761. 金融腐蝕列島[呪縛]
《ネタバレ》 この硬派な題材に挑んだ根性は素晴らしいし、終始暗めのトーンで統一した構成力も立派だが、技術的には、あっちこっちで、リアリティを損なうお芝居台詞が大きく足を引っ張ってるんだよなー。とはいえ、佐藤慶自決発見の際の長回し、特捜の段ボールの山や総会運営机のメモ用紙の山などの小道具の丁寧さ、総会の会議進行だけで延々引っ張るテンションの高さ(終幕はあっけなかったが)など、随所に表れる気持ちの良いセンスは評価したい。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2013-11-11 01:25:28) |
762. 乱
もっと三兄弟の確執なり策謀なりを見たかった気もするが、この三兄弟は、期待された割にみんな凡人だったというところがいいのかも。全体の流れにほとんど救いがなく、ほぼ一直線に破滅に向かって進んでいるのが強烈です。大型時代劇のくせに、胸晴れるすかっとする場面が全然ありません。そして、その変なドロドロした世界を決定づけているピーターのキャスティングが絶妙です。 [DVD(邦画)] 7点(2013-10-23 01:04:00) |
763. 小川の辺
無難に無難に行っちゃったなあ。すべてがあらすじからの想像の範囲内で、映画というよりも、原作のプロモーション・フィルムを見ているかのようです。あと、それって明らかに現代的口語表現では?と思ってしまう台詞があちこちにある脚本の雑さも気になりました。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2013-10-22 01:39:54) |
764. やればやれるぜ全員集合!!
背景の作り込みができていないので、その中での可笑しさも出てこない。つまり、とりあえずドリフを出しておけ、という制作上の安直さを感じてしまうのです。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2013-10-08 01:12:15) |
765. 幸福のスイッチ
《ネタバレ》 肝心の主人公が、背景もなければ出発点もなく、ただ単にごちゃごちゃと自分以外への不満や文句を垂れ流しているだけなので、その時点でほとんど内容的な興味が湧きませんでした。あーそれと、お父さんの浮気がどうのこうのって部分は、話の筋の上で全然機能しておらず、明らかに無駄ですね。しかし、私にとって唯一目を引いたのが、すまん、実を言うと、中村静香ちゃんなのだ。演技力はぎりぎり基本クリアレベルながら、画面の一部にいるだけで人目を自然に集める雰囲気がある。途中、意図的なほどださいダウンベストやジャージで登場するのは、まともな衣装にしてしまうと、主役より目立ってしまうのを恐れられたからなのだろう。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2013-10-01 02:20:57)(良:1票) |
766. ラスト サムライ
《ネタバレ》 何かもう、あっちこっちがインチキっぽくて胡散臭いんだけど、なぜか不快感がないという不思議な作品。勘違いはいろいろあるとしても、一貫してすみずみまで真剣に対象に取り組む姿勢が共感を生むのだろう。とりわけ、とにかくサムライを格好良く撮ることに命を賭け、そのためにはエキストラの動員も美術や衣装の手配も撮影や照明の手間暇も存分に投入する覚悟が、我々の心を打つのである。なおかつ、この作品の最大の功績は、福本清三を60歳にしてハリウッドデビューさせ、しかも一番いい役を与えたこと。しかも、役名が「寡黙なサムライ」で、「最後の一言」以外台詞が一切なしだなんて、何とよく分かっていらっしゃる。これだけで、制作者は日本文化に対して真摯であると断言できる。 [DVD(字幕)] 7点(2013-09-24 01:03:09) |
767. ハッピーフライト(2008)
《ネタバレ》 肝心の綾瀬はるかのCAが、職業モラルも低ければ接客技術もCAとしてのトレーニングもなっておらず、見ていて苛々させるだけ。あのドジでノロマな松本千秋でも、いざ本番でお客さんの前に出たときには、人前に出して恥ずかしくない状態にはなっていたのを見習え。なおかつ、キャラクターとしても実は役に立っておらず、ストーリーの上でも、また危機を乗り切る上でも、ほとんど有効に機能していない。なので、最初から設定が成り立っていないのです。ほかの人たちもことごとくステレオタイプで面白みがないんだけど(客側含む)、唯一、自然な存在感を爽やかに発していた田畑智子に3点。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2013-09-23 02:05:44)(笑:1票) (良:1票) |
768. 八日目の蝉
《ネタバレ》 誰がどういうことを考えてそうなってしまったのか分からないのだが、最大の敗因は、井上真央の側に重点を置きすぎてしまったこと。●原作では、まず逃亡時の部分を全部一続きにまとめることにより、先がどうなるか分からない、どこから誰が追ってくるか分からない主人公の不安感に読者を巻き込み、また逃亡終了の際のあっけなさ、容赦なさを際立たせることができた。しかも、そこから現在の話が始まることにより、自分が物心ついたときにはすべてが終了していて、その十字架を背負わされることになった、娘にとっての環境の理不尽さをも実感させることができた。この作品では、同時並行の形をとることで、永作の側は単なる過去の回想同様の扱いになってしまっている。裁判後(出所後)の永作が完全に無視されているのが、その象徴。●ラストの部分は、ほとんど別作品といってもいいくらい改変されているが、とりあえず、物語の最大のクライマックスである、岡山港でのすれ違いの場面を奪ったのはなぜなのか。また、娘が新たな視野に気づくのが、「その子はまだ朝ご飯を食べていないの」というたった一言であるところに意味があるのに、現像された写真などという分かりやすすぎるアイテムを持ち出しているのは、見る側をなめているとしか思えない。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2013-09-15 01:42:50) |
769. ホームレス中学生
《ネタバレ》 すでに指摘されていますが、前半のホームレス生活が、服は綺麗なまま、髪はサラサラ、お肌はつるつるで、何のリアリティもありません。友人宅で食事にありついた際の描写にしても、えらく落ち着いて普通に食しており、それまで飢えた生活を送っていた人にはとても見えません。なので、そこから3人の生活が始まるに至っても、予定調和にしか見えないのです。なお、当時27歳の池脇千鶴が女子高生というのも凄いキャスティングなのですが、いろいろな意味で巧すぎで、周りの芝居を助けています。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2013-09-02 00:59:34) |
770. さくら隊散る
《ネタバレ》 証言者や関係資料が現存するうちに、何としてもこのことを記録に残さなければならない、という制作者の真摯なばかりの思想と、そして祈りが通じる作品。死傷者の数が重要なのではなくて、大事なのは、その一つ一つに「背景」と「存在」があるということ、そしてそれが問答無用で断ち切られる容赦のなさ。そのことを伝える証言者の一言一言、そして再現ドラマは、これからも価値を失うことはなく、そして余りにも重い。 [DVD(邦画)] 8点(2013-08-26 02:44:11) |
771. 私をスキーに連れてって
いかにスキーシーンを格好良く撮るか、制作者のその誠実な執念が作品の隅々まで満ちあふれている。ありとあらゆる角度から、思いつく限りのシチュエーションでスキーを撮る。目的はたった1つである。だから、この映画は、中身はお馬鹿青春映画そのまんまであるのに(だからこそ?)、1つの時代の1つの文化を切り取って封じ込めたものとして今もなお成立しているし、バブリーな描写にもかかわらずある種の潔さを感じさせるものとなっている。そして、沖田浩之の眩しい笑顔が、今となっては哀しい・・・。 [DVD(邦画)] 8点(2013-08-26 02:31:35) |
772. 明日への遺言
《ネタバレ》 米軍の国際法違反の観点を俎上にきちんと挙げた点は評価したいが、それ以外の作り込み方の部分がグダグダで。まず、カメラがあまりにも単調で(4パターンくらいを使い回しているだけでは?)、照明の安っぽさもテレビドラマ並で、法廷としての迫力が皆無。中将の妻視点のナレーションで進行していながら、では法廷での進行を受けて妻や家族はどう影響したか、という描写がないので、もっともらしく登場する意味がない。法廷劇でありながら、その背後で被告人と弁護人はどのような意思と方針をもってそこに挑んだのか、という観点が存在しない。藤田まことがその辺のいいおじさんっぽくて、軍人のトップとしての威厳や格式が感じられない。などなど。大事な内容ではあるので、誰か、きちんと作れる人にきちんとリメイクしてもらいたい気分です。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2013-08-19 02:25:13) |
773. 眉山
登場人物の造型も安直、場面設定も安直、台詞もこの上なく安直。大体この娘って、心理的にはほとんど母親依存症の領域に達しているのではないでしょうか。何よりも腹立たしいのは、こんなレベルの作品が、夏八木勲の晩年の出演リストの1つに名を連ねてしまうこと。 [CS・衛星(邦画)] 1点(2013-08-14 00:30:38) |
774. 火垂るの墓(1988)
《ネタバレ》 この作品が優れているのは、子ども目線できちんとすべてを統一し、社会の歪みのしわ寄せが子どもに行っているという構造を明確に示していること(清太が家を飛び出したのは客観的には判断ミスだが、そのような状況での判断準則なり行動規範を教えなかった周囲の大人の責任であって、本人の責任ではない)。だから、この作品は、現在でも普遍性を有する大人への厳しいメッセージたりえている。ただし、映画としての欠点は、変に綺麗すぎる色彩感覚も手伝い、全体に本来あるはずの切迫感や恐怖感が足りず、むしろ幻想的でメルヘンチックな雰囲気すら漂っている点。この辺が心理描写の綾を削いでおり、作品としてのドラマ性はやや欠ける結果となっている。 [映画館(邦画)] 7点(2013-08-10 23:26:15) |
775. おにいちゃんのハナビ
《ネタバレ》 引きこもりそのものについても、あるいはそこからの脱却についても、描写があまりにも安直で、浅薄。したがって、物語は最後まで何も始まっていません。それと、進行側がこう進めてほしいと考える台詞をそのまま言葉にするしか能がない脚本には、耳を覆いたくなったのであるが、何でこんな脚本にゴーサインが出たのだろうか? [CS・衛星(邦画)] 1点(2013-07-31 01:43:12) |
776. スイートリトルライズ
《ネタバレ》 こういう不倫モノは、まず、当事者の生活感を十分に出しておいて、そこから逸脱する背徳感を押し出してこそ、感情と現実のギャップがドラマたりうるのです。ところがこの作品は、夫婦がもともとどんな生活をしているのかもよく分からないし、いざ不倫へと乗り出してからも、感情の乱れや葛藤がほとんど見受けられない。つまり、制作側が都合良く敷いたレールの上を都合良く進んでいるだけなのです。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2013-07-22 20:58:35) |
777. 酔いがさめたら、うちに帰ろう。
《ネタバレ》 場面の切り方とかは手際が良くて、当事者間の関係や現在の状況なんかは、素直に頭に入ってくる作りになっているのですが・・・やっぱり、全体的に雰囲気がちょっと「上品すぎ」かなあ。アル中の描写はともかく、心理的葛藤や迷いの部分はもっと見たかったと思います。ただ、「アル中患者から見たらこう見える」の演出は面白かった。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2013-07-15 23:15:38) |
778. 伊豆の踊子(1963)
《ネタバレ》 百恵版との比較になってしまいますが、こちらの吉永・高橋・大坂・浪花というキャスティングは、妙にみんな人物的安定感が出てしまい、百恵版の作品中に漂っていた先行き不安な何かが危ういようなニュアンスが消えていますね。ただ、監督が同じであるせいか、演出のポイントには共通点が多々あり、こちらでやり残したことを百恵版でやり尽くした、ということになるのかもしれません。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2013-07-12 11:02:11) |
779. Life 天国で君に逢えたら
台詞も描写も演技も、いちいち説明的でわざとらしくて作り物っぽくて、リアリティも感じられなければ、表現の意図も感じられない。これを実話に基づくとして世に発表するのは、モデルに対して失礼ではないのか。例えば、肝心のサーフィンが彼の人生においてどのような位置づけを占め、誰にどのような影響を与えたのかという一つをとっても、制作者は自分の言葉で説明できるのだろうか。この描写だったら、ただの趣味の一環と変わらないのでは? [CS・衛星(邦画)] 1点(2013-07-07 02:21:10) |
780. 電車男
《ネタバレ》 導入部分で「ああ、やっぱり例の出会いの場面から入っちゃったか」と溜息が出たのですが、その後もそれが覆されることはありませんでした。あえてこの作品を映像化するのならば、ネット上の書込には直接出なかった主人公のそれまでの経歴や人格の作り込みこそが何よりも重要であり、それでこそ、主人公のコミュニケーションの開花や行動の開始の重みが出るはずなのに、この脚本はその辺を全部すっ飛ばして、書込のやりとりに乗っかっているだけなのです(エルメスカップ到着前後の描写の軽さといったら!)。●それと、それぞれが書込の内容をそのまま台詞で喋っているのも、この話の面白さを削いでいて、あの辺のやりとりは、口語では全然喋らない人が、パソコンに向かうと突然アクティブになる、とか、口語では言わないようなネットスラングで全員の意思疎通がとれている、といったところにあるはずなのに、その機微が全然無視されてしまっている。むしろ逆に、無言のキー入力表示だけで全部通すくらいの潔さが欲しかった。●あと、駅のホームに6人がいる心象風景のところで、最初のカットとその次で、看護士と主婦の立ち位置が入れ替わっているのですが、あれはわざとなんでしょうか。しかし、主観的心象である限り、入れ替わる理由はないので、ミスととられてもやむをえない。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2013-06-25 02:20:42) |