Menu
 > レビュワー
 > なんのかんの さんの口コミ一覧。2ページ目
なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2336
性別

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
評価順123
投稿日付順123
変更日付順123
>> カレンダー表示
>> 通常表示
21.  学校Ⅱ
後半、吉岡秀隆がクリーニング工場で勤め出してからのあたりが、山田監督お得意のところだ。無力感に負けそうになる青年。その前に発表会があって、心が広がり出してきたところでドンと世間が立ちふさがってくる。大きなしくじりをさせるわけでなく、些細な描写を重ねて、「もっと馬鹿だったほうが幸せだなあ」という言葉に至る、ここらへんがいい。“厄介もの”でも“無垢な天使”でもない、一人の人間としてのタカシが見えてくる。冒頭とラストに風船を配して、山場に気球を持ってくる。イージーではあるけど、そのイージーな“夢のような”気球が、現実の厳しさを際立たせた。ホテルで働く先輩が「我慢しなきゃ」を繰り返す。それが我慢を強いるものの存在を、また逆方向から際立たせる。あからさまな差別や偏見の描写をせずに、しかし親身になって他人のことをおもんぱかる暇のない“世間”を浮かび上がらせていく手際は、やはりうまいと思う。でも卒業式で先生たちが泣くのはよくない、少なくとも生徒たちの前では泣かないでいてほしい。
[映画館(邦画)] 7点(2009-05-22 12:06:46)(良:1票)
22.  貸間あり
主人公は周囲に重宝がられることの心地よさに安住してしまい、隣人たちのしたたかさに利用されていく。そういう主人公を聖人化せず、映画はちゃんと彼をも裁く姿勢を取っているところがいい。だから人情長屋ものにはならず、人々の間にあるヒンヤリしたものを描いているわけだ。それにしてもこの脇役陣の豪華さはどうだろう。掛け持ち妾をやっている乙羽信子の別れの儀式のおかしさ。益田喜頓もまだ後年の“いいおじいさん”になってなくて、悪意あふれる陰湿な人物を演じる、それがまた似合っている。アァァいう妻を持つ骨董屋の渡辺篤。密造酒の清川虹子が室内で体操するシーンの迫力。酒場でトマトジュースのおかわりを頼む加藤武。そしてもちろん隣人たちのしたたかさを代表する受験生小沢昭一…。なんて豪勢なんだ。
[映画館(邦画)] 7点(2009-02-26 12:11:26)
23.  学校の怪談4 《ネタバレ》 
冒頭の尋常小学校津波の場がなかなかいい。回転する舟、水を噴き出すポンプ、遠くの半鐘…。水がモチーフで、おっかない顔でおどかす妖怪は出てこないで、口承民話的な味で通す。その古いはずの味がけっこう新鮮だった、一人多い客、いつのまにか飲み干されているジュース…。亡霊は恨んではいなくて、中断された遊びをただ遊び続けようとする、そこが切ない。盆ちょうちんの町、ノートを並べただけのような小さな文房具屋、といった風物描写もいい。ラストの水没校舎のセットは作るの大変そうだったが、朽ちてないほうが私は好みだなあ。とにかくあくまで子どもたちの物語でありながら、子供だましではない仕上がり。
[映画館(邦画)] 7点(2008-11-27 12:12:10)
24.  壁あつき部屋
BC級戦犯の話。浜田寅彦って、単純な表現しかできない俳優と思っていたが、この映画では、とりわけ後半、素晴らしかった。申し訳ない。小沢栄太郎が「卑屈」とか「傲慢」を一対一対応で演じているのに対し、浜田はあらゆることを「思いつめる」人間を演じ、思いつめていながら、そこでは集中と茫然とが同居している。言葉で単純に表わせない心の状態を、体で表現する名演だったと思う。信欣三の壁にポコポコと穴が開く場もいい。あつい壁に穴が開いてもその向こうには自由ではなく罪が待ち伏せている、という追い詰められた感じ。戦争指導者もつまりは犠牲者だった、という現在もある粗雑な思考は、こんな頃からもうあったのだな(公開は56年だが製作されたのは53年)。
[映画館(邦画)] 7点(2008-10-08 12:11:42)
25.  からみ合い
