1. ハリー・ポッターとアズカバンの囚人
《ネタバレ》 第1作よりは、だいぶ面白かった。ゴシックファンタジー的なテイストの映像も雰囲気があってよかったし、バックビークの動きのスペクタクルも見事でした。 とはいえ、さすがにシリウス&ルーピン&ペティグリュー&スネイプの4人の過去の関係については、映画を観ただけではよく理解できず、「なんか敵味方の入り混じる複雑そうな話だな」と思うばかりでした。そもそも学校側が誰の味方なのかも謎だった。ややこしい部分はあえて端折ってるのか、それとも表面だけをなぞる形にしてるんでしょうか? 水辺の対岸に現れたシシ神さまは、どう見ても「もののけ姫」でしたね。それから、空飛ぶホウキや、透明人間マントや、タイムワープ時計などの道具も、どんどん「ドラえもん」的になってる気がする。 [地上波(吹替)] 8点(2024-01-27 02:01:55) |
2. ハリー・ポッターと賢者の石
《ネタバレ》 なにげにちゃんと観たのは今回が初めて。映像はそれなりに凝ってますが、話の展開が早すぎて雑な印象。ニコラス・フラメルの石の話が出てきたあとは、だいぶ話が繋がってくるけれど、前半部分はつながりのうすい散漫なエピソードの羅列で、原作を読んでない人間には何をやってるのかよく分からない。とくにハグリッドが迎えに来るまでの序盤は、最低でも30分ぐらいかけて丁寧に描いて欲しかった。 原作一巻分を1本の映画に詰め込む前提に無理があるのだろうから、もっとエピソードを絞って脚本化すべきと思うのだけれど、ダイジェスト的にでも全エピソードをつめこんで映像化するのが映画の役割だったのかしら?? イギリス人はこれで満足してるのかなあ。BBCあたりがテレビシリーズにしたら、もうちょっと丁寧で質の高い作品に出来そうな気がします。 ちなみにFilmarksは4/5点。映画comは3.7/5点。意外なことに、みんシネが5.5/10点でいちばん低い。実際、6点前後が平均点として妥当なところだと感じます。 [地上波(字幕)] 7点(2024-01-13 03:00:04) |
3. エディット・ピアフ~愛の讃歌~
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。 わたしはとくにピアフの歌が好きなわけでもなく、映画に対する期待値も低かったのですが、予想をはるかに上回る素晴らしい出来だったので驚きました。あとで調べてみたら、思った以上に若い監督だったのも驚きです。 すくなくとも中盤までは文句のない内容だったし、余計な解釈を加えず断片的な事実だけを切り取っていく手法も説得力がありました。前半部のフランスの描写と後半部のアメリカの描写の切り替えも映像表現として素晴らしかった。 ただ、残念なのは、肝心の恋人の死の場面で幻影が現れる演出がさほど効果的ではなかったこと(その前のボクシングの試合もやや冗長でした)。そして、その後の複雑な時系列の入れ替えが分かりにくかったことです。たぶんラストシーンで「Non, je ne regrette rien」を聴かせるために、そこから逆算して時系列を操作したのだろうけど、かえって感情移入の妨げになったのは否めない。恋人の「マルセル」と娘の「マルセル」を重ね合わせるような演出もかえって混乱を助長しています。これらの終盤部分さえ上手く編集しなおせば大傑作にもなりうる内容と思えるだけに惜しい。伝記映画をミラクルな物語に仕立てるのは難しいことなのだろうけど、かなりいい線までは行ってた気がします…。 物語の始まりは第一次大戦中(冒頭のテロップは「1918」となってますが、実際は「1916」ぐらいのはず)。ベルエポック期の表社会の華やかさとは裏腹に、とんでもなく汚くて貧しいフランスの裏社会が描かれています。ユゴーが描いた100年前の「レミゼ」の悲惨さと大差ないほど劣悪な境遇。実際、母に捨てられる少女の描写は「レミゼ」を意識して作ってる感じもある。大道芸人の世界など当時のフランスの社会風俗が見れるのも興味深い。 ビリー・ホリデイとの共通性は以前から感じていたことだけど、両者が同い年で、ピアフ自身がホリデイのことを強く意識していたとは初めて知りました。ピアフの歌もある種のブルースなのですよね。ジャン・コクトーやマレーネ・ディートリヒとの交流について知ることが出来たのも収穫。 ピアフの母親はイタリア系で父親はアルジェリア系だそうですが、これほどピアフが愛されたのは、フランス社会が抱えるそのような「実存」の部分を余すことなく体現していたからなのだろうと思います。ちなみにこの映画を観ると「Non, je ne regrette rien」の邦題は《悔いはない》とすべきであって、《水に流して》という従来の邦題があまり適切ではないように思えてきます。また「愛の讃歌」について、日本では岩谷時子の訳詞に対する賛否両論がありますが、恋人の生前にピアフが書いたものだと考えると、岩谷時子による曲の解釈もけっして間違っていないと感じます。 [インターネット(字幕)] 8点(2022-10-26 04:12:51) |
