1. ストレイト・ストーリー
《ネタバレ》 ものすごい頑固ジジイ兄弟の話。兄弟なのに、ちょっとしたことで仲違いしたまま十年以上っていうのは意固地そのもの。ちっこいトラクターで何百マイルも旅するってのも、相当の変わりもんだ。よたよたした爺さんだから、愛すべきっていう感じがするけれど、壮年の頃は扱いにくいヤツだったと思う。この爺さん兄弟は、二人とも、荒くれた個人主義者で、世間のヤツらにおかまいなく生きて行く独立独歩の偏屈者だ。それがこの映画のキモだと思う。最後の場面で、よぼよぼの兄貴が掘っ建て小屋から出てきて、仲違いしてた弟と、無言でベンチに腰掛ける。ああうれしいんだな、というのが伝わって来る。こうやって、いろいろなモノと最後に和解して死ぬんだな人は、っていう感慨が浮かんでくる。 9点(2004-06-26 01:28:57) |
2. アバウト・ア・ボーイ
ロバータ・フラックの“Killing me softly please”が大ヒットしたのをリアルタイムで知ってるから、マーカス君の苦悩には苦笑するしかなかった。ま、そりゃ、今時あれを歌うはめになっちゃあ辛いだろう。登場人物の苦悩が、おおむね苦笑レベルで済んでいるのがストーリーとして上手い。自殺も未遂で終わる。他人から見れば些細なことが当人にとっては苦しみのタネで、それに共感しないで生きてゆくのはホンモノじゃあない、と言いたいもよう。空っぽの人生を送っている架空のヒトには重たいテーマかもしれないけれど、リアルワールドの普通の人には、メルヘンタッチの佳作。 7点(2004-06-18 13:37:55) |
3. ひまわり(1970)
ヘンリー・マンシーニの音楽に得体の知れない凄みがある。もちろん音楽だけでなく、ストーリーも映像も俳優の演技も、スキのない名画。そして、観終わって、これはどうしようもないよなあ、という気持ちになる。決して悲劇じゃあない。でも、日常生活ってこういうどうしようもないいきさつに満ちているんだよなあ、と、人生の酷薄さに打たれてしまう。一つだけ、配役に文句付けておくと、リュドミラ・サベーリエワ美人過ぎ。ああいう美人は、死にかけて戦場に転がってる敵軍の兵士を家まで引きずってったりしないよ。むしろ、ロシアおばさん系村娘に助けられる展開の方がしっくり来る。でもそうなると、映画としてヒットしないな。ストーリー全体がやや辛すぎるものになったりして。 9点(2004-06-17 21:47:40)(笑:1票) |
4. 8人の女たち
なんというか、映画全体が天然ボケを演技している、という印象。全員まるっきりヘタなのにインド映画的に歌うわ踊るわ。コイツラ何しとんねん、という脱力の面白さ。笑い転げてしまつた。とはいえ、出演女優は横綱級でキメているから、重厚なお屋敷のセット?とあいまって、安い感じは皆無なのがエライ。根っから無意識過剰の女たちが、金づるの男が死のうがどうしようが平気で生きてる。肝っ玉カアチャンもののプチブルバージョンと見た。 9点(2004-06-15 16:03:22) |
5. ゴースト・ドッグ
伝書鳩にしびれた。緊張と弛緩が、ぜーんぶ的外れに配分されているあたりが、ちょっと真似のできないジャームッシュの世界。ところどころに出てくる英語訳の葉隠れに一驚。ジイサン侍の狂信的うわごととは全然違う立派な箴言みたいに読めてしまう。呑み込めないと言って止めといてもいいはずのところを強引に消化すると、こういう創造的誤解が生まれるわけだ。人殺しを生業にするのは勧められないけれど。 8点(2004-06-14 10:11:00)(良:1票) |