1. [リミット]
《ネタバレ》 ダイハードのマクレーン刑事を思い出した。警察は基本的に犯人の要求に従おうとする。特に日本はそうだ。なのにアメリカは違う。人命を尊重し、犯人の要求に従おうとすると、なぜかその行動はテロリストのいいなりだ、弱腰だ、というスタンスで描かれてしまう。そんな弱腰の組織に対しあのバカ者のマクレーン刑事は「テロに屈するな!」とほざいて孤軍奮闘する。そしてテロリストを叩きのめす。そのおかげで人質は殺されまくりだ。飛行機の大爆発なんて人質の乗客が何百人死んでいるんだよ。この映画、じつはその「人質」たちの声を代弁した物語になっている。正義の理不尽さを描いているだけなのだ。その人質の1人はこう言う。おまえらが正義を実行するのは構わないが、殺されるこっちの立場にもなってくれ、頼むから身代金を払ってくれと。あぁ・・でもそれじゃ正義はカタルシスを得ることができないし、観客も満足できないのだ。監督の言いたいことはよく分かる。名もなきトラックの運転手が殺されたという事実。そんな事実は正義のヒーローが悪を倒したあとでは、歓喜の声でかき消されて忘れ去られてしまう。むしろ、名もなき人質が悪人に殺されたほうがモチベーションが上がる。最後にテロ人質対策のオジサンが「ごめん・・救出場所を間違えちゃった」と平謝りしていたが、しかしこの後、彼は仇討ちを行う。むしろ仇討ちを行うことのために人質とは死ななくてはいけない暗黙のルールがある。そして救出者が悪を倒す英雄へと変わるのだ。英雄は歓喜の声をあげ、こう叫ぶ。正義は勝つ!! 運転手はどうしても死ななくてはいけなかった。でなければこの漆黒のメッセージは成立しなかったのだ。こういう映画、たまらなく好きだ。 [地上波(吹替)] 7点(2011-11-05 23:19:56) |
2. 28週後...
《ネタバレ》 出だしはよかった。気持ちよさそうなふさふさした大草原で、パパとゾンビが追いかけっこ。ゾンビと大自然という神秘的なアンバランスさに衝撃を受けました。ところがパパが感染してパパゾンビになってからがひどい。パパゾンビが暗闇のなかで人を襲うシーンがありましたが光をピカピカさせながらカメラをグルグル振り回しやがる。死ぬかと思った。気絶しなかったのが不思議なくらいだ。ああいう映像は正気の沙汰とは思えない。自律神経が乱れてうつ病になったらどうする気だ?手ぶれ映像は増える傾向にあるが、そのうち映画館で事故が起きると前もって予言しておく。アネロンを飲むヒマすら与えてくれなかったことに憤りを覚える。特にアクション映画の手ぶれは、ドグマ映画における自然な手ぶれとはあきらかに違う。カクテルをシェイクするときのようにカメラをシャカシャカ振り回している。冗談じゃない。観客は地震を疑似体験したいわけではない、映画が観たいのだ。手ぶれなどクソ食らえである。それと子役の姉は美人だが顔の表情が冷たすぎて、弟に対する母性愛が感じられなかった。主役の姉弟が可愛くないから助かって欲しいという気持ちがわかない。むしろ姉弟は感染を拡大させた責任をとって切腹してほしいと思ったくらいです。このぶんじゃ続編はあるとおもう。続編は28ヵ月後か28年後に違いない。調子にのって280年後まで作ってしまいそうで怖い。280年後というと未来のSF型ゾンビ映画だ。宇宙ステーションにゾンビが大量発生し、宇宙遊泳しながら近づいてくるゾンビは怖いかもしれない。そうなればゾンビは歩くべきか、それとも走るべきか、というツマラナイ議論など吹き飛ぶと思う。ネタは尽きることはない。私は何だかんだ言ってもゾンビは好きだ。ゾンビバンザイ! [DVD(字幕)] 7点(2008-06-21 19:45:16)(笑:5票) (良:1票) |
3. パンズ・ラビリンス
