Menu
 > レビュワー
 > どっぐす さんの口コミ一覧。2ページ目
どっぐすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 86
性別 男性
自己紹介 日本人なので邦画好き!
淀川先生のように、いつまでも「きれいですね~」「すごいですね~」と映画を楽しみ続けます。
不幸にしてつまらん映画を見た後も、シネマレビュー見ると爆笑ネタになって、HAPPYになります。「いや~、シネマレビューって本当にいいもんですね」あ、コレは水野御大・・・

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
評価順1234
投稿日付順1234
変更日付順1234
>> カレンダー表示
>> 通常表示
21.  巨人と玩具 《ネタバレ》 
極度にディフォルメされているとはいえ、高度成長期の日本の空気をすごく表現している作品です。 日本の高度成長期とはプロジェクトXのような美談だけではないのです。 学生の頃、この作品をビデオで見て、資本原理というものを初めて理解しました。 今、改めて見ても、ものすごい情報量に圧倒させられます。 年齢を経て、登場人物の生活背景が想像できるからだと思います。 利益優先のシステムが肥大化して、誰も考える余裕が無い。まさにシステムという「巨人」の中に人間という「玩具」が弄ばれている様が描かれます。 システムが軌道に乗ると、部品である人間は大局的にものを考えなくなる。 この結果がたまに現れる企業の失態であろうし、その最悪の結果が原発事故なのだと思います。 お菓子会社の三つ巴の戦略、ライバル会社の社員同士の恋愛、友情の破綻、5人兄弟の貧乏暮らしの家庭でスターになれば人間どれほど豹変するか、家庭を無視して体を壊してまで出世する人間の悲哀、諦観したカメラマンの存在、脇役の女性テレビディレクターの言葉など、今見ると、あらゆるシーンが風刺的で衝撃的です。 今見ると、なにげない脇の言葉が印象的です。「テレビなんて誰もお金を返せなんて言わないからこの仕事が好きなのよ」 お菓子会社の宣伝部長のセリフも本質的です。「大衆は何も考えない。考えるヒマが無い。そこに繰り返しキャラメルはおいしいと訴えるんです」 お金のある政党の選挙活動そのものです。こういう本質的なセリフが矢継ぎ早に出て圧倒されます。 映画のテクニックとしては、終盤近くのダンスシーンが素晴らしいと思います。 これだけテンポが早くても、突然ストーリーを進めるのに支障がないシーンを延々とじっくり見せて、観客に考えさせる時間を与えているからです。 凡庸な演出ならこんなシーンは野添ひとみが踊っている1カットだけで説明がつきます。こういう演出が天才の仕事であると思います。しかしこの映画はいわゆる告発ものではありません。 今は風刺映画というジャンルがありません。そういう才能はドキュメンタリーに行ってしまっています。 若い人に是非観てもらって、考えて欲しいです。  
[DVD(邦画)] 9点(2013-03-14 01:07:11)(良:2票)
22.  ホーホケキョ となりの山田くん
公開当時、観ようとは思わなかった。面白そうではあるが、どうしてもスクリーンで観たい絵ではなかったからだ。公開当時のテレビCMを思い出しても、サクラっぽい観客が笑っているのを見て「あ、これはヒットしていないな」と思ったものであるが、この「絵」で実は「ナウシカ」並にヒットさせていることはかなりすごいことである。 その後、ビデオで鑑賞すると、実によくできているのはわかるし、確かにほのぼのと楽しかった。 矢野顕子の音楽も実に心地よく、今に至るまで音楽だけはよく聞いている。 水彩画のような絵を動かすなど、テクニックを意識させない部分に膨大な手間をかけているであろうこともなんとなく想像できる。しかし、あの漫画家の絵はどういじっても、4コマ漫画の印象は拭えない。作品を否定するつもりはないのだが、画面上の効果に対して異常に手間がかかりすぎているように思う。 この作品の価値から考えれば、当時よりもさらに今のほうが、時代に合っている感じはする。 テレビでは「ナウシカ」や「トトロ」ばかりが再放送されるが、テレビ放送でもっと見直されてもいいように思う。 テレビ局もジブリ作品は気負ってゴールデン枠で放送するが、日曜の昼間とかに観るのにふさわしい。 この壮大な実験的技法が、高畑監督の次回作でこそ活かされていることを楽しみにしています。 14年待たされたので、次回作はスクリーンで観ます。 
