1. みなさん、さようなら(2003)
《ネタバレ》 原題「蛮族の侵入」。ローマ帝国は蛮族の侵入によって滅亡し、ヨーロッパ史は古代から中世へと移ることになる。。。主人公は社会主義者を公言する。息子は仕事が証券ディーラーというあからさまな資本主義代表。息子の、金に物言わせる強引な行動は、そのことをよりわかりやすく提示する。世界は社会主義が超資本主義という蛮族の侵入後、崩壊する。資本主義の象徴とも言えるツインタワーは反対にイスラム原理主義という蛮族の侵入によって倒壊する。人類の歴史は人殺しの歴史。ホロコーストすら霞む大量殺人の歴史。世界はその痛手を乗り越え新たな歴史を刻んでゆく。しかし個人は死んだらお終い。癌という蛮族の侵入にあった父はひたすら「生」を愛して死んでゆく。父と息子は主義や宗教を超えて繋がる。大量の死を刻む歴史の中でたったひとつの命の尊さが描かれた作品。 [DVD(字幕)] 6点(2009-03-26 17:43:55)(良:1票) |
2. ミニミニ大作戦(2003)
《ネタバレ》 地味なのか豪華なのかよくわからんキャスティングが絶妙といえば絶妙。それぞれが主役も張れるんだけど、どちらかというと脇で主役を食うタイプが勢ぞろいという感じ。ベニスの金塊強奪シーンがなかなか楽しくこのまま痛快で軽やかな展開が続くのかと思いきや仲間の裏切りといういきなりのどんでん返しが全然軽やかでも痛快でもなくズンと重たい雰囲気に。で、1年後というテロップ後はその重さが無かったかのような軽やかさを取り戻す。ここから復讐劇のはじまりはじまり~なのだが、師弟の絆だとか父娘の絆だとかというウジウジした展開があるにはあるんだけど全体としては軽やかさを維持しており、いかにもではあるけどもスタイリッシュなカーアクションを堪能できる。ただ、重ーいのがドーンとラストにきた。おいおい。オチだけノリが悪いよ。軽やかに殺しちゃおうよ(という言い方もどうかと思うが)。 [DVD(字幕)] 4点(2008-06-03 12:32:18)(良:1票) |
3. 水の話
トリュフォーがパリの洪水を撮ったはいいが使えないと放棄したフィルムをゴダールが切り貼りして映画にしてしまったもの。全編を被うゴダールのナレーションはゴダールの他の映画同様に無視。字幕もあるけど無視。ゴダールの映画のナレーションは「説明」ではなく効果音なのだから。でも、この映画、あんまり面白くない。ドキュメンタリーとフィクションがムリヤリひっつけられたという感じ。ま、ムリヤリひっつけたんだけど。 [DVD(字幕)] 5点(2007-12-14 13:53:43) |
4. Mr.レディMr.マダム
初見はテレビで中学生くらいの頃だったと思うんですが、けっこうおバカ映画的なノリで鑑賞して満足していたのを覚えています。ただその頃はミシェル・セローの誇張した感のヒステリック演技自体が面白いということにすぎなかったのが、大人になって観てみるとこのヒステリックぶりがなんとも可愛らしくいじらしいじゃありませんか。いや、べつにそっち方面に目覚めたわけじゃなくって、たぶん女性の可愛い嫉妬というものの存在を知ったとか、そういう私自身の経験値アップや知識力アップがこの映画をより楽しめるものにしているんじゃないだろうか。ということでこれはおバカ映画じゃなくて、やっぱり大人の上質なコメディでした。そしてあらためて、映画を楽しむためにも「日々これ勉強」と思うのでした。 [ビデオ(字幕)] 7点(2006-01-12 14:17:28) |
5. ミレニアム・マンボ
びっくりした。長いワンカットの間にスーチーを捉えるカメラは狭い屋内を移動する彼女を追う、かと思えば平気で他の人物がカメラの前を通りすぎる。スーチーがまた動き出すと、ハッと気づいた素人のカメラマンのようにワンテンポ遅れて慌てて彼女を追う。スーチーのちょっとした仕草にいちいちカメラがビクッと反応する。監督の意図は解らないがこんなスリリングな映像体験は初めてです。タバコを吸う、グラスを傾ける、そんな日常の仕草に目が釘付けになった。室内のオレンジの光と屋外のブルーの光の対比も面白く、中でもオレンジの室内から見える窓の外のブルーという、同一画面での2色の同居が素晴らしい。ブルーはけして明るくはなかったけど、確実に「解放」を表現していたと思う。台湾の歴史ものを三部作として描き高い評価を得た候孝賢がこの現代劇によってその才能の幅の広さを見せつけた。本人は満足していないようなことを言っていたらしいが、私にとってはこのうえない刺激的な作品でありました。 [DVD(字幕)] 9点(2005-10-13 18:12:35) |
6. 緑の光線
ドキュメンタリーのインタビュー集でも見ているかのように、会話の洪水がこれでもかと押し寄せる。そして発せられた言葉が人物のひととなりを見事に露わにしてゆく。言葉で状況を説明しているという意味ではなく。つまり、んと、例えば、主人公の性格を、主人公の友人たちが語るのではなくて、主人公自身の語る言葉に見えてくるんです。言葉によってその言葉以上のもの、あるいはその言葉とは全く違うものを表現するのって映像だけで表現するより難しいんじゃないだろうか。ただ不満を並べるだけの女の裏腹な心情が画面に溢れているから、たんなる自然現象に我々も感動せずにはいられないのです。 [ビデオ(字幕)] 7点(2005-06-14 15:13:45) |
7. ミナ
同じ日に同じ病院で産まれたミナとエテル。その病院を映し出す前に手前の土のミミズのアップから入るところでこの映画は面白そうだと思った。病院の奥の扉には眼科と書かれてありその扉を開けると10歳くらいに成長したビン底メガネのミナが視力検査をしている。二人の家庭環境や容姿に対する劣等感を描きながらこの時代に二人は出会う。すると空で天使のおじさんが出会うのが早すぎるとか言ってる。ベンチに座る二人に友情が芽生えカメラはぐるっと一周。回りきるとそのベンチには年頃と呼ばれる年齢に達した二人がいる。実に楽しいお遊び満載の映画。一方が楽しそうに恋の話をすると笑顔で聞いている一方の不満そうな心の声が流される。私は女じゃないけどこれが女同志の会話ってものなのかもと妙に納得したりもする。五月革命後、女性はどんどん社会に出てゆく。女性に閉鎖的だった時代を生きた親と昔ながらのユダヤの戒律に片足を捕まれながらも自分らしさを主張できる時代(いわゆる時代の谷間)に生きた二人の女の物語。そして、ミナとエテルという性格の違う二人の女を通して時代の流れを描き出した作品とも言える。良かったです。 [ビデオ(字幕)] 7点(2005-04-22 11:37:01) |
8. ミミ
病んだ世界で病んだ人間を描いたギャスパー・ノエの作品のほうがショッキングではあるが、子供が病んだ世界に侵されるこちらのほうが怖いものがある。無表情と閉塞感という子供と対極にある世界を作り上げ、そこに子供を放り込み観察しているような、こちらまで病んでゆきそうな作品です。配色が寓話的に感じさせていて見ている者としては救いである。同時に独特な世界観を作り上げることに成功している。 [ビデオ(字幕)] 7点(2005-04-21 13:44:13) |
9. 溝の中の月
よ、よーわからん..。ジェラ-ルの弟もロレッタの兄も結局だれかれかまわず疑惑の目を向けるジェラ-ルの内情を見せるためだけに登場し、ジェラ-ルの妹をレイプした犯人を探し続ける行為も廃墟から抜け出せない自分を正当化するためのものでしかない。そして廃墟から抜け出したい願望がロレッタとの恋愛感情に化け、踏ん切りよく抜け出したはいいものの、やっぱり廃墟がお似合いさ。って話?(かなり独善的解釈かも。)まあ、内容よりもベネックスによって作り出された異世界を楽しむ、そんな映画でしょうか。 5点(2005-01-25 11:41:10) |
10. 右側に気をつけろ
3つの異なったエピソードが平行して流れるんですが、結局平行して流れるだけで交わりません。ただ凄いのは、ゴダールが登場する話は完全にコメディ、リタ・ミツコの話は完全にドキュメント、ジャック・ヴィルレの話は掴みどころのない寓話、と全く異なるジャンルで同時進行しながら、それらが違和感なくひとつの映画に収まっているところ。でも中身はちんぷんかんぷんでした。飛行機が揺れて機内放送で機長が「ちょっと居眠りしてました」は笑ったけど。ちなみに、ジャック・タチ脚本・主演の『左側に気つけろ』がこの作品のおかげで陽の目をみたらしい。ゴダールはよく作中に先人の作品に対してオマージュをささげるが、これは一番解かりやすい例かも。 5点(2004-03-30 11:52:59) |
11. 緑色の部屋
人間というのはどんな悲しい事も忘れる動物である。だから生きてゆけるのだと何かで読んだことがあるが、トリュフォー扮するジュリアンは頑なに忘れようとしない。この本能と反する行為はもしかしたら大切なことなのかもしれない。しかし本作はよく解からん。それが愚かな行為と言ってるのだろうか?それが難しいと言ってるのだろうか?それから、いっしょに生活している子供のエピソードの意味は?よー解からん映画でした。ごめんなさい。トリュフォーに思い入れがあるなら、あの飾られた写真がそれぞれ誰なのかを探るだけでも面白いかも。 4点(2004-03-02 15:45:51) |