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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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21.  ULTRAMAN
いろいろ考えて作られているということは分かるし、表現が難しいとされる10mという中途半端なサイズのクリーチャーを登場させた試みや、従前は重きを置いてこられなかった空中戦を見せ場の中心に置いたことなど、作り手の意欲は感じられました。また、そもそもが実写作品だけあって作劇のノウハウも積み上げられているため、例えば『デビルマン』や『北京原人』のような豪快な破綻はなく(これらの作品と比較されている時点で、なんとも・・・)、それなりにまとめられているのですが、それでもやろうとしていることに対して予算も人材も追い付いていないことが全編を通して伝わってくるため、見ていてとても辛かったです。客をもてなそうという心意気は痛いほど伝わってくるし、見ているこちらもその思いを受け取って良い部分を探してあげたくなるものの、特筆すべき点がまるでないのです。 大人向けの作品にしたはいいが、大人を納得させるだけの演技や演出を準備できなかった。これが本作最大の失敗だったと思います。なんせ、主演が別所哲也と大澄賢哉ですからね。ヘタとは言わないものの演技力に定評がある人達ではないし、泣く子も黙らせるような強烈な華もありません。また、この手の作品では大御所俳優が脇役として控えていて作品全体を引き締めるものですが、本作でその立場を担っているのが草刈正雄。これまた、作品を引き締めるほどの力はありませんでした。日本一のヒーローという大看板に、俳優たちが完全に押し潰されているのです。 見せ場についても、自衛隊の実機を登場させる場面ではオッと思わせるものの、その後にめちゃくちゃチープなセットが出てきたりするものだから、予算の少なさが余計に際立ってしまっています。低予算で無理をして作ったことがそこかしこに現れており、そこにヒーローのロマンなどはビタ一文ありませんでした。
[インターネット(邦画)] 3点(2017-07-19 00:02:43)
22.  ワイルド・スピード/ICE BREAK 《ネタバレ》 
IMAX 3Dにて鑑賞。3D効果はほとんどないため3Dメガネが邪魔でしかなく、これなら追加料金を払わず通常版で見ればよかったと後悔しました。 本シリーズについては前2作の時点ですでに飽きがきていたのですが、それでも圧倒的な世界興収等の話題性に負けて初日に見てしまいました。で、内容ですが、苦手だった前2作と何も変わっとらんやんけ~という、何ともガッカリなものでした。ま、ユニバーサルからすれば大成功を収めた前2作から路線変更をする理由などはどこにもないわけで、引き続き同じものを出されるということは見る前から分かってはいましたが。 見せ場はとにかく派手に豪華にということで、リアリティなど完全無視の見せ場が次々と繰り広げられます。本作の世界においては、すべての乗り物には自動走行機能が標準装備されているようで、車も潜水艦も無人で走行します。また、すべての乗り物はネットワーク接続されているようで、ハッカーがキーボードを叩けば何百台もの車が走行を始めるし、魚雷発射までが遠隔操作でできてしまいます。リアリティを求めるタイプの映画ではないものの、ここまでムチャクチャな理屈で見せ場を作られてしまうと冷めてしまいます。また、人間が戦っているという感覚が残っていないために、まったく手に汗握ることはありません。 さらに本作の見せ場が歪なのは、これだけ大掛かりな見せ場が続くのに、サイファーがドミニク一人に現場仕事をさせているということ。潤沢な資金と装備を抱え、オーウェン・ショウやジャカンディといった闇のコネクションも持っていた彼女なら現場チームくらい簡単に作れるはずだし、彼女の息のかかった兵隊達にドミニクのサポート兼監視をさせれば計画はうまくいくのにと、終始イライラしてしまいました。これでは起こるべくして起こった失敗であり、優秀なはずのサイファーが愚か者にしか見えませんでした。 また、ドラマもうまく流れていません。事あるごとに友情だのファミリーだの言って武田鉄矢並みにめんどくさくなっていたドミニクが悪の道に戻ったことだけは良かったものの、これに対抗すべくファミリーに合流したのがショウ兄弟というのは、さすがにあんまりでは。兄のデッカードはファミリーの一員だったハンを殺した男だし、弟のオーウェンもジゼル死亡時の敵軍大将であり、さすがに「拳を交えてみて分かり合えた」みたいなノリは通用しない相手。そんなショウ兄弟をすんなり受け入れたことで、友情やファミリーといった本作のキーワードがどんどん胡散臭くなっていくわけです。最後にはドミニクも合流しておなじみのバーベキュー。そこでまた金八先生みたいな演説を始めるので、もうお腹いっぱいでした。ちゅーかサイファーを取り逃がして問題は未解決だし、ドミニクJr.の母親であるエレナは殺されたのになんで祝賀ムードなんだよと、彼らの呑気さにも呆れてしまいました(レティとドミニクからすれば、このままだと扱いに困ったであろうエレナが、彼らにとっての念願だった子供だけを残して都合よく退場してくれたことは歓迎すべき展開だったのかもしれませんが)。 シリーズはあと2作あるらしいですが、さすがに次は見ないかもしれません。
[3D(字幕)] 5点(2017-04-29 01:30:49)
23.  大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE 《ネタバレ》 