[ビデオ(邦画)] 7点(2013-02-18 22:09:50)
23.  幕末太陽傳
遅ればせながらデジタル修復版の存在を知り、初鑑賞。 川島雄三監督も初鑑賞。 軽快な喜劇でありながら、役者も美術も実に豪華。 正直、一度では人物関係が理解しきれなかったのだが、2回目でますます面白く、絵の端っこまで発見があった。舞台は今で言う飲食店でもあるので、食器の小道具や、役者たちの物の食べ方、飲み方、タバコの吸い方を見ていると、江戸時代はこんな生活だったのだろうという、ドキュメンタリー的なリアリティを感じる。 客室、台所、階段、桟橋などこの遊郭の美術空間が実に面白い。 海のそばで、御殿山の近くという地理も面白い。(googlemapで調べたら今はコンビニのあるビルであり、当時の面影もない) 昔の日活といえば、荒唐無稽なアクションや軽薄な青春映画というイメージを勝手に持っていた自分が恥ずかしい。巨匠は黒澤・溝口・小津ばかりではなかったのである。 こんな密度の映画が、山のように作られていた時代が今や信じがたい。 去年、デジタル修復版の上映が終わってからネットでこの映画の存在を知ったのだが、こういうリバイバルはどんどんやるべきだ。 自分は劇場で観られなくて残念だったが、日活の宣伝サイトのカラフルなイメージを観て、ものすごく観たくなった。懐古的ではなくまるで新作であるかのようなうまい宣伝だ。(フランキー堺ではなく、女優を全面に出したイメージもずるいけどうまい) 古い映画には今の映画には失われたものがある。今の時代に無いということは、今の時代に新鮮なものがあるということだ。こういう切り口で昔の傑作をどんどんリバイバルしてほしい。 創立00周年やら、生誕00周年といったイベントではなく、定期的にこういうリバイバルをやっていれば、きっと映画館はもっと面白くなるはずだ。    
[インターネット(字幕)] 8点(2013-02-13 00:19:44)
24.  黒部の太陽 《ネタバレ》 
かつて映画は映画館だけで観るために作られていた。 ビデオやDVDで既に知っている映画をリバイバルで観るとそれを実感できる。 自分の場合は例えば、「アラビアのロレンス」であったり、「七人の侍」であったり、「地獄の黙示録」といった作品だ。 これらをスクリーンで観たとき、自分はその映画の魅力の10分の一ぐらいしか体感していなかったことがよくわかった。 「黒部の太陽」はこれまでDVD等で目にすることはできなかったわけだが、この度、東劇のスクリーンで観られたことは幸運に思う。 ただ自分は、以前、実際に黒四ダムに足を運び、本作が観られない故に、原作や熊井啓監督の著書、脚本を読み、最近のテレビドラマも観たりと事前の情報を仕入れすぎていたので、すべてにおいて先が読めてしまったのが残念だ。 電気事業者のPR的映画でもあるので、今の社会状況を考えると複雑な気持ちでもあった。 個人的には衝撃や感動は薄れてしまったが、やはりこの映画、スクリーンを前提とした確固とした撮り方をしている。 会話に合わせてカメラが絶妙なタイミングで移動したり、テレビドラマ的な考えでは当然カットバックで見せるような会話のシーンで、三船や裕次郎のアップだけを執拗に長まわしで見せる撮り方は無駄がなく緊張感があり、風格を感じる。綿密な計算とリハーサルに基づいた「映画」の撮り方だ。 音の使い方も印象的だ。 雄大な風景もまさに「絵」がドラマを語っている。人夫が断崖絶壁を歩くシーンは怖すぎるし、大出水シーンでは役者は演技どころではない迫力だ。 東劇の観客は、当時を知っているであろう御高齢の方がほとんどであった。上映の宣伝が懐古的で、うまい宣伝ではないと思う。 年寄りの自慢話であっても今の若者が観る価値はあると思うのにもったいないことである。 かつて黒澤明監督が、日本映画に客が入らないなら昔のいい映画を流せばいいじゃないかという発言をしたことがある。 映画会社もそれで儲かるはずだと。 そうなのだ。名画座や懐古的な特集上映ばかりでなく、スクリーンで観る価値のある映画を、新鮮味のある切り口で宣伝して、定期的にリバイバルしてくれれば映画館はもっと楽しくなると思う。 今の若者にとっても新鮮であるに違いない。  裕次郎の遺志は、多くの映画人の遺志でもあると今回の上映を観て考えてしまいました。
