1. ピーター・グリーナウェイ 81/2の女たち
《ネタバレ》 この監督は、自分の撮っている映画の前には観客というお客様がいるんだぞ、ということを微塵も考えないタイプの映画作家なんです。まあそういうところは画家に似ていると言えなくもないです。そういえば映画の前半で主人公のフィリップがモンドリアンのただの幾何学模様にしか見えない有名な絵に講釈を垂れるシーンもありまして、グリナウエイもそこらへんは自覚しているのじゃないですか(笑)。 大富豪が妻の死を忘れるために世界の美女を集めてはハレムを作る話と予備知識を持って観てしまうと、ものの見事にノック・アウトされてしまいます。そのために集めた女優も中にはそこそこにネーム・ヴァリューがある人もいますが、ほとんど脱ぎもないというのはちょっと致命的。お話はもちろんわけが分からない代物なんですから、せめてそれぐらいのサービスはして欲しかったな。あとこの監督は日本びいきだということでやたら日本文化(というかなぜかパチンコ屋)がモチーフにされてますけど、けっきょくは日本という国は雨が降るみたいにしょっちゅう地震がおきるところだということに落ち着きそうです。これってもちろんジョークですよね… [ビデオ(字幕)] 3点(2016-11-06 22:50:46) |
2. ビバ!マリア
《ネタバレ》 全世界の若者が「造反有理」「革命無罪」と叫んでいた頃らしさに満ち溢れた革命ファンタジー。そこにジャンヌ・モローとブリジッド・バルドーというおフランスの二大名花を引っ張ってきたというところが、この映画の最大の功績でしょう。モローとバルドーと言うと同じセクシー系ながらも対照的なキャラなので、かえってそのコンビネーションの妙が愉しめます。やはりバルドーはこの頃が美の全盛期で、もう熟しきった果実という感じです。それに引き換えモローにはかなりおばさん風味が隠しきれなくなっていて、それまでジャンヌ・モローの美を最大限に引き出してきたルイ・マルもさすがにお手上げということでしょうね。その迷いはラブコメなのかアクションなのかどっち着かずの脚本にも現れていて、革命劇の成り行きもあまりインパクトを感じさせられません。もっともゴダールあたりに言わせればマルなんて思想性のないノンポリみたいなものなんで、単純な革命お伽噺と割り切った方が良いでしょう。 全篇にエスプリの効いた小ネタのギャグで繋いでいて、そこら辺は『地下鉄のザジ』を彷彿とさせてくれます。でもさすがに爆弾で首を吹き飛ばされてしまう神父の最期、ちょっとやり過ぎの感があります。 [ビデオ(字幕)] 5点(2014-07-08 20:37:01)(良:1票) |
3. ピラニア 3D
《ネタバレ》 元ネタがC級に近いB級ムーヴィーだから、これぐらい思う存分監督の趣味が爆発してもちゃんと観られる映画になっているところはお得です。エサになって喰われるのが男もいるけどほとんどが水着ギャルと言うのは実に豪華、なんせジジ・ババのたぐいはひとりも出てこないのがこれまたお得です。 R・ドレイファスの使い方からして遊び心が冒頭から全開ですが、個人的にはE・シューが三人の子持ちの保安官という設定にちょっと衝撃を受けちゃいました。そりゃ良く考えたら彼女も40代も半ばを過ぎた立派な熟女ですし、ティーンエイジャーの息子がいてもおかしくはないんですよね。『ベスト・キッド』や『B・T・F』シリーズの頃を知っているだけになんか複雑な気分です。まあ要は“そういうお前も歳をとっているんだぞ”と言うわけなんですね(涙)。その息子ジェイクを演じている若い役者、名前をスティーヴン・R・マックイーンと言います。そう、なんとS・マックイーンの孫なんです、まだ映画出演は少ないんですがこれからどう成長してゆくか楽しみです。 [DVD(字幕)] 6点(2013-05-27 01:06:54) |
4. ひまわり(1970)
《ネタバレ》 おそらく『ニュー・シネマ・パラダイス』が公開されるまで、本作は日本でもっとも観客を泣かせた洋画ではないでしょうか。自分もガキの頃ロードショウで観ましたが、周りの大人がぼろぼろ涙を流しているのにびっくりした記憶が残っています。 あまりにベタなストーリーは名匠デ・シーカのフィルモグラフィの中でも凡作の部類だとは思いますし海外での評価も高くないのですが、よっぽど当時の日本人の琴線に触れたんでしょうね。まああの地平線まで一面のひまわり畑は、日本人には決して想像できない風景なのは確かですが。ソ連でロケするのは色々苦労があったのは判りますが、ソ連の人は皆すごくいい人ばかりってのはちょっと臭すぎますね。 いくらイタリア男と言っても、命の恩人リュドミラ・サベリーエワを捨ててソフィア・ローレンのもとに帰ろうとするなんて、マストロヤンニよあんまりだ! [映画館(字幕)] 6点(2010-09-11 00:59:10)(良:1票) |
5. ピアニストを撃て
有名な作品ですけど、これってトリュフォー長編二作目なんですね。とてもそんな若造が撮ったとは思えない技巧を見せてくれますが、ストーリーテリングには若さゆえの荒削りなところも目立ちます。でも私、このオフビートな雰囲気は好きですね。登場人物たちのちょっとピントが合わない会話も、タランティーノの得意技みたいで今観ても斬新です。それにしても同時期に盟友ゴダールが撮った『勝手にしやがれ』と比べると、ゴダールのレベルの高さには驚かされます。 [DVD(字幕)] 7点(2010-06-16 00:53:06) |
6. 百一夜
《ネタバレ》 映画誕生百年を記念した作品ということで確かに映画愛というものは伝わってきますが、それと本作が面白いかというと話は別ですね。途中からムッシュ・シネマのひ孫の偽物というサブ・ストーリーが始まるのですが、まずこのエピソードを挿入する意味が不明ですし話の落ちの付け方もあいまいで良く判らん。全体的にフワフワした出来の悪いヌーベルバーグ風の映画という印象でしょうか。ハリソン・フォードやイーストウッドと言ったハリウッドスターは、出演しているうちに入らないようなニュース映像の断面みたいでちょっと看板に偽りありですね。引用される過去の映画はイタリア・フランス映画が多くて、マルチェロ・マストロヤンニを観ているとフェリーニが無性に観たくなりました。 [ビデオ(字幕)] 4点(2009-12-23 12:57:23) |
7. ピアニスト
《ネタバレ》 なるほど、手紙を渡してからのエリカ先生の変態行動は妄想だという見方もできるわけですね。観ているときは全く意識してなかったので、目から鱗が落ちました。ハネケには知性的な面を感じていましたが、女性をここまで赤裸々に描くのはどういう意図があるのでしょうか。ここまで痛いヒロインは初めて観ました。後味の悪さは私には「ファニー・ゲーム」以上でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2009-05-18 00:16:30) |