41. トーク・トゥ・ハー
《ネタバレ》 強引極まりない設定と、途中からさらに出てくる無謀な展開。しかし、これを作品として成り立たせているのは、ひとえにベニグノ役の彼の絶妙な存在感だと思う。どこまでも物腰丁寧な控えめな青年でありながら、行動自体はストーカーそのものだし、発想も根っこの部分で何かが完全に飛んでいる(が、彼自身はそれに疑問を持っていないし、当然だと思っている)。そして、他者と自分の発想の違いにも実は気づいていて、その距離感も保っている(だから、平素のコミュニケートで支障を生じていない)。これが少しずれただけでも、単なる変態に堕ちるか、あるいは犯罪者そのものとして袋叩きになっていたはず。ストーリー自体はむしろ単純でありながら、何かがじわじわ浸食されていくような感覚でした。 [映画館(字幕)] 6点(2003-10-12 00:19:46) |
42. テリー・ギリアムのドン・キホーテ
《ネタバレ》 始まっていきなりの二重構成に何じゃそりゃと思っていたのですが、最後までそのまま自信満々に押し切ってしまったのにはびっくりしました。どこまでも広がる妄想力と、それを何としても作品内に具現化させるという底なしの執念。まさにこの監督ならではです。しかし、一つ一つのシーンはきちんと撮られているだけに、通しで見ていると頭が痛くなってくるのも事実です。最後にヒロインがサンチョ・パンサになるというオチなどは気が利いているだけに、もう少し焦点を絞って尺も縮めたら名作になったのではとも思いますが、そういう理性的なやり方ではこの作品はできないか。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-08-03 00:07:14) |
43. アデル、ブルーは熱い色
カメラがえらく落ち着かなくて、人がただ喋っているところにこっそり割って入っているような感じなのです。よって、役者の演技を見ているというよりも、隠し撮りフィルムあるいは現場同行映像か何かを見ているような気になってきます。ただそんな中でも、3時間近くをそれほどだれさせずにほぼ一直線に見せ切る静かなテンションの高さは、なかなかかも。 [DVD(字幕)] 5点(2020-12-31 00:43:40) |
44. レッド・サン
《ネタバレ》 導入部から中盤くらいまで、いろいろな意味でのミスマッチぶりが凄まじい。しかし、ストーリーは案外破綻せずに進んでいく。これってもしかして意外といい?と思っていたら、本来は触媒程度の存在のはずであるコマンチ団が一気に一大敵対勢力になってしまって、これでそれまでの工夫が全部飛んでしまいました。あと、肝心のクリスティーナが全然いい女に見えないのも問題(マリアの方がよっぽど良いし、ペピータでもクリスティーナよりは上だと思うぞ)。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2019-12-11 02:03:36) |
45. スパルタンX
《ネタバレ》 冒頭の無意味なトレーニングシーンから、スケボーアクション、悪ガキ軍団の退治・・・という導入部分は期待満点なのですが、そこからが何となく弱いかなあ。ユン・ピョウはその後意外と活躍しないし、サモハンは最後にフェンシングなんかやっちゃうし(まあ、一度はやってみたかったのかもしれないが)。ただ、カーチェイスのところで、細切れカットでごまかすことなく、遠景ショットで全体を撮り尽くしているところには、「ちゃんとやってるんだぞ~」的な誇りを感じて、さすがだと思いました。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2017-05-03 23:12:13) |
46. ANA+OTTO/アナとオットー
それなりにいろいろな変化を盛り込んでいるので、調理法次第でもっと壮大なドラマになったのではないかと思うが・・・いろんなところでシーンがするっと流れてしまっているので、やっていることの割に、淡々と当たり前に結論に至ったような印象を受ける。 [DVD(字幕)] 5点(2014-11-28 00:50:08) |
47. 欲望のあいまいな対象
《ネタバレ》 最初から最後まで「迫る→逃げる(消える)」の同じようなやりとりがされているだけで、ドラマ性が感じられませんでした。タイトルにある「欲望」が肝となるはずなのですが、その表現も特に明確ではありませんでした。 [DVD(字幕)] 5点(2010-01-31 12:20:21) |
48. ミツバチのささやき
どうにも難解というか中途半端で、私にはよく分かりませんでした。死の世界の概念をダイレクトに受け止めてしまった少女心理というものを表現したいのであれば、もっと純度の高い、したがって常識を突き抜けるような、大人から見たら到底受け容れがたいかもしれないような描写が必要なのではないでしょうか。作品の構成そのものは大人視点なので、その辺が分かりにくいです。 [映画館(字幕)] 5点(2009-01-11 23:23:41) |
49. サルサ!
