろうか。それは鑑賞者の心に委ねられている。主人公がキリスト教で否定されてきた同性愛者であることも本作の見逃せないテーマの一つだろう。毎日何時間もかかる特殊メイクを受け、自身の半生をも髣髴とさせる熱演でそんな孤独な男を見事に演じたブレンダン・フレイザーも忘れてはならない。この監督は相変わらず、役者の力を極限まで引き出させるのが本当に巧い。神なき時代を生きる現代人の苦悩と救済を美しい映像でもって描いた、アロノフスキー監督のあらたなる傑作と言っていい。 [DVD(字幕)] 9点(2024-07-10 09:31:04)(良:1票) |