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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1249
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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161.  風切羽~かざきりば~ 《ネタバレ》 
公式サイトに経過が書かれているが、もともと後半のロードムービー部分を先に制作し、後に前半部分を追加して長編にしたとのことである。撮影自体は2012年だが、序盤で出ていた震災関連のニュースは2011年のものであり(4/17日曜日、気仙沼の朝市)、自分としては現実世界のこの時期に、春の明るい陽射しと裏腹に感じていた内心の不安を呼び覚まされる気がしたが、これは意図されたものかどうかわからない。  映画のテーマは“親に愛されない子ども”ということらしいが、劇中の出来事自体は個人的知見から想像しうる範囲に収まっていて特に目新しいものはないように見える。しかし改めてこのように見せられるとやはり心穏やかではなく、劇中の少女が弛緩したような荒んだ感じを全身で出しているのも痛々しい(4月中旬にこの格好では寒いだろう)。まるで世の中にまともな大人がいないように見えるのは同じ大人としてつらいものがあるが、逆に少女の境遇が周囲をこういう連中ばかりにしていると解すべきか。 今回の件で、この少女としても何かふっ切れたものがあったようではあるが、しかし少年と違って閉じられた円環からは抜け出せず、元の場所に回帰しただけのようにも見えている。劇中で生じた現世的トラブルは残されたままであり、携帯を使う営業からも簡単に抜け出せるのか怪しい気がするが、まあ根本的な解決は劇中人物というよりも、現実世界での対策如何によるというのが映画の趣旨だろう。  ところで主演女優に関しては、舞台挨拶で「あたし走るのが本当に下手で…」と言っていたが本当に下手である。自分としてはこの人をよく知っているわけではないが、よく知っている人が持つイメージとはかけ離れた役をやっているのは間違いない。前髪を下ろしたことでも雰囲気がかなり違っているが、特にこの人の顔で特徴的な目が、いつもと同じはずだが全く違う目のように見えており、冒頭では視点の定まらないうつろな表情がいきなり印象的だった。公式サイトを見れば、オーディション時にこの人がとりわけ努力家だったことも記されている。 そういったことから私情にはなるが、評点はこの人のために若干加点しておく。
[DVD(邦画)] 7点(2013-12-22 17:45:39)(良:1票)
162.  わが母の記 《ネタバレ》 
邦題は単に「記」だが、英題の方は「年代記」になっている。映画では期間が14年間とされており、その間に登場人物も年齢を重ねて変化していくのが目に見えているが、そのような長期にわたる時々のエピソードを淡々と記述していく形になっているのは年代記の名にふさわしい。しかし、当初は一見ばらばらのようだったものが次第に母子の関係に収斂していくのはこの映画独自の構成であり、これは素直に賞賛したい。自分としてはまだ味わい切れていないところがあるような気もするが、とりあえず現時点でも間違いなく良質の映画と感じられる。 また役者についてはそもそも名優揃いで自分などが特に褒めようとは思わないが、主人公の三女役に関しては、メイクや衣装のおかげもあるとのことながら中学生から二十代後半までをスムーズに演じているのはやはり少し驚く。  ところでこういう話を見て思うのは、劇中にも出ていた「東京物語」(1953)のように、同じ映画でも年代によって見えるものは違うのだろうということである。高齢者の世話が大変だという観点ももちろんあるだろうが、人生の半分を間違いなく過ぎたと思う自分としては、死と向き合う登場人物が直接自分のこととして感じられ、親が亡くなれば視界が開けた感じがすると言っていたのも他人事とは思えない。うちの身内は高齢でも頭はしっかりしている者が多いので自分もそうだろうと思ってはいるのだが、いずれその時が来れば、この映画のような穏やかな風景の中で死ねるだろうかと考えたりもする。  なお完全に余談だが、劇中のバス車掌役の女優(枝元深佳さん)は役所広司氏(179cm)と比べてずいぶん小柄なのが目立つと思ったら、“150cmなので役に限りはあるが女優として頑張っています”という趣旨の記事をネット上で発見した。最近知ったところでは志田未来も同じくらいのようである。
[DVD(邦画)] 7点(2013-11-11 19:39:47)
163.  ねらわれた学園(1981) 《ネタバレ》 