子供に付き合っての鑑賞でしたが、大きなお友達への配慮も随所に見られる良作でした。 ベリアル単騎でのウルトラ大虐殺はシリーズ史上最高ともいえるほどの盛り上がりを見せます。「こいつに勝つ方法はないのでは」と観客を不安に陥れるほどのベリアルの無双ぶりは、大ボス登場場面として百点満点ともいえるほどのインパクトの強さ。さらには、その過程ではグレート・パワードといった10年以上ほとんど無視の状態が続いてきた戦士達がモブとしてきちんと登場するというネタの細かさ、また、父・ゾフィ・タロウといった身内でも特に強いとされてきた戦士達がベリアル相手に善戦するという描写も気が利いており、私が幼少期より児童書等で読んできた情報がすべてブチ込まれたゴージャスな見せ場となっています。ここだけでも本作は見る価値がありました。 ただし、後半になるとやや失速します。虐殺時点で光の国を不在にしていたウルトラ戦士達が結集し、ベリアルへの反撃を開始するのですが、最後の最後、ウルトラマンゼロ参戦でウルトラ側に不利だった戦況が一気に逆転するという結構いい加減な展開には脱力させられました。しかもゼロ、修行を終えたばかりの新米戦士ですからね。ゼロと、ゼロに稽古をつけていたレオさえ光の国にいれば初戦の時点でベリアルを排除できていたのではないかという超展開で、その他のウルトラ戦士達は一気に立場を失ってしまいます。それまでヒーヒー言いながら飛び回っていたメビウス(一応はゼロの先輩)なんて、主人公としての立ち位置すら奪われてしまうという不遇ぶり。これをカタルシスと捉えるか、梯子外しと捉えるかは微妙なところですが、私はあまり好意的な評価をできませんでした。前半の出来が良かっただけに、後半の粗さがやや目に付きます。
[インターネット(邦画)] 6点(2017-04-24 13:35:36)
24.  IAM A HERO アイアムアヒーロー 《ネタバレ》 
原作未読 てっこが変異する場面の異様さは群を抜いており、続いて街全体が感染に飲み込まれていく過程の物量や勢いも素晴らしく、前半部分はすべてのゾンビ映画でもトップクラスともいえるほどの完成度でした。これだけの映画が日本で生み出されたことに驚いたほどです。 比呂美とのロードムービーになった辺りからテンションがひと段落し、ショッピングモール籠城から人間同士の醜い衝突が見せ場となる後半部分は、ロメロ以来の伝統芸能だったので少々落胆させられました。前半が凄かっただけに、後半にも驚きが欲しかったかなと。 あと、片瀬那奈と同棲し、混乱後には有村架純と行動を共にしながら長澤まさみに助けられるとか、なぜ主人公の周りには美人しかいないのかという点も気になりました。これだけ恵まれていれば、生き残りの集落内でイジメを受けても仕方ないかなと。
[ブルーレイ(邦画)] 7点(2017-01-29 20:29:39)
25.  闇金ウシジマくん Part2 《ネタバレ》 
原作未読、テレビドラマは鑑賞済です。 本作は丑嶋から金を奪おうとするヤンキーとの戦いがメインであり、金絡みのドロドロとしたドラマはほとんどなし。これはウシジマくんに求められている内容じゃないなぁという感じでした。また、キャラクター間の力関係も歪なものでした。加賀は本物の迫力を持つ丑嶋に勝負を挑もうとする一方で、小物に過ぎない愛沢に対しては恐怖心を抱き続けているし、愛沢は愛沢で犀原にビビりまくっている一方で丑嶋には勝てると思っていたりと、なんだかよく分からないことになっています。 また、同時進行で描かれる新人ホストとその彼女のエピソードについても、17歳の彼女に用立てさせようとする金額が70万円とか200万円とか浮世離れしており、今時AVに出たってそんな金稼げないという点でリアリティを失っていました。 本作で描くべきものは、ホストに狂って自殺にまで追い込まれた麗の母親や、社会の底辺で正気を失ってストーカー化した蝦沼のエピソードだったと思うのですが、そうしたものに限ってアッサリと流されている点も残念でした。 唯一褒められる点はキャスティングの先見性でしょうか。菅田将暉、門脇麦、窪田正孝と、その後数年でブレイクした若手俳優を複数出演させており、彼らのフレッシュな姿を見るだけでも楽しめました。
[インターネット(字幕)] 4点(2017-01-29 19:54:29)
26.  闇金ウシジマくん 《ネタバレ》 
原作未読、テレビドラマは鑑賞済です。 テレビドラマのseason1がかなり面白かったので映画版にも期待していたのですが、こちらはやや期待外れでした。ドラマでは視点人物である片瀬那奈の存在が大きく、一般人とほぼ近い彼女の感性こそがド底辺の特殊な世界と視聴者との間の橋渡しをしていたのですが、今回はゲスト扱い。代わって、大島優子演じる鈴木未來が善悪の境目を彷徨う一般人役を担っていますが、彼女の本編への絡ませ方がどうにも中途半端なのです。彼女に係るエピソードは枝葉に過ぎず、彼女がいなくても本編が成立してしまいます。また、母親が自宅で売春しているというかなりハードな環境に居る割に、彼女自身は出会いカフェの実態すら知らない、若い女に群がる男達のゲスな本性を垣間見て驚くといったナイーブさを示しており、キャラ設定内で不整合を起こしている点もまずかったと思います。 本編の絡ませ方がおかしかったのは新井浩文演じる肉蝮も同じくで、金に絡む人間ドラマが見せ場の本作において、金ではなく殺しそのものを目的とする肉蝮の存在はかなり浮いていました。また、ウシジマと肉蝮によるアクションも本作に求められているものからは外れており、存在自体が不要だったように思います。 以上の通り余計な枝葉は目立ったものの、本編そのものは楽しめました。何ができるわけでもないのに「俺はビッグになりたい」と抜かし、根本的な自分の能力不足とも向き合わずに「俺の武器は人脈っす」と言う小川純の浅はかさがとにかく最高なのです。こいつがどんどん自滅していく様には「いい気味だ」と思ったし、ウシジマに焼きを入れられる場面には拍手喝采しました。小者がえらい目に遭わされる映画って、やっぱり面白いです。
[インターネット(字幕)] 6点(2017-01-29 19:54:01)
27.  その夜の侍 《ネタバレ》 
山田孝之と綾野剛という信頼できる俳優が出演した作品なので期待していましたが、相変わらずこの二人は最高でした。山田孝之演じる木島は正真正銘のクズ。人を轢き殺しても顔色一つ変えず、後悔も反省もない。遺族に対してすら居丈高な態度をとるという鬼畜ぶりで、おおよそ感情らしきものを持っていないモンスターなのですが、これを演じる山田がとにかく怖いのです。 他方、綾野剛演じる小林は一般人にも理解可能なキャラクター。彼自身に悪意はないのですが、あまりにも自分がなさすぎて木島の要求を断り切れず、毎度蛮行に参加させられてしまうというヘタレなのです。いい歳になっても学生時代の舎弟関係を引き摺ってる人たちにはこういうタイプが多いように感じますが、綾野剛のヘタレ演技が実に様になっていてリアリティがありました。地元にこういう人いるなと。 他方、堺雅人演じる中村の狂気は表層的であり、こちらには面白味を感じませんでした。被害者側では、遺族でありながら木島に媚びへつらうような態度をとる青木の方が面白かったです。よくよく考えると青木の設定にはリアリティがないのですが(実の妹を殺した相手に敬語使います?)、新井浩文による見事な小市民演技によりちゃんとしたキャラクターとして仕上がっているのだから大したものです。強面系の役者という印象の強い新井が小市民になりきっている点でも感心させられました。 監督の演出はかなり独特です。笑っていいのかよく分からない間でのギャグの挿入、本筋に必要とは思えないサブエピソードの積み重ねなど自由にやっており、この独特なクセを面白いと思えるかどうかが評価の分かれ目になると思います。私は面白いと思いましたが。 特に良かったのがラスト。木島との直接対決を終えて憑き物がとれた状態となった中村の横に、それまでいろいろと世話を焼いてくれていた元お見合い相手の運転する車が偶然通りかかります。新生活へと足を踏み出そうとする中村は彼女との関係修復も込みで車に乗せてもらうことを期待しているものの、元お見合い相手の方は中村の意思をまったく汲み取らずに走り去っていくまでの2人の噛み合わない会話が、とにかく最高なのです。これだけ暗い話なのに、最後の最後で大爆笑してしまいました。
[インターネット(字幕)] 7点(2017-01-29 19:53:21)
28.  沈黙 ーサイレンスー(2016) 《ネタバレ》 
原作未読。 人を救いたくて信仰を守っているのに、その信仰を捨てなければ信徒を殺すと脅された宣教師のジレンマ。なかなか面白くなりそうなお話なのですが、「神よ!なぜ沈黙なさるのです」的な発言を何度も何度も繰り返すアンドリュー・ガーフィールドの姿を眺めるのに160分という上映時間は長すぎました。また、最後の最後で神が主人公に語り掛けてくる場面にも感動がなく、さらには神と主人公の間で出された結論が一体何だったのかもよく分かりませんでした。 他方、本作の面白かった点は、信仰を理解しない人たちの意見もちゃんと反映されていることであり、宗教映画でこのような体裁をとっているものはかつてなかったと思います。キリシタンを取り締る役人達は「まぁどうでもいいから、さっさと踏み絵を踏んでよ」という姿勢なのです。取り締りの先頭に立っている筑後守(イッセー尾形が素晴らしい演技)すらキリスト教の価値観そのものを否定しておらず、キリスト教に乗っかって入ってきた西欧諸国の悪影響こそが問題であったとの発言をします。 また、キリシタン弾圧に屈したフェレイラ神父による比較文化論にも興味深いものがありました。日本人は一神教の価値観を持っていないから、俺らがどうこう言ったって変わらないよと言うのです。さらには、隠れキリシタン達ですら我々と同じ感覚で神を捉えておらず、日本式に曲解した形での理解になっていると。そんな社会で犠牲者を出してまで信仰を守る意味はないから、さっさと折れなさい。そして日本社会が望む形で貢献してあげなさいと言うのです。こちらの主張も面白いと感じました。 宗教映画としてはまったくピンときませんでしたが、文化を描いた映画としてはなかなかよくできています。もっと上映時間が短く、かつ、もっと鋭利な描写があれば、面白い映画になっただろうと思います。
[映画館(字幕)] 6点(2017-01-21 16:23:05)(良:1票)
29.  葛城事件 《ネタバレ》 
評判に違わぬヤバイ映画でした。池田小事件や秋葉原通り魔事件などの凶悪犯達を育てた家庭とは一体どんな状態にあったのかという点を深く深く煮詰めた作品なのですが、常人では考えられないほどの凶行に及んだ人間の源流を辿っていくと、誰もが思い当たる心の闇や歪な家族関係に行き着き、「少し誤っていたら、自分も殺人犯になっていたのかも」「自分も犯罪者を育ててしまうのではないか」という不安を掻き立てられます。見ている間中「これはお前の話だ」と言われているようで、とにかく居心地が悪いのです。 家庭内でもっともソリが合わないように見える親父と次男ですが、実はこの二人はよく似ています。自意識が肥大化し、ちっぽけな自分の実像を受け入れられない男達。親父の方は継げる家業があったし、団塊の世代で若い頃には社会環境に恵まれたこともあって、それなりの社会的地位に安住することができましたが、根底には自分の可能性を一度も試してこなかったというコンプレックスがあって、その反動から「俺は強くて偉いのだ」ということを至るところでアピールしたがります。家族に対して高圧的に接するのは当然のこと、事あるごとに「男は一国一城の主で」みたいな説教を始めるので本当にめんどくさい。そして本作最大の見せ場である中華料理屋でのイチャモン場面ですよ。物凄い剣幕で店員を怒鳴りつけているので何事かと思いきや、よくよく聞いてみると「麻婆豆腐がいつもより辛い」ということを訴えているだけ。しかもカメラがパンすると、長男の奥さんとご両親が気まずそうにごはんを食べている。よりによってこの席でそんなことするかと誰もが思う一幕ですが、あの親父は、この席だからこそあのような態度をとっているのです。自分は強いということ、そして「あなた達のために不届きな店員を叱ってあげましたよ」ということを全力でアピールしているのです。この親父は万事この調子で、自己アピールや他者への愛情表現がすべて裏目に出ています。ただし悔しいのが、これを鑑賞している私自身にも恐らく同様の一面はあるということです。中華料理屋のようなことを、自分自身もやらないとは言い切れません。 次男は時代に恵まれなかったために何者にもなることができず家に引きこもり、世界で唯一自分の思い通りになる母親に対して暴言を吐いたり暴力を振るったりしながら、「自分は何事かを成し遂げられる人間だ」という自意識のみを肥大化させています。親父には「自分の城を守る」という大義名分があったものの、次男はそんな目的すら持てない中で煮詰まっていき、その後自意識と現実との間にできた絶望的なギャップを埋めるために凶悪事件を引き起こします。この凶悪犯製造プロセスもまた対岸の火事ではなく、どんな家庭でも起こりうることとして描かれています。 他方、完全に常軌を逸しているのが収監中の次男との獄中結婚をする女。面会室のガラス越しに数回接見しただけの凶悪犯との結婚を決意し、この結婚のために肉親との縁を切ってきたと言い、他の登場人物にとっても観客にとっても何を考えているのかサッパリわからないキャラクターなのですが、この女が親父と次男を容赦なく追い込みます。 まず次男。親切に差し入れをしたり、気遣いの言葉をかけてくれる女に対して彼は暴言を吐いたり、無関心を装った態度をとっているものの、これって母親に対する態度と同様のものであり、彼なりにこの女を受け入れて心地よさを感じているのです。しかし女はそんな反応を読み切れず、いつまで経っても自分が受け入れられないまま死刑の時が迫っていることに焦る中で、最後の最後に自分の身の上話を始めますが、これが次男を絶望の淵へと追い込みます。「昔、彼氏の安アパートでずっとセックスしてたのよ」という痴話ばなしなのですが、恐らくは童貞であり、かつ、世捨て人の如きこの女も当然自分と同類だと思い込んでいた次男は、この女の人生にも人並みに幸福な時期があったということを知って愕然とします。そこから彼は態度を急変させ、堰を切ったように自身の犯行について話し始めますが、これは「俺は殺人鬼だ。他人なんて虫けらにしか見えていないんだ。どうだ、凄いだろ」という最後の見栄でした。 親父は親父で、自分の元に訪ねてくる唯一の客人であるこの女に対して、自身の寂しさをぶつけようとします。クライマックスの展開は決してレイプ未遂ではなく、ただ人肌の温もりが欲しかっただけなのです。女からは「あなた、それでも人間ですか」と厳しく非難されましたが、いやいやこのみっともなさ、他者を求める行為こそが人間なんですよ。最後の一人からもそんな切実な思いを拒絶されてしまった親父は最後の糸が切れてしまい、この世との決別にまで思いが至ります。 とにかく何から何まで地獄なのですが、人間に対する深い洞察は見事なものでした。
[DVD(邦画)] 9点(2017-01-15 06:18:11)(良:4票)
30.  日本で一番悪い奴ら 《ネタバレ》 
綾野剛がとにかく素晴らしく、日本映画界にはこれだけ出来る役者がいるのかと驚かされました。脳筋風からチンピラ風、大物ヤクザ風、しがないおじさん風と絶え間なく姿を変えながらも、純粋無垢な彼の根本部分は常に同一であるということを見事に表現できています。また、笑わせる間の取り方のうまいこと。中村獅童演じる黒岩とのファーストコンタクト。詫びに来いと言われ内心はビクビクしながらヤクザの事務所に入り、案の定、黒岩に怒鳴られて困った諸星。何やら口をもにょもにょ動かし始めて何をするのかと思いきや、次の瞬間「かー、ぺっ」と痰を吐き、黒岩に負けじとあることないこと大声で叫び始める場面には涙が出るほど笑わされました。それに続き、黒「お前が気に入った!この鮫エキス食ってみろ!」、諸「おお!(瓶一本分の鮫エキスを全部口に入れる)」、諸「まずい!」、黒「そうだろ!全然売れねぇんだ!」。まったく理解不能ですが、初対面でさっきまで対立していた二人が、次の瞬間にはとても気が合うベストパートナーになったということが一発で分かる見事な掛け合いでした。 演出のテンションも絶好調。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』や『グッドフェローズ』などのスコセッシ作品とよく似た作風となっているのですが、本家スコセッシと比較しても遜色ないほどのエネルギーに溢れており、やや長めの上映時間中にもダレ場は一切なし。その絶倫ぶりには恐れ入りました。 気になったのはタイトルであり、「日本で一番悪い奴」ではなく「日本で一番悪い奴”ら”」なんですね。複数形。すなわちこのタイトルは諸星ではなく、諸星に不正をやらせていた北海道警を指したものだと考えられます。ものすごく間違った成果至上主義が敷かれており、「俺のだぁ!」と言いながら犯人を刑事同士で取り合う、拳銃の押収件数を増やしたいのでヤクザから拳銃を買ってくる、それでもノルマを達成できなければロシアにまで銃を買いに行かせる、さらには拳銃の密輸ルートを作るなど、そもそも論を無視した行為を組織ぐるみでやっているのです。上司:「諸星、今月の数字何とかならんか?」、諸星「はい、何丁か買ってきます」、こんなやりとりをしているのです。これには驚かされましたが、本作は諸星のモチーフとなった稲葉圭昭氏自身による著作を原作としており、かつ、捜査や裁判過程でその内容の一部は裏づけられていることから、これは実際にあった話。さすがに驚きました。しかも諸星に指示を出していた上層部はお咎めを受けておらず、それどころか出世した人間までいるようであり、まさに「日本で一番悪い奴ら」。こんな面白い話をなぜ他のクリエイター達やジャーナリストは放置してきたのだろうかと不思議になったほどです。
[ブルーレイ(邦画)] 8点(2017-01-14 15:50:17)
31.  殿、利息でござる! 《ネタバレ》 
良い人だけが出てくる良い映画であり、たまにクスっと笑わせるという、いかにも松竹らしい人情コメディとなっています。とにかく全員が公共のために尽くそうという思いを持っており、このプロジェクトの障害になると思われていた藩の出入司や、財政難の元凶となっていた殿様すら話してみれば良い人。事情を知るや主人公たちへの協力姿勢を示し始めるという、安心して見られる作品となっています。 主人公たち出資者は「町が滅びれば自分たちの商売も立ち行かなくなるから、何とか町に活気を取り戻さなければ」という目的で資金の供出を開始します。この点は合理的で納得がいったのですが、他方で店を潰してまで資金を捻出しようとした妻夫木聡演じる浅野屋の行動原理だけは不明であり、この点が作品のアキレス腱となっています。彼のドラマをもっと合理的に見せてくれれば作品全体がより腹に落ちたのですが、もはや徳の高い人でしかないという見せ方は良くありませんでした。
[ブルーレイ(邦画)] 6点(2017-01-14 15:47:15)
32.  
良い評価も悪い評価も与えられる作品であり、鑑賞の度に評価が変動しそうで点数をつけづらいのですが、今のところはどっちつかずの6点とさせていただきます。 古典を原作としていることの弱みがドバっと出た作品であり、現在の目で見ると突飛な展開、薄っぺらな人物描写が気になりました。特に次郎の動きは理解や共感が困難であり、兄嫁に簡単に篭絡させられ、その操り人形となって今の妻を殺そうとする展開などはもう少し説明が欲しいと感じました。そもそも『リア王』を知っていて物語を脳内保管することが可能であり、「うまく換骨奪胎したものだ」という目で見ることができる客層からしか支持されない内容であり、シェイクスピアに馴染みのある欧米で高評価を受け、逆に日本では不評だったという現象にも納得がいきます。 なお、映像の迫力や美しさには素晴らしいものがあり、芸術作品としてはハイレベルです。色分けされた軍勢が織りなすマスゲームの美しさ、本物志向で建てられたオープンセットの説得力、そしてそのオープンセットを豪快に燃やしてしまうという気前の良さなど、画面で起こることすべてに見ごたえがありました。ハリウッドならば中規模作品に分類される予算でここまでの映画を撮りあげた黒澤明の手腕には圧倒的なものがあり、うまくお金を使うことも映画監督の才能のひとつなのだということがよく分かります。
[インターネット(字幕)] 6点(2016-11-09 13:11:20)
33.  GONIN 《ネタバレ》 
90年代は日本映画が海外で賞を獲りまくる一方で観客がまるで入らず、良くも悪くも映像作家達が野放しにされていた時代なのですが、そんな時代を象徴する作品のひとつが本作です。豪華キャストを投入した全国公開作品でありながら作りは驚くほど粗削り。石井隆作品らしく印象的な場面が多くて映画全体にパワーと勢いが溢れている反面、監督が興味を示さないパートについてはかなり強引な省略がなされており、唐突な展開が目立ちます。 例えば、根津甚八演じる氷頭と家族の関係。中盤にてヒットマンに家族を殺されたことから氷頭はヤクザに対して弔い合戦を挑むこととなるのですが、その前段階において家族と氷頭との関係性を見せる描写がほとんどないために感情的な盛り上がりを逃しています。それどころか、家族が殺された瞬間にも氷頭は何らの感情も表さず、仲間と合流した後にも家族の死という重大事件に一切言及しないことから、見ている私は「あれ?家族は無事だったの?さっき殺されたのは家族以外の別人だったっけ?」と混乱してしまいました。通常の映画文法ならば当然あるべき描写が足りていないため、本来は簡単なはずの話がひどく分かりづらくなっています。 また、この頃の邦画は録音が悪いのかセリフが聞き取りづらい点もマイナスでした。せっかく素晴らしいバイオレンス描写があるのに、説明不足なお話と聞き取りづらいセリフのせいで興が削がれたことは残念でした。
[インターネット(字幕)] 5点(2016-10-25 17:44:27)
34.  ジェイソン・ボーン 《ネタバレ》 
IMAXにて鑑賞。 『アルティメイタム』で綺麗に終わった話をどうやって再開するのかという点が鑑賞前の不安だったのですが、案の定、完成した作品は語るべき物語を見失って迷走していました。ジェイソン・ボーンのアイデンティティを探る話はまだまだ続くのですが、シリーズ継続のために捻り出された後付けの設定があまりにご都合主義的なので醒めてしまいます。『24』もそうでしたが、エージェントもので実は父親も陰謀に関わっていたという話を出し始めると、いよいよお終いですね。 国家が作り出した殺し屋というものを見たことがある人はほとんどいないため果たしてそれがリアルなのかどうかは分からないが、少なくとも「殺し屋とは、きっとこんな感じなんだろう」と思わせるような説得力ある描写こそがボーン3部作の魅力でした。