《ネタバレ》 グロテスクな映像ですら「娯楽」の1つとして魅せていました。「あなたの生まれてくる世の中は残念だけど、とってもつらいわ」と母親のおなかにいる赤ん坊に問いかけるオフェリアに泣かされます。大人が人生に苦しむのはまだ我慢できる。しかし幼い子供が人生に苦しむのは許しがたい。スペインの内戦といえば実際に自ら従軍したヘミングウェイの「誰がために鐘はなる」を読んで昔衝撃を受けたことがありますが、ここで展開される内戦はそんな壮大なものではなくて、あくまでも生きるという事の辛さを伝えるためのものでした。仮に戦争中ではなくて裕福な日本であっても、自殺に成功する人が毎年3万人、自殺に失敗する未遂者がその10倍、つまり1日に900人前後の人がどこかで自殺を試みているわけですから、人生の苦しみというのは、いつの時代であろうが、どこであろうが相対的なんだと思います。つまりこれは特別な人の、特別な場所で起きた、特別な物語ではなくて、誰にでも訪れるであろう普遍的な物語でした。だから共感できる。オフェリアが試練を乗り越えたら、悲しみのない幸せな国の王女様になれるという空想を持つ事だって、滑稽で同情すべきものではないと思います。たとえば仏教の教えは善行を積めば極楽浄土へ行けると言いますが、それはオフェリアの空想となんら変わりません。人間は不安に耐えるために空想を作り出すのです。オフェリアの不安の原因を「戦争」という遠大なものではなくて、もっと身近な「大尉」というものに焦点を絞ったのは分かりやすくてよかったです。この大尉は、自分の妻ですら、女は子供を生む機械だという態度で腹がたちます。彼は自分の遺伝子を残すという動物的な本能以外は何も思想がありません。ひどい男です。オフェリアの唯一の理解者であるメルセデスが大尉の口を裂いたときは痛快でした。ボクシング中継を観ているときのように、そこだ、右だ、よし左、やれ、ぶち殺せ、と叫んで応援してしまいました。この映画はメルセデスが一番輝いていたと思います。本当に哀しい物語ですが、この映画が終わった後、つまり監督が「はい、カット」と言った後に、メルセデスと死んだはずのオフェリアが立ち上がって、2人は仲よく微笑みながら珈琲を飲んでいる。そういう光景を空想して悲しみを紛らわせたいと思います。 空想は人間の特権です。 [DVD(字幕)] 9点(2008-04-28 22:37:54)(良:4票) |
4. ボルベール/帰郷
《ネタバレ》 風の音が心地良いです・・。これはオールアバウトマイマザーの続編でしょう。男はほとんど出てこないし、出てきても殺されるだけでした(ニガ笑)この監督の特徴でもあるのですが、女性がどんなに辛い目にあっても、誰1人として悲劇のヒロインを演じていない。超がつくほどに前向きに生きている。人殺しやレイプといった深刻な問題に直面しても、女性たちは明るさを失わない。少し能天気すぎるのでは?と思われるくらいが、生きていく上ではちょうど良い。それが困難に克つための秘訣なんだと改めて教えてくれる。女性たちが冷蔵庫を運ぶシーンが印象に残ります。男と女の違いは簡単にいえば力の違いです。重いもの持てるのが男。しかし女性たちは協力しあって、歯を食いしばり重い荷物を運ぶ、もう男なんて用無しよ、というわけです。そういう隠喩的な意味がこのシーンには含まれている。ペネロペは、もともと「女」を演じるよりも、「母」を演じるほうが似合う。母性の強い人だから、水を得た魚のように活きていました。テーマは母娘の葛藤。母娘の関係は、友達同士のような関係になるか、憎みあう関係になるかどちらかだと思う。NHKに「抱きしめるという会話」という広告が昔あり、母親が笑顔のない娘を抱きしめる映像がありましたね。あれは母親が息子を抱きしめる映像だったら意味がないんですよ。母親が戸惑いながらも、娘を抱きしめるということが、今一番必要なんだと思います。 本作では様々な母娘が出てきます。ペネロペ母と娘の関係さえ良好に見えて危うさが漂っています。しかしラストではペネロペ娘と母親の氷解があり、観客はカタルシスを得ることができる。息子を愛せない母親は非常に少ないですが、娘を愛せないと自信喪失している母親は大勢いるでしょう。しかしそれは多くの母親が抱えている悩みかもしれません。母娘の再生というテーマのこの作品を観れば自然と元気がわくのではないでしょうか。なぜか涙が出てくる素晴らしい作品でした! [DVD(字幕)] 10点(2008-02-06 20:10:16)(良:1票) |
5. パフューム/ある人殺しの物語