[映画館(邦画)] 8点(2013-01-31 22:10:46)(良:1票)
25.  キネマの天地
ネット上のいろんな人の評価を読んでも、評価がいまひとつなのは実に不思議だ。 素直に感動している自分はやはり頭が悪いのだろうかという変な疑いを持ってしまった。 20年以上ぶりに観たら、脇役のエピソードなど実に細かいところまで覚えていたままであった。 オールスター映画であるので、実にうまく脇に至る配役がなされていたとしか言いようがない。 僅かな出番の役者のエピソードや表情までも実に印象に残っている。 この映画は公開当時、年2回の「男はつらいよ」を休んで製作された経緯があるが、当時、毎回「男はつらいよ」を楽しみにしている観客に向けたような、渥美清、倍賞千恵子の人物配置とやりとりが絶妙に感じる。 前田吟、吉岡秀隆の配置も「男はつらいよ」そのまんまであるし、前田吟の渥美清に対する僅かな台詞のニュアンスも「男はつらいよ」そのもので笑ってしまう。 「男はつらいよ」は休みだけど、この映画にも「とらや」の面々はいるから楽しんでねというサービス精神。 当時のリアルタイムな観客にサービスしようという精神ってすごく大事に思う。 この人物配置を違和感なく別の映画にはめ込むテクニックというのは、プロにしか出来ない技だ。 こういうさりげない遊び心って今の映画にすごく欠けている気がするのである。 多くの評価を読むと「散漫である」という感想が多いが、自分はそうは思わない。 そもそもこれは映画を愛する人達の「群像劇」であり、映画を愛する人達を軸にした「青春映画」である。 断片的なエピソードの積み重ねの中で、愛すべき各々の人物の描かれない裏側や行く末を想像するのが群像劇の楽しみ方だと思うのである。 幹となる田中小春のストーリーも必要十分に思える。田中小春だけを執拗に描いていたら生々しく、刺々しい映画になったように思う。 20年以上前、大人の映画に興味を持ち始めた頃、映画の成り立ちや、時代背景、観客がどう映画を受け止めていたか、これを観てすごく勉強になったことを感謝している。  つまりは自分は映画が好きだから映画への愛を描いた映画には甘くなることは白状します。
[インターネット(字幕)] 8点(2013-01-25 01:30:48)(良:2票)
26.  生きものの記録 《ネタバレ》 
この映画の製作当時は原水爆に対する不安があった(今もある)。 しかし黒澤明の訴える恐怖とは、原水爆よりも「核」そのものに対する恐怖である。 この老人の行動を「原発から逃げる」と置き換えれば、全く現代のドラマとして成立する。 「核」が止められないものであれば、根本的な不安を取り除くには、この老人のような極端な行動をとるしかない。こういうテーマで直接的な表現をせず、ドラマによって「核」の恐ろしさを訴える黒澤明の才能はやはり尋常ではない。 この映画の製作当時から半世紀たっても、この恐怖がさらに身近になっていることに、どうしようもない人間の愚かさを感じる。 今こそリメイクする価値があると思うのだが、各方面から絶対阻止されてしまうだろう。 しかし、今だから平成の「生きものの記録」を見たいと思う。
[映画館(邦画)] 9点(2013-01-06 23:37:05)
27.  東京原発 《ネタバレ》 