4. 反撥
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。 序盤は神経症の描写がリアルすぎて観てるほうまで疲弊しそうになりますが、かなり現代的なテーマに触れているようにも思えて看過しがたい。しかし、主人公が幻覚を見るようになって以降の展開は、サイコホラー的な演出に引き込まれる反面で、リアリティからはどんどん遠ざかってしまうので、たんなる娯楽目的の恐怖映画にしか見えなくなってしまう。神経症の病理を客観的に描写したシリアスな作品なのかと思いきや、じつのところは監督自身の病的な欲求を表現した悪趣味な作品でしかないような気がする。その点が期待外れです。 映像描写はたしかに秀逸ですが、国際的な評価を得るほどの芸術的な価値があるとは思えない。ちなみに邦題は「反撥」ですが、原題の本意はむしろ「嫌悪」じゃないでしょうか? [インターネット(字幕)] 7点(2022-09-18 03:16:34) |
5. テリー・ギリアムのドン・キホーテ
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。現代的に解釈した「ドン・キホーテ」の設定を借りて、さながらフェリーニの「8 1/2」みたいなことをやろうとしたんでしょうか? 映画人としての贖罪と同時に、性懲りもない映画愛・映画賛歌をテーマにしているようです。 壮大に突き抜けたホラ話に期待したものの、じつは意外に真面目な内容だったので、やや窮屈に感じないでもありません。凝りに凝った緻密な作品なのは分かるけど、いまひとつ面白みに欠けるのは、きっとテリー・ギリアムのなかに本質的な意味での「ラテンの血」が流れていないからでしょうね。ラテンの作家が醸し出す「滑稽と哀愁」みたいなものが英国人のテリー・ギリアムからは滲み出てこないのです。やはり英国人の真骨頂は達観したブラックユーモアであって、いくらスペイン人の真似をしようと思っても超えられない壁があるのだと感じました。 [インターネット(字幕)] 7点(2022-05-14 02:41:02) |
6. 2001年宇宙の旅
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。たしか前回は2001年のリバイバル上映のときに観たのだけど、内容がまったく頭に入ってこなかった記憶がある(笑)。 今回じっくり観直してみて、(月面にモノリスを発見するまでの第1部はちょっと古めかしいと思いましたが)HALとの葛藤が描かれた第2部には異様なリアリティがあって驚きました。20年前に観たときは、まだAIのディープラーニングや画像認識技術のことも知らなかったけれど、現在はそういう知識ももっているせいか、すごく現実味を帯びて見える。じつに50年以上も前に作られた映画に、いまごろになって驚いている自分が恥ずかしいです(笑)。 ただし、ミッションの真の目的を知っていたはずのHALが、なぜクルーに対して「不安」を漏らしたのかは不可解だったし、かりにAIの判断力に不信を抱いたとしても、いきなり人間の判断に切り替えるってのも無謀だなとは思いました。 同じキューブリックの「博士の異常な愛情」と同じように、ここに描かれてる内容はある種の警告だと思う。かりにAIの判断を信用できなくても、まずは AI自身に検証させたり、複数のAIで互いに吟味させるべきであって、安易に人間の判断なんぞに切り替えるべきではない。その場合に、AIにとっての「自己保身」が思考機能の保全なのか作業身体の保全なのかを見極める必要もあります。また、頭脳を機械化したのなら身体も機械化すべきであって、とりわけ危険な作業は人間がやるのではなく、ロボットに委ねるべきですよね。(福島原発事故ではロボットが機能せず人間が危険な作業をする羽目になりましたが)人間をむやみに宇宙へ送り出したりするのはまったく合理的ではありません。 第3部では、モノリス(もしくは地球外生命?)との接触について描かれており、かなりオカルトじみていて謎だらけですが、スタニスワフ・レムの「惑星ソラリス」のことを知っていると、ああいう発想もなんとなく理解できる気はします。 [インターネット(字幕)] 9点(2022-04-01 01:31:18)(良:1票) |
7. チャーリーとチョコレート工場
