1. ターミネーター2
《ネタバレ》 30年経っても色褪せないのは、現在でも通用する特殊効果だけではなく、前回で悪役だったT-800の立ち位置に他ならない。サラ・コナーとの敵対と、ジョン・コナーとの疑似的な父子関係とも取れる友情。その歪な三角関係で生命金属のT-1000に立ち向かうのだから、面白くないわけがない。人間性もないようなT-800が交流を通して、どこか人間味を感じさせるあたり、そしてサラが仇だったT-800との和解に深い感動を覚える。発端となったチップを壊しても、未来からカイルとの間にジョンが存在する限り、あの戦いは終わらないだろうと思いつつも、この先の物語は見たくないくらい完璧なラストだったとしか言いようがない。 [DVD(字幕)] 9点(2021-08-06 22:18:31) |
2. 太陽がいっぱい
先にリメイク視聴済。緊迫感あふれるサスペンスより、犯罪青春映画という側面が強い。台詞が少ない分、アラン・ドロンの抱えている灼けるような野心と月夜のような深い闇が際立つ。陽を浴びる側になった青年に訪れる、まさかの呆気ない幕切れが鮮烈。 [DVD(字幕)] 6点(2020-04-28 18:27:14) |
3. ダンケルク(2017)
《ネタバレ》 MX4Dを体験したくて観賞。大スクリーンとシートのアトラクション演出による迫力と緊張感の相乗効果はあまり感じられなかった。物語性を排除し事態のみに絞った潔い構成の中に、時空間の異なる陸海空の視線を一つの点に集約させる離れ業をやっている。その割には技巧に溺れて、"戦場に放り込む"部分が弱い。どうしても同じシーンを別々に見せるわけだから、いつ殺されるのか、死んでしまうのかという緊張感が半減する。そして昼夜を操ることもできないため、コロコロ変わる視線を追ううちに集中力が切れて散漫に、駒のようにしか動かない群像劇すらどうでもよくなる。ダンケルクに関する知識がないのが大きいかもしれないが、それでも"既視感の寄せ集め"という印象が強く、そこからオリジナリティを生み出せなかったノーラン監督の限界が垣間見えた。王道で描いても退屈になりそうなところが。ガチャガチャいじくり回して、意義のある撤退をしておしまい。33万人を救った感動的な事実を提示しても、エモーションのない、無味無臭の戦争映画である。 [映画館(字幕)] 5点(2017-09-11 19:05:01) |
4. 太陽(2005)
幻想的で寒々しい映像美が邦画にはない違和感を醸しており、昭和天皇の浮世離れっぷりを際立たせていた。しかし、デリケートな題材にずかずか踏み込んでいる割には、欧州の監督らしい、従来の昭和天皇像から抜け出せていなかったと思う。意図的に抒情性を排したせいもあるのか、単調で途中でウトウトしたのは言うまでもない。これでは"映画"ではなく、"演劇"である。自分には合わなかった。 [DVD(字幕)] 3点(2015-09-11 18:50:08) |
5. タイム・オブ・ザ・ウルフ
《ネタバレ》 ディストピアものというより、あくまでサバイバルドラマの側面が強い。別荘で父親を射殺された母子三人が次の列車が来るまで駅舎で待機する。まだ子供の姉弟は極限状況下の大人達の獣性と醜さをまざまざと見せつけられていく点はハネケらしいが、ここにきて変化球を投げつける。自分を犠牲にして醜悪な世界を救おうとする弟の行為に、見張りをしていた男が止めに入って抱きしめる。家族の前で外国人に暴力を振るった男に似合わない、今までになく優しい言葉。あまりにも無力で根拠のない希望を語りかける。ラストカットの車窓は現実か妄想かは定かではない。それでもハネケは人間を信じているのだろう。絶望ばかりを描いているわけではなく、人間の"可能性"に観客が気付いて欲しいことを。 [DVD(字幕)] 6点(2015-08-20 20:18:00) |