内容は今となっては、とても笑えるものではない。原発の矛盾を細かく説明してくれる映画は珍しい。 とはいえ、演出自体は凡庸に尽きる。キャスト陣は豪華であるのに役者の良さが全く生かされていない。 出てくる人物は皆、何も知らない子供のような大人を演じていて、役人のリアリティもなく、状況の説明役でしかない。脚本家が頭の中で構築している理論を人物を通して説明しているだけで、ドラマにもなっていないドラマである。 官僚が、ゆりかもめの中で大声で極秘のプルトニウムの話をしているのも、バカを通り越している。 内容よりも演出の稚拙さに失笑してしまった。 映画としては稚拙であるし、この映画で語られるデータには議論が必要かもしれないが、この映画の台詞「絶対なんてことはこの世にない」ということは残念ながら、そのとおりになってしまった。 そして「喉元すぎれば暑さ忘れる」というのも、その通りになりつつある。 今や多くの人が反原発の感情を持っていながら、未来よりも明日の小銭の誘惑に抗うことができない。 つくづく人間の愚かしさを考えてしまう。 そして明日また「それ」が起こっても誰も責任をとれる人はいないだろう。 「その時」には日本に人が住めなくなっているのだから。
[DVD(邦画)] 3点(2013-01-06 22:49:00)
28.  フラガール 《ネタバレ》 
素直に泣けて、心温まる王道的作品。素直に泣けるが、泣かそうとする監督のテクニックが鼻につかない所が実にいい。 老若男女あれこれ考えずに、いい気分になって映画館を出るという、庶民の娯楽を貫いた作品だ。 山田洋次監督に匹敵するかもしれない才能を感じます。 陰惨な事件が起こるたびに思うのである。道を踏み外す前に、気まぐれでこういう映画を観ていたら、明日もなんとかなるかもしれないと思えたのではないかと。 自分のために泣いている人たちよ、他人のために泣き、笑うこの映画の人物たちの生きる姿を観てほしい。
[DVD(字幕)] 10点(2012-12-03 19:45:45)(良:2票)
29.  THE 有頂天ホテル
脚本と演出はすごく良く出来ている。 何となく観ていて気が付かない伏線もたくさんあったはずだ。2度3度観て気づくことも多いだろう。 しかし、単純な話、このホテルに集まった人たちに全く共感できない。 お金持ちの人たちの行動、性格はこうも無様であるというだけである。 庶民の感覚からかけ離れている。映画の出来より、気持ちとして理解できない。 悪徳議員など悪徳にすぎないし、演歌歌手が偉いとは全く思わない。 これらの有名人は、人の前で見栄をはらなければならないという病気にかかっているわけで、過去の某有名俳優の自殺を思わせる。 自分の生活とかけ離れているだけに素直に笑えない作品でありました。お金持ちが観て笑えばいいのだと思います。
[DVD(邦画)] 5点(2012-11-16 02:12:07)
30.  終の信託 《ネタバレ》 
観た後、うまく頭が整理できない重さを持った作品でした。 人生には仕事上でもマニュアルに沿って判断できない事がある。 この映画では、主人公は法によって裁かれてしまうわけだが、この映画では、仕事においても私生活においてもあらゆる局面においてマニュアルを用意しなければならない社会の不毛を感じる。 自分の仕事においても、問題が起こるたびにマニュアルが増えていく経験をしているが、マニュアルができることによって個々のケースで矛盾が生じることも、マニュアルの情報量が増えることによって個々の判断力が弱くなるという面も経験している。これから社会の中核を担っていくのは、かつてマニュアル世代と言われていた人々なので、どんなことでもマニュアルにしようとする怖さはあると思う。 この映画の医療の話でなくとも、男女の仲は法律的には白黒つけられない不可思議さや残酷さをはらんでしまうものです。 法律とはマニュアルの集積であり、厳格化、細分化すればするほど、矛盾をはらんでしまうものであるということをこの映画は教えてくれる。そして法律とは絶対万能の神が決めたものではなくて、人間が決めたものに過ぎないということを教えてくれます。国が違えば全く別の解釈もありうるわけです。 先日、最高裁判所裁判官の信任というものに投票しましたが、あまりにも法を司る者を信任する制度がブラックボックスになっていると実感しました。国民にとって判断材料がなさ過ぎます。 この映画に話を戻すと、この監督の撮り方は、今や巨匠の域に達していると言えるほど隙がなく風格を感じます。テーマがテーマだけに笑いを入れられないのだろうが、一息つけるような演出もあってほしかったです。 次回作はもう少し昔のような気楽な作品も観たいと思います。 