《ネタバレ》 これは、あるコレクターの物語でした。コレクターは異常者だとは言われません。蝶を殺して標本にする人間には蝶を殺すことに対する罪悪感はありませんし、動物を殺しまくってそれを剥製にするコレクターはそれが異常だという認識はない。しかしジャンのように人間を殺して収集欲を満たそうとすると犯罪になります。でも動物のコレクターも、本当はとんでもない異常な行為なんですよね。死体を収集するのだから当然です。ジャンよりも残酷かもしれません。考え方はジャンと同じなのに、一方は正常者で、もう一方は異常者と言われる。その理由は人間がこの世の中で一番偉いという価値観に基づいているからです。ジャンは異常者ではなく異邦人でした。主人公のジャンは誰とも人間関係を築くことができなかった。そのために他人を人間だと思う機能が麻痺していた。だからジャンにとって人間は美しい蝶と同じでした。彼は罪の意識はなかった。だからなぜ自分が民衆から裁かれるのか分からなかったはずです。彼はコレクターでした。 [DVD(字幕)] 7点(2008-01-19 17:58:55) |
6. ボーン・アルティメイタム
《ネタバレ》 細工されたアクションと不自然な手ぶれ映像が目立つ。故意にカメラをぶんぶんふりまわして、派手なアクションシーンを見せかけている。これは子供騙しの映画だ。観ていて20分が経過したあたりから酔い始めた。その短絡的な揺らし方はアダルトビデオのクライマックスシーンを見ているように低俗だ。それから編集も最悪で、画像がぶれているとき以外は役者のズームアップばかり。会話場面の単調なクローズアップにあわせて、ジュリア・スタイルズの顔面アップ画像がやたらと印象に残る。しかも映画の基本である照明も、一目見ただけで圧倒的に光不足であることが分かる。ようするに、すべてにおいて露悪趣味というのが滲み出ているのだ。ストーリーに中身がないのは娯楽映画だから仕方ないにしても、こういう異常な映像は許せない。どんどん酔いが悪化していった。それでも高いお金を出しているのだから最後まで観ようと脂汗をかきながら必死に席にしがみついていた。そういう自分を健気に思う。ジェイソン・ボーンよりも私のほうが頑張っていたかもしれない。ふざけないでほしい。最後になってくると吐き気を通り越してかなり危険な状態であった。揺れる画像を直視できない、これ以上画像をみると気を失うかもしれない、仕方ないので持ってきたバックで映像を隠し、下の隙間から字幕のみを読むようにしていた。ストーリーもよく分からない。いや、もはやストーリーどころではない。早く終わってくれなければ倒れてしまいそうだった。KO寸前のボクサーが、もう負けてもいいや、倒れてしまおうか?と思っているときの心境に近い。CIAの内部で仲間割れをおこしていたようだが、頭がもうろうとしていたので、どうでもよくなった。ボーンの記憶が甦ったのは良いことだと思うが、私の記憶がなくなりそうだった。ようやく映画館を出たとき、長い拷問を受けてきた兵士が味方の助けでやっと解放されたときの安堵感と似ている。なぜお金を出してこんな仕打ちを受けなくてはいけないのか教えて欲しい。もうこりごりだ。 [映画館(字幕)] 1点(2007-12-04 19:20:55)(笑:2票) (良:1票) |
7. 麦の穂をゆらす風
アイルランドの自然に囲まれた風景が、あまりにも美しいせいで、そこでドンパチと銃撃戦が行われている様子が、不謹慎にも、美しいと感じました。印象に残ったのは、アイルランド共和国議会の民事裁判で、金持ちの地主が裁かれるシーンです。あれは裁判というよりも、裁判ごっこでした。そのシーンが、アイルランドと英国との力の違いを、兵力の違い以上に、表現していたように感じます。私の浅はかなアイルランドの知識といえば、アイルランド=IRA=テロリスト、という偏見があったことですが、この映画は、テロ集団「IRA」の前身となるアイルランド義勇軍の話のようです。ところで、テロリスト、と一方的に我々は言いますが、アイルランド人にとっては、テロをしているつもりはなく、英国と戦争をしていると思っている。しかし両者の力の差があまりにもかけ離れているために、英国では戦争とは受取っていない。アイルランド人に無差別殺人をされていると思い込んでいる。本作では、英国側の兵士が非常に残酷に描かれているために、客観性が損なわれていますが、本当は英国兵士も政府に命令されて、国に家族を置いて、このアイルランドにやって来ただけなのです。そして異国の地で、アイルランド人のテロ行為に、気が狂うほど怯えていたのだと思う。アイルランドからの撤退を心から喜んだのは、英国兵も同じなはずです。この撤退で英国にいる兵士たちの家族も泣いて喜んだでしょう。それが本作からはあまり伝わってこなかった。もう少し英国側の苦悩も描いてくれれば、深みが増したかと思いますし、そういう意味では少し一方的な見方をした映画だと思います。この映画はイラク情勢を、連合国側の視点ではなくて、イラクの武装勢力側の視点で見たようなものと似ている。戦争は、どちら側の視点で見るかによって、真実が変わってくることがよく実感できました。 [映画館(字幕)] 8点(2006-12-25 18:55:26)(良:1票) |