なにせ『人間の条件』と『切腹』の間に作られた作品なんで、どんなかなあ、という興味があった。遺産をめぐりニセの跡取りを作ったりするだまし合いの話で、もっとコメディタッチにしたほうが収まりがいい題材だったかもしれないが、そこは小林正樹、そして重厚な大作の間の作品、正攻法で攻めてくる。これはこれでいいのだろう。重々しさというのも、そういうものがまったく尊重されなくなった現在から見ると、美点である。話のほうより、美術の戸田重昌の仕事が記憶に残っている。中央に水槽があり奥に二つ扉がある左右対称の部屋や、冒頭、岸恵子と宮口精二がはいる喫茶室など、セットを味わえる映画だった。戸田は以後も小林作品(『怪談』!)や大島渚作品(『儀式』!)で、重厚なセットの記憶を日本映画史に残していく。音楽が小林作品で初めての武満徹、本格的なジャズであった。
[映画館(邦画)] 7点(2008-10-07 12:19:37)(良:1票)
26.  鍵(1959)
心理ゲームに焦点が当てられた原作に比べ、これはややマジになってしまっているのではないか。たとえば仲代達矢が現像して、ややっこれは、と目を剥いて驚くのはどうだろう。あれがあると全く無関係にポラロイドカメラを提供したことになり、ゲームの幅が狭まってしまう。表と裏とを際限なくひっくり返し続けるような、本心を見せない陰気な遊びの味わいが薄れた。竹林のざわめき、瓦屋根、不意のストップモーション、暗い部屋、横からの光による影、といった崑お得意のショットには堪能。長調と短調を同時に鳴らしているような、芥川也寸志の音楽。
[映画館(邦画)] 7点(2007-12-14 12:22:59)(良:1票)
27.  カミュなんて知らない
若いころ、池袋に出たときはしばしば学生のふりして立教の学食でカレーを食ってたもので、懐かしかった。大学の交響団員が練習してるシーンなど、大学というところのリハーサル的な緩さが感じられた。壁がはっきりしてない感じ。ただ事件と映画づくりの絡みがピシッと来ない。このころの映画では『光の雨』もそうだったが、題材を映画メイキングものにして逃げてしまっているみたい。事件を映画化しようとしている意味を絞りきっていない。本作の場合、終わりのロケの場になってやっと柳町らしい緊張が出てきた。この人は正攻法の映画で帰ってきて欲しい。長回しはお遊びの域。
[DVD(邦画)] 6点(2013-11-14 10:47:33)
28.  ガス人間第一号 《ネタバレ》 
日舞の家元とガス人間と銀行強盗との三題噺、って感じで、家元とガス人間の悲恋、ガス人間銀行強盗のスリラーってのはそれぞれドラマを構成できてるんだけど、家元と銀行強盗がどうもトーンとしてつながってない。いえね、東宝はいつもキャバレーを背景にしてて、たまには古典芸能で別の味を出そうか、という新しいことやってみる冒険は立派よ。最初に荒れ屋に八千草薫が登場するあたりは悪くないんだけど、どうもなあ、家元が発表会を出来るようにガス人間が銀行強盗をやる、って展開はなんとも不安定。映画におけるミスマッチってのは、どちらかというと好きなほうで、よくやったと誉めてもいいんだけど、後半ヘンに湿度が上がってしまう。新しい冒険をしたようでけっきょく古い型に寄りかかったというか。銀行強盗もそうだよな。社会的犯罪を絡めなくちゃいけない、という決まりが東宝社内にあったのかな。事件だけならまだいいのよ。中盤で土屋嘉男が自首してくるあたりはすごくいいし、その後の銀行での事件の再現もワクワクさせる。胸に手を当てて精神統一するポーズもいいな。ふんわり浮き上がった札束がこちらに飛んできてバラけるの。でもそういったことが、日本舞踊の発表会を成功させるためってのには、どうも無理が感じられるんだ。せっかく化け物にされた側から描いているのに、即犯罪者に仕立てるのはどうなんだろう。あと一つ、ガス人間を出せとわめく発表会場の乱入者たち、ガス人間の落ち着き・紳士的と対比させたんだろうが、なにもあんなチンピラにしなくてもいいのに。あそこは普通の「良識ある一般市民顔の人々」にしたほうが、効果がある場面じゃないか。
[DVD(邦画)] 6点(2011-10-05 10:09:28)
29.  学校
