1. ボーダーライン: ソルジャーズ・デイ
前作が良すぎたせいか、続編にあたる今作にはガッカリ。 出来栄えがまったく違って、そのギャップで評価も厳しめに。 [地上波(吹替)] 4点(2024-06-27 00:21:59) |
2. 沈黙 ーサイレンスー(2016)
《ネタバレ》 恩師であるフェレイラ神父の棄教が信じられないガルペとロドリゴ。その二人の神父がフェレイラの消息を訪ねて日本にやってきたが、直面したのはキリスト教を拒絶する過酷な現実だった。 拷問されても信仰を捨てずに命を落とす姿に、複雑な感情が沸いてくる。形だけでも踏み絵をすれば助かるのにとも思ってしまうが、そんな簡単には神を踏みつけられないのだろう。 キチジローは人間の弱さの象徴。吐き気がするほどに醜い。我が身かわいさに身内を見殺しにしたりロドリゴ神父を密告で裏切ったりしては懺悔して許しを請う。そんなに都合よく神に許されるなら、悪行への免罪符としての利用してるだけにも見える。キチジローの懺悔を聞くロドリゴもさすがに許しがたい思いを抱いたはずだが、結局棄教したロドリゴを心から信奉し理解していたのはキチジローかもしれない。 原作は昔読んだが、詳細はすっかり忘れていた。 中学校の社会の教科書にもキリシタン弾圧で多くの信者が殺されたと書いてあったが、神が本当に存在するのならなぜ信者を救えなかったのかと子供心に思ったものだ。 秀吉は昔読んだ子供向け伝記でも天下統一した英雄だったけど、こうしたキリスト教迫害を指示した張本人である負の面を見ると、素直に英雄視できなくなってくる。 無宗教の人間にとっては、宗教や信仰は正直ちょっと怖さも感じる。宗教は本来人の心を救うものだが、ときには争いの元にもなる。それは排他性を誘発しやすいからだ。自分の信じる神が唯一絶対的な存在だから、それ以外をなかなか認めようとしない。 宗教が根っこにある紛争は、今も昔も世界の至るところで起きている。そういうこともあって宗教には無意識に深入りしないようにしてきたかもしれない。だからキリスト教のこともよく知らなかったが、この映画で少し触れることができた気はした。 [DVD(字幕)] 6点(2018-01-27 22:48:27) |
3. ボーダーライン(2015)
《ネタバレ》 悪名高いメキシコの麻薬カルテルの抗争。ネット上でも思わず目をそらせるようなものもある。その世界が現実感を持って迫ってくる。 そんな修羅の世界ではケイトのような正論は通用しない。あくまで正論を通そうとするケイトにイライラし、手段を選ばず復讐相手の妻子まで皆殺しにするアレハンドロに感情移入してしまう。良い悪いは別にして、修羅の中で生き抜く凄味に圧倒される。 ラストでアレハンドロに銃口を向けながら結局引き金を引けなかったケイトが印象的。 最近観た映画の中では一番面白かった。 [DVD(吹替)] 9点(2017-08-30 00:20:45) |
4. 忘れられた人々
《ネタバレ》 弱肉強食のようなメキシコ貧民街が生々しい。不良少年が障害者を何の容赦もなく襲うのが衝撃的。 クソガキ代表のようなハイボはどうしようもないが、子分扱いのペドロは同情の余地がある。盗難ナイフの罪をペドロに擦りつけようとしたハイボの策にはまり、必死で無実を訴えるペドロの言葉を母はまったく信じようとしない。子を顧みない母親の愛を健気に求め続けたペドロが哀れ。 ただ、ろくでもない大人達ばかりではなく、ペドロをちゃんと人として扱い、ペドロに大金を預けてお使いを頼んだ感化院の院長のような人もいた。その慈悲と信頼に応えようとしたペドロを、またもハイボが踏みにじる。まさにクズ中のクズで、殺意が湧くほど。 こんな疫病神のようなハイボも、社会の犠牲者と言えるかどうか。大きな要因ではあるんだけど、恵まれない生い立ちや劣悪な環境の中でも真面目に生きている者はいるので。 ブニュエル監督の描く、最後まで救いのない世界。暗い気持ちになってしまうが、一見の価値はある。 [DVD(字幕)] 7点(2017-03-12 08:20:40)(良:1票) |
5. エル・トポ
《ネタバレ》 普通の西部劇だと思って見始めたので面食らった。冒頭から素っ裸の少年を連れた奇妙な展開。難解な不条理劇を見たときと同じ印象。カルトチックで、全編に宗教的なメタファーに満ちている。 ホドロフスキー監督の悪趣味ともとれるような非現実な世界。独特の世界観は感じるが、最も苦手なタイプ。寺山修司の世界に共通するものを感じて、ちょっと調べてみると案の定。寺山修司が本作を絶賛していた。やっぱり自分にはまったく受け付けないタイプ。アングラ志向のバイブルのような作品。 よくわからないピカソの絵を2時間ずっと見せられるような苦痛。アメリカ社会への批判をこういうメタファーで表現されても、だから何?って印象。カルト映画ならパゾリーニのように悪趣味に徹しているならまだしも、変に芸術ぶっているようで鼻につく。 [DVD(字幕)] 1点(2016-01-12 17:47:04) |
6. 永遠のこどもたち
《ネタバレ》 雰囲気が不気味な上に、ときどき音でびっくりさせられるので心臓に悪い。最後にはちょっとメルヘンチックな部分もあり、家族愛もしっかり描かれていて、ただのホラーにはなっていない。 伏線は一応収束させているが、ストーリーで腑に落ちないところもチラホラ。ラウラとシモンの結びつきが、実の息子でもないのに自ら死を選ぶほど強くなったのはなぜか? どうしてわざわざエイズにかかっている子を選んで養子にしたのか? ラストはラウラが同じ孤児院にいた友達5人とシモンに囲まれて生きていくということで、取りようによってはハッピーエンドにも見えるが、その中にトマスも含まれている。トマスは5人のいたずらで殺されたようなものなのに、それにはちょっと違和感が。 [DVD(字幕)] 5点(2015-05-30 02:26:32)(良:1票) |
7. 父の秘密
《ネタバレ》 クソガキどもの陰湿なイジメには怒りがこみ上げる。これが親の立場であればなおさらで、殺意が生じるのも無理はない。娘を親が守らなくて誰が守るのか。それが娘が死んだと思い込んでの復讐殺人という愚挙であったとしても、カタルシスを感じるほどに共感してしまう。 いい意味でも悪い意味でも作られたストーリーという感じがしない。淡々とした描写が、妙にリアルで生々しい。セリフがなくても伝わってくるものがある。その反面、尻切れトンボのような終わり方にはモヤモヤが残る。この後の男の人生を想像させる余韻はあるのだけれど、それをちゃんと見せてほしい気もする。 娘が生きていたことを知り、後悔しながら殺人罪で刑に服すのだろうか。娘は父に心配かけまいとして、あんなイジメに一人で耐えたのだろうに、黙っていることが裏目に出てしまった。娘は父の犯罪を知れば、どんな衝撃を受けるのだろう。父と娘の愛情とすれ違いが哀しい。 大海の中をボートで一人帰るラストでは、妻を亡くし、娘も殺されたと思っている男の荒涼とした心の様が伝わってくる。すべてを失い、自分の人生も投げて、自殺も覚悟しているのかも。イジメに加担した他のクソガキはどうなったのか、殺された男子よりタチの悪いのもいたんだからちゃんと何らかの報いを受けさせないと。日本でも似たようなイジメ事件は起こっているし、川崎の少年イジメ殺害事件にも通じるような胸糞悪さ。でも、父の姿にまだ救われる。父は救われないけれど。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-05-25 23:20:17)(良:1票) |
8. 闇のあとの光
《ネタバレ》 大嫌いな独りよがり系の映画。馬鹿にはこの俺の芸術がわからないとかなんとか嘯きながら、精一杯シュールに独自の世界観を作っているのが透けて見えるよう。エフェクトのかかった映像にもイラっとする。シーンの繋がりも不明。ラグビー部のシーンが挿入されたかと思うと、サウナで夫婦が乱交に加わったり、セリフが違う国の言葉になったり、成長した子供の姿があったりで、シーンによって場所、時間が脈絡もなく飛ぶので、散漫でまとまりのない他人の夢を見せられているみたい。 まるでマイルール、独自の文法を使って綴っているようで、わけがわからない。映画なんて観客に伝わらなければ何の意味もないのに。お金を取るプロならば、多くの人にわかりやすく正確に伝える工夫ぐらいはするべき。あまりにも客におもねったり説明のすぎる演出はかったるいけれど、これはあまりにも客を無視しすぎ。監督自身は「観客をリスペクトし信じているからこそこのような語り口になった」と語っているが、それさえも独りよがりなこじつけに聞こえる。 セブンが自分の首を引っこ抜いたときに至っては、こちらも邪悪なサタンに生気を抜かれたようで、もう口あんぐりで脱力状態。カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞してはいるが、既存のものから意識的に外して斬新さをアピールしているようで、いかにも玄人狙いでカンヌで賞を取りにいった感がする。少なくとも大衆向けの作品ではない。賛否が分かれて受賞時には大ブーイングも起きたらしいが、そのブーイングのほうに同調したい。 [CS・衛星(字幕)] 1点(2015-05-15 00:28:04) |
9. バベル
《ネタバレ》 モロッコ、アメリカ&メキシコ、日本と、並行して描かれる人間ドラマ。 モロッコでの話は、たまたま子供の撃った弾に当たってしまったアメリカ人夫婦と、加害者になってしまったモロッコ人家族の悲劇。 日本での話は、母を失った聾の女子高生にスポットを当てているが、モロッコでの銃の出所が女子高生の父親が譲ったものというだけのつながり。 メキシコでの話は、モロッコで銃撃に合ったアメリカ人夫婦のベビーシッターが遭った事件。 その三箇所でのエピソードには直接的な脈絡はなく、それぞれ別個のドラマなので群像劇というよりオムニバスの印象。 聖書にあるバベルの塔のエピソードに引っ掛けたテーマで、言葉や心が通じない様を描いているようだが、一つの作品としてのまとまりがなくて散漫に感じられる。 日本でのエピソードが最も不可思議で、菊池凛子の全裸になる意味がさっぱりわからない。 寂しさから人と人との触れあいを求めるのはわかるが、ピンク映画に出てくる欲求不満の人妻のような振る舞い。 日本編だけ浮いて見えるので、いっそのことないほうがよかったかも。 複数のエピソードを一つの映画にするのなら、しっかりリンクさせてくれないとスッキリしない。 三箇所での物語は時系列が同じではなく、前後しているので少し混乱する。 冒頭のベビーシッターが受けた電話は、映画の終盤で夫人がヘリで運びこまれた病院から夫が掛けたもの。 時系列通りに並べてみれば、なんてことないストーリーになるのはよくあること。 難しくもない話を一生懸命難しくしているような気もする。 [地上波(字幕)] 3点(2014-12-05 00:53:39) |
10. ロミオ&ジュリエット
現代版にする必要があったのか。 古典を現代版でリメイクするのは、空気感もテンポも違うので、どうしても無理が生じる。 [DVD(吹替)] 5点(2012-12-17 20:51:05) |