3. 都会のアリス
船の上、幼い娘を抱えて鼻歌を口ずさむ母親、その娘と見つめ合い微笑むアリス、風になびく髪の毛、カメラを構えるフィリップ。他には何もいらない。もうそれだけで、この心は幸せに満ちあふれるんだ。なんとも健気で、なんとも無垢で、なんとも切ない。これは恋を恋と気付く前の少女の恋だろう。白と黒の映像、口少なげな台詞、優しいメロディ。あったけぇ。その全てがゆっくり胸に染み込んでくる。壮大な風景への開放感と離れ行く列車への寂しさが混在するラストシーンは、恐らく映画史上最も美しい。レンタカー、安レストラン、空港のトイレ、電車がうるさいホテル、証明写真、日光浴の公園...。何気ない光景たちがアルバムのように記憶に残る。きっと大人になったアリスの胸の中で、何より大切なものとして輝くのでしょう。 9点(2004-05-25 22:53:42)(良:1票) |