やっぱり作品が生まれるにはタイミングってものが必要で、これはそれを逃しちゃったような気がする。一日の授業のストーリーにするより、順を追ったほうが良かったのでは。一日にするのなら、もっとディスカッションを中心に持ってきて、その中でそれぞれの背景を見せるという手もあったはず。前半あまり鮮度がないんだなあ。陳列しただけってとこがあって。いっそ、イノさんだけに絞ったら良かったんじゃないか。おずおずと尻込みしながら、学びたいという衝動が膨らんでくる。そのベクトルがこの作品のテーマでしょ。山形へ去っていくイノさんの目に映った東京、あそこがポイントなんだから1分ぐらい延々と彼の目を通した東京風景を映すべきところを、「イノさんの目にどう東京は映ったのでしょう」なんて無粋なナレーションが入ってしまう。教室では「幸福って何だろう」いうディスカッションになって、青年が「幸せだと思ってたのなら可哀想だ」と言うのは、「寅」でヒロシが母親の葬儀で言ったセリフのヴァリエーションだな。山田洋次における「可哀想」の原風景。
[映画館(邦画)] 6点(2011-04-29 10:02:09)
30.  関東無宿
松原智恵子はどこ行ったんだ。時代がよく分からない。物語で捉えようとすると変なまとまりのない話で、清順監督でなかったら、そのことだけでダメって言っちゃうんだけど、それが魅力になるから困るんだ、この人。親分もきたねえ、子分もきたねえ、と一人で嘆いている男が主人公なの。面白かったのは、ドンツクドンドンツクツクのリズムがだんだん激しくなっていって、中原早苗の危機と重なるところ。伊藤雄之助とのサシでの花札勝負もいい。一番の見せ場は、やはり賭場を荒らされて逆に斬るところね。歌舞伎的な趣向だもんで、ロングの舞台風の画面が生きる。どこか安っぽさがつきまとうんだけど、この監督は「安っぽさ」を突き詰めようとしているところがあって、それがちゃんと滲みてくるときもあれば、ただ軽く見えてしまうときもある。監督のしたり顔がスクリーンの背後でちらついて見えてしまったりするとダメ(伊藤弘子とのシーンで、外だけ照明が落ちたり中だけ落ちたりする心のうつろいも似たようなもの)。もうちょっと見せ場を長くしてクラクラさせるとこまで行ってくれればもっと良かった。
[映画館(邦画)] 6点(2011-02-16 12:26:20)
31.  火宅の人
一番良かったところは、警察署でいしだあゆみが原田美枝子のおでこを叩くとこ。頬を引っぱたかないで、「めっ」って感じなの。フトコロが深いという表現でありながら、変に悟った感じを伴わず、滑稽さで対象化しちゃってるっていうか。ラストの「あなたのすることはみんな分かってんのよ」なんてとこは、そのセンスに欠けて、もひとつ鮮度が落ちてしまう。もちっと時代がプンプン匂う映画を期待したが、流行歌も出ず、そういう趣向の作品ではなかった(音楽は最悪だった)。あたりにどれだけ迷惑をかけても、そのことを自覚していればそれだけで許してもらえるんじゃないか、という甘えた男の話なんだけど、でもこれ、日本文化の一つの型なんだろうな。上方歌舞伎に出てくる放蕩息子の末裔って感じで。放浪って言っても厳しいものじゃなく、遊山の変形みたいなもので、金がなくなりゃ帰ってこられる家がある。それをただ甘えと否定してしまわず、そういう弱さを認め合ってしまうような土壌(本当はそれをこそ否定しなくちゃいけないのかも知れないが)、そういう文化の風土が描かれている。それはただの男尊女卑になってしまうこととは、微妙な差があるようなんだけど。夫婦の間での丁寧な言葉づかい、冷え切った感じを出すのではなく、ちょっとゲームみたいな感じを出していて、いい。
[映画館(邦画)] 6点(2011-01-28 10:19:28)
32.  限りなき舗道
原作が通俗小説ってこともあるんだろうけど、ここに展開する「地道」観ってずいぶん堅苦しい。いいとこに嫁いだって女優になったって、地道な暮らしはできると思うんだけど、弟の面倒見ながらカフェで働かないと「地道」とは言えないらしいの(なんか寅さんの説教みたい)。傾向映画の影響かね。映画会社に入ることがやくざな生き方だ、と映画で言っているこの屈折。一番嬉しかったのは銀座の町並みだな。オバアサンが立ってるカットが良かった。スポークンタイトルのバックにも夜景が使われたりする。嫁いだ家での視線の交錯はかなりドラマチック、あおって天井を映したりもする。自動車事故で話が展開するとこ・男が二人とも実にだらしないとこが成瀬らしいとは言えるが(そもそもこの時代、交通事故という都合のいい手段が小説家たちによって発見されつつあったというだけのことか? かつての「肺病」のように)、あんまり気合いの感じられない作品。それもそうで、どの監督も引き受けないのでたらい回しされてきた企画だったそう。でやんなって、これを最後に松竹からPCLに移る。そういう意味では成瀬にとって記念すべき作品ではある。