8. ロスト・チルドレン
ジェネは芸術と称してまた光の通らない世界観を作り上げていますが今回は大目にみましょう。登場人物たちもいつものように暗喩法に満ちた作り方になっていましたね。ていうかジェネ論なんてどうでも良い、私が言いたいことは1つしかありません。子役のミエットが恐ろしいほどかわいい!いやかわいいというよりも美しいのです。まさにクールビューティーですよ。天才子役のダコタ・ファニングも裸足で逃げ出すほどのプリティさに驚愕した人も多いと確信しております。ミエットの鼻っ柱の強さや、笑ったときの影のある横顔も含めてすべて好きになれます。この映画はこの少女を鑑賞するための映画だと断言しましょう。素晴らしかったです。ちなみに私はロリコンじゃありません。 [DVD(字幕)] 6点(2006-03-16 20:39:46) |
9. 理想の女
この映画は魅せてくれます。舞台は南イタリアの避暑地アマルフィ。原作はたしかに有名な作家のものですが、あまりそれにこだわらないで観てくれたほうが楽しめるはずです。これは映画です。紛れも無く正真正銘「これぞ映画だ!」と叫び、視覚に訴えかけてくる映像に酔いしれました。 特に妻が夫の行動を疑問に思いはじめたシーンでは、日が没する瞬間の燃えるような夕焼けの美しさが、疑惑の炎と交錯して見事でした。海辺の街が舞台ではありますが、澄み渡った真っ青なブルーのイメージよりは、むしろ「バグダット・カフェ」のように、「赤」という色が印象に残りました。 私は「赤」が基調の映画だと思います。 それにこの当時の上流貴族の絢爛たる身装を、スカーレットヨハンソンという女優を通して思う存分に堪能することができるのが素晴らしい。 すごい!耽美な世界観を終始一貫して魅せつけられましたね。 そして「理想の女」は、「りそうのおんな」と読むのではなく「理想のひと」と読みます。ここがこの映画の1つの謎かけとなっているのですが、「理想の女」の謎が分かった瞬間やっぱり泣きそうになりました。「いい女は2種類しかいない。全てを知り尽くした女と何も知らない女」という触れ込みがありますが、女が好きでたまらない野郎も、美しさを愛する女性も、親に深い悩みを抱えている若者も是非この映画を見てください。これはそういう映画でした。 [映画館(字幕)] 9点(2006-01-22 17:41:49) |
10. ウィスキー
《ネタバレ》 靴下工場のおじさんも、従業員のマルタも、無愛想な人間たちですが真面目な善人です。2人は人生に対して寂しさも感じているようにも見えます。 この物語に陽気な弟を登場させた理由は、より一層、2人のそういう部分を強調したかったからだと思いました。 監督は、このように真面目に生きる2人の老人に向って、「しかめっ面をしないで、さあ笑って!」と応援しているようにも感じます。 それが「ウィスキー」というタイトルのメッセージではないでしょうか。執拗に繰り返される同じ日常シーンが印象に残る映画ですが、こういう何気ないシーンでも感情移入ができる自分がいます。 毎日の生活は本当に孤独だし、時には辛く、そして楽しいのだと思う。 そういう微妙な空気に少しはまりました。 マルタという老女を見ていると、女はいつまでたっても女なのだなぁと感心しました。 たった3人だけの平凡な物語ですが、ぐいぐいと観客を引き込む力はあったと思います。 ミニシアター系映画の好きな人には観る価値はあるでしょう。 この映画のラストのように、人生は寂しさが付きまといますが、それでも下を向かずに笑って前に進みたいものです。 生きて生活をするということは、それだけでちょっとだけ素晴らしいことだと思います。 [DVD(字幕)] 8点(2005-12-31 23:05:31)(良:2票) |
11. 海を飛ぶ夢