[映画館(邦画)] 8点(2012-11-09 23:27:04)
31.  踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望 《ネタバレ》 
やっぱり、このキャラクターたちに会えるということ、それだけで嬉しいのです。 アニメだと平然と同じことを続けられるのでしょうが、キャラクターの性格や役割を極力維持しながら、リアルに歳をとっていかなければならない脚本家の苦労は並大抵ではなかったでしょう。 前作では新しいキャスト、新しい役職にやや違和感を持ちながら時代が変わったような印象を受けましたが、その続きになると、新しい布陣もこの世界に馴染んでしっくりとしています。テレビの良い所でもあるし、悪い所でもあるのですが、続けることって大事なことだと思います。自分は初めて「踊る」に接した時、批判的だったのに、映画もテレビのDVDも、ずっと見ているといつのまにかキャラクターたちが大好きになっている自分に気づいていました。 初めて映画第1作で「踊る」に接した自分は、ギャグのセリフのの変な「間」に耐えられなかったことを思い出します。 今では悠々とこの変な「間」を受け入れて笑える余裕が出来ていますし、「踊る」でしかこのベタな演出は笑えません。 今回も青島がラスト近くで決め台詞的な言葉をチラッと吐くのですが、その言葉、権力批判をスパイスとして効かせながら、「和」を軸に描いてきたこのシリーズの作り方の考えともオーバーラップします。 自分はかつて映画として高度であることが最も正しいと思っていましたが、キャラクターが愛されているか、その生活空間が楽しいか、ハッピーエンドであるか、そこに重きを置いてきたからこそ、このベタベタな演出の作品が続けられたのだと思います。「正しい」だけでは成り立たない世の中の事情をこのシリーズが体現しています。 今やミーハーなファンの自分としては、多くの人が思っているであろう決着してほしい部分はネタバレであえて語りませんが、欲を言えばキリがないのでこれで終わりです。 観た後、もっと一緒にいたい、次も観たいし次も同じシチュエーションを楽しみたいと寂しい思いをさせるということは、「男はつらいよ」に匹敵する偉業のように思います。 
[映画館(邦画)] 8点(2012-09-11 02:24:50)
32.  機動警察パトレイバー 《ネタバレ》 
公開当時はWindowsもMacも知らず、パソコンを自分の生活と結びつけて考えることもありませんでしたが、今見ると、ロボットの操縦を支援するシステムとしてOSという概念を取り入れ、ウイルスで制御不能にするという発想が卓越しすぎです。 それまでのロボットアニメって、ガンダム以降でもなんとなく優秀なコンピューターが入っているというぐらいの設定しかなかったですから。 公開当時の近未来の風景として、ロボットが闊歩しつつ、昭和の古い風景も残りつつ、湾岸の大開発もありつつ、誰も携帯電話を使っていないというのは今見るとすごくシュールです。現在ではようやくAIBOが走っただけで到底実現できない部分と、インターネットによって情報伝達ではこの近未来を超えている部分があり、パラレルワールド的な世界を今は楽しめます。 監督が生活の苦しい時期に「仕事」としてエンターテイメントを無理に作ったらしいですが、結果的にすごくバランスの良い作品です。自分は才能を持った人が作家性2割、職人性8割ぐらいで仕事をした時に傑作を生み出すと思っています。つまり2割は言いたいことを言わせてもらうが、8割はサービス精神を発揮するというバランスです。監督としては最も苦しい時期だったのかもしれませんが、自分はこの時期がこの監督の頂点だったと思います。アクションのセンスも抜群、笑いもあり、ミステリーの面白さあり、蛋白であるが微妙な恋愛模様あり、反権力、文明批判をちらつかせ、後味は無理やりではあるが爽やか。(爽やかであるから、暗黒の作家性がスパイスとして観客の印象に残るのです) この作品は「ヘッドギア」と呼ばれるメンバーの才能が奇跡的に噛み合った稀有な作品だと思います。 この監督が言いたいことを言っているだけの最近の作品は無残です。 