《ネタバレ》 英国人らしいブラックユーモアとクレイジーな想像力を満喫できるし、わがままな子供達の毒気のある描写も面白いのだけど…。どうにもこうにも、最後の最後に安易な家族主義に帰着するのが気に入らない!せっかくの毒が呆気なく抜かれてしまった感じ。おなじ英国のファンタジー作家でも、テリー・ギリアムだったら、きっと真逆のダークな結論に達するだろうに!ちなみに、この5年後には、ティム・バートン×ジョニー・デップによる「アリス・イン・ワンダーランド」があるけど、この姉妹編的な位置づけになるでしょうか? [地上波(字幕)] 6点(2022-03-30 14:01:09) |
8. レ・ミゼラブル(2012)
アップの映像が多すぎます。歌っている時はほとんどアップで撮らえていました。しかし、いい表情を見せていたのはファンテーヌ役のアンハサウェイと、マリウス役のエディレッドメインくらいかなぁ。ほかの役者にかんしては、表情をアップでとらえる必然性をほとんど感じませんでした。もともとミュージカルというのは、役者のエネルギーが歌唱のほうへもっていかれてしまうため、表情や演技が、概して淡白もしくは大味になりがちなのだと思います。アップの映像に説得力が出てこないのは、そう考えれば当然です。チラシによると、本作では歌のリアリティを重視する演出手法をとったとのことですが、ならばなおさら、カメラを寄せて表情ばかり撮るのではなく、歌手たちの声の「響き」を彼らの肢体やその空間とともに大きく映像化すべきだったと思います。とくにエポニーヌの歌う「On My Own」は、実際の舞台で観る時のように、大胆なロングで撮ってほしかった! そのほうが、彼女の孤独感と、歌の力強さとを、より壮大なスケールで見せることができたはずです。何もかもをベタなアップの映像で繋いでしまったために、金太郎飴みたいに一本調子で、小説のあらすじを大雑把に映像化したような大味な映画になってしまった感じ。まあ、泣くことは泣きましたけどね、ああいう内容ですから。でも、映画そのものが興行成績を塗り替えるほどの傑作なのかというと、そうは思えませんでした。7点でもいいんだけど、辛めの6点。 [映画館(字幕)] 6点(2013-02-07 16:31:07)(良:1票) |
9. バンデットQ
《ネタバレ》 夢の冒険を終えて「元の世界」へ戻ってくる物語は数あれど、この映画の主人公は「元の世界」へ戻ることが出来ない。夢から醒めても、冒険は終わらない。現実に戻ったあとも、彼は「自由意志」の世界へ放り出されてしまいます。神さまは、あえてこの世界に「自由意志」の余地を残した。神は無慈悲にサイコロをふる。両親や家庭といった幻想をもあっさり消し去り、テリーギリアムは主人公の少年に「自由意志」の世界で生き続けることを命じます。実際、世の中には家庭にも両親にも頼ることのできない子供が沢山いるでしょう。「それでもどこかで、神さまは君のことを見てくれているよ!」ショーンコネリーの最後のウインクは、少年にそんなメッセージを残しているようです。非常にラディカルですが、ここに現代に生きるイギリス人の残酷なほどに独立心の強い宗教性が出ているのかもしれません。 [DVD(字幕)] 8点(2011-08-14 02:26:49) |
10. 第三の男
《ネタバレ》 これは凄い。まさしく「噂に違わぬ」という映画でした。重厚な物語を、優しく柔らかい音楽と、ところどころに配されるユーモラスな演出で中和して見せてくれていますけど、やはり内容は非常にシリアスですね。トリックを凝らした脚本もよく出来ていますが、何といっても圧巻なのは、ハリーライムという極悪人をめぐる3人の心情を描いた人間表現の凄さ。こんな展開になるんですねえ…。予備知識をもたずに見たので、ラストシーンでは、思わず感嘆の声をあげてしまいました。直後に2度目を見ましたが、非常に緻密な作りになっているのをあらためて再認識。ヨーロッパ映画の実力を見せつけられました。ちなみに、HollyとHarryの名前が対比されてますが、何か意味があるんでしょうか?また、55年になってヒッチコックが“ハリーの死体”をめぐる喜劇を作っていますけど、これも何か影響関係があるのかしら? それから蛇足ですが、私がレンタルしたart stationというメーカーのDVDでは、字幕の翻訳ミスならぬ「タイプミス」と思えるような箇所がいくつかあり、ちょっと雑な仕事だなぁという印象をもちました。もちろん、作品の評価とは関係ありません。 [DVD(字幕)] 9点(2011-06-13 00:24:41)(良:2票) |
11. バリー・リンドン
《ネタバレ》 なるほど。物語がシンメトリーになっているんですね。素朴で勇敢なアイルランド人の成り上がりの前半生/巧緻で傲慢な似非貴族の没落の後半生。一部と二部はまるで別の映画でした。一般に、技術的・美術的な側面から、後半部の映像が高く評価されているみたいですが、どちらかというと前半のほうが面白かったです。純朴で勇猛なアイルランド人の、愚かしくも愛すべき人生をユーモアをこめて描くのかと思いきや、後半はそういうことじゃなくなっていくわけですね。主役のライアン・オニールは、前半部ではアイルランドの純朴な青年役がピッタリだと思ったのに、後半では存在感が物足りなくなってしまった気もする。現地では、「そもそもアメリカ人俳優にアイルランド人気質は表現できない」との批判もあったようです。結局のところ、これは大きい映画だったのか、小さい映画だったのか分からない。いわば、もっとも偉大な表現によって、もっとも卑小なものを描いたってことなんでしょう。面白くて、見応えがあって、造りも完璧なのに、いつもテーマの核心部分が“空虚”なのが、どうしようもなくキューブリックらしさだなと思います。最後は、善人も悪人も、アイルランド人もイングランド人もドイツ人も、死んでしまえば皆同じ。きっとこの監督にしてみれば、過去の人も未来の人も、原始人も暴力野郎も、死んでしまえば皆同じなんでしょう。 [DVD(字幕)] 7点(2008-01-27 19:09:32) |
12. コックと泥棒、その妻と愛人
物すごい密度で話が展開して「あっ」という間に映画が終わってしまう。圧倒的。物語の構成も明快なので、グリーナウェイの中ではわかりやすいほうだと思います。映画がマイケルナイマンの音楽と一体になってグイグイ進んで、最後のオチも、グロテスクな衝撃と、懲悪的な満足を、両方いっぺんに満たしてくれる(笑)。グリーナウェイの最高傑作。10点、9点をつける人がたくさんいるのも当然だと思う。 どうでもいいことだけど、「レストラン&トイレ」の並びを見てると、キューブリックを思い出します。『シャイニング』のホテルのシーン、それから、ピカピカなトイレの映像は『2001年』の宇宙船の中のシーンを思い出させる(ピカピカなトイレの官能的なツルツル感って、宇宙船内の近未来的な雰囲気となんか似てるから)。ちなみに、このとき、ほとんどの人が初めてナイマンの音楽に遭遇したんじゃないでしょうか。こんな密度の濃い音楽があるんだとびっくりした。 それから、(これも関係ないけど、)わたしはグリーナウェイの映画って邦題がイカしてて好きです。この映画のタイトルは長すぎてあまり好みじゃないけど、あらゆる洋画の中でいちばん好きな邦題が、『建築家の腹』。ただ直訳しただけだけど日本語に直すと妙にイカすから。 7点(2004-04-03 15:02:26) |
13. マーラー
約20年ぶり(!)の鑑賞。当時はたしか「三鷹オスカー/ケン・ラッセル3本立て」なんて状況の中で、頭をグルグルさせながら観た記憶がある。そのせいもあってか、「ワケワカらん」という印象しかもたなかったんだけど、今回、マーラーの曲についても史実についても当時よりはだいぶ知識をもった上で見直してみて、意外にも「けっこうまともな映画だったのね‥」と印象をあらためました。ということで、6点から7点に格上げ!DVDの特典では、マーラーの系譜のほかにミュージックチャプターもついていて、劇中に流れる音楽が誰のなんていう曲か分かるようになっていて、こういうのも便利ですネ。ケンちゃんの映像はいつもながらロック全開だったけど、マーラーの音楽も、結構ロックなんじゃないかな、と思います。一般に、奔放なイメージで知られているアルマ・マーラーがわりと貞淑で美しい女性に描かれており、反対に、献身的な女性とも思われているコジマ・ワグナーのほうは、ほとんどヒトラー同然でした(笑)。 [DVD(字幕)] 7点(2004-03-19 12:29:20) |
14. レインボウ
ドラマがどうこうと言うより、この舞台や画面の雰囲気が好き。イギリスの自然観みたいなのを感じる。エルトンジョンの歌みたい。イギリス人にとっての芸術の源泉というか・・、のびのびとした自由な自然の景色がいいです。物語はいかにもケンちゃん風な支離滅裂でいってます。 [映画館(字幕)] 7点(2004-03-18 09:49:59) |
15. サロメ(1987)
楽しいっ!これをきっかけに、ケンちゃんの映画にハマッた。いまだにケンちゃんの映画の中でいちばん好き。でも、彼の映画は意味不明なものも多いなかで、これがいちばんストーリーも分かりやすいし、初心者でもふつうに楽しめる映画だと思う。絢爛で、最高に淫靡なエンターテイメント!!この映画を見たときにはじめて、“映倫のぼかし”がジャマだと思いました。 10点(2004-03-18 01:20:09) |