《ネタバレ》 普段は耳にしないサルサ・ミュージックがたくさん聴けるのはいいのですが、肝心のストーリーが、ベタを通り越して「陳腐」です。音楽でごまかしきれないほどの粗さが目につきます。冒頭のピアノのシーンと、ラストのライブシーンのそれぞれの迫力で何とか印象が保っている感じ。室内部分でのカメラの揺れも気になりました。 [DVD(字幕)] 5点(2008-12-31 01:51:17) |
50. ライフ・オブ・デビッド・ゲイル
《ネタバレ》 どうみても「羊たちの沈黙」+「デッドマン・ウォーキング」じゃないですか・・・。それはまだいいとしても、ゲイルにケヴィン・スペイシーを充ててしまったのは最大の失敗だと思う。こんな役をこの人がやっていたら、主題そっちのけでこの話の裏は何だろうという方に気をとられるに決まってるわけで、この役はもっと誠実な一般人っぽい人にやらせるべきでした。また、ケイト・ウィンスレットも、こんなストレートな役柄では演技力の発揮のしようがありません。 [DVD(字幕)] 5点(2008-10-27 01:33:19) |
51. オール・アバウト・マイ・マザー
同じ路線だったら、後発の「ボルベール」の方がはるかに上。この作品の弱点は、登場人物のどこに注目するのか、その焦点が定まっていないこと。周辺人物の事情までをあれもこれも詰め込んでいるのはいいけど、時系列の飛び方も含めて処理が雑すぎで、どこで誰がどう変わったのかがよく分かりません。また、登場人物の日常の「生活感」が感じられないのも、この種のドラマでは大きなマイナスで(この点がボルベールは優れていた)、監督の独善性を感じさせてしまいます。 [DVD(字幕)] 5点(2008-04-30 02:57:49) |
52. 靴に恋して
《ネタバレ》 環境はそれぞれ違うが、5人の主役の描写はみんな似たような感じ。つまり、日常生活にストレスを抱えていて、内面に新しい変化が起こっても(その多くは男性関係なのだが)上手く対応することができず、もやもやしたまま停留してしまう。そんな風に基調のトーンが全部似通ってしまっているため、趣向を凝らして5人の登場人物を設けても、それがしかるべく絡み合っても、訴えるものがないのです。結果、ラストも都合良くまとまってしまっただけという感じでした。筋立てとしては悪くないので、一応この点数。 [DVD(字幕)] 5点(2007-08-14 03:08:30) |
53. 1492/コロンブス
コロンブスのしたことはまったくほめられるべきものではないし、むしろキリスト教的攻撃精神そのものなのだが、晩年の不遇だった部分についても描写し、彼を決して英雄化していないところは良い。 5点(2004-03-20 18:20:23) |
54. 処女
《ネタバレ》 美人の姉と太った妹がいて、処女喪失をどうしようと考えている、という初期設定。姉の方は一線を越えるにはこだわりがあり、一方妹の方は誰でもいいと考えている、ということにはなっています。しかし、実際の描写は、延々と続く姉のベッドシーンか(あそこだけで15分以上あった?)、姉妹のそっけない会話か、あと終盤に母のヒステリーが入ってくるか、というくらいで、特に目新しいところはありません。そもそもこの設定なら、妹がいかに動くかの方が重要なはずなのですが、この妹が、存在自体は強力である反面、それほど意味ある行動をしていないので、設定の意味がないのですね。まあ、姉の長いHが、実は妹と同じ室内で目と鼻の先だった、という小オチは、漫画チックで面白かったのですが、そこくらいでした。ラストもひねってはいますが、単にひねりたくてそうしただけのように見えます。 [DVD(字幕)] 4点(2023-09-05 00:45:24) |
55. 戦場カメラマン 真実の証明
《ネタバレ》 最初の方で戦場での撮影活動のあれこれが出てきて、まあそういう作品なんだろうと思ったら、早々と舞台は元の生活地に移って、あとはそこでの鬱屈した生活が延々と・・・。トラウマやPTSDをテーマにしたいのだったらそれも中途半端だし、意図がよく分からない作品でした。ラストの展開はそれなりにインパクトはありましたが、それは別の話ですしね。 [DVD(字幕)] 4点(2022-10-09 22:35:40) |
56. アレキサンダー大王
やはり、こういう特定の主人公にスポットを当てた歴史系大作でありながら、主人公が少しも格好良くないというのは致命的なのではないか。大半のシーンではうじうじとモラトリアム的に悩んでいるだけだし、合戦だの征服だののシーンでも、何かしているわけではない。そうすると、作品も必然的に焦点を失っていくことになります。それと、美術とか衣装とかエキストラとかも、終始何か安っぽいのですが・・・。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-07-16 01:08:25) |
57. ネルーダ 大いなる愛の逃亡者
《ネタバレ》 チリの詩人にして政治リーダー、パブロ・ネルーダの伝記作品です。さてはどんなにドラマチックでかつ文学的な人生が、と思っていたら、全然そうはなりませんでした。政治的な活動のあれこれに彼が作った詩をかぶせる、というのが趣向のようなのですが、ほとんどはひたすら逃げている描写と、それを割とのんびり追いかけている警官の描写で、結局何をしていたのかよく分かりません。また、詩というかそれっぽいナレーションについても、いろんな人が発言して視点がぶれぶれなのは、途中までずっと自分の見間違いかと思っていました。やはり、文芸人の描写は、その創作がどこからどのように湧いて出たのかという難易度の高さに挑まないと、ただ表層をなぞっただけになってしまうのですよ。 [DVD(字幕)] 4点(2021-02-10 01:35:30) |
58. バチ当たり修道院の最期
あのペドロ・アルモドバル監督に、こんな変てこな作品があったとは・・・。邦題からはアホコメディの香りが漂ってきますが、中身は意外に暗くて地味です。しかし、やっていることは特に真面目だったりシリアスだったりするわけではありません。最初、いかにもアホっぽいクラブシンガーが修道院を頼って入っていくのですが、シスターたちが揃って何かずれているので、このシンガーがいつの間にか一番まともに見えてきてしまうのです。ただ、そういう設定でやるのであれば、各シスターの個性はもっと作り込むべきだったし、行動ももっと突き抜けたものを用意すべきだったかな。発想の切れ味に、製作がついていけていませんでした。 [DVD(字幕)] 4点(2020-07-15 00:56:19) |
59. ペーパーバード/幸せは翼にのって
《ネタバレ》 もっとすごくいろんなドラマチックなことが起こっているはずなんだけど、描き方がえらく日常的というか平坦というか、とにかくベースがのんびりしているので、社会的背景を含めた迫力というものがないのです。輪をかけて、肝心の子供があれこれワガママなだけでさして可愛くないというのが良くない。ラスト20分の突然の緊迫感はなかなかでしたが、それだけでは覆せませんでした。 [DVD(字幕)] 4点(2019-03-19 01:44:19) |
60. 続・さすらいの一匹狼
《ネタバレ》 主人公がとにかく格好悪くて。前後の見境なく何でも突っ込んで行くかと思えば、武力があるわけでもなく、かといって知恵や作戦でカバーして進むわけでもない(というかむしろ頭が悪い)。医者が随所でフォローしてくれなかったら、瞬時に消えていたんじゃないですか。ヒロインが言葉少なに凜とした感じを表現していてなかなかいい感じだっただけに、この主人公のヘボさは何とも残念。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2018-03-24 00:58:04) |