21. CASSHERN
《ネタバレ》 これほどまでに悲哀と残酷さに満ちたヒーロー映画がかつてあっただろうか。そのあまりに過酷なヒーローの運命に対し、予想を覆された僕は大いに戸惑ってしまった。しかし、残酷な環境を打開すべく、自らの悲しい運命を打開すべくために立ち上がったヒーローの厳しい宿命としてこれほどふさわしい物語はない。常軌を逸するほどのビジュアルセンスで描かれた鮮烈で秀麗な映画世界は現実とはかけ離れているが、描かれる人間たちの悲しさ、テーマとして語られる人間の憎しみの螺旋の本質は限りなくリアルであった。そう、アニメ版「キャシャーン」と同様に作られていたヘルメット(ソーラーメット)をこの映画の主人公はついに被ることはなかった。それはこの映画のヒーロー:CASSHERN、しいては敵キャラも含めたすべての登場人物がただの人間であること、そしてこれが生身の人間たちの闘いであるということの象徴に他ならない。新進の映像作家が撮り上げたこの処女作を「散々たる」と安易に酷評することは実に容易である。事実、改善すべき箇所は大いにあろうが、僕はこの映画世界に溢れる確固たる厳かさにも似た空気感に圧倒されずにはいられなかった。 [映画館(邦画)] 10点(2009-05-05 18:42:07)(良:1票) |
22. キサラギ
自殺したマイナーアイドル“如月ミキ”の一周忌に集まった曲者ぞろいの5人の”ファン”たち。 全編通してまんべんなく“笑い”を散りばめつつ、密室の中でアイドルの死の「真相」を突き詰めていく様は、「12人の優しい日本人」を彷彿とさせる。と言えるほど、よく練られた設定がスバラシイ。 5人のキャラクターそれぞれが立っていて、それぞれのキャラクター設定や、伏線となる言動が徐々に結びついていく様に、登場人物たち同様にハッとなる。それがサスペンスとしても心地よい快感となり、どんどんのめり込んでいけて、とても楽しい。 ストーリーやサスペンスとしての伏線自体は、実はとても安直なもので、それほど突き詰められたものではないのだけれど、愛すべきキャラクターと映像世界が、トータル的に「良い映画」として仕上げていると思う。 最終的に、観客も“如月ミキ”ファンになってしまうような、そんな愛着感こそ、この作品が映画として「スバラシイ」と言える最大の要因だと思う。 惜しむらくは、宍戸錠の出演はお宝DVDの中だけでとどめてほしかった。 5人揃って“見事”な振り付けを披露するファンキーなエンディングで幕を降ろしてくれていた方が、よっぽど映画としての後味が優れていたと思う。 [映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2007-08-12 19:15:10) |
23. 気球クラブ、その後
かつて「気球クラブ」というサークルに集った若者たち、サークルのリーダーの死をきっかけにし、彼らが当時内に秘めた様々な想い、今なお続く想いを、“過ぎ去った時間”を通じて切なく、断片的に描いていく。 過ぎ去った時間の中で彼らが見ていたものは、何だったのだろう。 たぶんそれは一つではなく、本人たちも明らかにできないくらいあやふやで、不確かなものだったのだろう。 誰もその時の自分の「想い」を正確に説明できなどしない。 ただ、だからこそ、その時間の中での「想い」には価値がある。 大切なのは、振り返り答えを見出すことではなく、かつての「想い」と再びそれに触れた「瞬間」そのものだと思う。 言葉ではなかなかうまく説明できないけど、この青春群像劇が伝えることは、誰しもが経験する過去の想いに対する「感覚」なのだと思う。 P.S. 永作博美が、ほんとに素晴らしい。 [DVD(邦画)] 8点(2007-07-24 23:37:47) |
24. 嫌われ松子の一生
「不幸」。とにかく「不幸」。映画の90%以上は、松子という“運命”に嫌われ続けた女の「不幸話」である。独特の美しいビジュアルと、特異でユーモラスな演出に彩られてはいるが、時に胸クソが悪くなるほどに、この物語は“不幸せ”に溢れている。あとほんの少しアプローチが間違っていれば、「大嫌い」な映画になっていたかもしれない。だが、ラストの描写では涙がにじんだ。 松子がどうしてこんなにも「不幸」であると同時に、「美しく」見えるのか。それは彼女が誰よりも、小さな小さな「幸せ」を望み続けたからだと思う。 主人公の女の「不幸」と、それを彩るミュージカル。そして、主演女優と鬼才監督の確執。映画のテンションとテーマ性はまるで違うが、この映画は日本版「ダンサー・イン・ザ・ダーク」だ。 これほどまでに、美しさを携えて、「不幸」に汚れられる女優は中谷美紀しかいない。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のビョークと同様に、彼女が途中降板しなかったことが、最大の「幸福」かもしれない。 [映画館(字幕)] 8点(2006-05-29 19:07:15) |
25. キル・ビル Vol.1(日本版)
「レザボア・ドッグス」「パルプ・フィクション」でクエンティン・タランティーノが絶大な評価と人気を得た最大の要因は、ズバ抜けたセンスのセリフだったはずである。しかし、今作は「日本」というイメージに固執するあまり、日本語を多用しすぎたのではないか。よってタランティーノ節とも言えるハイテンションな会話シーンはほとんどなく、やりすぎ感満載の殺陣シーンのみが際立つ結果となってしまった。冒頭の復讐シーンや全編にわたる細かい演出には、タランティーノらしいハイセンスさがあっただけに、全体的な評価が非常に難しい。ただ確実に言えることは、今作は一つの映画を2つに分けた第一作目である以上、決して完成には至っていないということだ。待ちに待った鬼才の新作を簡単に「つまらない」と言ってしまいたくないという気持ちもあるが、今はvol.2の公開をただ待ちたい。 [映画館(字幕)] 7点(2005-05-29 14:59:35) |
26. 斬る(1962)
三隅研次の陰影を浮き立たす映像美は流石に素晴らしい。が、なんなんだこの脚本は。陳腐な台詞まわし、滅裂な展開、随所に見られる映像の秀逸さを覆い隠して余りある酷さだった。主人公は何をもって行動しているのかがまったく描かれていない。娯楽なのか、ドラマなのか、物語の真意が何もつかめない展開に苦痛を伴う。 2点(2005-01-24 15:32:01) |
27. 金(キム)の戦争<TVM>
世に言う金嬉老事件を描いたドキュメントドラマ。社会を恨み、日本に対抗した金嬉老の生き様をビートたけしが色濃く演じる。彼の哀愁と怒りが痛々しく伝わってくる。 6点(2004-03-28 12:34:57) |
28. KYOKO
村上龍の同名小説を自身が監督として映画化した作品。私は、原作を読んでいてこの作品の世界を熟知していたのでわりとすんなりと観られたが、原作を読んでいないと若干説明不足かなという印象はあった。ヒロインのキョウコはとても魅力的な人物像として原作では描かれているだけに、映画化においてはその配役が最重要点であったであろうが、主演した高岡早紀は良い演技を見せたと思う。 6点(2003-11-27 15:38:32) |
29. 君を忘れない FLY BOYS,FLY!
キムタク主演のせいでどうもアイドル映画っぽいイメージを持っていた作品だったけど、実際にはよく出来た脚本とキムタクも含めたキャスト陣の良い演技でなかなか感動深く仕上がっていた。ただ映画でありながら映像的迫力はあまりなく、テレビ的な雰囲気に終始してしまっていることは否めない。 6点(2003-11-18 14:53:24) |
30. CURE キュア
黒沢清の映画は、設定やストーリーは興味深く勇んで観るのだけれど、結果的には「?」というものばかりだ。今作においても、題材はとても好きなんだけど、その描き方は暗く退屈で分かりにくく、観ていて非常に疲れた。新作「トッペルゲンガー」ですか、これも題材は非常に面白そうなだけに出来栄えが不安だ。 1点(2003-11-18 11:31:59) |