[ブルーレイ(邦画)] 9点(2012-07-07 23:28:53)
33.  座頭市(1989)
座頭市というと、この映画が初体験でしたので、最も印象が強いです。 大映時代からのファンには違和感あるかもしれませんが、自分にとってはこれが座頭市です。 脇役陣も今考えると、クセのある強烈な人が多く、豪華なキャストだったなあと思いますし、今では勝も含めて何人かは故人になってしまい、惜しい方ばかりです。 役者が監督した映画って、抽象的だったり内面的な表現がわかりにくい例が多く、この映画もそういう演出が感じられますが、役になりきっている勝新は「かっこいい」の一言に尽きます。 ストーリーは大味で「役者が役者を見せるために作る」という明確なポリシーを感じます。役者なら誰もが持っているであろうナルシスト的な演出と、観客が観たい役者像が合致すれば、強烈なインパクトを持った映像になるという好例です。 エンドロールを見てて改めて気づいたのが、カメラマンが長沼六男というのも、今考えればすごいことです。 1カット1カットの構図が素晴らしく、風格を感じます。 激しい印象が強いこの映画、激しいシーンでも実はカメラは必要最低限の動きしかしていません。 撮影技術がどれだけ発達しても、この映画の「絵の風格」のようなものは、時代が進むにつれ失われています。 無駄にカメラが動きまくるコケオドシの映像が氾濫している今だから、この「絵の風格」が逆に新鮮に感じられます。 
[DVD(字幕)] 8点(2012-06-29 23:47:04)(良:1票)
34.  光の雨 《ネタバレ》 
この映画を見た当時、がっかりした。 自分の世代の疑問としてまず、「何があったか」を知りたかったのであるが、当事者たちの心境に迫ろうとしながら距離を置く構成は卑怯に感じた。 だから再現ドラマとして事実の行動を確認できた以上の「何があったか」はわからない。 劇中の監督が迷って悩んで逃げてしまい、この時代を知らない若手の監督にまかせるというストーリーは、そのまんまこの映画の監督の心象であろうが、作り方としては情けなさすぎる。 彼らの行動を一切描かず、対極の警察側から描いた某映画の方がはるかに潔いし、その映画も好きである。 この事件を描きたいし思い入れもあるけど、この事件に共感してる人ではないですよと、映画の中で言い訳している映画も珍しい。 ここまで迷うなら作るなと言いたいが、この映画がその後の傑作実録映画を生み出すきっかけになったと思えば、意味のある企画だったのだと思います。 しかしこの映画を見た当時、長谷川和彦だったら「何があったか」教えてくれただろうと悔しい思いもしました。もはや叶わぬ夢です。   
[映画館(邦画)] 3点(2012-06-18 03:37:33)
35.  11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち
この日は私が生まれた日である。親から聞いた話によるとこの日の午後に私は生まれた。 誰もが生まれた日に何かがあって、それを自分の人生と関連付けるのは無意味なことなのであるが、この事件に関しては、こういうわけで心にひっかかっていたし、本やネットで事件を調べたりもしていた。 この日に生まれ、普通の家庭に育った自分にとっては、右左のどちらが正しいという情報は「どちらも正しい」としか思えず、その極端な行動に関しては「どちらも間違っている」としか考えられなかった。 自分は若松孝二監督に感謝している。 「連合赤軍」と対極にある立場の「三島由紀夫」。 右左の論争はどんな情報を見ても、限りなく深く混乱させられるばかりであったが、この2つの映画で描かれているのは、当事者たちが何を考え、どう行動したかを思い入れを持ちながらも客観的にも描いている。 