過剰な自意識の持ち主ほど、自殺するとき、自分の死に意義を見出そうとして尊厳死などと嘯きます。 ちなみに日本における自殺者は、年間3万人を越えていると言われますが、この数字は少し勘違いしやすい。 これは自殺に成功した数であり、自殺未遂者を含めると、約10倍の30万人なのです。 つまり30万人の人が、どこかで自殺を行って、そのうちの1割は自殺に成功し、9割は失敗しているのですね。 「絶望」は、いつ私たちを襲うか分かりません。 現代における私たちは、病魔に殺されるよりも、自分に殺される可能性が高くなってきたように思います。 こういう状況だからこそ、「人が生きることは権利であり、義務ではない」という言葉が胸に響きます。主人公の死を望む気持ちが「尊厳死」であれ、「自殺」であれ、もし生きることが義務ではないのなら、私たちには死ぬ権利があるのではないでしょうか。 それとも人間は、自殺したいほど人生に絶望していても、愛してくれる相手や、お世話になっている人のために生き続けるべきなのか? しかし人は絶望したとき、他人のことを考えられるほど寛大ではないと思います。 ラモンのことを自分勝手だと思うことは、絶望を知らない健常者の傲慢な見方かもしれません。 人は絶望の前では、みんな自分勝手になるのだと思います。 ただし尊厳死という言葉は存在してはいけないと思う。これは死を正当化したり美化する言葉です。自殺といえばいいじゃないですか。問題は自殺が悪いのかどうかということだと思います。 自分から死を選ぶことは立派ではありませんし肯定できるものではないと思いますが、完全に否定しきれない難しさがこの映画から伺い知ることができます。 [DVD(字幕)] 9点(2005-12-01 20:30:26) |
12. 神経衰弱ぎりぎりの女たち
つまりこの映画はスペイン版「男はつらいよ」です。いや、男ではなく女だから「女はつらいよ」でいいでしょう。 女って大変だな、女って頑張っているな、女って寂しいな、ということがしみじみと伝わってきました。 義理と人情味溢れる秀逸な作品。アルモドバル作品なので、お洒落です。 私は男ですが、日常の生活に疲れを感じている女性が観ていただけたら、ちょっと気持ちが和むかもしれません。大笑いのコメディではありませんが、クスリと笑えるところに癒されます。 [DVD(字幕)] 8点(2005-06-11 21:46:36) |
13. 永遠のマリア・カラス
皆さんが言っているように、「カルメン劇」が素晴らしい。 私は息をするのも忘れてカルメンのシーンを見入ってしまった。 はっきり言って、あのオペラシーンを見るだけのためだけでも、この映画の観る価値はあると思う。それくらい圧巻の名シーンだった。カラスという人の人間性に関しては、決して都合の良いようには描かれておらず、それがかえって偽善さを感じないので良いのではないか?と思う。 天才にありがちな自我の強さと、闘牛並みの気性の激しさを兼ね備えた女性に感じた。 ただこのカラスという主人公以上に、ゲイのプロデューサーの男のほうが私としては見ていて面白かった。 カラスに振り回されるだけ振り回されて、色んなものを失ってしまう。カラスに対して「次は何が欲しい?私の腎臓か?」というジョークがせつない・・ [映画館(字幕)] 7点(2005-02-20 00:32:54)(良:1票) |
14. アザーズ
《ネタバレ》 やられたー この映画を観た感想はまさにその一言に尽きる。 ここでみんなの感想を読んでいるとラストが予想できた!?というすごい人がけっこういるようで驚いているが、私は見事に騙された。まさに監督のトラップにひっかかったのんきな観客の1人であることは認める。 しかしこの映画のラストを予想できなかった私はとても幸運な観客の1人だったといえる。 この手の衝撃の謎が隠されている映画はそれが分からなかった観客は本当に幸福だ。 私は、子供には母親に対してなにか屈折した感情があったことは感じていた。 それがこの映画のなんらかの伏線だと思って得意げになっていた。 しかしラストで分かったことだが、な、なんと!この子供たちは母親から殺されていたのだった。 思わず自分の驚きが声になって出そうになったくらいだ。 母親は心の病になってしまい見境をなくし我が子を殺してしまった─、しかしもちろん心の底から子供たちを愛していた。だから死んだ後の後悔の念はとても激しい。 それが幽霊となってしまった原因だと考える。が自分がそうなったことに気がつかない。自分が幽霊になったことに気がつかないのがこの映画の最大のミソなのだが、それを巧いと思う気持ちを吹き飛ばすくらいに悲しい気持ちが上回った。 あのキリストの教えをしつこく子供に教える場面もなにか変だと思っていたが、あれは子供に教えるものではなく、自分自身の罪の許しを請う意味があったのだろうと今になって考えることができる。 救われたかったのは母親だ。 一番感動したのは最後の最後であの娘が母親に抱きついたところ。 抱きつかれたそのときの母親のニコールキッドマンの顔の表情のなんと美しいことか、、それを見て感動で体が震えた。 最後でようやくこの罪深い母親は救われたのだと思う。 そう思うと涙が出てきた。 幽霊となっても絶望感はない、そこにあるのは母親の無限の愛情。 母親の犯した罪を子供たちが許した瞬間だったような気がする。 この映画を観て恐怖を感じ、ラストで驚き、そして感動した。 10点(2004-09-04 21:42:23)(良:1票) |
15. オール・アバウト・マイ・マザー
《ネタバレ》 悲劇のヒロインという言葉があるけど、この映画に出てくる女性たちにはまったく無縁の言葉だと思う。彼女たちは悲劇を避けようとはせず、憎みもせず、ただあるがままに受け入れている。 息子を失った母親、エイズで死んでいく女性、娘から愛されないボケた夫を持つ母親、薬物女を愛する女優─。 彼女達は悲劇を前にしても心が崩壊するようなことはない。 人生の進むべき道の途中で止まったりせず、着実に前に進んでいる。 陽気なオカマのアグラードも同じように「人生ラクありゃ苦もあるさ」といった感じで、悲劇のヒロインにならない所が印象に残った。 男手なく生きている女性たちを見ると、それは力強くも見え、頼りなくも見える。 しかし「生きている」という輝きみたいなものが感じられた。 生きることが困難なときほど、人は「生きている」という実感を持つのかもしれない。 満たされすぎていると、かえって自分が今持っている大事なものを見失いがちになることもあるかもしれない。 誰の人生も周りからは平凡なように見えて、この映画の女性たちのように劇的な要素はあると思う。 多くの女性を不幸にして、挙句の果てに自分も死んでしまう大男のオカマもその1人。 いっけん、すごい物語のようで、みんな自分の人生を素直に受け入れているところが「強い」と感じさせる理由だと思う。 すべての女性たちに観て欲しい映画だということだけど、私はすべての男性にも観て欲しい映画だと思います。 10点(2004-05-03 13:29:26) |
16. 死ぬまでにしたい10のこと
《ネタバレ》 最近は感動を催促される映画が多い中で、この映画は地味だけどありのままの生身の人間を見せてくれたので新鮮だった。 残り数ヶ月の命─。 自分の人生の終わりが見えたときに、はじめて自分の人生が幸せなのか不幸せなのかを考えはじめた彼女は、ごく自然に別な男と恋をしようと決断する。 それが悪いとか良いかと考えるのではなくて、初めて若い彼女が自分の人生と向き直り、疑問に感じたことなのだから素直に受け入れられた。 本当に普通の女の子であり、1人の母親だったと思う。ほとんどの人は生きている間は自分の人生を振り返りはしないだろうが、彼女のように突然死が訪れたらやはり彼女と同じように今までの自分の人生を振り返り疑問を感じることはあると思う。 しかし彼女は死ぬ間際になって当たり前のように自分の周りに存在していた子供や夫や生活のありがたみを実感したと思う。 本当の幸せとは今自分が持っているものを実感できる気持ちなのかもしれない。 9点(2004-04-29 23:47:36) |
17. トーク・トゥ・ハー
できれば蘇った女性と男が会話を交わす場面が欲しかったな。 そのとき男は現実の厳しさを知るやろうね。 男は一生あの女性が植物人間であれば良かったと思うかもしれない。 そのほうが男にとって好都合だし。 夢の中にいたのは植物人間の彼女のほうではなくて、男のほうだった。 愛はそんなに簡単じゃない。 しかし人を愛したことがない人間の哀しさは伝わってきた。 7点(2004-04-24 23:20:30) |