当時はこの主演女優が好きだと思っていなかったが、改めて見ると冒頭からPV風の映像になごまされる。以降も全編にわたり清純で邪気がなく愛くるしい様子に心を奪われてしまい、この人がいるなら劇中に出る全てのことをそのまま大らかに受け入れたいという気にさせられる。初見時から30年を経て、やっとこの映画の本来の見方が感得できた気がした(要はアイドル映画だということだが)。  内容に関しては、まず少なくとも前半はまぎれもない青春コメディであり、ギャグとおちゃらけの連続のように感じられて真剣な顔で見るべきところはほとんどない。また後半は表面的には深刻になるものの、さりげなく“頭痛が痛い”というような台詞が挟まっていたり、クラシックまがいの大仰な背景音楽も苦笑を誘うので、とりあえず今だけ真顔を装っていると思わせるものがある。それでこそクライマックスでの羽目を外した展開にも、待ってましたとばかりに違和感なく同調できるのだった。  一方で全編を通じて特に印象的だったのがヒロインの母性的な愛で、ちょっと情けない幼馴染みの彼に向けた思いやりは見る者の心をくすぐる。これも父母が彼女に寄せていたあふれるほどの愛情を分け与えていたということだろう。終盤の展開も、彼女の超能力というよりは愛の力が全てを解決に導いたのであり、結果として高見沢みちるが八王子の自宅へ無事に戻れたのは泣かせるものがあった。 ラストでは星の王子が新宿の空から笑顔でヒロインを見守っていたが、どうやら彼もまた彼女の「広い大きな心」に打たれたらしい。そうすると冒頭に出ていた映画の趣旨説明も、実はこの王子が語った言葉そのままだったのかと思わせるものがある。結果的には劇中世界も見た人も、全てを暖かく大きな愛で包み込もうとする映画と感じられたのだった。  そういうわけで感動的だったので、記念に「時をかける少女」(1983)と同点をつけておく。 それにしても原作者(校長役で出演)は、真面目な作品をこんな映画にされて何とも思わなかったのか。
[DVD(邦画)] 7点(2013-09-30 18:59:57)(良:1票)
164.  スキトモ 《ネタバレ》 
冒頭の場面でドアを開けてセーラー服の女の子が入って来るので、これは美少女に違いないと思ったらそれほどでもなく拍子抜け。美少女でない上に色気も乏しく、友人の色香にも明らかに負けている。私服になると体型が貧弱なのが余計に目立ち、服装そのものも含めて小学生のように見える。兄と比べると年齢も体格も著しい差があって、実の兄妹でないとはいえまともな恋愛対象とはとても思えない。 しかし、それだからこそかえって一途な思いがいじらしく、妙によからぬ企みをするのも微笑ましい。兄に叱られて拗ねた場面で初めてこの子が愛らしく見えたが、終盤に至ると女性的魅力も幾分増し、また他者へのいたわりを含んだ柔らかな笑顔は文句なしに可愛らしい。そういうことで自分にとってのこの映画は、いわゆるBLというより妹萌えの映画のように思われたのだった。妹役の小松愛梨という人も好演だったように見える。  以上で終わりでもいいが全体的なことも一応書いておくと、とにかく純粋で清々しい映画で、登場人物も善意の人ばかりで安心できる(妹が最も邪悪)。薄目のBL風味にあえて反発せず、また「お兄ちゃんなんて大っきらい!」という感じの展開も冷笑せずに受け入れられるなら、ほとんど万人が楽しめる作りになっている(どことはいわないが爆笑する場面もある)。まったくこんな映画とは予想もしていなかった。 ただ個人的に気にかかるのは、途中まで出ていた気のいい大学生のお姉さんはその後どうしたかということである。見ているとこの人もかなり魅力的であるから放っておく手はないはずで、個人の嗜好はあるにせよ、わが国の出生率を向上しようとする観点からすれば、やはり基本的には異性間の結合を求める方向での行動が広く望まれるところである。
[DVD(邦画)] 7点(2013-09-30 18:59:50)
165.  ドッジGO!GO! 《ネタバレ》 
一応は合作ということになっているが、これだけ無邪気な映画であっても日本でしか公開されなかったとのことで、一方通行の友情もいい加減にしろという気になる。専門家のコーチを呼んで本気でトレーニングして作ったのだから、せめて国内の普及促進にでも役立てないと作った甲斐がないように思うが、そうすると妙な友好ムードがかえって異物になるようにも思われる。どういう事情でこうなったのかわからないが。 内容としては主に子ども向けの映画だろうから、多少リアリティに欠けるところはあっても大目に見て構わない気がする。直前にかき集めた連中をいきなり試合に出したり、試合中も息抜きのような形でコメディが入っていたりするが、それでもおバカな映画に見えたりしないのは、映画がこの競技に対して真剣に向き合っている様子がちゃんと映像化されているからだと思われる。またエンディングで出ていた国境を越えたボールパスも心温まるものがあり、製作目的に対して極めて誠実に取り組んだ映画には見える。  ところでこの映画を大人が見た場合、主人公の母親が家を出たという設定は著しく不自然に思われる。こんな子がいれば、普通の親なら可愛くて仕方ないだろうから置いて行くなど考えられず(劇中に顔も出さない)、一方で母親に捨てられたはずの子どもが、これほど屈託なく前向きなのも奇跡のようである。まあこの子もパパのことが大好きだったようだし、父親も溺愛とは言わないまでも可愛がっていたようなので、愛情には不足していなかったのだろうとは思う。劇中でこの子が笑ったり泣いたり一生懸命だったりする姿が、この映画の価値をかなり高めているというのが実感だった。 なおこの子役は外見的にはボーイッシュというか男の子のようにしか見えないが、いま見るとなかなか魅力的な女優さんになっているようで、時間が経つのは早いものだと思う。これも一応は21世紀の映画なわけだが。
[DVD(邦画)] 7点(2013-09-09 19:58:05)
166.  あしたはきっと… 《ネタバレ》 
最初は葡萄畑だけ見て甲府盆地かと思ったが、実は大阪府羽曳野市のあたりだったらしく、そうして見れば「ブタのケツ」などという言葉も地域性を示しているように感じられる。実際の登場人物は全部大阪言葉(河内弁)でしゃべっているのを、映画では東京言葉に吹き替えたような形になっているのだろう。この「ブタのケツ」の場面では、女の子連中がとにかくやかましくてもう何を言っているのかわからなくなるのが可笑しい。  ところで、この映画を見る上で考慮に入れた方がいいと思うのは、この監督が原田知世のファンだ(と別映画のメイキングで言っていた)ということである。その原点は、ほぼ同世代の男ども(自分を含む)と同じように「時をかける少女」(1983)だっただろうから、この映画はそのリメイクのような感覚で作っていると考えれば、ストーリー中で時間が前後するのもそれほど奇異には感じられない。 ただし話の中身は1983年版とは全く似ていない。劇中では時間の繰返しが二度(範囲は異なる)行われていたが、そこで表現されていたのは自分にとって都合のいい結果のセットなどというのはありえず、現実にはいま自分の持てるもので一つひとつに立ち向かうしかないということなのだろう。ここには否応なしに変化を迫られるこの年代を暖かく見守ろうとする視線が感じられ、1983年版のように趣味的にひん曲げたようなストーリーよりはるかに素直に受け取れる。むしろ2006年アニメ版との類似性が強くなっており、あるいはその元ネタがこの映画だったのではないかとも思われる。時かけファンの立場としては、1983年から2010年に至る時かけ系列映画の関連作としてこの映画も位置づけておきたい気がする。  そのほか登場人物に関しては、主人公は個人的趣味の範囲内ではないが、ピュアでまっすぐな人物像がきれいに映像化されているとは思える。先輩への告白の場面(1)では、話の流れをぶった切って正面攻撃したもののあえなく撃破された(逃げ足も速い)のが印象深かった。また個人的には「葡萄畑の女の子」(役名)が個性的で可愛いと思ったが、これが若いのに何となくばあちゃんぽく見えるのも面白い。
[DVD(邦画)] 7点(2013-08-11 18:25:17)(良:1票)
167.  Love Letter(1995) 《ネタバレ》 
もともと中山美穂という人に関心がなかったので、これほど魅力的に見える女優だったことにこの映画で初めて気づいた。とにかくきれいだし可愛い(若い!)が、同じ顔で二人の女性を演じ分けているのも素直に評価したい。ストーリーに関しても、手紙のやり取りを通じて男の思いが明らかになっていく(しかし書いている本人は気づかない)構成は巧みと思える。個人的には、学校を訪ねて写真を撮って、それから後輩と出会って…という一連の部分に特に愛着を覚える。  しかし一方、終始出る関西人の男はどうにもイラつくので、神戸のヒロインを素直に祝福してやっていいのかどうかが怪しく思える。ほか無駄にコミカルな場面が多いが笑えるわけでもなく単に不快であり、またロケ地と劇中の設定との関係がでたらめで(彼氏が死んだ山へ行くには余市駅で降りて歩くのか?)、最初から最後まで関係者全員が小樽にいたようにしか見えないのも変だ。周囲の風景がどうでも観客の方が頭を切り替えろというのでは無理がある。 それからストーリーも終わってみればいかにも作り物で、劇中の設定や出来事を全て製作上の思惑通り都合よく作り込んだようで鼻白むものがあり、その上に世間の常識や周辺社会や自然現象までをもねじ曲げるような強引さが感じられる。特に救急車の件については、そもそもが積雪寒冷地なのに窓にチラチラと雪がかかる程度の天候で、それも都市部で1時間かかるなどということは想像もできず、仮にそうだとすれば流しのタクシーなどいるはずもないだろう。その上、いつの間にか時間が40分以内とかいう問題にすり替えられてしまい、外気温が何度なのかといった考慮もなされないまま、吹雪の中で傘をさして走ったりする支離滅裂さはさすがに受忍の限度を超えている。一体どこまで観客に寛容さを求めようというのか。  そのようなことで、愛憎相半ばする映画、というのが正直な印象である。評判がいいのでベタ褒めしたかったのだがそうもいかない。難点を美点でカバーして不問に付すという状態にならなかったことからすれば、結果的にこの映画は性に合わなかったということになると思われる。 ただそれでも、ラストシーンに問答無用で泣かされてしまうのは悔しいが認めざるを得ない。これに免じて、評点は少しいい方にしておく。
[DVD(邦画)] 7点(2013-07-15 18:48:54)(良:1票)
168.  地球防衛軍 《ネタバレ》 
「地球防衛軍」というものの古い事例として、自分としては「ウルトラセブン」に出る組織をまず思い出すが、日本で最初にこの言葉を使ったのはこの映画なのではなかろうか(根拠なし)。この後、特撮モノから近年のゲームソフトまで用語として一般化しており、Wikipedia日本語版では普通名詞のように扱われるに至っているが、その発端となったところにこの映画の揺るぎない価値が認められる(と思う)。  それでこの映画では、まず気恥かしいほどあか抜けないリズムを刻む(スタタタ スタタタと聞こえる)勇ましいマーチが非常に強く印象に残る。 また映像面でも古いなりに健闘しており、光線兵器で戦闘車両が白熱するのは怖いし、円盤の映像もなかなかよくできている。森永チョコレートの広告塔の背景に、高空を飛ぶ円盤が見える場面は印象的だった。ほか特に、富士山麓の宿場町のような場所に超近代的?ロボット怪獣が現れて、高度成長期前の伝統家屋を光線兵器で攻撃するというのは現代の目で見るとミスマッチだが、逆にいえばこういう時代にこういう映画を作ったのだということが改めて思い知らされる。このロボット怪獣は世間では笑われることが多いようだが、山道の途中で崖から出て来たのは実際に直面したら怖いだろう。またヒロインの入浴場面でも、素っ裸の状態で窓の外にこんなものが見えたら、もうどうすればいいかわからなくなるのではと思う。 一方でストーリー的には、最初の方こそ何かが起こりそうな期待感と不安感の入り混じった展開だが、後半では地球側が正面攻撃を延々と続ける印象があって(よく見ると山も谷もあるのだが)、正直退屈なのが残念である。  ところでこの映画の形式上のヒロインは白川由美さんの方だろうが、河内桃子さんもほとんど同格の存在感があって、ダブルヒロインの豪華状態である。二人ともきれいな人で、他の拉致女性と比べてもすらりと背が高い。また河内桃子さんは相変わらず可愛らしい人だが、敵の意図を知らされたことで泣き出してしまう場面はまことに痛々しい。こんな女性を人身御供に出してはならないと思えば、男が戦いに赴く動機の原点を描いた映画だと評することができなくもない。
[DVD(邦画)] 7点(2013-07-01 21:32:10)
169.  濡れ髪剣法 《ネタバレ》 
題名の「濡れ髪」の意味がどうしてもわからないが、「水もしたたる」と同じような美男の形容なのかも知れないと現時点では考えておく。自分としてはこの主演俳優がどういう人なのか年代の関係でほとんど知らないのだが、ただの二枚目役者でないことはこの映画でよくわかった。 中身としては笑いあり涙なしの痛快時代劇で、よくできた娯楽映画という印象である。若殿が「キ印」から始まって五万三千石の跡取りまで自力で上りつめるのは、話としては出来すぎだが見ていて飽きず、また最初と最後の野駆けの場面は清々しい。 それから登場人物としては、とにかく姫さまが稀に見る美形の上にお茶目でツンデレっぽいのがたまらなく可愛らしい。大和屋のおみねさんも意外に(といっては失礼だが)可愛いが、途中から身分違いをわきまえて、尽くすだけの立場になったのはかわいそうかも知れない。また柳橋芸者の蔦葉姐さんも艶っぽく世話好きで人懐こい感じなのに惹かれる。ほか男の登場人物としては、長屋仲間の与平次の最後の場面が鮮やかに決まっていたように思われた。   ところで、どうせ誰も読まないだろうから少し余計なことを書いておくと、劇中の大和屋はいわゆる口入屋だったようで、武家奉公人の派遣業務を中心に営業しており、その取引先がたまたま遠州佐伯(架空)の松平家だったということらしい。皆で剣術の稽古をしていたのは、映画に出たように市中で不良旗本やら何やらと衝突するのが常態だったということか。そういうのが考証的にどうなのかはわからないが、モノになりそうな人間を仕入れるために経営者(親分)が常に目配りしていたらしいのは、今回のストーリーにとって好都合な設定である。 また、終盤で立ち回りをやるのはこの手の映画として当然の展開なのだろうが、自分のところの家臣(江戸詰)が全滅しそうになるのはさすがにまずいのではないか、と見ていて心配になる。しかしこれが家臣団のリストラにつながり財政改革に役立つと思えば、まもなくの家督相続に当たって幸先がいいともいえる。とぼけたようでいてちゃっかりと結果を出す若殿である。
[DVD(邦画)] 7点(2013-06-24 18:58:41)
170.  同窓会(2008) 《ネタバレ》 
いくらコメディにしても、最後のオチがあまりにもチャンチャン、という感じの幕切れだったのは映画としてどうかと思うが、まあ全体として面白いのでいいことにしておく。そもそも最初からネタバレしているわけなので、見る側としては何があっても騙されてやる、というくらいの気分でいた方が楽しめると思われる。単純に面白おかしいだけでもなく、劇中の雪の人柄には心惹かれるものがあり、こういう人を粗末に扱ってはいかんだろうという気にさせる。最初の方では「むごかばい、神様」が切なく、また終盤で主人公が病院へ向かった場面では普通に泣けた。  一方キャストに関しても、永作博美は本当に可愛い人だとこの映画を見てしみじみ思う。また高校時代の雪もかわいいが、個人的には「口裂け女2」で悲惨な役をやった飛鳥凛が普通の女の子の役で出ているのでほっとする。そのほか主人公の同級生の娘2人の動きが可笑しくて仕方ないとか、校長役で出ていた本物の島原市長(当時)がなかなかの芸達者で笑えるとか、いろいろ指摘したくなる事項も多く、総じて登場人物は魅力的である。そういったことも含めて、少年時代の主人公が語っていたような、笑って泣けて心が暖かくなる娯楽映画にちゃんとなっていると感じられた。
[DVD(邦画)] 7点(2013-06-03 21:08:06)
171.  マタンゴ 《ネタバレ》 
最初にこれを見たのは比較的若い頃だったと思うが、その時点では、極限状態のもとで脆い人間関係が崩壊し、個人の欲望が剥き出しになる展開に嫌悪感を覚えた。また普通、この手の話では最低でも主人公とヒロインがペアで助かるのが常識だったが、この映画では「恋人にもキスさせない」清純派の女性が快楽の森に取り込まれてしまう結末が衝撃的で、とにかく感覚的に嫌な映画という記憶が残った。しかしいま見ると、そういった人の神経を逆撫でする要素もそれほど気に障らないのは、要は自分が歳をとったせいかと思う。 一方で、同時上映の若大将映画の主人公がヨット部員だったというのは偶然とも思われない。この映画では、大学で同期だった金持ちと貧乏人の息子が友人のようでいて実は越えられない壁があるという設定になっており、若大将映画では表面化していないものをわざわざほじくり出して見せたようなのが皮肉に感じられる。  ところで、この映画にはホジスンの原作から直接翻案した小説版があり、読むとシンプルな内容で不可解な点はない。しかし映画化に当たって付加したと思われる部分に関しては少々難があるように思われる。文明批評的な意味があるのはわかるが、生存のためにキノコに手を出すことと、快楽への欲求を区別なく扱っているのは納得できず、また最後の特殊メイクについても製作側の意図がはっきりしない(ネット上には非常に興味深い解釈もあるが転載は控える)。そのため全体として収まりの悪いストーリーになっていると感じられたのは残念である。 なお個別の場面としては、女性二人が雨の中を食料採集に出て、海岸で岩海苔か何かを取っている間、二人の頭の中でそれぞれの“東京の音”が鳴っているところは印象に残る。ここで流れる「水の溜まった…」の退廃的で物悲しい歌と、病院の場面で見える毒々しいネオンサインが、自分にとってこの映画のイメージを決定づけており、そのおかげで難はあっても低い点をつける気にはならない。また自分などが指摘するまでもなく、水野久美さんの魅力満開の映画でもある。
[映画館(邦画)] 7点(2013-05-27 18:59:14)
172.  ガス人間第一号 《ネタバレ》 
純粋なラブストーリーには思えない。男の方は、もとから強かった自尊心が変な能力を持ったことでますます肥大化し、零落した美しい家元を自分が支える、などという妄想に取りつかれただけに見える。単にジェット機パイロットの代替だろう。 また女の方も「本当に男の人から愛されている」という認識以上のものではなく、当の男のせいもあって社会的に追い込まれ、不本意ながら破滅を選択したように見える。まあ女としては精一杯の誠意だったのだろうが、結果として男がしっぺ返しをくらった格好になっていたのは皮肉に思える。 それでも、劇中の刑事と婦人記者の関係が普通に本物だったらしいのに比べれば、どう頑張っても普通にはなれない二人の疑似恋愛と破滅を描いた悲劇と捉えることはできる。映像面でも最後の大爆発は結構な迫力で、特撮映画ならではの壮絶な幕引きだったように思えた。  ところで、この映画で難点と思うのは、メインストーリーを軸にして見た場合に、何でガス人間が出て来なければならないのかわからないことである。構成上は男に特殊能力が必要なのはわかるが、男女関係がからむのであればガス化などというゲテモノっぽいのでなく、せめてもう少し格好いい能力でなければと思う。ここはどうしても違和感が残る。 また個人的な問題としては、どうも登場人物が好きになれないのが困る。まず婦人記者は人物造形としては理解できるものの、自分としては嫌悪を催すタイプなのが正直ちょっときつい。また家元は気位が高いのは仕方ないが、最初に図書館を訪れた場面では、和装なのに変に大股でスタスタ歩いていたのが家業への誠実さに欠けるように思えて、この時点で印象が悪化した(本当の演出意図はわからない)。そのため後で少々しおらしい表情など見せても愛しさが感じられなかった。  そういうことで、全体としては残念ながらあまり愛着のわかない映画になってしまっている。ただし特撮映画としてはこれほどまともなストーリーを伴うものは稀であること、また言うまでもなく八千草薫さんの美貌に目を奪われること、及び東宝特撮の(影の)ヒーローである土屋嘉男氏が素顔で熱演していることを考えれば、決して悪い点は付けられない。 なお八千草薫さんが何で特撮映画などに出るのかと以前から思っていたのだが、考えてみれば少なくとも日舞の素養のない女優では務まらないわけである。
[DVD(邦画)] 7点(2013-05-27 18:59:07)
173.  ゴジラ対ヘドラ 《ネタバレ》 
当時わざわざ映画館に行って見たが、子ども心に非常に強い印象を残した。テーマ曲は今でも全部歌えるし(DVD特典にカラオケが入っていたので実際に歌った)、この曲で名前を覚えた元素名もある。毒々しいイメージで悲惨な場面もあるが特にトラウマになるようなこともなかった。いま見れば全体的にコミカルな作りで素直に笑える場面が多く、アニメもユーモラスで好感が持てる。  ところでこの映画を見ていると、子役は別として誰が主役なのかわからない。一見重要そうに見える青年は、実は無責任でおバカな若者の代表だったらしく、最後はどうやら皆と一緒に死亡したらしいのは自業自得っぽい。お相手の女性歌手は生き残っていたが、これは当時の若者にもあった純粋な良心(または批判精神)をこの人が代表していたからかも知れない。 一方ゴジラについては、時期のせいもあるだろうが擬人化の度合いが大きい。今回は海のゴミ掃除の延長で?ヘドラ退治にもご尽力いただいたわけだが、そもそもの原因となった人間側にもそれなりにお怒りだったらしく、最後にはきついお叱りをいただく形になっていた。映画のラスト、ゴジラが去って行く場面では男声コーラスの歌うテーマ曲がかかり、なんでこんな間抜けな歌を入れたのかと一瞬思ったが、ああこれはゴジラ本人が歌っているのだと気がついた。ゴジラの心がわかったのは、最初から共鳴関係にあったらしい少年と、テーマ曲を歌う女性歌手の二人だけだったようである。  なお当時の記憶では、田子の浦のヘドロ公害は都市部の光化学スモッグと並んで環境汚染の代名詞だった。当時は富士山麓の海辺という程度の認識しかなかったが、劇中の被害地図は現在の地図と対照可能な程度には正確で、ヘドラの被害がどこまで及んだかが具体的にわかる。ヘドロ問題に関する現在の住民感情がどうかはわからないが、せっかくのご当地怪獣であるから、地元の皆さんにもぜひ見ていただければと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2013-03-16 12:44:11)(良:1票)
174.  ガメラ2  レギオン襲来 《ネタバレ》 
敵生物のデザインやスピリチュアル風の要素など気に食わない点はあり、90年代の素朴な環境観に基づくラストの警句も陳腐に感じられる。しかし前作よりマンガっぽさは薄れており、低レベルの突っ込みどころは多くない。また社会描写の現実感は増しており、映像面でも前作同様の感動がある。マイナス面は小さくプラス面が最大限に発揮されていて、大人向け(一応)のガメラ映画としては総合的に高水準の内容を実現しているように思う。 特に、前作では邪魔ばかりしていた人間側が今回は大活躍なのは素直に嬉しい。当初はほとんど絶望的な戦いだったが、ガメラと共闘を決めた後はちゃんと効果的な支援ができていた。隊員が普通の人間の心を持っている(当然だが)ことを示す場面や、ともに戦った仲間としてガメラに敬意を表する場面があったのは、わざとらしくもあるが心温まる情景だった。 また霞目飛行場でのガメラが具体的行動として人間を守ろうとしていたのは印象的で(振り返ってヘリを見ていた)、ちゃんと“ぼくらのガメラ”的性質を持っているのは一応安心できる。浅黄ちゃんの「ガメラも血を流したんです」の台詞で泣けて来たのは他人には言えない。 ほか特筆すべき点として、今回はヒロインが可愛い(前作が可愛くないとまでは言わない)。また日本テレビの関谷アナウンサーが懐かしい。この人がまだ現役の時代と思えば、けっこう前の映画なのだなと実感する。  なお以下は余談になるが、今回は東京以北の都市が舞台なのは怪獣映画としては珍しい。しかし仙台に関しては、「白松がモナカ」の看板は何度も映るものの仙台らしい特徴的な風景があまりなく、学生時代に住んでいた者としては不満もある。またキャッチコピーが「消滅するのは日本か、レギオンか」であるのに、結果的には日本でなく仙台だけが消滅してしまったのは理不尽だ。こんな深い穴があいてしまっては復興どころではなく、一体どうしてくれるのかと思う。 ただ些細なことだが個人的に注目したのは、宮城県が設置した救護所のテントに「名取市役所」と書いてあったことで、これは仙台市の被災により隣接の名取市が緊急的な支援を行っていることを示している。これも映画のリアリティに寄与しているが、その後の震災のことを考えれば複雑な心境にもなる(両市とも沿岸部の津波被害が甚大だった)。現実の悲惨さに接してみれば、怪獣映画も呑気に見ていられない。
[DVD(邦画)] 7点(2013-01-20 08:46:33)
175.  大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス 《ネタバレ》 
公開当時は見ていないが、物心ついた時にはすでにギャオスというものが世の中に確固として存在していた記憶があり、自分としては昭和を代表する悪役怪獣のように思っていた。昔は解剖図の胃の中に人型のものが描かれているだけで恐ろしかったが、実際に映画を見たのは学祭の自主上映(バルゴンと二本立て)が最初だったので、ギャオスが人を食う場面を子どもが怖がるかわからないのは残念である。外見的には鋭角的な姿が超自然的にも感じられ、平成ガメラに出るグロい生き物よりかえって怪獣らしい怪獣に思われる。 映画の内容としては、まず導入部として大規模な火山活動を想定し、その上で怪獣の出現という異常事態に導いていたのはオーソドックスな構成に思える。大がかりな都市破壊場面は少ないが、富士五湖近く?の自然景観を背景にした工事現場の風景にはそれなりの現実感と最前線の緊張感があった。前作に続いてガメラが最後に敵の首筋に噛みつくのは生物同士の死闘の雰囲気を出している。 一方ドラマ部分では、子ども向け映画でありながら用地買収のゴネ得など世間の実態そのままなのは苦笑するしかないが、「高速道路ができれば便利になる」「土地を捨てる人たちの気持ち」という複合的な住民感情にも一応配慮していたのは真面目に思えた。  ところで前2作と比較すると、ガメラが本格的に子どもの味方になったのはこの回からのようである。象徴的だったのはガメラが明らかな意図をもって少年を救う場面であり、これはそのように意識して見れば感動的だった。今回はこの少年が中心人物になって要所で大人の対策に助言(放言)し、最後はガメラの力も借りて事態を終息に導いていた。また前作に続いて欲深い大人の姿も描かれているが、この映画では少年の素直な心が大人を改心させることで、怪獣と大人の醜い心の両方を子どもが退治する形になっており、これはよくできたお話である。そのほか少年がふと目覚めると、周囲に誰もいなかったときの不安感を表現していたのは秀逸だった。 ただし、この少年がわがままで生意気でやかましく可愛気がないのは何とかしてくれと言いたい。これは昭和ガメラの子ども向け路線で生じる弊害だが、特に今回は少年が甘ったれなくせに小賢しいのが気に障る。  そういうことで絶賛するわけにもいかないのだが、昭和怪獣特撮としては結構な良作であり、個人的にも思い入れの強い映画である。
[DVD(邦画)] 7点(2013-01-15 22:03:27)
176.  宇宙戦艦ヤマト 《ネタバレ》 
「古代くんが死んじゃう…」がないのは知っていたが、「馬鹿め」の返信や、ワープ時の視聴者サービスくらいは短いので入れてくれてもいいだろう。要はTVシリーズの総集編なので映画として評価すべきものでもないだろうが、中身は一応ヤマトなので、ヤマトに関することを書いておく。 まず2世紀前の廃物を改造するのが不自然なのはもちろん、全体的にも科学考証度外視でサイエンス・フィクションとしては落第だと当時の小学生でさえ思っていた。また何かと適当な作りに思える部分が多く、ご都合主義も満載で動画としても粗い印象があり、決してベタ褒めできるようなものではない。 しかし自分にとってこのストーリーの価値は、実はそんなことには全く左右されない。悲運の軍艦大和が宇宙戦艦として復活し、大遠征の果てに目的を遂げてちゃんと還って来る、という点に激しく共感したからこそ、各種の問題点は当時から全部不問にしていたのである。また、勝利と引換えのあまりに大きな犠牲に茫然とする描写や、周囲が喜びに沸く中でひとり家族の写真を見ながら息を引き取る姿など、見るべき場面もちゃんと用意されている。個人的に忘れがたいアニメであったことは間違いなく、自分にとってのヤマトはこのTV第1シリーズだけで充分だというのが、その後の商業展開を横目で眺めて来た立場からの実感である。個人的に一定の思いもあることから、ここは総集編というよりTVシリーズに対する評価をそのまま点数にしておく。  ちなみに思い出話になるが、うちのクラスでは短いチョークを教室の天井に投げ、跳ね返らせて目指す相手に当てるのを反射衛星砲と言っていた。授業中にこれをやったら、怒った相手からチョークが一直線に飛んで来たことがあった。
[DVD(邦画)] 7点(2012-09-24 20:02:21)
177.  ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない 《ネタバレ》 
笑って泣ける娯楽映画である。題名の「ブラック会社」というのは社長の言動で匂わされる程度で、実際にはどこの組織にもあることを誇張しただけのように思えるが、これは他のレビュアーも書かれているように、若い連中が自分の職場実態を大げさに語って笑い合っているような感覚だと思えばいいのだろう。ちなみに2chの当該スレッド(まとめサイト)に登場する会社は、映画よりさらにまともに感じられる。 それより自分としては、七五三と言われる若年者の離職率との関係の方が強く感じられた。病気になるほど合わない職場だとか、中の人間を腐らせるような本当のブラック企業でもない限り、少々きつくてもとりあえず今いる場所で頑張ってみろと言いたいわけで、いずれ転職するにしてもキャリアの有無が重要なのは劇中に出ているとおりである。それまでは、その場その場で自分なりの限界突破を重ねていくのが職業生活だろうし、それがちゃんと描かれているのはこの映画のいいところである。 ほかにも雇用関連の各種要素が盛り込まれているようだが、ただし主人公が高校中退で10年くらいも社会経験がないという設定では、本人がコミュニケーションスキルの問題を免れないのでさすがに無理がある。大学中退で数年のひきこもり体験という程度でも筋書きに支障ないのではと思うが、まあネット由来のストーリーに注文付けても仕方ないだろう。 なお余談として、「中西さん」役の女優は容姿端麗でいい感じだが、劇中人物としてはけっこう天然で微笑ましい。こういう人はプレッシャーを素通しにして、毎日が限界のような業界でもけっこう務まるかも知れないと思わせる。
[DVD(邦画)] 7点(2012-08-05 20:14:36)(良:1票)
178.  典子は、今 《ネタバレ》 
主人公と同年代のため、そういえばこの人は今どうされているかなと思いながら見た。 見てまず思うのは、特に前半で役者の演技が臭く見えるということで、またBGMによる場面の盛り上げも非常に安直に感じられる。台詞だけでも相当厳しいものがあるのだから、もっと普通に淡々とやればいいだろうと思うが、一方で主人公が自然体で前向きなのは見ていて好感を覚える。この人の存在が映画全体を底上げしているように思えるが(主役だから当然か)、逆にそのせいで本職の役者が割を食わされているのかも知れない。  後半になると、主人公が熊本市から広島県まで旅行するというので一体どうするのかと他人事ながら気を揉んだが、要はまわりの人に頼めばいいということだったらしい。新幹線の窓側の青年は、自分からは動かないながらも(ちょっとそわそわしていた)頼めば快く応じていた。たとえ世間がそれほど優しいものではないとしても、ある程度の余裕は常にどこかにあるわけで、その余裕の部分をどれだけうまく引き出せるかが大事ということだろうと感じられる。自分としても余計なお世話までする気はないが、求めがあれば直ちに応じられる余裕は持っておかなければと思っている。 なお旅行先の場面では鈴木光枝さんが懐かしく、この人の顔を見ているだけで泣けるような気分になるが、終盤の海の場面では主人公もまた輝いて見えていた(ヘリコプターの影は邪魔)。  ところで出演者本人の近著を読むと、この当時の髪型はいわゆる聖子ちゃんカットを真似たものだったのに、映画出演のため変えさせられて嫌だったとのことで、ご心中はお察し申し上げる。当然ながら劇中人物と出演者本人は必ずしも同一視できないわけだが、それでも本人が現在も自信をもって人生を送られている姿は、この映画のメッセージが真実であることをいつまでも証明し続けていると感じられる。
[DVD(邦画)] 7点(2012-06-23 21:23:59)
179.  シェイディー・グローヴ 《ネタバレ》 
ヒロインの理花は、映像で見る限りは自己中でナルシストで執着心が強くストーカーでイタい女ではあるが、少し離れて眺めるだけならこれでも十分かわいく見える。観客は彼女の常軌を逸した行動を全部見ているので、相手の甲野は幻でも見ているのかという気になるわけだが、しかし理花も甲野の前では結構まともにふるまっていたようで、自分としては少し彼女を擁護したくなる。 また一方の甲野は自ら望んで孤立してしまう性格らしく、都合が悪いとすぐ接触を絶って自己完結してしまうらしい。それでは外部情報も限定的になり、自分のいる場所からしかものが見えなくなってしまう。最初の方で、理花がコーヒー豆を分けてくれるというのに自分で買うと断っていたが、そういう他人行儀な態度は最後まで敬語だったことにも表れており、この男には自分としても結構共感するところがある。 この2人は互いに向き合わないまま時間だけが経過するので最後はどうなるかと思うわけだが、終盤に至るとストーリーが急展開して、最後は落とし所にストンと収まったような印象がある。危うく行き違いそうになった2人が離れる間際にかろうじて結びついて一つになり、そこから新しいラブストーリーが始まった感じで爽快感の残る映画になっていた。  ただし物語の解釈としてはよくわからない点が多いので面倒くさい。相手の姿が自分を映す鏡だとか、いびつな2人の相補的関係という程度まではいいとして、心のダークマターとか他者の承認による自分の存在確認といった要素も出て来るが、こういうのはお話全体としてどう統合されているのかわからない。変に奥が深いようだが、深入りすれば感動が増すわけでもないだろうからこれ以上理屈で考えるのはやめておく。 なお個別の場面としては、甲野が高速道路を走行中に延々と歌っていたのは何かほのぼのして心癒されるものがあった。また車内の告白場面には見入ってしまったが、ここで理花が「こういうやり方ってすごく失礼なのがわからないの?」と怒っていたのに対し、すいませんでしたと謝りたくなる個人的経験があったのを思い出した。
[DVD(邦画)] 7点(2012-06-23 21:22:51)
180.  DEAD END RUN 《ネタバレ》 
3話オムニバスのうち第1話の女優が目的で見たので、歌って踊れるヒロインの魅力を十分に(失笑しながら)満喫させてもらった。ミュージカルの舞台に突然引っ張り出されて戸惑う男の表情もキュートかもしれないが、死んだヒロインもまた魅力的である。終わってみれば超コンパクトなラブストーリーになっており、これは何度でも見たくなる。 そのほか第2話は少々地味だが、第3話は映像全体が明るくなり、またこの回だけは行き止まりを突き抜けられるのでいわば解脱感がある。出発点が同じで何回か繰り返すとやがて先へ進める時が来るのはゲーム感覚かと思ったが、登場人物は異なっているのでプレイはそれぞれ1回きりらしい。第3話の登場人物だけがたまたま幸運をつかんだということだろうが、個人的には第1話の結末でも十分受け入れられる。 なお第1と第3の男が、サスペンス調で生死を賭けた逃避行をしていながら硬派な印象がなく、女優とのからみの中でその辺の兄ちゃんのような素顔が丸出しになるのは現代のリアリティかと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2012-06-06 22:53:00)
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