自分が二十になる頃には、自分が生まれた時代の空気に対する憧れが確かにあって、世間はバブルだと言われながらも自分の世代は言いたいことを言えない閉塞感に打ちのめされていたし、この時代の若者はエネルギーがあると言うより、波に乗って言いたいことを好きなだけ言えたんだという恨めしさもある。 しかし、この70年頃の空気に対する憧れと、事実は別のものであり、「何があったか」という点で若松孝二監督は最もわかりやすく、この日に生まれた自分の疑問に答えてくれた。 三島に関して深く研究している方にはこの映画に対する反発もあろう。 映画としてはこの俳優では若すぎるという違和感もある。 しかし臆することなく、この事件を語ってくれた監督に感謝します。   
[映画館(邦画)] 7点(2012-06-18 02:47:18)
36.  マルサの女2 《ネタバレ》 
伊丹作品の中では爽快感はないが、監督の作品の中では、最も社会派映画であると今は思う。 伊丹作品の着眼点の凄さは、一般人の生活に身近でありながら、(特に主婦にとって)決してわからなかった業種の裏側、例えば自動車教習所のビデオで見せられるようなマニュアル映像を高度なテクニックで、映画として成立させていたことです。 「お葬式」「ラーメン店」「税金」「暴力団」「病院」「スーパー」など、伊丹映画によって、とても勉強させられた人は多いと思う。 その中でこの「マルサ2」は結末も後味が悪いので、他の作品のような爽快感を期待した人には嫌な気分にさせられるかもしれないが、だからこそ多くの社会派監督が描いているようなメッセージ性が強い傑作だと今は思う。 劇中の「世界の中で東京が取り残されないためには誰かが汚い仕事をしなきゃいけない」というセリフも、今となっては空々しく思えるのは、少しはマシな日本になったかと思えるし、宗教団体の描写も、完全にその後の事件を予見しています。 この時代に誰もが心に思っていても口に出せない、すごく危ない橋を渡ってこういう映画を作った監督は偉大だと思います。ハリウッドであればこういう映画はあたりまえに作られていて、その方法論を日本でやるのにどれほど苦労していたか、今は少しわかる気がします。  自分はこの監督は自殺したのではなく、たまに報道される企業の社長の自殺や、役人の自殺と同じように考えています。誰もその真実を語れないだけなのだと思います。   
[DVD(邦画)] 7点(2012-06-07 01:09:23)(良:1票)
37.  幸福(1981) 《ネタバレ》 
ただ1回らしいTV放映を子供の頃見て、印象に残っていたが、この度DVDで30年ぶりぐらいに再会。 市川崑作品の平易なセリフ回しや、朴訥な役者の演技はやはりミステリーを際立たせるためのテクニックであると改めて思う。 推理小説だと、理解しにくい部分を読み返す経験は誰しもあるだろうが、映像では1回で理解させなければならないという命題がある。 複雑極まる人間関係や、事件の謎解きを観客にわかりやすく「映像」で理解させるには、役者の演技とセリフを極力単純化して、観客に余計な情報を与え過ぎて混乱させないようにする効果があると思う。さらにコントラストの効いた映像の美しさは観客に想像力をかきたてる。優れた映像は観客に想像力を沸かせるものだと思う。 だからミステリーではない市川崑の作品は凡庸に感じるが、この「幸福」は子供の演技も朴訥なのが素晴らしく(子供の頃見た時にも違和感はなかった。今の有名な子役って子供の目から見たらイヤミにしか見えないのではないだろうか)、親子三人が抱きあうシーンも過剰にならず、次のシーンにあっさり切り替わる冷静さもいい。 クライマックスの犯人を追い詰めるシーンも、淡々とヒキの絵で見せ、犯人の顔もよくわからないのも、子供の頃は「太陽にほえろ!」の時代だっただけに、逆にすごく印象に残っていた。 音楽の静と動のコントラストも印象的でした。 今、この作品に再会して傑作だと思います。「幸福」という抽象的なタイトルでかなり損をしている作品かと思います。  
[DVD(邦画)] 7点(2012-05-28 00:56:57)
38.  はやぶさ/HAYABUSA