[映画館(邦画)] 6点(2010-10-15 09:54:55)
33.  帰って来たヨッパライ 《ネタバレ》 
大島における“少年”ってのは重要。デビューが原題「鳩を売る少年」だったし、『飼育』がそうだし、大川橋蔵は少年に見えなかったけど天草四郎ってのも抵抗する少年ですな。『少年』はそのものズバリ、『儀式』の少年も重要だった。『戦場のメリークリスマス』でデビッド・ボウイの弟に異様にこだわったのも、この流れでいくと納得がいく。つまり本作で一番印象に残ったのが密航韓国人少年の顔だったってこと。希望と挫折と反抗とが少年の顔の中に同居しているところが好きなんじゃないか、大島さん。少年が出てくるとリリシズムが出てくる。ベトコン射殺の写真がモチーフになっており、いかにもチャラチャラした日本人がアレヨアレヨとベトナムへ送り込まれていくあたり、当時はもっとブラックなユーモアが醸し出されていたか。密航者はいないかとピリピリしてる日本の沿岸の空気を描いた作品てのは珍しく、その方向で具体的な日本批判を試みたほうが、抽象的な日本人・韓国人論を展開するよりも、実があっただろう。「あなたは日本人ですか」式のインタビューはあまり成功してなかったと思う。殿山泰司がタバコ屋のオバサンになってた。
[映画館(邦画)] 6点(2010-06-19 11:54:26)
34.  ガキ帝国 《ネタバレ》 
ワルの階層というのがよく出ている。また、こういうふうにワルくなっていくんだなあ、というところも納得いく。ヒョイと死んでしまうとこなんかリアリティ。朝鮮人の友だちの改造拳銃や、リフトで車に突っ込んだところなど。「俺、歌手になりたかった」なんてのは、いらぬ技巧でしたな。つくりには粗いとこもあるけど、この三人組の仲間仲間してる感じがいい。とくに三人目のが「しっかりしてる」んだな。いろいろ寄り道しているようでいて、自分をしっかり捉えている。だからといってクールなのではなく、友の死ではホットになれる。実に好青年であった。言葉の凄味にも期待したんだけど、それほどでもなかった。
[映画館(邦画)] 6点(2010-02-04 12:02:37)
35.  街燈
旗照夫のシャンソンが流れて始まる。落とした定期券から、銀座のブティックをめぐる人間模様の話へ広がり、合い間に学生小沢昭一が笑いをとっていく。銀座の記録としては、火の見やぐらから火事を発見するシーンがあった(火事のシーンは、特殊技術がなかったせいか消防法がうるさくなかったのか、結構迫力)。まだ靴みがきの子どもがいた(みがくシャッシャッという音がドラムの、あれ何て言うの、さきっぽが金属の小さなほうきみたいになってるヤツ、あの音になっていく)。中原早苗のことを子どもたちがパン助みたいな格好だと言った。昭和30年代前半はまだまだ濃く“戦後”であったのだ。そして銀座という街が、単なる背景でなく、こういう人間模様を織りなすのに適した場所であったのだなあ。
[映画館(邦画)] 6点(2009-09-02 11:57:38)
36.  かごや判官
チャンバラより推理ドラマ仕立ての体裁。けっこう戦前って推理ものの時代劇が盛んだったんだ。戦中の名作、マキノ正博の『待って居た男』なんて現在の推理ドラマよりはるかに出来がいい。もっともこれはあんまり期待しないでね。推理より演出。死体からカメラが動いて、塀を乗り越え、外で騒いでいる町人にまで移動していく、なんて同時代の溝口健二というより、半世紀後の相米慎二を思わせる。取り調べでしゃべる女の声に合わせて、回想画面の人物の口が合う、なんてのもかなりシャレている。演出として成功しているかどうかは別にして、楽しい。長屋での権三の夫婦げんかと、助十の兄弟げんかがパラレルに描かれたり。このころは時代劇もモダンの風に吹かれていたのだ。もちろん歌も歌う。馬鹿が愛嬌の江戸町人。でもこの作品の製作は江戸でなく、松竹京都創立15周年記念映画。
[映画館(邦画)] 6点(2009-04-23 12:00:14)
37.  母べえ 《ネタバレ》 
浅野忠信がいい。どんな役でもこなしてきた人だが、でもだいたい何か複雑さを秘めて、一緒にいると気が休まらなさそうな人物が多かった。今回はその正反対の、一緒にいると気が休まりそうな人物で、それに合わせて演技の質感そのものも変えてしまっている。今まではヴァイオリンでいろんな曲を奏でてきたが、今回はヒョイとクラリネットに持ち替えて吹き出したような。愛を秘めたインテリって「寅」でもいろいろ出てきたし、その前の『愛の讃歌』の有島一郎など繰り返し描かれた無法松型モチーフで、監督が一番感情移入しやすいタイプなのだろう。「寅」のヒロシにも通じている。鶴瓶に「かなりデリカシーを欠いた発言でしたね」なんていうセリフ、どこかでヒロシが寅に言ってなかったか。で作品だが、正論を言えない時代のつらさを描くのに、「嫌な世の中になりましたな」といった正論発言で話を進めていくところがあって困る。相互監視社会の息苦しさは、ハナっから悪役の特高より、その相互監視する庶民の描写を徹底することでしか描けない。描写もあるが、ときどきはいるナマなセリフが、描写を説明で打ち消してしまう。かえって差し入れの本の書き込みを黙々と消しゴムで消す作業のあたりに時代を一番感じた。ラストは母べえの持続していた無念を言いたかったのはよく分かるのだが、それが愁嘆場のせいで取って付けた印象になってしまい、かえって最期の言葉を淡々とナレーションだけで伝えたほうが、ザックリ迫ったのではないかなあ。山田監督作品では、エンディングで時代を飛ばし、それがどうもうまく着地できないものが多い。コミカルな一挿話と思わせた山ちゃんのアップアップが、あとで厳粛に反復されるあたりのシナリオ構成は、ほんとにうまいのだけど。
[DVD(邦画)] 6点(2008-11-28 12:23:14)(良:1票)
38.  河童のクゥと夏休み 《ネタバレ》 
前半は『小鹿物語』『E.T.』の路線で、まあそうだろな、という方向に進んでいく。クゥの語り口が、なんとなく渡世人を思わせるので(「おめえさまたちにゃ世話になった」)任侠路線的に進んでも面白いのじゃないか、と思っていると、一家がマスコミに振り回され出し、おっ、一宿一飯の恩義で暴れ出すぞ、と期待高まり、怒りによって烏を爆殺し、さあいよいよ大魔神に変身か、空は曇りだし竜神は舞い、…しかしそれまでであった。かわいいクゥはかわいいままで保護され続けるのであった。自然はあくまで危険のないものなのであった。物足りない。どうもドラマとしても展開に雑なところが散見され、すぐに家族共有の秘密になってしまったり、手紙一枚で箱詰めにして送っちゃったり、ギクシャク。それでいてコンビニの店員との視線のドラマはていねいに描き込んでいる。なんか惜しい。まあ“オッサン”のシーンでは嗚咽してしまったけどね。
[DVD(邦画)] 6点(2008-10-13 12:18:45)(良:1票)
39.  歓呼の町
どこに行っても日の丸の下ということで同じじゃないですか、だからみんな明るく疎開しましょう、という戦中の時局PR用映画。疎開を渋る四家族が「心を入れ替えて」疎開に応じるまでの話、あくまで庶民レベルで進行する。シーンが変わるときに人物の出入りを重ねて、スムーズに群像劇を進行していくあたりの手腕が見どころか。いいところのお嬢さんさえ郵便配達をして働いている時局だから、わがままはいけない、というあたりの論理に日本人は弱いんだ。事故死という犠牲者が出ても、だからこそ頑張ろう、になっちゃう。安部徹が、洟をかんでは顔を拭こうとするのを若妻が嫌がる、なんてスケッチが木下らしいと思ったが、脚本にはタッチしていなかった。町会長の勝見庸太郎って『秀子の車掌さん』の社長の人か、この役者さんいいなあ。
[映画館(邦画)] 6点(2008-09-19 12:18:56)
40.  壁男 《ネタバレ》 
ホラーの棚にあったけど、ホラーを期待して見るとがっかりする。一本の映画としても盛り上がりに欠けるが、でもなんか面白そうなとこの周辺を回ってはいるんだ。なんで小野真弓なんだよ、と誰もが思うだろうけど、いかにもテレビメディア的な人ってことでの起用で、これは理解してやりたい。テレビは非日常的なことを連日取り上げることによって、一番日常的な光景を作り上げている。それぞれの家庭が部屋の壁を厚くして閉じ籠もり、必要以上になれなれしく語りかけてくるテレビのレポーターに向かい合っている。私たちの日常生活はメディアと壁に挟まれて営まれてるんだなあ、という発見。なんか映画はそこらへんを巡ってはいるのだけど、も一つ焦点を結んではくれなかった。レポーターへの親しみが狂おしいまでに高まる青年もいれば、ノーマン・ベイツのお母さんみたいのもいて。
[DVD(邦画)] 6点(2008-09-10 12:13:33)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS