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コメント数 1963
性別 男性

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301.  少年時代(1990) 《ネタバレ》 
父親の都合により東京から富山へと疎開してきた少年進二とガキ大将武との交流、友情がテーマである。また、何だか観ていて今の政治の世界や戦国時代の戦いを見ているような感じもする。ガキ大将と恐れられ、一人じゃ何も出来ない連中がもう一人の少年須藤というこの人物の方へと寝返りをする。つまりクーデターを起こしてそれまでは見方だった仲間に裏切られボコボコにされる武の姿は正に戦国時代の戦いのようでもあり、現在の政治の世界のようでもある。まるで独裁者の如く、それまでの地位を追われても進二との友情を捨てなかった武こそ、男の中の男であり、他の誰よりもかっこ良いし、男らしい。進二が最初に仲良くなった武だが、自分に付いてくる他の仲間、弱気者達の前では進二に対しても冷たい態度を見せたりするものの、進二と二人きりの時には他では見せない表情を見せる。進二と二人きりでボートに乗り、海へと出かけるシーンや進二の話を食い入るように聞く姿など他にも進二と二人の時の武こそが本来の武の姿である。それは進二にもよく解っているからこそ二人の友情は最後まで途切れることなく続くのである。ラストの駅のシーン、列車内から見える武の進二の乗せた列車と横に並ぶようにして追う武の姿、本当の親友との別れ、井上陽水の名曲「少年時代」が流れ、映し出される二人が撮った思い出の写真に映っている進二と武の表情こそがこの映画を物語っている。そしてこの映画を観てやはり感じたことは篠田正浩監督という人は「瀬戸内少年野球団」が少年というものを上手く描いてるのと同じで下手に時代劇やらアクションものなどは撮らずに少年を描いた作品を撮る方が上手いし、持ち味が発揮されるように感じる。今の所、私にとっては篠田正浩監督の映画の中ではこの映画が一番です。
[ビデオ(邦画)] 8点(2009-10-05 20:52:34)(良:2票)
302.  その木戸を通って 《ネタバレ》 
昨年亡くなった日本を代表する名監督の一人である市川崑監督がまだまだ元気であった時代、今から16年も前の1993年に撮られていながら劇場公開されることないまま市川崑監督はこの世を去ってしまった。幻の名作と言われるこの作品、ようやく観ることが出来ました。噂通り、市川崑監督らしい美しい映像の世界、多くを語らず、観る者に想像させる力を与えてくれる。これが映画本来の持つべき形であることを市川崑監督はよく解っている。映像の力、映画ならではの光と影、この使い方、コントラストのバランスの上手さこそが市川崑監督の上手さであるものがここでも見られる。冒頭のあの闇の中、緑の竹林の現れる瞬間の美しさ、そして、主人公の姿が現れる時のこの場面の美しいことといったらない。最近の映画ではなかなか見られないぐらいの美しい映像美、あとはただただ物語りに集中するのみである。中井貴一演じる主人公の演技がややぎこちなく感じられるものの、それをカバーするだけの脇を固める俳優陣の中でまるで「かぐや姫」の物語に出てくるような女性、何ともミステリアスなふさを演じている浅野ゆう子の初々しさ、テレビドラマでしか知らない浅野ゆう子とは違う女としての色気と可愛さをここまで表現して見せているとはびっくりさせられた。この浅野ゆう子を観ると女優を生かすも殺すも監督の腕次第であることがよく解る。作品全体の何とも不思議な怪しさ、それは言葉では表現するのではなく、映像によって見せる市川崑監督の上手さ、ラストの余韻、見終わった後の余韻の残し方などは映画でしか観ることの出来ない余韻です。そうそう、市川崑監督作品にフランキー堺というこの大変珍しいキャスティングもこの作品を興味深いものにしている。大掛かりなチャンバラ時代劇を期待する人には向かないと思うけど、日本的な香り、映像を楽しもうという人にはお薦めの作品です。そして、やはりこの作品の雰囲気は「かぐや姫」を思わずにはいられない。
[DVD(邦画)] 8点(2009-09-22 23:02:01)(良:1票)
303.  台風クラブ 《ネタバレ》 
狂気!狂気!狂気!映画全体に只ならぬ狂気が充満している。まずはいきなり夜のプールでの訳の解らないダンスで始まるのには驚かされた。この訳の解らなさこそがこの映画の主人公である彼ら、彼女ら中学生の大人への不満、大人になりたいけど、大人にはなれない中学生の有りのままの姿であると思う。奴らにとっては大人社会への不満以上にこれから先への不安の方が多いのである。だからそんな不安を取り払おうとする為に大人には理解できない行動ばかりをするのである。夜のプールでの踊りに始まって、授業中にいきなり鼻血を出す奴もいるし、いきなり女子生徒に対してケガを負わせたり、二人きりの校舎内で襲いかかったりと、やってくる台風と同じように物凄い危険性を感じさせる。相米慎二監督はこの台風の襲来する風景の中にある日常的で且つ、非日常的な両面を見せることでこれから先の不安というものを暗示させ、そして、観る者にどうすればその不安を消すことが出来るのかという答えを考えさせようとしていたと私は思います。ラスト、台風が去った後の学校のグランドでの工藤夕貴の姿には他の生徒とは違う普通のままの姿を観ることが出来る。作品全体に漂う不安定な感じこそが監督の狙いだとすると、相米慎二監督という人の持っている人間的観察力の鋭さ、どこから見ても破錠しまくりの映画的なスリルとリアルさを両方持ち合わせた凄い映画だ!本当は9点でもいや、10点でも良いとさえ思える凄い映画だが、個人的好みという意味ではどうしても9点以上は付けられない。しかし、何度も言うように凄いスリルとリアルさを持つ映画である。
[DVD(邦画)] 8点(2009-09-08 22:00:33)(良:1票)
304.  銀嶺の果て 《ネタバレ》 
これは黒澤映画=黒澤映画と言えば昔の日本映画ファンにとっては明で決まりである。の特徴である男と男のドラマであり、役者の魅力に尽きる映画と言っても良いぐらい三船敏郎のギラギラした悪人ぶりとそれとは対照的に心優しき悪人でありながらも一人の可愛い女の子の前に人間的な心を開く男を演じている志村喬の二人がとにかく素晴らしい。そして、もう一人の共犯者を演じている小杉義男を観ると私はマキノ雅弘監督が撮った「次郎長三国志」シリーズを思わずにはいられなくなるのである。それはスキー小屋の娘、若山セツ子も同じである。それとこの映画の助監督に本名岡本喜八郎(岡本喜八監督)の名前があるが、これもまた「次郎長三国志」シリーズの助監督としても有名であるので、そういう意味でも何とも興味深く楽しむことが出来た。三船敏郎をはじめとする三人の悪人がスキー場で出会う一人の少女、若山セツ子の初々しさの前に次第に人間らしい何かを掴んでいく。三人が犯罪者であるなんて全く知らずに無邪気に「ヤッホー!」「ヤッホー!」と連呼する若山セツ子の何と言う初々しさ、健気さ、若山セツ子という女優の持っている初々しさが私はとにかく好きでたまらない。ラストの志村喬とのやりとり、蜂蜜をもらって見せる志村喬の笑顔の素晴らしさ、あの音楽がこれまた切なくて、まるで志村喬と若山セツ子の二人の別れ、雪の降る中での若山セツ子の見送る姿と見送られて去っていく時の志村喬の背中からは物凄いオーラ、男の哀愁が漂い、背中で演技の出来る数少ない俳優の一人である志村喬という俳優の凄さは「無法松の一生」の阪東妻三郎演じる富島松五郎や「男はつらいよ」シリーズの渥美清に匹敵するぐらいのものを感じます。アクションもの、サスペンスとして見てしまうと少々物足りないものの、人間ドラマとしての見応えは十分で、これは完全に黒澤明監督脚本の勝利と言っても良いぐらい(勿論、谷口千吉監督のダイナミックな演出も忘れてはならない)が、黒澤映画が本当に良かったと思える頃(三船敏郎、志村喬の二人のいる黒沢映画はどれもが本当に面白かった。素晴らしかった)のギラギラした感じが観られる映画になっている。そして、最後まで私には若山セツ子の「ヤッホー!」と笑顔に蜂蜜を美味しそうに飲む姿が忘れられない。忘れられないと言えば高堂国典の親父も忘れられないぐらいの凄い印象を残します。
[DVD(邦画)] 8点(2009-08-29 22:24:43)(良:1票)
305.  不知火檢校
これは「座頭市」の元のような勝新演じる盲目の按摩の凄まじいほどの悪人ぶり、金の為ならどんな悪事でも平気でやるその凄さ、同じ盲目でもこの悪人ぶりの凄さ、勝新という俳優にしか出せないような不思議なオーラが作品全体に漂っていて、他の人が演じていたらここまで見ることは出来ない。そのぐらい勝新の悪人ぶりが素晴らしい。ところで中村玉緒はやはりこの頃はどれを観ても本当に可愛い。それともう一人、今回、気になる女優がいる。近藤美恵子という女優の色気にはめまいがしそうなぐらいクラクラしてしまうものがある。勝新と中村玉緒がこの映画での共演がきっかけで結婚した作品として有名らしいけど、なるほどね。これを観れば解るような気がする。演技しながらも演技を超えた愛のようなものをも感じられる。とにかく勝新「座頭市」ファンは観ておいて損のない。いや、一度は観るべき映画だと思います。
[DVD(邦画)] 8点(2009-08-28 21:53:40)
306.  潜水艦イ-57降伏せず 《ネタバレ》 
松林宗恵監督の死去というニュースを聞いて寂しく感じる今日この頃、この監督さん「社長」シリーズの監督として有名だけど、こういうシリアスな戦争ものを撮っても実力のある素晴らしい監督であることを改めて思い知らせれた。池部良と三橋達也の二人がとにかく熱い演技で見せてくれる。戦争ものとしの迫力ある映像、モノクロのあの映像が余計、その凄みを感じさせ、また、この映画、時々コメディタッチなものが見られるのは、監督がやはり喜劇の監督だからなのか?その良い例が艦長の娘の外国人女性ミレーヌが水浴びしている所を男達が除いている。覗かれたミレーヌの色気が充満しているからこそ余計に男達のむさ苦しさが際立っている。この映画に携わった関係者の多くは戦争を実際に経験していると思われるからこそその傷み、戦争というものの恐ろしさを感じさせる内容になっている。戦争というものが背景にありながらも単なるシリアスドラマにはせず、男だらけの中に外国人女性の美女を放り込ませるということで生まれてくる娯楽映画としての成功、外交官の娘の感謝の言葉を述べる場面においては、人が人を思いやり、国籍も性別も関係ない。どんな人間であれ、人に対して感謝する気持ちを忘れずに行きようという監督からのメッセージとも取れるし、それにしてもここでの男達の軍服姿の美しさとかっこ良さ、中でも川島雄三監督の映画などでよく見るだらしない男とはまるで違う三橋達也のかっこ良いこと。川島映画における三橋達也も私は好きだけどこの映画の三橋達也も私は好きです。最後にもう少し!松林宗恵監督、今までお疲れ様でした。あなたの素晴らしい実力、多くの映画ファンは解っている筈!天国で三橋達也をはじめとする他「社長」シリーズで楽しませてくれた三木のり平や加東大介、フランキー堺達と酒を酌み交わして下さい。
[DVD(邦画)] 8点(2009-08-27 21:35:32)(良:1票)
307.  助太刀屋助六 《ネタバレ》 
真田広之主演による時代劇と言えばおそらく世の多くの映画ファンは「たそがれ清兵衛」かもしれないが、私は違う。「たそがれ清兵衛」より早く作られ、公開した年は同じ2002年である。「たそがれ清兵衛」がやたら高評で多くの賞を獲得した中であまり取り上げられることもなく、その年のキネマ旬報でも無視されているような結果になっていたが、映画としの面白さ、時代劇としての面白さで完全にこっちのが上だと私は思う。何しろ主演の真田広之が活き活きとしていて演じている本人が物凄く楽しそうであるのが良い。やはり役者、特に主役が楽しそうに演じている映画はそれだけで観ていても気持ち良くなれるので私は好きです。冒頭のあの砂煙りの中、一人刀を振り回しまるで子供のように楽しそうにしている姿、そして、そこに現れる大勢の子供達、このシーンだけでも真田広之同様、監督である岡本喜八監督もこれから面白いものを見せてあげようではないかという心意気が伝わってくる。脇を固める俳優陣にしても芸達者な顔ぶれが揃い、その中で伸び伸びとしている真田広之、そんな真田広之が仇討に乗り込む時に言う台詞「これから二人ほど斬るが他の人は邪魔になってはならない」とか「ここら辺でお開きにしよう」とか何だか寅さんみたいで笑ってしまう。ラスト、馬に乗って去っていく真田広之と鈴木京香のツーショットなどは岡本喜八監督が西部劇ファンであることの証であり、遺作にして最後まで娯楽映画に徹しようとして遊び心を忘れなかったこの岡本喜八監督という監督の素晴らしさ、多くの映画監督は晩年、特に遺作ともなると娯楽よりも芸術志向に走るものだが、最後まで娯楽に徹して楽しませようと言う監督の心意気を私は評価したいと思います。最後にあのジャズの音楽も時代劇とよくマッチしていて良い雰囲気を醸し出していることを言わせてもらいこの映画についてのコメントを終えたいと思います。
[ビデオ(邦画)] 8点(2009-08-23 10:08:28)(良:3票)
308.  裸の島(1960) 《ネタバレ》 
この映画には台詞らしい台詞がほとんど無い。笑い声や掛け声、子供達の歌声などはあるけれど、会話という会話が無いのである。そして、そんな会話を一切省くことで省略することによって、新藤兼人監督は互いが相手のことを全て受け入れてこそ伝わる人間としての正しい姿、人間が人間であること、人としての有り方、それを認めているからこそ、そんな関係のある者の間には言葉など要らない。言葉など無くても伝わるのである。言葉というものはお互いを確かめ合う上において時には不要であると言っているようである。そうなのだ!信頼しあっている者同士の間には言葉は要らない。相手を受け入れ、相手の気持ちを知る。また自分の気持ちも相手に伝える。人と人との関係、繋がり、この映画が意味するものは何なのか?全く知らない別の世界で生きている者同士なら言葉が無ければ解らないだろうが、この映画の人達の間には相手をよく理解している者同士、同じ島に住む者同士であるから言葉は無くても良いのである。人と人との繋がり、そして、人間って凄い。生きること、生きていることの凄さを映像だけで見せてしまうこの新藤兼人監督という人の凄さ、今の日本映画には無い。欠けている要素、何でも台詞でやってしまう今の日本映画とは正反対な作品である。
[DVD(邦画)] 8点(2009-08-19 22:52:53)(良:1票)
309.  月はどっちに出ている 《ネタバレ》 
日本映画がよく描く。描こうとする主題の一つとして在日問題、朝鮮人と日本人の葛藤というものがあるが、どうしても日本人が描こうとすると日本人よりになり、朝鮮人は悪者である。弱者であると偏った感じのものになりがちである。ところがこの映画は日本人も朝鮮人もその他フィリピン人もイラン人も皆、同じ生き物である。強者も弱者もない。監督の崔洋一監督自身が朝鮮民主人民共和国出身の監督であるということがこの映画を興味深いものにしている。知人の結婚式で韓国人と一緒になると日本と韓国両方の国歌を歌う時に苦労する司会者、そういう心の葛藤をストレートに力強く描いており、またこの映画に出てくる人達は皆、思っている事を包み隠さず相手に対して遠慮なしにぶつけ合うことで相手も遠慮なく付き合う。劇中に何度となく出てくる「俺は朝鮮人が嫌いだ」という台詞に対する応えもそれを正面から受け止めて遠慮なしに返してくる。互いが互い同士、本音でぶつかる。これこそ人間本来のあるべき姿であると私は思う。差別されようが俺達(私達)は何も恥ずかしがることはない。この映画には生温いだけのものではない力強さがある。前を向いて行きようという力強いメッセージ、それをユーモラスに描いた映画として私は評価したい。そして、この映画のタイトルにもある「月」夜の東京タワー、空に大きく、丸く映し出される「月」なんだろう?上手く言えないのだが、私は夜の街に見える真ん丸い月が大好きだ!
[ビデオ(邦画)] 8点(2009-08-14 21:38:38)
310.  かあちゃん 《ネタバレ》 
市川崑監督と岸恵子というこの名コンビは溝口健二監督若しくは成瀬巳喜男監督と田中絹代の名コンビを見ているようです。日本人が今、忘れている何かが岸恵子演じるかちゃんことおかつさんの優しさ、人を疑って生きるよりも人を信じて生きて行くことの方がどれだけ難しいかということをこの映画の岸恵子のかあちゃんから教えてもらっている気がします。貧乏長屋での貧しい生活にもけして、貧乏であるということを強調しない。泥棒に入った男までも自分の5人の子供達と同等に扱う優しさ、それに心を打たれる泥棒、他の人たちにしても出てくる人物に一人足りとも悪人はいない。この映画には人間ってお金よりももっと大切なもの、赤の他人であろうとも同じ人間であるという市川崑監督の優しさ、山本周五郎という人の原作もそんな優しさに満ち溢れている。ラストの「勇吉」の「かあちゃん」の一言!それを映し出す岸恵子のかあちゃんの表情には本当の子ではない勇吉も五人の子供と同じ本当の子になれた本物の瞬間であると見ることが出来る。市川崑監督がまだ健在であった時、しかも、2001年という二十一世紀にこの映画が撮られたことが、それも岸恵子で撮られたことがとても嬉しく思います。この映画の岸恵子の表情はどれもこれも女優という枠を超えて一人の人間、かあちゃんとしての姿として観ることが出来る。脇を固める俳優陣の中では大家の小沢昭一、この人の存在感、インパクトの強さは凄い。私の大好きな日本の監督の一人、川島雄三監督作品の常連である小沢昭一、この人が画面の中にいるだけで何だか嬉しく思えてしまいます。色んな意味で見ていて、気持ちの良い映画、傑作とかいう評価よりも心温まる佳作としてまた、落語的なユーモアも交えて楽しむことが出来た。
[DVD(邦画)] 8点(2009-08-07 21:05:16)(良:1票)
311.  婚期 《ネタバレ》 
これは面白い。女同士の言いたい放題ぶり、それぞれの言い分、言い訳、そのやりとりを面白く見られるのはこれは何と言っても女優陣の顔ぶれの豪華さと上手さ、京マチ子が常にめそめそしている脇で活き活きとしている姉妹、若尾文子と野添ひとみ、野添ひとみは相変わらずまんまだし、若尾文子に至ってはここでもまたなかなか見れない眼鏡姿でこれまた可愛い。そんな若尾文子のお見合いシーンの後の会話がとにかく笑える。毛がないからってそれに対する船越英二の発する台詞がこれまた笑える。船越英二、この俳優のカメレオン俳優ぶり、喜劇役者としての面白さ、笑わそうとしてないのに、笑えるところがこの俳優の凄さである。京マチ子との喧嘩も面白い。そして、みんながみんな自分勝手な中で、ただ一人普通にしている高峰三枝子、そんな高峰三枝子と京マチ子の二人、映画とテレビシリーズでそれぞれ「犬神家の一族」の松子夫人を演じているこの二人が同じ空間にいるというその凄さ、「犬神家の一族」の大ファンとしてはとても嬉しい顔合わせ、そういう楽しみもこの映画にはある。そうそう、忘れちゃならない女性達と言えば北林谷栄の存在も忘れてはならない。女優陣の演技、会話、女と女の男には理解出来ないような戦いなど見所十分!宮川一夫という日本映画史上最高の名カメラマンによる美しい映像も一役買っている。あれだけ喧嘩していて仲の悪い二人、京マチ子と船越英二がラスト、仲良く手を取り合ってのシーンもこの二人、喧嘩してばかりいても本当は仲が良く、喧嘩するほど仲が良いとはよく言ったもんで、なるほどね。この映画は正にそれを証明して見せてくれている。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2009-07-28 21:30:55)
312.  神様のくれた赤ん坊 《ネタバレ》 
おや?これまた放浪紳士チャーリーさん、お一人だけですか!これは思わぬ良いもの発見!見ていてどこかで一度見てるような?「集金旅行」に似ている。似ていると思ったらそれもそのはず、何と「集金旅行」のリメイクであるとのこと!どうりでよく似ているわけです。でもって、私としてはこっちの方が良い。何とも心優しい雰囲気十分のいかにも日本的なロードムービーである。庶民的な感じ、気さくな感じ、何とも愛嬌のある二人のカップルが突然、6歳の男の子を引き取ることになってしまい、旅を続けるうちにその子に対して本当の子供のように接しはじめ、そして、そして、あの台詞ですよ。桃井かおりの小夜子の言う台詞「もしかしたら私達の考えてることって同じじゃないかしら?」ここにこの映画の良さが現れてるように思います。最初は嫌々子供を連れて旅をしていた二人が次第に子供に対して抱く感情、この映画の二人の主人公、桃井かおりの口から発せられるこの台詞の中にこそ人間本来の優しさ、男も女も性別こそ違っても同じ生き物であり、考えることは同じであるというその思い、この映画は人間が人間に対して抱く感情をストレートに描いている。そして、同じ年に公開された「男はつらいよ・翔んでる寅次郎」や同じく寅さんシリーズにゲストとして出ていた渡瀬恒彦よりもこの映画の二人の方が断然、良い。活き活きとしていて、それでいて温かさを感じる。最後にあのやたらと哀愁漂う音楽が気になって調べてみたら何と「金田一」シリーズの音楽を担当させている方だとは、いやはや、まあ、とにかくこのほのぼのとした雰囲気は日本映画でしか味わえない。観ることの出来ない作品だと思います。桃井かおり、今まで苦手でいたけど、この映画の桃井かおりは良い。初めて良いと思った。そんな桃井かおりって私は苦手ではあるが、結構良い映画に出てますよね。
[ビデオ(邦画)] 8点(2009-07-19 10:23:16)(良:1票)
313.  帰って来た木枯し紋次郎 《ネタバレ》 
木枯し紋次郎、初めて見ましたが、面白い。テレビの人気シリーズの映画化とのことらしいけど、これはどかこら見ても映画である。相変わらず市川崑監督の映し出す日本の美しい四季の香り、映像美の素晴らしさ、紋次郎が碓井峠のあの信州の美しい山をバックに歩くシーン、川沿いを歩く時の何と美しい川の流れる水の色、これはCGなんかでは見ることの出来ない、本物の美しさにただただ見入るしかない。それほどとにかく全てが美しい。そして、市川崑監督、同じ時代劇「股旅」を見て感じたのと同じように間違いなく山田洋次監督の人気シリーズ「男はつらいよ」の大ファンであると思えるシーンが見ることができる。父親の義理を果そうと戻ってきた紋次郎(中村敦夫)に対しおたみさん(鈴木京香)が言う台詞「渡世人でもない紋次郎さんがそこまで義理を重んじることはないわ」それに対する紋次郎の「おたみさん、安心して下さい。わっしは二度と草鞋を履く事はしません」というこの二人のやりとりはまるで「男はつらいよ」のマドンナ若しくはさくらと寅さんのやりとりみたいです。他にも金山一彦演じる小平次のキャラも「男はつらいよ」の、のぼるみたいだし、市川崑監督の寅さん好きが伺えて何とも見ていて楽しい気持ちにさせられる。それとこの映画、私にとって初めて市川崑監督という監督を知った最初の「犬神家の一族」に出ている人達、加藤武、坂口良子といった「犬神家の一族」の中でも好きな人物を演じている二人の姿が見られるだけでも嬉しい気分だし、色んな意味で見ていて楽しいそんな作品になっていて、今まで一度も見たことのないテレビシリーズも見たいと思う。
[ビデオ(邦画)] 8点(2009-07-12 09:13:22)(良:1票)
314.  眠狂四郎 勝負 《ネタバレ》 
三隅研次監督の美しい映像美、それに市川雷蔵の美しさ、かっこよさ、吐く台詞がいちいちかっこよく、時々見せる笑顔、加藤嘉の老人にお主の住まいは?と聞かれて、吉原と答える。なんて贅沢三昧な暮らしをしてやがるんだ!羨ましいぞ!女に毒を飲まされ、風呂では敵に命を狙われ、しかし、絶対に死なない。当たりまえだな!主役なんだから死ぬわけない。眠狂四郎というとニヒルで無口な狂四郎しか知らない私にはとても新鮮!見る順番が滅茶苦茶だからそう見えるだけかもしれない。いずれにせよ、作品全体の美しさとテンポの良さに女に対する狂四郎の態度の冷たさがある意味痛快で良かった。 
[ビデオ(邦画)] 8点(2009-07-08 20:23:29)
315.  切られ与三郎 《ネタバレ》 
美しい!まず何よりも最初に出てくる言葉は美しい!これに尽きる。宮川一夫撮影のカメラの相変わらず美しさに、そして主演市川雷蔵と市川雷蔵を惑わす、誘惑する女、中村玉緒の美しくて可愛い女ぷりに眼を奪われる。全身傷だらけになりながらの市川雷蔵、あの三味線の見事な腕前と歌声、全編歌舞伎の世界を感じさせるいかにも日本的な味わい深さ、画面からほとばしるエネルギーと美しさ、この美しさよ!この美しさは日本映画にしか表現出来ないであろう!これまた狂四郎とは一味も二味も違う市川雷蔵の美しくてかっこいい代表作間違いなし! 
[ビデオ(邦画)] 8点(2009-07-01 22:21:33)
316.  人間蒸発 《ネタバレ》 
今村昌平監督、この監督の描く理想の女ってどんな女なんだ?この作品には何かその答えのようなものがあるようなないような?何とも複雑で色々考えさせられる。婚約者である大島裁(ただし)なる男がある日、突然姿を消した。その婚約者である女、早川佳江は今村昌平監督の要請を受け、俳優、露口茂と共に大島を捜すドキュメンリー映画への出演を承諾し、取材をしていくうちに大島は大人しい男であったり、気が弱い男であったり、またある者は仕事の出来ない男であったと色々な証言が出てくる。大島の過去、女絡みやらお金の問題やらが明らかになりはじめるに従って、どんどん話は面白くなっていく。しかもこの大島という男の蒸発の動機が解らないという所にこの作品の狙いがあるように感じるのである。当事者以外には解らないからこそそれを追求したくなるというものを逆手に取った所の上手さ、そして、大島の婚約相手の女である早川佳江が次第に婚約相手の大島よりも露口茂を好きになってしまう所の面白さ、面白いと言えば今村昌平監督自身がしばしば画面に写り、まるでその視線は何だかヒッチコックのように自分自身で楽しんでるようにすら思えてしまう所にこの作品の面白さがある。作られたドラマよりもドキュメンタリーの方がドラマチックであるんだとばかり言っているようにも思え、今村昌平監督が描く女はやはり普通じゃない。強い女の前には男なんて何も出来ないとばかり言っているような、師匠である川島雄三監督の影響を受けているような普通じゃないこと、ある意味、可笑しくて、馬鹿馬鹿しくて、人間なんて馬鹿な生き物の集団さとでも言っているようである。人が何故、蒸発するのかなんて誰にも解らない。自分の胸に聞け!常にそう言われているような今村昌平監督の人間観察の前に男の弱さ、男は女よりも弱い。だから大島は姿を消した。そう語りかけているようである。川島雄三監督ほどの軽快さ、陽気さとでも言うのかなあ?がまるで感じられないし、人間のドロドロした部分ばかりを描く為に好き嫌いはっきり分かれる監督だとは思うが、この監督の人間観察ぶりは師匠以上に鋭くそして、重たい。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2009-05-26 22:32:10)
317.  くちづけ(1955) 《ネタバレ》 
これまた面白い、面白いというよりは良い映画、それも日本ならではの他国にはないであろう良さが感じられるオムニバス映画を見ることが出来た。第一話の「くちづけ」なるほどね。確かにこれは石坂洋二郎原作らしい雰囲気作り、既にユーカラさんが書かれているように同じ石坂洋二郎原作の「石中先生行状記」を思わせる青山京子と太刀川洋一のやりとり、そして、続く第ニ話「霧の中の少女」ではこれがこの三つの話の中でも一番好きです。何と言っても司葉子、司葉子、とにかく司葉子が可愛い。もう、本当に食べたくなっちゃうぐらい可愛い。あれ?他の作品でも同じこと言ってるような?だって、本当に司葉子のあの可愛さ、この司葉子を見ても何も感じない奴は男じゃないと言いたくなるぐらいの可愛さです。中原ひとみとのやりとりの微笑ましさ、微笑ましいと言えば飯田蝶子の婆ちゃんが最高です。みんなの前で歌声まで披露し、それをみんなで仲良く楽しそうに聞いてる姿も良い。温泉での会話も楽しい。ところでなんでまた小泉博なんだよ?ここだけが不満である。司葉子とフランキー堺だったら文句ないのだが、そんな中、ここでは何と他の作品では見ることの出来ないであろう司葉子の入浴シーンまであって、たまらんですわ。第三話のこれもまた如何にも成瀬映画って感じで良い。高峰秀子と上原謙で成瀬監督だからつまらないわけない。小林桂樹と中村メイコの会話も面白い。最後の方に出てくる八千草薫も可愛いなあ!とにかく一つ一つのお話が作品全体、温かさを感じるのと、可愛く感じる作りになっていて見ていて楽しい。それにしても司葉子のあの白いシャツからすら~っと伸びる細い腕と、スカートから時々、ちらっと覗かれる細い足、いや~もう、参った。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2009-05-17 10:32:13)(良:1票)
318.  小説吉田学校 《ネタバレ》 
よくぞこれだけのメンバーを集めながらも全くもって一人たりとも疎かに描くことなく政治の表と裏の醜い部分、当事者にしか理解出来ないであろう苦悩、跡目問題など様々な要素をスリリングに描いて見せているのには感心させられた。何より主演、吉田茂を演じてる森繁久彌の圧倒的な存在感と凄み、そして、吉田内角を支える男達、中でも小沢栄太郎はここでも素晴らしい演技力で吉田茂というこの一人の男と共に吉田茂を総理の椅子から引きずり降ろそうとする連中との戦い、吉田茂を内角総理大臣の座から降ろそうと企む三木長吉演じる若山冨三郎もこれまた凄い迫力!名優の名優達による男と男の壮絶なる戦いの中で父吉田茂を思う娘役の夏目雅子の存在も忘れることは出来ない。父親に対する想いの果てを語る時の夏目雅子という女優の眼の美しさ、それを片隅でそっと見ている時の父親吉田茂(森繁久彌)の眼には娘にだけは解って欲しい(欲しかった。)というようなものが感じられ、父と娘、血が繋がっているからこそ政治家である以上に親子としての深い愛が伝わるシーンでもある。見る前は何だかとても堅苦しいイメージしかなく、退屈そうな感じしかなかったのだが、ずしりと重たくそれでいて、見応えある大作になっていて政治映画としていうより一本の映画として十分楽しむことが出来た。それにしても森繁久彌の吉田茂は凄い。まるで本物の吉田茂が乗り移っているようだ。
[DVD(邦画)] 8点(2009-04-21 21:53:38)(良:1票)
319.  鶴八鶴次郎(1938) 《ネタバレ》 
録画したままで見れていない成瀬映画が幾つもある。そんな中でようやく見た。長谷川一夫と山田五十鈴の二人が互いに惹かれあいながらも芸のことについての食い違いから喧嘩してばかりいる。成瀬映画によく出てくる喧嘩のシーン、今回もこの二人の喧嘩の迫力の凄いことといったらない。それでいて、いつまでも尾を引かないのは二人が本当に相手を信頼し、愛しているからこそ伝わる喧嘩、コミカルな雰囲気が何とも楽しい。成瀬巳喜男監督らしいメロドラマの中に張りつめた緊張感もあって見応え十分の映画になっている。山田五十鈴の三味線のシーン、あの時の目線、隣でじっと構える長谷川一夫、こういう緊張感のある構図をさりげなく描くことの出来る成瀬巳喜男監督はやはり素晴らしい監督であると改めて思った次第でございます。 
[CS・衛星(邦画)] 8点(2009-04-06 21:44:32)
320.  真空地帯 《ネタバレ》 
軍隊なんて所はいかに自由など存在もしなければ、自由すら求める事が出来ない場所であるという答えがこの作品の凄まじいほどのリアルで怖い非人間的な奴らの態度から伝わってきて、やりきれない思いでいっぱいになります。上等兵からの酷い仕打ち、それに対する下級兵からの心の叫び、あの木村功演じる木谷一等兵の才気溢れる演技から伝わってくる。人間の自由を奪う場所、それが軍隊における生活であるとするならば、それを自らの体験を持って書いた原作者である野間宏という人の過去を想像するだけでも物凄いやりきれなさでいっぱいになる。自らのこうした経験があるからこそ本物のリアリテイーを感じることが出来るのである。自分を裏切った者への復讐に燃える木村功の木谷一等兵の怒りの爆発の凄さ、人間は誰かに対して信用すればするほど裏切られた時の怒りというものは恐ろしい。その恐ろしさ、怒りを爆発させる木村功の演技がとにかく怖い。山本薩夫監督の気合の入った演出に応えて見せた俳優陣、軍隊の中では人間なんてものは非人間的であって、如何に惨酷な人間しか作ることが出来ないかというものをここまでリアルに描いた作品はおそらくこの映画が初めてかもしれない。そのぐらい凄まじい力を持った気合の入った恐ろしい映画である。
[DVD(邦画)] 8点(2009-04-03 21:58:50)
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