「はやぶさ」(を運営したチーム)が何を成し遂げたか、よく知らない自分にもわかりやすく、飽きずに観られました。映画的にはお説教になりすぎず、プロジェクトX的に熱くなりすぎず、バランスよく出来ていると思います。水沢の役作りはちょっとやりすぎです。女性ではなく子供です。でも美貌を持った役者がこういう演技をするというのは今の日本映画、ましてやテレビでは稀有なことなので、そこは評価したいです。 「はやぶさ」のミッションって、ハリウッド映画の何十分の1の予算で工夫を重ねてハリウッド映画に一矢報いたい日本映画歌界のスタッフの気分と似ている気がします。そこが日本人の優れたところでもあります。 ふと、原発関係で同じように日本の技術と努力を讃える映画があったら、どう思うか考えてしまいました。もちろん「はやぶさ」に関わった人たちの努力に水をさすつもりは全くないのですが、世界でもトップの技術を持っているS社やP社が何故大赤字を出しているのか、技術を誇ることに頑なになって消費者が望んでいる本質を見失ってしまったのが今の日本で、産業全体がオタク化している気がします。自分は「はやぶさ」のように、アメリカには出来ない省エネ小予算で工夫を重ねてミッションを成功させた日本人の能力は素直に誇りたいし、例えば脱原発というモチベーションがはっきりしていれば、それこそ世界的にも出来なかったことを日本は出来る可能性を持っていると思います。 単純に偉業を成し遂げたことを讃える「がんばれニッポン」的な映画の作り方はこれからの時代にそぐわない気がします。 自分は、「はやぶさ」が帰還したことではなく、「はやぶさ」が人類にとって何を得たかを表現することの方が大事に思います。外国人から見れば自己責任でトラブルが発生して、そのトラブルを復旧させた日本人はすごいという映画でしかないような気がします。この映画には偉業に対するヒネリも思想も無い、お利口さんな出来と思いますが、よく出来た教材映画として評価します。もちろん「はやぶさ」に関わった方々には敬意を表します。
[ブルーレイ(邦画)] 7点(2012-03-30 00:45:49)
39.  機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編
今のオジサン世代は当時、ガンプラ小学生。 どこをとっても名シーンなのは言うまでもないが、あえて挙げると、ギレン暗殺直前のカットは本当に今見ても素晴らしい。 ギレンとその背後に立つキシリアの長回し。 セリフ回しはもちろん素晴らしいのだが、二人の目と些細な動きだけで、二人の関係を表現し、緊張感を盛り上げる演出のうまさ!!地味でありますが、このシーンはアニメ史上屈指の演出だと本気で思ってます。激しい動きでもなく、キメのポーズでもなく、キャラクターに演技をさせるというのは、こういうことだというお手本だと思います。富野監督と安彦アニメーターのコンビでロボット物ではないジャンルをきちんと作らせてあげたら、ジブリ作品を凌駕するものが出来たと思います。今の自分がプロデューサーであれば、「ガンダム」ではない映画監督、富野由悠季作品を世に送り出したいです。この人は「ガンダム」ではなく本当の「映画監督」です。 
[映画館(邦画)] 10点(2012-02-01 21:42:37)
40.  十三人の刺客(1963)
リメイク版を観た後で、このオリジナルを鑑賞。こんな傑作を今まで観ていなかった自分が恥ずかしい。 このオリジナルを観ると、今の邦画時代劇のロケーションの苦しさがよくわかる。 昔の時代劇は「絵」が広い!! どのシーンを見ても、よくこんな広いロケ地があったのだと感心する。 今のようにカメラがやたらめったら動かず、1カット1カットの構図が素晴らしく、そのカットの組み立てでシーンを見せている。 やはり、この頃の映画はテレビとはっきり差別化した撮り方をしていたのだと思う。 小さなモニターではなく、映画館で堪能したい作品だ。
[DVD(邦画)] 8点(2012-01-13 23:50:53)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS