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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 620
性別 男性
自己紹介  「監督の数ではなく、観客の数だけ映画が有る」という考えでアレコレ書いています。
 洋画に関しては、なるべく字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くというスタンスです。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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1.  キサラギ 《ネタバレ》 
 丁寧に作られていて、万人に優しい映画ですね。  その作りゆえに、初見の際には(分かり易過ぎる)(一度で分かる事を繰り返し説明して、観客を馬鹿にしてるのか)と思えちゃって、評価は低かったんだけど……  その後、色んな映画を観て「誰にでも分かるように作る」という事が、如何に難しいかを学んだ上で再見すると、印象は一変。  本当に良く出来た映画である事が分かり、一気に評価が高まりました。   特に「状況に取り残されている安男というキャラクターを用意し、他のメンバーが安男に説明するという形で、観客にも分かり易く説明してみせている」って点は凄いと思うし、その「説明する流れ」がギャグとしても成立してる辺りなんかは、実に見事。  「警視総監の息子が署内でイジメられてるって、不自然じゃない?」とか「プラネタリウムに関しては、もうちょっと伏線が欲しかった」とか、ツッコミ所や不満点らしきものは色々思い浮かぶんだけど、根本的に理解出来ないって箇所は無かったし、脚本の完成度は高かったように思えます。  「そもそもジョニー・デップを、この角度で見た事が無い」などの台詞で笑わせるセンスも良いし、それまで隠してた如月ミキの素顔や歌声をクライマックスで明かし(あぁ、これは売れないわ……)(でも、何か不思議な愛嬌が有るし、応援したくなる気持ちも分かる)って感じさせる辺りなんかも、面白かったですね。   作中最大の謎である「如月ミキの死因」について「友達でも、マネージャーでも、幼馴染でも父親でもない、単なる一ファンからの手紙を命より大切にしていたから」という形で、綺麗に答えを出している辺りも良い。  この点に関しては「実は〇〇の正体はストーカーだった」と判明する小説版「〇〇が如月ミキの殺害犯である」と判明するドラマCD版などに比べても「本当なんて分からんよ。真実は常に主観でしか有り得ない」という曖昧な結論で終わる本作の方が、誠実な作りだったように思えます。   この映画を観た後「続きが観たい」「真実が知りたい」と思うのは当然の心理な訳で、それに対する答えとして上述の小説やらドラマCDやらが存在しているんでしょうけど、やっぱり「善人かと思われた〇〇が、実は悪人だった」っていうのは後味悪いし、何ていうか「余計な後付け」に感じられるんですよね。  映画の中で皆が頑張って「悲劇的な死を、綺麗に解釈する」って儀式を行い、達成感も得られていたのに、そこに冷や水を浴びせられた気分。   やはり、この映画の核となるのは「皆で集まり、ああでもないこうでもないと話し合う楽しさ」だと思うし、あえて結論を出さずに、皆で毎年集まっては謎解き合戦に興じてる事を示す本作の終わり方こそが、一番美しかったんじゃないかと。   そもそも巷に溢れる映画の感想にしたって、推理どころか妄想の類が入り込んだ代物がチラホラある訳だし「あれって実は、ああだったんじゃないか」と話し合う劇中人物達って、映画を観た後に色々話す人達と、ちょっと似てるんですよね。  まぁ、これも「こじつけ」の類ではあるんですが、本作から「映画好きに愛される映画」って印象を受けるのは、その辺りも一因な気がします。   実際、こじつけるのって楽しくて、例えば「如月ミキ」→「二月」「未」「来」→「2は未だに来ない」って事で、本作が「続編が有るように見せかけて、実は続編の無い映画」である事を示してるとか、何でも言えちゃう訳ですし。  そんな具合に「推理する楽しさ」あるいは「こじつける楽しさ」を描いたという、とても貴重な一本だと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2025-02-06 15:23:38)(良:1票) ★《更新》★
2.  リバー、流れないでよ 《ネタバレ》 
 「続きが気になる」「結末が知りたい」と観客に感じさせるのは、良い映画の条件の一つだと思います。  その点に関して、本作は文句無しの出来栄えでしたね。   ただ、面白かったかというと……ちょっと微妙です。  「続きが気になる」って感情と「面白い」って感情とは、本来別種の代物なんだなって、この映画に教えてもらったような気分。   やっぱり、タイムループの期間が二分っていうのが短過ぎて、主人公が階段を登る姿なんかを何度も何度も見せられるもんだから、流石に(もう良いよ……)って気持ちになっちゃうんですよね。  一つのループ期間を、一回の長回しで見せるって手法も、アイディアとしては面白いんだけど、実際に観た限りでは「手ブレで酔う」「アングルがワンパターンで退屈」っていう、デメリットの方が際立っていた気がします。  劇中の人物達もタイムループで気が狂いそうになってたけど、観客まで同じ気持ちにさせられるっていうのは、正直辛いです。   冒頭に出てきた白服の女性が全然出てこない(途中で出てくるけど、タイムループに巻き込まれているのに、妙に冷静だったりする)のが気になっていたら、それが伏線だったとか、タイムループ中のはずなのに雪が降り出して(いや、駄目だろ。ロケやり直せよ)と思っていたら、それに対しても台詞上のフォローが有ったりとか、丁寧に作られているので、映画としての完成度は高いんですけどね。  「面白い映画」っていうよりは「良く出来た映画」っていう、そんな誉め言葉が似合いそうな感じ。   「ループするのが二分間だなんて短過ぎる」って点を逆手に取ったような「たった二分間のデートでも、色んな事が出来る」って示す終盤の展開も、独特な魅力が有って良かったです。  個人的には、タイムマシンを直す件よりも、あそこのデート場面の方が、本作のクライマックスと呼べるんじゃないかなって気がしました。   そんなデート場面での、雪化粧した旅館や山の景色が、本当に美しくて……  あれって、最初から計算尽くで「この場面には、雪が必要だから」と、天気を狙い定めた上で撮影したのか、それとも偶然雪が降ってしまっただけなのかと、気になっちゃいますね。  もし前者だとしたら、作り手の拘りに「粋」を感じて嬉しくなるし、後者だとしたら、まるで映画の神様からの贈り物のような「素敵な偶然」だよなって、そんな風に思えました。
[インターネット(邦画)] 6点(2024-11-28 11:56:58)(良:2票)
3.  ゴジラ(1954) 《ネタバレ》 
 「ゴジラ」(1954年)とは、芹沢大助という人間の物語である。  ……というのが自分の持論だったのですが、此度再鑑賞してみても、やはりその持論は揺らぐ事が無かったです。   そもそも本作のストーリーラインって、剽窃や盗作と言って良いぐらいに「原子怪獣現わる」(1953年)そのままだったりする訳ですが、そんな中で最も独自性を感じさせるのが芹沢大助の存在なんですよね。  一応は主人公と呼べるはずの尾形秀人の影が薄いというか、出番が少ない事も、そう感じさせる一因。  自分としては「芹沢が主人公であり、尾形は主人公の最期を看取ってくれる存在」と、そう考えてしまうくらいに、芹沢博士のキャラクターは魅力的だったと思います。   とはいえ、そんな「隻眼の天才科学者」に魅了されるだけの映画って訳ではなく「芹沢博士が登場していない場面」あるいは「ゴジラが登場していない場面」も、しっかり面白い辺りが、本作が傑作たる所以ですよね。  後者に関しては特に重要であり「怪獣が出てこない場面でも面白い怪獣映画」と感じさせるのって、本当に凄い事なんじゃないでしょうか。  世に怪獣映画は数あれど、その大半は「怪獣が出てくる場面は力が入っていて面白いけど、出てこない場面は退屈」って品だったりしますからね。  本作に関してはゴジラを「原爆の象徴」「戦争の恐怖を思い出させる存在」として描いたのが大正解であり「ゴジラに怯える人々」や「何とかしてゴジラに対処しようとする人々」を描いた人間パートも抜群に面白いというのが、怪獣映画の歴史の中でも画期的な部分だったように思えます。  空襲の記憶が鮮明な時期に撮影されたがゆえに、逃げ惑う人々の演技にリアリティが有るって点も「怪獣」という突飛な存在に実在感を与えているし、ゴジラの襲来によって「井戸が使えなくなる」という描写にも、恐ろしさを感じましたね。  後々のゴジラ映画とは異なり、ゴジラの熱線が「熱い」というより「冷たい」印象を受ける音であった点も、非常に印象深いです。   その他、ゴジラの存在を公表すべきと主張する「強い女性」的なキャラクターが登場しているのも興味深いとか、劇中に「美女とゴジラ」という看板があるのは、キングコングへのオマージュな気がするとか、語りたい事柄は沢山有るのですが……   やっぱり、この映画の一番の語り所と言えばもう、芹沢博士の最期を措いて他に無いです。  別れ際、かつての婚約者と、その恋人に掛ける「幸福に暮らせよ」という台詞も悲しいし、単なる自己犠牲の美しさだけでなく「芹沢博士は、人間を信じられなかった。だから禁断の新兵器もろとも自分も死ぬ道を選んだ」という哀愁も描いているのが、たまらないんですよね。  彼はゴジラに勝利した英雄であると同時に、人類に絶望して自殺した敗北者でもある。  この構図は実に悲劇的だし、それほどに人間を信じられなかった彼が、それでも愛していた女性と、その恋人に対しては「幸福に暮らして欲しい」と願って死んでいった事にも、切なさを感じます。   ゴジラを倒した後、マスコミが嬉しそうに伝える「この感激、この喜び、ついに勝ちました!」「若い世紀の科学者、芹沢博士は遂に勝ったのであります」という言葉に、なんと空しい勝利なんだと思える辺りも、皮肉な味わいが有って好きですね。  ゴジラの保護を訴えていた山根先生が「もし水爆実験が続けて行われるとしたら、あのゴジラの同類が、また世界のどこかに……」と教訓的な台詞を吐き、敬礼で終わるラストシーンも、勿論良いんだけど……  自分としては、マスコミの白々しい「勝利宣言」に合わせる形で、人々が敬礼を行う場面で終わっていたとしても、それはそれで名作に仕上がっていたんじゃないかって、そんな風に思えました。
[インターネット(邦画)] 9点(2024-11-13 15:00:17)(良:2票)
4.  ゴジラ-1.0 《ネタバレ》 
 ゴジラ映画の最高傑作。   ……なんて言い出すと、ほんの一年前の自分に「最高傑作は初代に決まってるだろ」とツッコまれそうなんですが、本当にそう評したくなるような逸品だったんだから、参っちゃいますね。  まずは何を置いても、主人公の敷島浩一というキャラクターが素晴らしい。  基本的に自分は「悲劇に酔ってる」って感じの主人公は苦手なんですが、本作の敷島は「悲劇に溺れてる」人物であり、その溺れ方が圧巻で、観ていて惹き付けられてしまうんです。  どんなに自分が不幸であっても、赤ん坊を預けられたら見捨てられないという善性の描写も丁寧であり、自然と感情移入出来る。  本当にベタですが「どうか幸せになって欲しい」と、心から応援したくなる存在でした。   思えば初代ゴジラが芹沢大助という人間の物語であったように、本作は敷島浩一という人間の物語だった訳で、その辺りの「初代ゴジラを徹底的に研究し、魅力を理解した上で、それを越えるような映画を撮ってみせた」って事も、観ていて心地良かったです。  特に、有名な「ゴジラのテーマ」の使い方が初代と同じであり「ゴジラに立ち向かう人類の曲」として流れる演出なんて、もう最高。  山崎貴は天才というだけでなく「ゴジラを愛してる人」なんだと、そう確信させられました。    脇役陣も魅力的であり、自分としては「隣のおばさん」こと澄子さんが、特にお気に入り。  憎んでたはずの敷島に「とっときの白米」を渡してやる場面も良かったし「あの子に重湯作るのに使いな」という台詞が、終盤で敷島が澄子さんに託す手紙にて「明子のために使って下さい」と大金を同封してる場面に繋がる脚本も、素晴らしいの一言。  幼子を救うという善意が、大人達の心を優しく繋いでみせたという流れ、本当に大好きです。   戦えなかった兵器の代表格である震電に、戦わなかった兵士の敷島が乗る展開も熱いし、敷島が死なせた兵士達の写真束の中に、明子に似た娘を抱いてる兵士の写真があるという(そこまでやるか……)って描写も、本作の面白さを高めていますね。  整備士の橘さんが足を引き摺る仕草を印象的に描いておき、彼が再登場する場面で「足を引き摺って歩く男の足元」を映すカメラワークになって、顔を見せるより先に(橘さんだ!)と観客に覚らせる辺りも、実に良い。   終盤で敷島が特攻死せずに生き延びたと知った時の橘さんの表情も、印象深いです。  「本当は生きたいと願ってた奴の命を救う」という形で、宿願を果たせた訳だし、憎かった敷島の命を救う事で、橘さんの戦争もようやく終わったんだなと感じられる、忘れ難い名場面でした。   一応、欠点らしき部分も挙げておくと「ヒロインである典子の黒い痣」や「最後にゴジラが再生していく場面」など、せっかくのハッピーエンドに影を残す終わり方をした点が挙げられそうですが……  「黒い痣」に関しては、ゴジラが原爆の象徴である以上「たとえ生き残ったとしても、重い影を背負って生きなければいけない」と示す為に必要だった気もするし、初代より前の時間軸の話である以上、この映画世界にも芹沢博士が存在して、復活したゴジラと相対し「ゴジラを殺せるのは、オキシジェン・デストロイヤーだけである」と証明してみせたのではないかとも考えられるしで、決定的な瑕とは思えませんでしたね。   他にも、小説版にて文章で描かれた「震電から眺める家の一つ一つに、明子がいて、典子がいて、敷島がいて、日々の暮らしを営んでいる」「これをゴジラに破壊させる訳にはいけない」と敷島が決意を新たにする場面を、台詞に頼らず映像だけで描いてるのが凄いとか「録音した声をゴジラの同族の声と思わせて呼び寄せる作戦」は、ゴジラの元ネタである「原子怪獣現わる」(1953年)の更なる元ネタの「霧笛」(1951年)を彷彿とさせるとか、本当、この映画について語ると、止まらなくなっちゃいますね。   邦画でありながらアカデミー受賞作であり、作品賞や脚本賞を取っても驚かないくらいの出来栄えだったのですが、本作が受賞したのは「視覚効果賞」であったというのも、味わい深いものがあります。  それは怪獣映画にとって、最高の勲章。  逃げ惑う人々を踏み潰し、家屋も容赦無く破壊するゴジラの存在感が、圧倒的でしたからね。  人を殺すのも、家を壊すのも、それを実際に見せるのは大変だからって「見せずに想像させる」演出に逃げがちな部分を、全力で描いてみせた作り手の姿勢が、本当に素晴らしかったです。   「いるはずのない怪獣が、スクリーンの中に確かに存在してると感じさせる」という意味合いにおいて、本作は最高のゴジラ映画である以上に「最高の怪獣映画」なのだと、強く思えました。
[映画館(邦画)] 10点(2024-06-03 23:49:22)(良:6票)
5.  映画ドラえもん のび太の地球交響楽 《ネタバレ》 
 音楽を嫌いだった少年が、音楽を好きになるまでを描いた映画。   「冒険」を主題にしたドラ映画が多かった中、本作では「音楽」が主題になっているという、それだけでも斬新さを感じますね。  映画の強みとは映像だけでなく、音にもあるのだと実感させられたし、漫画という媒体の原作では生み出せない「映画ドラえもん」ならではの魅力を生み出す事にも成功してるのだから、大いに感動。  実にシリーズ18作目(スタドラを含めたら20作目、旧アニメ版も含めたら40作以上)でありながら、未開拓の分野に切り込んでみせた作り手の発想力と冒険心に、熱い拍手を送りたいです。   そんな本作で一番心に残ったのは、クライマックスの場面。  地球上の音楽全てを結集させて敵を打ち払うという、とても盛り上がる場面なのですが、そんな中で、さり気無く「戦場でハーモニカを吹く兵士」という一コマを挟んでいるんですよね。  恐らくは傷付いた戦友の為、束の間の安らぎを与えてるという、その姿を刹那的に描く演出には、本当にグッと来ちゃいました。  主人公であるのび太達は、平和な日本で暮らしているけど、地球には戦争をしている人達もいる。  そして、そんな場所でも人々は音楽を奏でているという、正に「地球交響楽」を体現した場面であり、文句無しで素晴らしかったです。   序盤にて、のび太が風呂場で笛の練習していたお陰で地球が救われたとか、脚本の伏線回収も鮮やかだったし、ゲストキャラクターも魅力的。  ロボットの語源になったというカレル・チャペックから拝借して、ゲストロボを「チャペック」と名付けるセンスにも、ニヤリとさせられましたね。  幼女のミッカちゃんも可愛らしく「のほほんメガネ」と呼んで小馬鹿にしていた相手を、最後の最後に「のび太お兄ちゃん」と呼ぶツンデレ表現なんかも、幼い女の子ならではの魅力があって、良かったです。  主人公のび太と同世代の女の子ではない、妹のような幼女だからこその可愛さが、上手く描けていたと思います。   そんなミッカちゃんとの別れの場面を直接描かず、エンディングの一枚絵でのび太に抱き着く姿や、皆から貰ったプレゼントを部屋に飾ってる描写などで、断片的に伝えて想像力を刺激する形になっているのも、非常に御洒落。  今井監督って「新恐竜」でもピー助との二度目の別れをさり気無く描いてみせていたし、こういった「さり気無い描き方で、大きな感動を生み出す」という手法が、本当に上手いですよね。  「十八番」や「職人芸」と言って良い領域に達してると思います。   「中盤でジャイスネ主役になる場面は、ちょっと浮いてるし、観ていてダレる」「ゲストキャラも多過ぎるし、個々に見せ場を与えようとして散漫になっているので、ミッカちゃんとチャペックの二人に焦点を絞っても良かったのでは?」等々、不満点も有るには有るんですが……  主題歌も大好きなVaundyだし、映画にも合ってる曲だったしで、満足度の方が高かったですね。   そうして、最後の「おまけ映像」には、心から興奮。  満を持しての寺本監督復帰作で「新・夢幻三剣士」の可能性が高いだなんて、期待するなという方が無理な話です。   また一年後に、スクリーンでドラ映画を満喫出来る。  そんな幸せを噛み締めながら、劇場を後にする帰り道まで、楽しく過ごせた一本でした。
[映画館(邦画)] 8点(2024-03-01 21:29:24)(良:1票)
6.  忠魂義烈 実録忠臣蔵 《ネタバレ》 
 赤穂浪士が「赤穂義士」であった時代の作品、って感じですね。  1910年代から1920年代に掛けて、幾つも制作された「実録忠臣蔵」の中の一本であり、自分が観た中でも最古の忠臣蔵映画となります。   そんな訳で、近年の作に比すると捻った部分が少なく、忠臣蔵という題材を直球で描いてる感じなのが、逆に新鮮。  最近では「彼らには彼らなりの言い分がある」とされがちな吉良上野介も、大野九郎兵衛も、本作では単純な悪役でしかないですからね。  この辺りは(悪役を悪役として、真っ正直に描けた時代なんだなぁ……)って思えたりして、感慨深かったです。   特に吉良に関しては、本当に悪し様に描かれており、ここまで来ると一周回って面白い。  自分が嘘を教えたせいで浅野が遅刻したのに、いざ斬られそうになったら「御役怠慢の其処許を、急に病気と御上を取りなした親切者の吉良上野介を、貴殿は切る気か」「恩義を仇で返される気か、謝罪せられい」と挑発したりするのが、何とも憎たらしくて、いっそ天晴と思えちゃいました。  自分が観たのは活弁版だったのですが、字幕には無い「鮒侍がっ!」という吉良のお約束台詞が、活弁によって付け足されているのも愉快。   そもそも物語として「吉良に斬り付けた浅野の方が正義である」って前提にするのが無理がある訳で、その無理を通す為には、吉良はこのくらい徹底した悪役じゃないと、説得力が無いんですよね。  自分は、どちらかといえば「吉良は被害者であり、赤穂浪士は逆恨みした犯罪者でしかない」という視点の忠臣蔵の方が、好みだったりする訳ですが……  こういう前時代的な「赤穂義士」を描いた作品にも、確かな王道の魅力があるよなと、しみじみ感じ入りました。   それと、本作は当時の基準で言えば「前後編に分けた大作」なんだけど、現代の観点からすると「一時間ほどで完結する忠臣蔵映画って、珍しい」ってなるのが、新鮮な感じでしたね。  何時間も掛けて描かれるのが当たり前な忠臣蔵の物語が、僅か一時間で終わってしまう訳だけど、その中でも結構な尺を取って「大石の芸者遊び」が描かれているのも、これまた興味深い。  やはり忠臣蔵を描く上で、そこは絶対外せないんだなって感心しちゃったし、重苦しい場面が続く中での「箸休め」としての効果が大きいんだと、映画を通して教えてもらったような気分になりました。   ちなみに、本作は舞台裏でのゴタゴタが多く、火災でフィルムが消失してしまったり、討ち入りの場面は「間者」という同年公開の映画からの流用だったり、主演俳優は横柄な態度で監督を困らせたり、かと思えば監督は監督で片岡千恵蔵に不義理を働いたりで(「判官やらせたる」と内匠頭役をチラつかせて舞台から映画に引き抜いておきながら、実際は端役しか与えず、悔しさの余り千恵蔵は引退を考えた)色んな意味で問題作だったりするんですよね。  幸い、映画を観賞中の自分には、それらの製作背景は影響を与えず、精々 (討ち入りの場面、ちょっと浮いてるな……山場だから気合を入れて空回りしたのかな?)  って思う程度で済んだのですが、そんな問題作に限って、こうして映画史に名が残り、百年近くを経ても鑑賞出来る品になったのだと思えば、何とも感慨深いです。   冒頭で挙げた、幾つもの「実録忠臣蔵」(1910年、1914年、1918年、1920年、1921年、1922年、1923年、1926年)の内、今でも気軽に観られるのは本作だけのはずですし……  案外、不幸な生い立ちながらも結果的には恵まれた、幸せな映画なのかも知れません。
[インターネット(邦画)] 6点(2023-05-16 07:08:27)
7.  アウターマン 《ネタバレ》 
 (悪役にしては恰好良いデザイン)(ヒーローにしては悪そうな顔)なんて思っていたら、それが伏線というか、正しい認識だったと明かされる展開が気持ち良いですね。  悪者なはずのシルビー星人が正義の味方になり、正義の味方なはずのアウターマンが悪者だったと判明する。  下手に扱えば「捻り過ぎ」「王道の逆をやりたいだけ」って印象になってしまいそうなストーリーラインなのに、しっかり面白く仕上がっていたんだから、お見事でした。   シルヴィ・バルタンに因んで、バルタン星人もどきの名前がシルビー星人っていうのもニヤリとさせるし、特撮好きの為の「オタク映画」としての魅力が、きちんと備わっていたのも良いですね。  作中に出てくる特撮オタク達が「平成版のアウターマンには興味無い」「やっぱり昭和のアナログな特撮が良い」的な主張をするのも、如何にもって感じだし「オタク向けな映画なんだけど、オタクを美化し過ぎていない」ってバランスなのが、これまた絶妙。  本作の主軸となるのは「シルビー星人のタルバと、浩少年との絆」であり、特撮オタク達は脇役というか、単なる添え物に過ぎないんです。  それが物足りないって人もいるだろうけど、個人的には好みのバランスでした。   (これ途中でタルバが死んじゃって、仇討ち展開になるのかな……タルバ良い奴だから、それは止めて欲しいなぁ)なんて考えていたら、ちゃんと「タルバは生きていた」ってオチになるのも、嬉しくなっちゃいましたね。  本来はヒーローではなく、宇宙の放浪者に過ぎないタルバが、地球を守る事には興味無いと言い放ち、仲良くなった浩少年との約束を守る為だけに戦うというのも、凄く熱い展開。  最後はアウターマンを倒して大団円を迎え「狙われた街」(1967年)をオマージュしたナレーションで〆るっていうのも、良い終わり方だったと思います。    そんな具合に「隠れた傑作」と呼べそうなだけの魅力を秘めた一品なんですが……  全体的な完成度としては、ちょっと作りの粗さも目立ちましたね。  脚本に関しても、どうも話が繋がってない感じがするし(何時の間にか特撮オタク達までシルビー星人に肩入れしている、など)そもそもタルバが平成アウターマンの役者達と合体して戦うって展開も、必然性に欠けていた気がします。  「役者が本当のヒーローになるという『ギャラクシー・クエスト』(1999年)のオマージュをやりたかった」あるいは「実際に特撮経験のある俳優を色々出したかった」などが理由かとも思えますが、個人的には「地球の為ではなく、浩少年の為だけに戦うタルバ」って時点で充分に感動出来たので、合体は必要無かったんじゃないかと。   決着が付いた後、浩少年だけじゃなく、周りの人達までシルビー星人に声援を送るっていうのも不自然だったし……  ここは「アウターマンが人を殺すのを見て正体を悟る」とか「凶器攻撃などの卑怯な戦い方に反感を抱き、正々堂々と戦うシルビー星人を応援し出す」とか、そういう流れにして欲しかったですね。  20億3千万のアウター星人が引き上げていった理由が謎のまま終わるのもスッキリしないし、終盤に不満点の多い形になってるのが、非常に残念でした。   でもまぁ、鑑賞前の「ウルトラマンを悪役にしてみたっていう、一発ネタだけの映画」という印象に比べたら、ずっと誠実で真面目な作りでしたし、素直に面白かったです。  最後に主人公のタルバは行方不明となり、特撮番組「宇宙星人シルビー」が放映されるって形で、画面越しに浩少年と再会する訳だけど……  その後ちゃんと二人で会って、少年との約束を守れた事を、誇らし気に報告して欲しいな、って思えました。
[DVD(邦画)] 6点(2023-03-15 23:15:15)(良:1票)
8.  モーレツ怪獣大決戦<OV> 《ネタバレ》 
 漫画「吼えろペン」にて、体調を崩すくらいに面白くないアマチュア特撮映画を観た主人公が、その後に「プロが作った映画は、ちゃんと作られていた」と実感し、これまで以上に映画を楽しめるようになったというエピソードがあります。  それを追体験したいという、邪な気持ちで鑑賞した訳ですが……   結果としては「退屈」「つまらない」という程度で「体調を崩すくらいのクオリティ」は味わえなかった為、当てが外れちゃいましたね。  元々自分が特撮好きという事もあり、怪獣が出てきて戦ってるというだけで、ある程度楽しめてしまいました。   そもそも本作は「パチモン怪獣」にスポットを当てた映画であり、玩具の世界にしか存在しなかったはずの彼らが、実際に映画の中で動く姿を拝めるというだけでも、それなりに価値のある一品だったりするんです。  熱線獣ヒーターに、水素獣エッチなど、往年のパチモン怪獣を好きだった人にとっては、正に夢のような映画。  レトロな音楽や画面作りにもノスタルジーを感じたし、スタッフロールに「照明 太陽光」と表記されてたのにも、クスッとしちゃいましたね。  「巨人獣」(1958年)へのオマージュ(作中に出てくる巨人が、ちゃんと隻眼になってる)とか、夕焼けの中で戦うのは「狙われた街」(1967年)を意識したんだろうなとか、特撮好きなら「元ネタ探し」をして楽しむのも可能だと思います。   とはいえ、作品の出来栄え自体は、決して良くないというか……  少なくとも「怪獣映画」という括りでは、自分が観てきた中でも最低の代物になってしまいそう。  色々欠点はあるけど、一番残念だったのは「作中に出てくる線路が、プラレール的な玩具の線路そのままだった事」ですね。  他の建物などは頑張って本物っぽく見えるよう作ってあったのに、明らかに線路だけ異質だったんです。  「こういう緩くてツッコミ所があるのが良いんだよ」みたいなメッセージ性も感じたけど、そういうのって「一生懸命作ったものに対し、観客が優しさを込めて思う事」であって、作り手が手抜きしても良い理由にはならないよなって、そんな事を考えてしまいました。   あと、自分が観たのは「GYAO!」の無料配信で、34分ほどのバージョンだったのですが、こちらにはグラビアアイドル演じる「プリティ・アサヤン」が登場しておらず、残念でしたね。  何時か機会があれば、彼女が登場するバージョンも観てみたいものです。
[インターネット(邦画)] 3点(2023-03-15 23:12:34)
9.  映画ドラえもん のび太と空の理想郷 《ネタバレ》 
 「世界平和」を目的とした人物と戦うドラ映画というのは、今回が初めてではないでしょうか。   非常に大人向けというか、難解とも言えるテーマであり、ともすれば観客の子供に「レイ博士は世界を平和にしようとしているのに、どうして悪い人なの?」という疑問を抱かせてしまいそうなのですが……  そこを、しっかり分かり易く、万人に伝わるよう作ってあったんだから、お見事でしたね。    「ユートピアとは、即ちディストピアである」という事を感じさせるパラダピアの描写も秀逸であり、空に浮かんだ理想郷としての魅力と、人の心が消されてしまう地獄としての恐ろしさ、その双方を描く事に成功しているんだから凄い。  特に、ジャイアンとスネ夫が「浄化」され「穏やかな善人」に変わっていく様は、何とも言えない不気味さが漂っていて、印象深いです。   メインゲストとなるソーニャが「もう一人の、ドラえもん」として描かれているのも、見逃せないポイント。  それはのび太に対し「キミは私に似ている」と呟いたレイ博士にも通じるものがあり、彼は「もう一人の、のび太」として描かれている。  過去作でも「アリガトデスからの大脱走」(2012年)のマジメー(声もレイ博士と同じ)という前例がありましたが「一歩間違えば、のび太もこうなっていたかも知れないという悪役を倒す物語」の系譜として、本作は決定版と呼べるほどの、素晴らしい仕上がりになっていると思います。   「南極大冒険」(2017年)や「STAND BY ME ドラえもん 2」(2020年)の系譜である「時間軸を弄った脚本」としての質の高さも、特筆に値しますね。  「青い虫の正体」「晴れてるのに雨が降っていた理由」どちらの伏線も巧妙に張られており、その回収の仕方が、実に鮮やか。  思えば脚本担当の古沢良太は三丁目の夕日シリーズでも山崎貴監督とコンビを組んでいた人ですし、それゆえにスタドラ2を踏まえたような内容にしたのかも知れません。   ドラえもんに「ボク達は、皆の友達になる為に作られた」と言わせたのも印象的であり、正に現行アニメ版を象徴するような一言。  そもそもドラえもんとは原作初期において「セワシの子分」であり「のび太の見張り役」でしかなかったんです。  そこから徐々に「のび太の友達」へと変わっていった原作漫画を踏まえ「ドラえもんがのび太の友達になるまで」を描いたのが「STAND BY ME ドラえもん」(2014年)でしたが、本作は更に踏み込んで「ドラえもんが生まれた理由」まで断言させているんですよね。  そこに「自分が生まれてきた理由(作られた理由)は、誰かが決めるんじゃなく、自分で決めるものなんだ」という、強いメッセージ性を感じました。   レイ博士の過去が詳細に描かれていないのも、想像をかき立てるものがあり「パーフェクトな存在になる為には、心は不要」と言うレイ博士と「心は絶対に必要」と言うのび太との対比で(レイ博士はのび太と違い、誰かの優しさに触れる事無く、年老いてしまったんだな……)と感じて、切なくなったりもしましたね。  劇中における「ボクは、そのままの、のび太くんが……」というドラの台詞が、エンディング曲の「大好きなんだ、そのままで大好きさ」に繋がる構成も、本当にグッと来ちゃいました。   一応、不満点も述べておくなら「静香ちゃんは強情っぱりなのが欠点というのは、無理やり感ある」「0点の答案が降ってきて終わるよりは、ソーニャが生き返るという感動の余韻に浸らせたまま終わらせて欲しかった」とか、その辺りが該当しそうなんですが……  これも「エンディング絵にて、母が薦めるピアノではなくバイオリンに拘って演奏する静香ちゃんの姿に、否応無く納得させられる」「人間は駄目なまま変わらなくても良い、という誤った受け取り方をされない為、0点の答案で叱られるオチは必要だった」という具合に、不満に思えた箇所に関しても、すぐに答えが浮かんでくるし、本当に完成度が高かったですね。  「心を失うくらいなら、パーフェクトな存在になれなくても良い」というメッセージが込められてるのに、この映画自体がパーフェクトな出来栄えじゃないかって思えるのが、何とも皮肉。  でも、大前提である「心」を失っておらず、優しさに満ちた作りだったというんだから、本当にもう、参っちゃいます。   劇中にて、敵に狙われた故郷を守り切ったのび太が「この町の事を、もっと好きになった」と、満足気に呟くのですが……  観客の自分としても「ドラえもんという作品を、もっと好きになった」と、そう感じるような、素敵な映画でした。
[映画館(邦画)] 8点(2023-03-03 12:52:06)
10.  パパはわるものチャンピオン 《ネタバレ》 
 あらすじを読んだ限りでは「お父さんのバックドロップ」(2004年)を彷彿とさせる映画なのですが……  終盤で上手い具合に着地して、一味違った魅力を出してるのが見事でしたね。   「わるもの」であるヒールレスラーにスポットを当てた内容であり、単なる格闘技ではないプロレスの魅力を、きっちり描いてる。  勝ち負けよりも「相手の強さを引き出して、試合を盛り上げる事」が大切なんだと教えてるかのような内容であり、観ていて(そうだ、そうだよなぁ……)と、何度も頷いちゃいました。   本物のプロレスラーが多数出演している為、プロレス物としての説得力が段違いに高い点も、これまた素晴らしい。  自分は然程プロレスに詳しい訳じゃないけど、それでも「棚橋弘至vsオカダ・カズチカ」というビッグネーム同士の対決には心躍るものがあったし、他にも有名所が色々出演しているんですよね。  棚橋の「フライ・ハイ」の迫力や、オカダの打点の高いドロップキックにも惚れ惚れしましたし、もし彼らを知らない状態で観たとしても(この二人、凄ぇな)と魅了され、興味を抱くキッカケになってたと思います。  「オールスター的な華やかさがあって、マニアも満足」そして「新たなファンを開拓するのにも適した内容」って訳であり、完成度が高い。   勿論、子役の寺田心の可愛さを満喫する事も可能だし、とっても欲張りな映画でしたね。  主演の棚橋と併せて「レスラーなのに、演技が上手いな」「子役なのに、演技が上手いな」と感心させられたし……  何ていうか「本職ではない」「まだ幼い」というハンデを背負ってるにも拘わらず、立派に好演してみせる姿が、作中の「膝の爆弾というハンデを抱えつつ頑張る主人公」の姿と重なるものがあり、ストーリーと演者のシンクロ率が高かった事も、評価に値すると思います。   心くんが嫌いになった悪役マスクマンの正体が、実は自分の父だと判明する流れも切なかったし……  最後の試合が終わった後、声援を送らずに罵声を浴びせる事で、ヒールとしての父の心意気に応える展開も良かったです。  結局、後半で主人公は二連敗を喫する訳だけど「本物のチャンピオンベルトより、更に価値のあるものを手に入れた」って結末なので、ビターではない、甘いハッピーエンドを迎えている辺りも、嬉しくなりましたね。  「試合には負けたけど、ハッピーエンドだよ」って事に、これだけの説得力があったという一点だけでも凄い。   難点としては……  唐突に挟まれる「トランキーロ」とか、知識が無いと意味が分からない小ネタがあるのは、ちょっと残念。  知ってる自分でも(内藤哲也の出し方、無理矢理だなぁ)と思えて白けちゃったし、ノイズになってた気がします。  小ネタにしても「石橋憲武」なんかは由来を知らなければ気にならず、分かった人だけクスッと出来る感じなので、そのくらいの見せ方の方が良かったんじゃないかと。  その他「心くんが机を叩いてクラスメイトを振り返らせる場面は、音が小さ過ぎて振り返るのが不自然」ってのも気になるし、そこかしこで作り込みの甘さが目立ちます。   総合的に判断すると、冒頭に挙げた「お父さんのバックドロップ」と同じくらい楽しめたけど、あちらは個人的に大好きなスネオヘアーが主題歌担当、神木隆之介が主演っていう強みがあった訳だし……  純粋に物語として評価するなら、こちらの方が上かも知れませんね。  プロレスが好きな人、興味がある人ならば、必見だと思います。
[DVD(邦画)] 7点(2023-03-02 06:06:29)
11.  お父さんのバックドロップ 《ネタバレ》 
 主題歌がスネオヘアーで、主演が神木隆之介という、自分好みな布陣だったので観賞。   個人的には「声優」という印象が強い神木隆之介なのですが「子役」としても、そして「美少年」としても卓越した存在なのだと、本作によって思い知らされましたね。  時代設定が1980年という事もあり、作中では半ズボンばかり穿いているのですが、そのフトモモが眩しくて、妖しい色気すら感じちゃったくらい。  小説などで出てくる「絶世の美少年」「天使のように愛らしい子」って、現実にも存在するんだと、彼に教えてもらったような気がします。  スネオヘアーに関しても、本来は「男女の恋愛映画」に似合いそうな曲が多いのに、父子愛を描いた本作に寄り添った曲として「ストライク」を完成させているのが、お見事でした。   で、肝心の映画本編はというと……  良くも悪くも王道な作りであり、優等生的な一品。  際立った短所も無いんだけど、その分だけ面白みに欠けるというか……結局(神木くんが可愛い)って印象が、一番色濃く残る作品になってる気がします。   まぁ「ロッキー」(1976年)を観れば(スタローン恰好良いな)と思うし「レスラー」(2008年)を観れば(ミッキー・ロークも恰好良いな)と思う。  でもって「チャンプ」(1931年&1979年)の二作を観れば(どっちの子役も可愛いな)って思う訳だから、本作も「神木くんの可愛さを満喫する映画」と定義しても、全然悪くないんですけどね。  それでも(物足りない)(惜しい)と考えてしまうのは、それだけ観賞中に期待しちゃったというか……  上述の傑作に並べたかも知れない可能性を、本作に感じたゆえなのかも。   そんな「可能性」の一つとして、特に着目したいのが、母親のビデオテープの件。  普通なら、こういう物語開始時点で亡くなってる母親って「完璧な存在」として扱っても、全く問題無いと思うんですよね。  でも本作に関しては、そうじゃない。  主人公の一雄から見ても、母は「いつも優しかった訳じゃない」「時々、ボクの事を打ったりした」という存在。  だからこそ一雄は、そんな母が優しい笑顔を見せた運動会のテープを、何かに縋るように大切にしていたんだって分かる形になっており、その事に凄くグッと来ちゃったんです。   口は悪いけど、実は善人というマネージャーも良い味を出しており、自分としては彼に助演男優賞を進呈したくなったくらい。  空手チャンピオンと戦う事になった一雄の父、下田牛之助(恐らく上田馬之助がモデル)を心配し「試合の当日になったら、病院に駆け込め。後のトラブルは、儂が処理する」と言ってくれる場面なんかは、特に好き。  それでいて、いざ試合当日になったら「儂は信じとるぞ」「お前が最強やて」という熱い台詞を吐き、試合後には誰より勝利を喜んでくれるんだから、たまんなかったです。   その他「煙草のようにガムを渡す場面が印象的」とか「廃バスを秘密基地にしてる少年達って設定に、ワクワクさせられる」とか、良い部分も多いんだけど……  全体的に見ると「不満点」「気になる箇所」も目に付いたりするのが、実にもどかしい。   一番目立つのが、劇中でレスラーを辞めてしまう松山の描き方であり、これは如何にも拙くて、映画全体の完成度を下げていたように思えます。  酔って泣きながら「お前にプロレスの何が分かるんだ!」と訴え、それが感動的な場面として描かれてるんだけど、そうは言われても劇中にて「松山が如何にプロレスを愛しているか、人生を捧げてきたか」が描かれてないんだから、説得力が無いんですよね。  典型的な「唐突に出てくる泣かし所」って感じであり、こういう場面を挟みたいのであれば、ちゃんと事前に布石を打っておくべきかと。  それはタイトルになってる「バックドロップ」に関しても、また然り。  最後の試合にて、一発逆転の決着に繋げたいのであれば、事前に「牛之助の得意技」として、入念に描いておくべきだったと思います。   本当、こういう映画を観た後だと(映画を評価するって、難しいな……)と、しみじみ感じちゃいますね。  そもそも「主題歌がスネオヘアー」「主演が神木隆之介」って時点で、もう「好きな映画」になっちゃう訳だから、惚れた弱みというか、まともな判断なんか出来っこないんです。   そんな訳で、もしもスネオヘアーに興味が無く、神木くんを可愛いとも思わない人が観たら、結構厳しい出来かも知れません。  でも、自分と同じように(スネオヘアーの曲が好き)(神木くんって可愛いよね)と感じる人には、映画の後日談となる「ストライク」のPVとセットでオススメしたくなる……  そんな一品でありました。
[DVD(邦画)] 7点(2023-02-09 22:20:02)(良:1票)
12.  決算!忠臣蔵 《ネタバレ》 
 関西弁で話す赤穂浪士と、やたら柄の悪い大石内蔵助。  それらに対し、最初は戸惑いが大きかったのですが……   (要するにコレは、ヤクザ映画なんだ)と気付いてからは、問題無く楽しめましたね。  現代人が忠臣蔵を観賞する際にネックとなる「浅野は加害者で吉良は被害者であり、赤穂浪士は逆恨みしてるだけ」って部分に関しても「親分の死後、残った組員が面子を守る為に復讐した」と考えれば、分かり易い。  「よう見とけ、赤穂の浪人共がする事を」と大石が静かに呟く場面も印象的であり、この映画では主人公達を立派な「赤穂義士」ではなく、庶民的なヤクザとしての「赤穂の浪人共」として描いているんです。  極端に美化された忠臣蔵より、ずっと感情移入し易い作りになってるし、この路線で仕上げたのは、正解だったんじゃないかと。   それだけでなく「経済的に見た忠臣蔵」という魅力が、しっかり描かれているのも良い。  「籠城すべきか否か」を、退職金の多寡で決める序盤の時点で、もう面白かったし、最初に軍資金が幾らあるかを分かり易く現代の価値換算で示し、それが徐々に減っていく様を数字で見せる演出にしたのも、上手かったですね。  地元と江戸を行き来するだけでも旅費が掛かるのに、何度も無駄足を重ねてる様とかもう、本当に観ていて「無駄遣いすんなよ!」って気持ちにさせられる。  そんな観客の想いを、勘定方の面々が代弁し、劇中で実際に文句を言ってくれるんだから、非常に痛快。  我らは戦の担当だからと言い訳し、勘定方を見下す同僚に対し「戦なんぞ、一度もした事無いやろが!」と大野九郎兵衛が啖呵を切る場面なんかは、特に良かったですね。  観客の喜ばせ方を知ってるなと、嬉しくなっちゃいました。   そんな勘定方の代表である矢頭長助の死を、中盤の山場として用意してあるから観ていてダレないし、吉良邸への討ち入り場面を省略し「討ち入り前の、予算内に収まるかどうかの葛藤」をクライマックスに据えたのも、結果的には良かったかと。  一応、演習として討ち入る姿を大石達が思い浮かべる形になっており、観客としても「どんな風に討ち入ったのか」を、自然と想像出来るバランスになっていましたからね。  この辺り「太鼓じゃなく銅鑼を叩くのか」と落胆しちゃう大石を描いたりして「討ち入りの際には、太鼓を叩く大石内蔵助」を期待していた観客と、主人公の心情とをシンクロさせていたのも上手い。  確実に勝利する為「一向二離(一人が相手と向き合ってる隙に、他の二人が回り込んで相手を仕留める)」の兵法を用いる事に対し「それは卑怯では?」と問う者に対し「これは戦や」と返す場面なんかも「忠臣蔵」(1990年)が大好きな自分としては、嬉しくなっちゃう部分。  赤い着物ではなく、火消し用の着物を選ぶ場面とか「経費を節約出来た時の快感」を描いているのも良いですね。  限られた予算が減っていくという、マイナスの焦燥感だけでなく、プラスの充足感も味わえる作りにしたのは、本当に上手い。  そんな節約が「討ち入り後の、残された者達を救う工作資金」に繋がるというのも、ハッピーエンド色を強める効果があって、お見事でした。    難点としては……  コメディ色が強い作りゆえか、ピー音を連発する場面なんかは、ちょっと雰囲気を壊してる感じがして、微妙に思えた事。  良い味を出していた矢頭長助が、死後は回想シーンなどでも一切姿を見せないので、寂しく思えちゃう事。  そして、忠臣蔵を代表する人気者の堀部安兵衛が、徹底的に情けなくて、良い所も無く終わっちゃうのが残念とか、そのくらいになるでしょうか。  幸い、それらの点を自分は「決定的な傷」とは思わなかった訳だけど、これを駄作と断ずる人の気持ちも、分かるような気がします。   でもまぁ、2019年にもなって「面白い忠臣蔵」を撮ってくれたという、その事に対する感謝の方が、ずっと大きいですね。  忠臣蔵という鉱脈は、まだまだ掘れるんだ、面白く出来るんだって事を証明してみせたという意味でも、非常に価値ある一本だと思います。
[DVD(邦画)] 7点(2023-02-02 13:50:35)(良:3票)
13.  遊びの時間は終らない 《ネタバレ》 
 タイトル通りの結末を迎えてくれるという、とても親切な映画。   一応、劇中にて「遊びの時間が終った」瞬間も描いており(主人公の平田が捕まったら、どうなってしまうんだ?)って疑問に対する答えを、きちんと用意してる辺りも嬉しいですね。  中途半端で、投げっ放しとも言える終わり方なんだけど、この「一度は逮捕エンドを迎えさせ、その後に再開している」という構成の御陰で、後味も悪くなかったです。   人質を「レイプ」する代わりに腕立て伏せで体力を消耗するとか、原作小説で印象深い場面はキチンと映像化してくれてるし、原作には無い映画オリジナルの要素として、阪神ファンのおじさんを登場させてるのも上手い。  そもそも原作の時点で「下っ端のヒラ巡査である主人公が、警察組織を翻弄する」「上流階級のエリートの鼻を明かす」という要素は含まれていた訳だけど「阪神を応援する時みたいに、犯人役を応援し始めるおじさん」って展開のお陰で、そういう「平田が庶民のヒーローになる」までの流れが、非常に分かり易くなっているんですよね。  思えば原作が発表された1985年当時、阪神タイガースには平田勝男という守備の名手がおり、優勝に貢献していたりもする訳だから、映画版スタッフも、その辺を踏まえて「平田=阪神」という重ね合わせを行ったのかも知れません。    そんな具合に「面白い原作小説を、更に面白く仕上げた映画」って形になっており、小説の映像化としては、ほぼ理想に近い出来栄え。  あえて言うなら「原作ではエリートの深川が二枚目で、主人公の平田は二枚目じゃない」という設定なのに反し、映画版では本木雅弘が平田を演じてるのが、原作との最大の違いなんだけど……  それも「平田がアイドル的な人気を得る」って展開に合っていたし、良い改変というか、良い配役だったと思います。   深川が「実は防弾チョッキを着ていた」と主張すれば、平田は防犯ビデオの映像を持ち出し「頭を撃ってるので、防弾チョッキを着ていようと死んでる」と証明してみせる場面とか、文字媒体ではない、映像媒体ならではの面白さを描いてる点も良い。  脱出の為に「金」をバラ撒く場面も「嘘を現実に変えてみせた」という不思議なカタルシスがあるし、視覚的に派手な見せ場にもなっているしで、良かったですね。  「原作通りで面白い場面」「原作には無かったけど面白い場面」その両方を描く事に成功しているんだから、本当にお見事です。   終盤、とうとう銀行から飛び出して逃亡する際に、相棒である中野が「……ここまでヤッちゃって、大丈夫かな?」と、ふと夢から醒めたような台詞を吐く件も、妙に好きなんですよね。  このまま続けたら、遊びが遊びじゃなくなってしまうかも知れない。  警察側が再び実弾を使用し、本物の犯人みたいに撃ち殺されるかも知れない。  それでも遊びを止められず、最後まで突っ走ろうとする主人公達が恰好良くて、何だか眩しく見えてくるような、忘れ難い名場面でした。   ……以下は、映画本編には関係無い余談というか、思い出話。  実は、この映画を初めて観た頃の自分って「邦画は洋画よりつまらない」「日本には、本当に面白い映画なんて全然無い」っていう偏見を抱いていたんですよね。  今は単純に映画を観た本数も増えて、面白い邦画も沢山あるのを知った訳だけど、当時の無知な自分は、本気でそう考えていたんです。  そんなある日、颯爽と現れた「本当に面白い映画」がコレだったんだから、初見の際の衝撃は、それはもう凄いもんでした。   そんな訳で、かつての自分のように「邦画は面白くない」って考えてる人がいたら、ついコレを薦めたくなっちゃうんですよね。  今なら、他にも面白い邦画を色々知ってるし、中にはコレより面白いって思える品もチラホラあったりするんですが……  やっぱり、そういう時は、この映画が一番頼もしく思えちゃいます。   自分にとっての、ヒーローのような映画です。
[DVD(邦画)] 9点(2022-12-27 14:45:40)(良:3票)
14.  就職戦線異状なし 《ネタバレ》 
 ナレーションも相まって、学校の授業で見せられる教材ビデオみたいでしたね。   実際に「面接の作法」なども作中で語られているし、そういう意味では「為になる映画」と言えるかも。  バブル期は就職し易くて良かったという以上に「残業を嫌がる事」「有給めいっぱい取る事」が悪徳のように語られてるのも印象的であり、そういった具合に「今との違い」を感じられる内容なのは、史料的価値があるように思えます。   ただ、面白い映画とは言えそうになくて……  根本的に「なんだかんだで就職は上手くいきました」「ヒロインとも結ばれました」ってだけの粗筋でしかないので、どうも盛り上がりに欠けるんですよね。  こういう場合、せめて登場人物が魅力的であれば(彼らが頑張る姿を眺めてるだけでも楽しい)って気持ちに浸れるんですが、本作はそうじゃない。  織田裕二が好きな自分ですら(傍迷惑な奴だなぁ)と思えちゃう主人公だったし、かなりキツかったです。   酔って喧嘩した相手が就職の面接官だったとか、そういう王道な魅力はあるし「自分探しならぬ職場探しを通して若者達の絆が深まる青春物語」って雰囲気自体は、決して悪くなかったんですけどね。  ただ、そんな美味しいキャラである面接官の雨宮に関しても、終盤で主人公にネクタイを貸す場面とか(何で急に良い奴になったの?)って戸惑っちゃうんです。  友人である北町との別れも同じ調子であり、感動的な場面として描いてるけど、それまでに北町との友情を感じさせる描写が希薄だから、心に響かない。  なんていうか「こういう感動的な場面をやろう」っていう意思は伝わるし、その場面だけ観れば、それなりに決まってるんだけど……  「その場面に至るまでの過程」が描けてないから感動出来ないってパターンが多いんですよね、この映画。  金子修介監督の品は好きな映画が多いのですが、本作を撮った当時は未熟だったのかな、と思ってしまいます。   最後はスポーツメーカーに勤める結末だったけど、それならいっそ高校野球の監督を目指す結末の方が良かったのでは?  と思えちゃう辺りとか、細かい不満点も多いですね。  いつもタクシーが捕まらない主人公が、十数台ものタクシーを一度に止められるようになるとか、いきなり飛んできた謎のボールを投げ返すとか、漫画的な場面が続出して終わるのも、何か無理してるというか「主人公の不運さや、野球のトラウマに対して無理やり決着を付けた」って感じであり、ハッピーエンドなのに褒めるのが難しいです。   上述の通り、主演俳優は大好きな織田裕二だし、エンディングに流れる「どんなときも。」は名曲だしで、色々と「好きになれる」要素は揃っていただけに、惜しい出来栄えですね。  この後、金子監督と織田裕二が再びタッグを組んだ「卒業旅行 ニホンから来ました」(1993年)は自分好みの傑作だった訳だし、何かもう一つでも違う方向に転んでいれば、本作も好きになれたかも知れません。
[ビデオ(邦画)] 4点(2022-11-01 17:41:31)
15.  七人のおたく cult seven 《ネタバレ》 
 これは七人のおたくを描いた映画……というより「内村光良のアクション映画」ってイメージが強かったりしますね。   そのくらい終盤の格闘シーンが衝撃的だったし、実に痛快。  ウッチャン演じる近藤に対し、それまで散々「弱いぞコイツ」って印象を与えておいて、それがいざ本気で戦ったら強かったっていう、そのカタルシスが半端無いんです。   本作はメインとなる七人全員、ちゃんとキャラが立っているし、群像劇と呼べる構成なんですが……  それでもなお「ウッチャンが全部オイシイとこ持っていってる」って、そんな風に感じちゃいます。  監督や脚本家が苦心して整えたであろうバランスを、一人の演者さんのパワーが引っ繰り返してみせた形であり、ここまで来るともう、その「バランスの悪さ」が気持ち良いし、天晴と拍手を送りたいですね。   そんな訳で「ウッチャンのアクションが楽しめるだけで満足」「それ以外の場面は、正直微妙」って評価になっちゃいそうな作品なのですが……  一応「おたく達が仲良くなって、夢を叶える青春映画」としての魅力もあるし、全体のストーリーや雰囲気も、決して嫌いじゃなかったです。   とにかく作りが粗くて、脚本のツッコミ所も多いんだけど、何となく庇いたくなるような愛嬌があるんですよね。  例えば、山口智子演じる湯川リサは、設定上はレジャーおたくって事になってるけど、明らかに「普通の人」であり、この時点で「七人のおたく」って看板に偽り有りじゃないかって話になるんですけど……  劇中にて、主人公の星が「キミも同じ目になろう」とリサに計画書を渡す場面があるし、今回の冒険を通して「彼女も、おたくの仲間入りを果たした」って事なんだろうなと、好意的に捉えたくなっちゃうんです。   他にも、ダンさんの秘密基地で模型作りする場面とか、皆で竹筒の皿を使って食事する場面とかも、妙に好きなんですよね。  「仲間で集まって、ワイワイ遊ぶ楽しさ」が、しっかり描かれてたと思います。   飛行機の玩具で始まり、玩具のような飛行機で終わる構成も綺麗だったし、空から見た島の景色が、ダンさんと作った模型そっくりだった事にも感動。  最後に「皆、同じ目になった……」と満足気に呟く星に対し、他のメンバーが「そんな目はしてない」とツッコんで終わるのも、仲良しな雰囲気が伝わってきて好きですね。   自分にとっての映画もそうなんですが、おたく趣味の持ち主って「それが面白いから」というより「それが好きだから」ハマってしまい、おたくになったってパターンが多いでしょうし……  本作も「おたく映画」らしく「面白い」って言葉よりも「好き」って言葉が似合うような、そんな一本に仕上がってると思います。
[DVD(邦画)] 7点(2022-10-21 17:23:40)(良:1票)
16.  バブルへGO!! タイムマシンはドラム式 《ネタバレ》 
   馬場監督の映画ではお馴染みの「田中真理子」と「吉岡文男」の名前が出てくるという、それだけでもファンとしては嬉しくなっちゃいますね。   インタビューによると、元々は「タイムマシンを題材にした映画を撮りたい」という気持ちがあり、バブル要素は後付けで話を作り上げたとの事ですが、それも納得。  終わってみれば「タイムスリップした先はバブル景気の頃でした」というのは大して重要ではなく「タイムマシンによって過去を変えた結果、現代の状況が良くなる」という、王道なハッピーエンドストーリーでしたからね。  とかく世間では「馬場監督」=「バブル映画」というイメージで語られがちだけど、一番の傑作と言える「メッセンジャー」(1999年)はバブルと関係無い内容だったし、少なくとも監督当人は、そこまで「バブル」に拘ってる訳では無いんじゃないかなって気がします。   実際どうだったかはさておき、馬場監督がバブル期に手掛けた過去作よりも「贅沢過ぎて有り得ない世界」が描かれており、意図的に「バブル」をギャグとして描いてると分かる辺りも、興味深いポイント。  監督自身も「俺なんかがそういうストーリーを考えたとき、最高! っていうバブルは思いつかない。絶対」と語られていますし、誇張されまくってるであろうバブル期の描写が、ナンセンスギャグっぽくて面白かったですね。  案外、本当にバブル期を経験した年代の人こそ「有り得ねぇ」「こんなんじゃなかった」と笑いながらツッコみ、自分みたいにバブル期を直接知らない世代ほど「当時は凄かったんだ」と真に受けちゃう人も多いんじゃないかなって、そんな風に思えました。   「百円玉」「髪を掻く仕草」などの伏線が、ちゃんと分かり易いのも親切だし「クラブ」や「ヤバい」という言葉の意味が、時代を経て変わってるのを示す場面なんかも、如何にもタイムトラベル物っぽくて、ニヤリとしちゃいましたね。  かと思えば、首相に「話せば分かる」と訴えるという五・一五事件をパロった場面もあったりして、本当に幅広く色んなネタが散りばめられているので、観ていて飽きなかったです。   主演の阿部寛は実際に「バブルのド真ん中にいた」との事で、バブル期の世界を遊び過ごしてる姿に説得力があった辺りも良い。  ヒロイン格の真弓を演じた広末涼子も、わざとらしい仕草や演技が愛らしく、2007年当時は無かったであろう「あざと可愛い」って言葉が似合うような魅力がありましたね。  当初は「女を口説こうとする男」として彼女に接していた主人公が、その正体を悟った途端に「娘を守ろうとする父親」に変貌する様も微笑ましく、個人的には、ここの「軟派男が父親の顔になる瞬間」が、本作の白眉だったように思えます。   そんな具合に、色々と良い部分もある映画なんですが……  正直に告白すると、総合的な満足度としては、決して高くなかったんですよね。  この度、馬場監督の映画五本を通して鑑賞し、デビュー作から徐々に面白さがアップしていく様を見守ってきていたもので(あの「メッセンジャー」の次に撮った映画となれば、さぞ傑作だろう)と、勝手にハードルを上げ過ぎてしまったのかも。   作品全体の演出が、やたらコメディタッチ……というより漫画的なのも(何か、馬場監督らしくないな)と思えて戸惑ったし、台詞の切れ味も鈍ってた気がします。  上述の「父親の顔になった主人公」って場面が好きだっただけに、ラストにて「結局、今も愛人を囲ってるような浮気者のまま」と示唆して終わるのも、ガッカリしちゃったし……  ここまで「何もかも上手くいくハッピーエンド」にした訳だから、そこは変に捻ったりせず「家族を大切にするパパになりました」で良かったと思うんですよね。  「国の景気なんかより、家族の絆が大事」って結論を出したはずなのに、最後の最後で「景気は上向いたけど、家庭不和の火種は残ったまま」になるだなんて、どうにも受け入れ難いものがありました。   そんな訳で、結果的に「最新作がデビュー作の次につまんない」って評価になってしまった事が、本当に残念。  でも馬場監督って、まだまだ現役で2022年にもドラマの監督を務めてる訳だし……  自分としては映画の新作にも、是非期待したいですね。  以前チラっと語っていた「波の数だけ抱きしめて」 (1991年)の続編っぽい話とか、何とか実現させて欲しいものです。
[ブルーレイ(邦画)] 5点(2022-10-10 18:13:49)(良:1票)
17.  波の数だけ抱きしめて 《ネタバレ》 
 とんねるずのパロディコント「波の数だけ抱きしめて2」も秀逸でしたが、元ネタである本作も、中々の傑作。   当初は別所哲也演じる吉岡卓也が主人公だったとの事で、言われてみれば序盤でヒロインに一目惚れする辺りが、それっぽいですね。  脚本を読んだ織田裕二の「最後に告白する男の方を演じたい」って意見を反映させて、本来は脇役だったキャラが主役になってるのですが、それによって「ヒロインに惚れてる男二人」の出番が同じくらいの比重になり、結果的に良い三角関係が出来上がったように思えます。   そんな三人だけでなく、メインの五人組は全員キャラが立っていたし、青春群像劇としての魅力があるんですよね、本作って。  「湘南中に聴こえるラジオ局を作る」という夢を叶える為に、皆で頑張る姿が眩しいくらいだったし、馬場監督の作品の中でも一番「若者達の青春」を感じさせる内容になってる。  現代がモノクロで、懐かしい過去がカラーという構成に関しても「初恋のきた道」(1999年)に先んじていたりするし、この辺りにも監督のセンスを感じますね。  しかも最後に仲間達と再会し、青春の輝きを取り戻してモノクロからカラーに変わるという「鮮やかな終わり方」な辺り、自分としては本作の方がより好みだし、上手くカラーとモノクロを使い分けてるなって感じたくらいです。   馬場監督の映画の中で、主人公とヒロインが結ばれないのは本作だけであり、そんなビターな味わいが評価を分けそうなんですけど、個人的には今回の味付け、大正解だったと思いますね。  「同じ女に惚れた男同士の、奇妙な友情」も良かったですし、ラジオを使っての告白が、ギリギリで彼女に届かなかったという切なさも、凄く好み。  それまでシャイで告白出来なかった主人公が、勇気を振り絞って「好きだ!」と何度も叫ぶ姿には、胸打たれるものがありました。   最後にエンディング曲ではなく、波や鳥達の「湘南の音」を聴かせて終わるのも良い。  過去を懐かしんで、ノスタルジーに浸るだけでなく「たとえヒロインが去っても、主人公には仲間達がいる」「味気ない灰色の世界から、もう一度輝ける」「湘南の海も、優しくそれを見守っている」と感じさせるような、最高の終わり方だったと思います。   何だか褒めてばかりになってしまいましたが、一応欠点も述べておくなら「群像劇としての魅力がある」っていうのは、裏を返せば「主人公が誰なのか曖昧」って事であり、その辺りが気になる人もいるかも知れませんね。   また、バブル期における馬場監督の三部作は、本数を重ねる毎に「物語の面白さや完成度」は増して「オシャレな雰囲気と、バブルの匂い」は薄れていく傾向にあるので、デビュー作の「私をスキーに連れてって」(1987年)が好きな人にとっては、この三本目は物足りないというか「こういうのが観たい訳じゃない」って気持ちになってしまう可能性もあるかも。   でもまぁ、バブル期に拘りの無い自分としては、上述の三部作は徐々に映画として成長していく様が楽しかったし、本作もお気に入りの一本ですね。  2016年のインタビューにて、監督は 「携帯電話の普及した今なら『お前のこと好きだよ』ってメール送って『じゃあ戻るわ』で終わっちゃう」 「今またこういう話を作るんだったら、ラジオ局を作るんじゃなくて、どこかの海岸でフェスをやろうって話になるんじゃないかな」  と語っているのですが……  海岸でフェスをやろうとする映画、是非観てみたいなって、そう思えました。
[DVD(邦画)] 8点(2022-10-10 18:04:19)
18.  彼女が水着にきがえたら 《ネタバレ》 
 馬場監督がアマチュア時代に撮った「イパネマの娘」という映画が原型の一品。   それと「冒険者たち」(1967年)の影響もあると監督当人が語っており(言われてみれば……)と納得しちゃいますね。  他の監督作に比べるとスケジュールがキツかったらしく、公開の直前まで撮影していたくらいなので、仕上がりに満足出来ず「一番後悔のある作品」と語っているのも印象深い。   それらの情報を踏まえ、鑑賞前の自分としては(つまり、一番の失敗作って事か)(配給収入では前作よりヒットしてるけど、まぁ売り上げなんて当てにならないしな)と思ってたんですが……  意外や意外、中々に面白かったです。   とはいえ、この映画が失敗作というか「求められてるものとは違った映画」っていうのは、なんか分かる気がするんですよね。  監督の前作である「私をスキーに連れてって」(1987年)に対し、自分は「オシャレでバブルの匂いを感じさせるけど、純粋に物語として考えたら面白くない」って評価を下しましたが、本作は全くの逆。  映画としての面白さはアップした代わりに、オシャレさもバブルの匂いも薄れてるというんだから、そりゃあ大半の観客はガッカリしちゃうと思います。  もし自分が前作を高評価してたとしたら「ごくごく平凡な娯楽映画になっており、あの独特の味が失われてしまった」「スキーの魅力を伝えてた前作と違い、本作はスキューバーダイビングの魅力が伝わってこない」なんて事を言い出してたかも知れません。   ……でもまぁ、そんな妄想をしてみたところで、やっぱり現実の自分としては「面白かった」「良い映画だった」と思ってしまったんだから、これはもう仕方無いですね。  主演の織田裕二も魅力的だったし、ちゃんと全編に亘って「海での宝探し」って目的があるから、話の軸がしっかりしてる辺りも良い。  最終的な目的が何なのか曖昧であり、途中で退屈しちゃった前作に比べると、明らかに話作りの成長が見受けられます。   上の方で書いた「スキューバーダイビングの魅力が伝わってこない」っていうのも、実は当たり前の話であり、これって明らかに「宝探し」がメインの映画なんですよね。  海に潜るのは宝を見つける為の手段に過ぎず、海に潜る事が主題ではないんだから、そこの捉え方次第で、映画の評価が変わってくるように思えます。   あと、主人公達は自由人ではあっても善人ではないってタイプなので、そこも評価が分かれそうですね。  この映画が好きな自分でさえ「強姦してでも、あの女からポイント聞き出せ」って谷啓おじさんが言い出した時は引いちゃったし、ヒロインが怒った「ゲーム」に関しても、ちょっと趣味が悪い。  自分は織田裕二が演じてるって時点で主人公に肩入れして観てたから(まぁ、こいつは模範的な善人って訳じゃないんだろう……)って早めに意識を切り替えられたけど、そうでない場合は、結構キツいかも知れません。   何か、さっきから「良かった所を語る」というよりも「微妙な部分を庇ってみせる」って感じの論調になってますけど、本当、良い所も色々ある映画なんですよ、これ。   「五十億の宝を手に入れたら、五十億の船を買って百億の宝を探す」っていう主人公達のスタンスも、浪漫があって良いなって思うし「アウトロー気質な男に振り回される、真面目で普通な女の子」って形で、原田知世演じるヒロインの魅力が際立ってるのも良い。   「もう一つの宝」の正体がヒロインだったってオチも、ベタで嬉しくなっちゃうし……  水中でのキスシーンも、間抜けな感じで全然ロマンティックじゃないのに、その間抜けさが良いなって思えちゃうんです。  宝石なんかより価値のある「宝」を手に入れた主人公カップルは、宝石を持ち逃げされても呑気に笑ってるって終わり方なのも、もう文句無し。   皆はブスって笑いものにしてるけど、自分には可愛らしい美人にしか思えないっていう、不思議な女の子のような……  そんな、愛すべき映画です。