地下鉄を脱線させろとか、大爆発を起こせとか言ってくるスタジオと喧嘩しながら堅実な作風を守ったダグ・リーマンが本シリーズの基本路線を作り、ポール・グリーングラスがそのスタイルを継承発展させることでボーン3部作は本物志向のアクション映画の太祖となったのですが、一転して本作は『ボーン・アイデンティティ』が登場する前の単純な爆破アクションに先祖返りしています。観客を楽しませたいというサービス精神は理解できるものの、ド派手になりすぎた見せ場にはもはや生身の人間が闘っているという感覚が残っておらず、見せ場が派手になればなるほど手に汗握らなくなるというアクション映画の典型的な衰退サイクルに入っています。クライマックスのカーチェイスなどは『ワイルド・スピード』の新作のような有様であり、本シリーズのファンが求める見せ場からはかけ離れています。そういえば、『ボーン・レガシー』続編の監督にジャスティン・リンが起用されたという話が一時期ありましたが、結果的にボツとなったその企画で考えられていたカーチェイスがそのまんま本作に流用されたのではないか。そんな邪推を生むほど、クライマックスのカーチェイスはシリーズ全体の雰囲気から浮いていました。 見せ場のインフレとともにジェイソン・ボーンはさらに超人化。パンチ一発で格闘家を気絶させるほどの格闘スキルに、プロのレーサーをも超える反射神経とドライビングテクニック、スリのような小手先の技に、電気配線に細工をする技術と、もはや何屋さんなのか分からないほどの多才ぶりを披露します。殺し屋みたいな潰しの利かない職業なんかにはつかず、何かひとつでも特技を極めていればその道で食えていたんじゃないかと思うほどの器用さであり、その多才ぶりゆえに殺し屋というそもそもの設定が没却してしまっています。これもやりすぎでした。 また、敵エージェントとの関係も変質しています。悪いのはラングレーのオフィスにいる上層部であり、現場のエージェントはただその指示に従っているのみ。命を狙われてもボーンは敵エージェントを恨んでいないし、殺し合いを演じつつも互いに敬意を払い合うエージェント同士の武士道のような関係性こそが本シリーズの熱さに繋がっていました。また、そうしたエージェント達の姿がエンディング曲”Extreme Ways”の歌詞と見事にシンクロしていたのですが、一方本作のエージェントは私怨剥き出しでボーンに襲いかかってくるため、戦いの意味合いがかなり変わっています。私としては、従前のエージェント達のプロフェッショナル道が好きだったため、この変更を良いとは思いませんでした。 国家によるSNSの監視や諜報機関OBによる機密情報漏洩などの時事ネタを出してきているものの、こちらもジェイソン・ボーンの物語とはうまく絡んでいなくて不発に終わっています。アクション映画としては及第点ではあるものの、待ち望まれた『ボーン・アルティメイタム』の続編としては期待外れな出来だったと言えます。
[映画館(字幕)] 5点(2016-10-08 03:16:24)(良:2票)
35.  レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦―
三国志の知識は皆無な状態での鑑賞ですが、本作冒頭には懇切丁寧な説明が付属しており、原作に対する理解どころかPART1の鑑賞すらしていなくても本編を理解可能という優しすぎる仕様となっています。洋画の興行成績低迷に老舗配給会社が対応できない中、多くの観客を取り込むための工夫をして驚異的な売り上げを叩き出した新参者・エイベックスの丁寧な仕事が光ります。 そんなエイベックスの頑張りとは裏腹に、肝心の映画は実に残念な仕上がり。憧れの小喬に茶をふるまわれただけでのぼせ上がり、軍隊の指揮が疎かになる曹操だったり、尚香に敵陣をスパイさせて疫病の蔓延を事前に知っていたにも関わらず、向こう岸から流された死体を引き上げて自陣営にも疫病を入れてしまう諸葛亮だったり、尚香と親しくなった瞬間に死亡フラグがぶっ刺さった後、誰もが予想したタイミングで死ぬ蹴鞠君だったり、「敵を欺くにはまず味方から」を実践しすぎて良い人なんだか悪い人なんだかよくわからなくなってきた劉備だったりと、とにかく全員ガッカリな行動が多くて萎えます。キャラクター劇として上々の仕上がりだったPART1に対して、本作は各キャラクターの動かし方が全然ダメです。 肝心の戦闘場面もイマイチです。曹操陣営の水軍を撃破した後、孫権陣営は曹操の陸軍との戦闘に入るのですが、そもそも人数の少ない孫権軍が、無数の矢が飛び交う古代のオマハビーチにロクな策もなく突っ込んでいってどんどん消耗していく様はバカにしか見えませんでした。両陣営の戦力差を考えると、数で圧倒する曹操軍が力押しで攻め、人材リソースを無駄にできない孫権軍が矢を使った効率的な攻撃を仕掛けるという動きとすべきところなのですが(そのために中盤で矢を調達したんでしょうが)、その逆をやってしまったがために戦闘場面全体から説得力が失われています。
[ブルーレイ(字幕)] 4点(2016-09-21 20:06:25)(良:1票)
36.  レッドクリフ Part I
お恥ずかしいことに三国志の知識は皆無に近く、国名と主要登場人物の名前を知っている程度での鑑賞です。物語の基礎知識を持たない状況での鑑賞には不安があったのですが、その点、国内での配給を担当したエイベックスは懇切丁寧な説明を冒頭にくっつけたり、場面転換の度に登場人物の名前と役職名をテロップ表示してくれたりといった親切設計で対応しており、一見さんにも問題ない鑑賞環境が整えられていたことは有難かったです。本作が劇場公開されたのは洋画に観客が入らなくなり始めた時期でしたが、そんな中で一般客をどうやって呼び込むかという点に配給会社が気を配り、結果として興行的に大成功を収めたのだから見事なものです。 有名な歴史ものには後世での自由奔放な脚色が含まれていることが常であり、これを素直に実写化すると「ありえねぇ」の連続となり(例『300/スリーハンドレッド』)、かといって説明可能な形にまとめようとすると「古典の面白さを台無しにした」とケチをつけられ(例『トロイ』『エクソダス』)、なかなかサジ加減が難しい素材だと言えます。そんな中で本作は基本的に”素直に実写化”路線に向いているのですが、かといって完全な歴史ファンタジーの領域に足を踏み込むこともなく、「昔、こういう戦争がありました」という歴史活劇として一定のルックスを作り上げることに成功しています。劉備軍の将軍たちはまさに一騎当千の活躍を見せるものの、物理的にまったくありえないというレベルに突入する手前のギリギリの描写で踏みとどまっており、生身の人間が戦っているという感覚を残せているのです。この辺りの演出は素晴らしかったと思います。 また、配役も絶妙なものでした。劉備軍の将軍たちの個性豊かすぎるルックスの再現度は高いし、超人的な頭脳を持つ諸葛孔明役にキャスティングされた金城武は、その浮世離れした個性により役柄に説得力を与えています。また、絶世の美女とされる小喬のキャスティングにも困難性が伴ったと考えられますが(見る人によって美醜の基準は異なるため、「誰の目にも絶世の美女として映る人」というキャスティングはかなり難しい)、そこに女優経験のないモデルのリン・チーリンを持ってきた判断も神がかっています。こちらもまた、国を動かすほどの超絶美女にきちんと見えているのです。また、彼女については難しい演技を要求される場面がなく、経験の少なさゆえのボロを出さずに済むよう脚本や演出レベルでも調整がとれています。 以上、本作のルックスは素晴らしいのですが、肝心のお話には面白みが感じられない点は残念でした。ジリ貧の劉備軍が、まだ戦禍に巻き込まれていない呉をどうやって同盟に引き入れるかが本作のスポットだと思うのですが、この交渉の困難な部分はどこにあって、どうやって呉を説得するのかという観客に対する情報の整理ができておらず、孔明と周瑜が弦楽器のセッションで意気投合したことで交渉が進み始めるという、なんとも面白みに欠ける展開となっています。弦楽器の件以外にも、馬の出産・虎狩り・牛泥棒などの面白みのないサイドストーリーの積み重ねにより本筋が進められていくため、中盤が本当に面白くありません。こうした中盤のグダグダの割を食ったのが孫権であり、これは優柔不断な孫権が為政者としての本分を発揮するまでの物語でもあったはずなのに、そこにあるべき感動が見事に失われています。熱い男を描かせれば天下一品だったジョン・ウーが男の成長ドラマでコケたことは意外でした。
[映画館(字幕)] 6点(2016-09-21 20:05:48)(良:1票)
37.  機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer- 《ネタバレ》 
テレビシリーズは全話鑑賞済です。 好評なテレビシリーズに対して、おおむね不評なこの劇場版ですが、私はどちらも楽しめました。宇宙をメインの舞台としたシリーズだけに、地球外生命体との接触はいつか行き着いたであろう領域であり、本作はついにそこに手を出してしまっただけのこと。「さすがにこれをガンダムと言えるのか」との批判はごもっともですが、ガンダムという媒体の限界に迫ったという点で、本作の試みは好意的に評価してもいいのではないかと思います。 テレビシリーズの時点でも凄かった戦闘シーンは、劇場版にてさらに磨きがかかり、怒涛の見せ場の連続には目を奪われました。クライマックスレベルの見せ場が延々続く演出の絶倫ぶりは必見なのです。また、テレビシリーズでは敵味方に分かれて戦ってきたキャラクター達がオール地球で結束して事に当たるという展開には、分かっていても燃えさせられます。特に、好敵手だったグラハム・エーカーが刹那のために道を作る場面の興奮は只事ではなく、この数十秒のやりとりのためにテレビシリーズ全50話があったのではないかと思わせるほどでした。
[DVD(邦画)] 7点(2016-06-13 15:53:35)
38.  天空の蜂
・登場人物は胸の内をベラベラと口頭で説明し、感情が高ぶると目ん玉ひん剥いて絶叫。 ・社会問題への言及が始まると一方的な演説大会となり、それまでのドラマやアクションの流れがピタっと停止。 ・タイムリミットサスペンスを標榜しながらも湿っぽい人情劇が優先され、活劇としての勢いゼロ。 以上、日本映画の悪いところがこれでもかというほど詰まった作品であり、見ているのが辛くなるほどでした。アクションと人間ドラマと社会派サスペンスという3本柱が調和するどころかお互いが食い合う状況となっており、何をメインディッシュとして考えて製作されたのかがよく分かりません。特に、ヘリ墜落まで1時間を切って以降のチンタラ加減は絶望的なほどであり、「この状況で身の上話をするか?」と呆れてしまいました。原作は未読なのですが、本で読む分には違和感がなかったけど、映像化してみるとおかしなことになりましたという典型的な事例ではないでしょうか。 作品の根幹にある主張は興味深く感じました。反原発でも原発推進でもない、原発の恩恵とリスクの両面を描いている点が好印象であり、福島第一原発事故の記憶も生々しいこの時期において、このような切り口の大作を作り上げた監督と映画会社の姿勢には敬意を覚えます。ただし、原発に係る多面的な考察をドラマやエンターテイメントの領域にまで落とし込むことには失敗しており、その結果、テロリスト達が一体何に憤っているのか感覚的に掴みづらいという状況になっています。 また、江口洋介演じる主人公のドラマとしてもイマイチ。序盤を見る限りでは、家庭に対する責任から逃げ続けてきた男の成長物語のようなのですが、中盤以降は彼の家族が表舞台から姿を消すため、主人公の行動原理がよく分からなくなってきます。彼が家庭の大切さに目覚めたのであれば、大変な目に遭った息子に付き添って病院に行ってあげるべきでしょう。なぜ、彼は息子を奥さんに任せっきりにしてでも現場に残って戦い続けることを選択したのか、その辺りの動機付けが弱いのです。
[ブルーレイ(邦画)] 3点(2016-03-04 15:56:26)(良:1票)
39.  日本のいちばん長い日(2015) 《ネタバレ》 
太平洋戦争を描いた戦争映画として見ると不満が出るようですが、政治劇としてこれを見ると、なかなかの完成度で満足させられます。本物志向のセット、質の高い演技、時系列に沿って丁寧にまとめられた脚本と、映画としてよくできているのです。本物志向すぎて一部よく分からないセリフがあり、私はブルーレイで日本語字幕を表示しての鑑賞としたのですが、そのような難解なセリフは本編における重要性の低い部分に集まっており、肝心な部分でははっきりと聞き取れる言葉が選択されているという配慮もありました。実に丁寧に作られた作品なのです。 本編中、もっとも感情的となるであろう阿南の自害場面においても大袈裟な音楽などは流さず、また、その死に際して部下にも家族にも感傷的なことを言わせず、全員が涙も流さずに死を受けいれた辺りに、本作の姿勢がよく表れています。戦争もの、特に太平洋戦争を扱った作品では情緒を全面に出したものが多い邦画界において、ここまで淡々と事実(と思われる事項)の描写に特化した作品は稀少であり、その点は非常に高く評価できます。 結論は明らかであるが、実行者がいない。本作は意思決定のプロセスを描いた映画でもあります。満身創痍の海軍は一刻も早い終戦を望むが、一方で本土決戦用に温存されていた一部の陸軍将校達は、自分たちだけが無傷であることへの負い目もあってか、本土決戦を主張します。しかし、本土決戦をやったところで戦況は好転せず死者が増えるだけであることは誰の目にも明らかであり、こうした一部の過激派の暴発を抑えながら、どうやってあるべき結論にまで辿りつくかが作品の焦点となります。毎日大勢の死者が出ている中で、意思決定機関は何を悠長なことをやって時間をムダにしていたんだと虚しくなりますが、日本人の国民性って、結構こんなもんだったりします。冷静な判断が必要な局面に限って、精神論を唱える一部のグループの意見が優先され、あるべき結論が遠のいていく。仕事で自分自身が出席している会議等に置き換えて本作を鑑賞すると、果たして自分は鈴木貫太郎や阿南惟幾のような立場をとれるだろうかと不安になります。 以上、基本的にはよくできた作品なのですが、不満を挙げるならば、陸軍将校によるクーデターの経過が分かりづらかったという点でしょうか。陸軍将校達は首都圏に所在している様々な軍にクーデターへの参加を求めますが、軍同士の力関係や、それぞれの組織が誰に意思決定を支配されているのかという説明、陸軍将校達がどの軍を味方に引き入れればクーデターの目的が達成されるのかといった成功ラインの提示がなかったため、ラスト30分は劇中で何が起こっているのかを掴み損ねました。
[ブルーレイ(邦画)] 8点(2016-01-12 20:21:36)
40.  機動戦士ガンダム 第08MS小隊 ミラーズ・リポート 《ネタバレ》 
全10話(+番外編1話)から成るOVAの要約版で、しかもそのシリーズが完結していない段階で製作・公開されたという奇妙な立ち位置にある劇場版。50話に及ぶテレビシリーズなら要約の価値もあるというものですが、全部見ても4時間強で終わってしまうコンパクトなシリーズを要約する必要性がそもそも低い上に、元のシリーズ自体が完結していないために明確なオチをつけられない、シリーズ中もっとも盛り上がったグフ・カスタムとの戦闘は未収録と、残念な要素しか見つかりません。さらに問題なのは、本劇場版オリジナルキャラであり、タイトルロールでもあるアリス・ミラー少佐に魅力がないことで、仮に彼女がしっかりとしていれば劇場版にも幾ばくかの価値が出ただけに、この部分の手落ちは致命的でした。 元のOVAシリーズは良作です。兵器としてのMSという面を極限まで追求し、第二次世界大戦やベトナム戦争を連想させる戦場に、その兵器のひとつとしてMSを介在させるというコンセプトが優れていたし、作戦行動は細かく考えられていて隙がありません。泥で汚れ、過去の戦闘で受けたダメージが残された状態で登場する量産型MSには、シャアやアムロが乗るピカピカの最新鋭機とは違うかっこよさがあったし、ジオン軍のMSの損傷が特に酷いことから全体の戦況を伝えるという演出も気が利いていました。 他方、主人公・シロー・アマダの個性については、概ね低評価となっています。ジオン軍のコロニー落としで家族と故郷を失ったという背景を持ちながら、本編中ではジオンに対する憎悪を見せることがなく、さらにはジオンの名門・サハリン家出身であるアイナとの恋愛にも迷いがありません。その設定と劇中での行動が整合していないため、感情移入が難しい人物となっているのです。 また、表面上は部下思いの隊長のようでいて、その実、軍法会議ものの独断作戦に部下を巻き込んだり、小隊を捨ててアイナの元に走ったりと直情的な面があり、隊長として大局を見る目が備わっていません。さらには、本人の戦闘スキルが高いことから無茶な行動が多く、付き合わされる部下にとっては厄介なタイプの上司だと言えます。部下に対して「とにかく生きろ」と繰り返すものの、敵を倒すことこそが隊長としての責任であり、部下を生きて帰すためにも有効な手段であるという認識が欠けており、そもそも軍人としての適性に問題があったように思います。
[DVD(邦画)] 4点(2015-08-07 18:20:26)
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