[DVD(邦画)] 7点(2022-10-10 17:55:29)
19.  私をスキーに連れてって 《ネタバレ》 
 馬場監督の映画の中では、一番バブルの匂いがする代わりに、一番完成度が低い映画って感じですね。   「あの頃の雰囲気を楽しみたい」という目的で鑑賞するならば、同監督作の中では最も適してるでしょうし、バブル期とか関係無く、純粋に物語を楽しみたいというのであれば、かなり退屈な映画になっちゃうと思います。  そもそも商業映画デビュー作なので、作りが粗いのも仕方無い話ではあるんですが……  馬場監督の映画の中で、始まって二十分ほどで(退屈だなぁ)って感じたのは本作だけですし、かなりキツい出来栄えです。   まず、根本的にストーリーが古臭いというか、ベタで王道な魅力も無いもんだから(わざわざ映画にするほどの話じゃないだろ)って思えちゃうんですよね。  主人公とヒロインの恋路にしたって、中盤でアッサリ誤解がとけて問題無く結ばれるし、新製品のお披露目イベントにしても「苦労した主人公達は結局間に合わず、別行動の仲間達が成功させた」ってオチになるもんだから、拍子抜け。  紆余曲折を経て恋が成就したとか、頑張って仕事を成功させたとか、そういうカタルシスを得られ難い作りになっており、観た後にスッキリした気持ちになれないんです。  最後に「バーンっ!」って銃を撃つ仕草で終わるのも(それ、最後まで引っ張るようなネタかな?)って微妙に思えたし、テンションが低いままで、映画の終わりを見届ける形になっちゃいました。   そんな訳で、どうしても高く評価出来ない一作なんですけど……  監督のファンとしては、それだけじゃあ寂しいので、以下は良かった点を。   まずは何と言っても、オシャレな作りなのが良かったです。  ヒロインの真っ白いスキーウェア姿は素直に可愛いなって思えましたし「冬の間恋人にするなら最高ね」なんて台詞回しも良い。  素敵な内装の山小屋で、バニーガールに給仕されたシャンペンを味わう場面なんかも、憧れちゃうものがありましたね。   真理子さんが面白おかしく話してた「矢野を好きだった女の子」の正体が、実は真理子さん自身だったと判明する件にも感心しちゃったし、話の盛り上がりという意味では、あそこがピークだったかも。  スキーを楽しむ場面も中々爽快感があったし、車やトランシーバーなどのアイテムの使い方も上手かったと思います。   そして何といっても、ユーミンの曲が魅力的。  映画作りにおいて、映像よりも音を重視しているという馬場監督らしく、全編に素敵なナンバーが散りばめられており、ミュージックビデオ的な楽しみ方も出来ちゃうんですよね。  この映画のMVPって、画面には登場していない荒井由実(松任谷由実)なのではって思えたくらいです。   後は……「メッセンジャー」(1999年)でも加山雄三を起用してる馬場監督だけど、この頃から「若大将シリーズ」へのリスペクトを感じさせるのが微笑ましいとか、そのくらいになるでしょうか。   「時代と寝た映画」って言葉がありますけど、恐らく本作も、それに当てはまるんでしょうね。  ただ、時を越えて愛されるユーミンの曲に比べると、本作に関しては「昔の恋人」って感じであり、思い出の中でこそ輝く存在じゃないかな……と、そんな風に思えました。
[DVD(邦画)] 5点(2022-10-10 17:42:45)
20.  映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021 《ネタバレ》 
 ドラ映画としては監督&脚本が新人コンビである為、不安も大きかったのですが……中々の仕上がりになってたと思います。   まず、何と言ってもアクション描写が素晴らしい。  小説版を読んだ時点では「アストロタンク」だの「アストロスラスター」だのといった兵器名が並んでるのを見ても、全然ピンと来なかったのに、映画本編を観た今となっては、こうして名前を書き込んでるだけでもワクワクが甦って来ちゃうくらいですからね。  火力重視の戦車モードと、機動力重視の戦闘機モードを使い分ける戦闘シーンが、本当に見事でした。   正直、最初は(どうして戦車に名前を付けたの?)(変形する必要あったの?)って疑念を抱いたりもしたんですが、それが映画を観ていく内に「名前を付けて正解だった」「変形させて正解だった」と思えてくるんだから凄い。  この「謎が解き明かされていく」ような感覚は、ちょっと独特な楽しさがありましたね。   例えば、原作漫画では「パピ君が銃を使って探査球を撃ち落とす場面」が、本作では「スパナを投げて探査球を破壊する場面」に変更されているんです。  (何故?)と思っていたら、後に「野良猫のクロの口に翻訳ゼリーを投げ込み、説得するパピ君」という場面に繋がって、そこで(おぉ、なるほど! だから事前にパピ君のコントロールの良さを示しておいたのか……)と納得出来ちゃう。  この改変、原作で一番不可解な部分である「窮地に追い込まれたパピ君が、突然謎の超能力でクロを洗脳して助かる」という場面を、自然に変える事にも成功しているんだから、本当に効果的だったと思います。   悪役のドラコルル長官も「原作以上に知的で、部下想いな一面がある軍人」というキャラに生まれ変わっていたんだから、嬉しかったですね。  ギルモア将軍から「有人兵器ではなく、無人兵器を用いるように」と命じられた際の 「我々の犠牲を恐れているのでしょうか?」 「……将軍が恐れているのは反乱だ。我々ですら信用ならんのさ」  という副官とのやり取りなんて、もう痺れちゃうくらいに良い。  万策尽きて敗れた後、巨人と化したジャイアンに対しても一切怯まず「長官から手を離せ!」と銃を向ける副官という描写も、ドラコルルの人望が伝わってくるものがあり、好きな場面。  最後まで毅然とした態度を貫き、降伏する代わりに部下の安全を保障して欲しいと交渉するドラコルルの姿は、作中で一番恰好良いと思えたくらいです。   それと、地球人であるのび太達だけでなく、ピリカ星の人々が頑張って「自分達の手で自由を掴もう」と独裁者に立ち向かう要素がアップしているのも、良かったと思います。  これに関しては、旧アニメ版の「宇宙小戦争」でも同じような試みが為されていたのですが、本作の方が更に徹底しているし、戴冠式におけるパピ君の演説などによって、市民による革命に至る流れも、とても自然になっていましたからね。  「原作を改変し、原作より面白くなった映画」という意味合いでは、間違い無く本作の方が上だと思います。   「アストロタンクの戦闘シーンが素晴らしかっただけに、ラストの巨人VS小型兵器という戦いが見劣りして感じる」「自由同盟のリーダーが恰好良くなっていただけに、出来れば本職の声優さんを配して欲しかった」など、細かい不満点は色々あるんですけど……  明らかに長所の方が多いので、まぁ良いかって気持ちになっちゃいますね。  なんていうか「才能は豊かだか、経験が足りない若手監督」っぽさを感じる作風というか「ここは、もっとこうすれば良いのに」って思える箇所が多い映画なんだけど「ここは素晴らしい、本当に素晴らしい!」って箇所も同じくらいあるっていう……  悪く言えば完成度の低い、良く言えば破天荒でパワーを感じる品に仕上がってたと思います。   あと、出木杉くんの扱いが良かったというか「皆の仲間外れにされてる」感じが薄くって、むしろ「出木杉くんも皆の仲間」って形になってたのも、凄く嬉しかったですね。  冒険に参加出来なかった理由も「塾の合宿で不在だったから」と、きちんと理由が説明されているし、ラストにて一緒に「宇宙大戦争」を観て、冒険の顛末をのび太達から教えてもらう事になるのも、良いオチだったと思います。   おまけ映像からすると、次回作は「創世日記」か「ブリキの迷宮」が有力に思えますが……  いっそ出木杉くんと一緒に冒険するような、オリジナルストーリーの映画でも良いなぁと思えちゃうくらいでしたね。  そんな「禁じ手」を用いたとしても、きっと面白くなると信じられる程に、今のドラ映画はクオリティが高い。   また来年も、映画館に足を運ぼうと思えるような、良い映画でした。
[映画館(邦画)] 8点(2022-03-04 12:48:39)(良:1票)
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