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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1922
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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1.  ヒンターラント 《ネタバレ》 
第一次大戦後のヨーロッパ、まだ戦争の傷跡が深々と残るオーストリアを舞台に、猟奇的な連続殺人事件に巻き込まれたとある帰還兵を悪夢のような映像で描いたサスペンス・ミステリー。セットやロケなどは一切使わず、全編ブルーバックで撮影したというのが売りの本作、なんとなく興味を惹かれ今回鑑賞。全編CGで描かれたという映像はまるでヨーロッパの陰鬱な絵画の世界に入り込んだかのような感覚で、この重厚な世界観はなかなかのものだった。戦争の影響が生々しく残っていたこの時代と、おどろおどろしいこのストーリーも見事にマッチしている。ただ、肝心の脚本の方はいまいち。主人公である心に傷を負ったこの帰還兵の過去を巡る物語かと思いきや、何故かこのおじさんがいつの間にか刑事になって街を騒がす連続殺人事件を捜査し始める。元刑事という肩書があったとはいえ、友人の計らいで主任刑事にいきなり復帰とかさすがに無理がある。ここは要所要所で助言を行うアドバイザー的な立ち位置で良かったんじゃなかろうか。また、主人公の妻を巡る友人との三角関係を無駄に差し挟んでくるのもお話のテンポを悪くしている要因。中盤辺り、自分はかなり退屈してしまった。肝心のことの真相もけっこう無理があるうえにいまいち分かりづらい。全編ブルーバックで撮影したという映像も最初こそ「おお」と思わせるものの、それ以降はずっと同じような画ばかりが続くので早々に飽きてしまった。この手法を使うなら、もっとシュールでグロテスクで一度見たら忘れられないような悪夢のような世界で観客を魅了してほしい。なんだか全てに於いて中途半端な作品と言うのが自分の率直な感想だ。
[DVD(字幕)] 4点(2024-07-26 10:45:37)
2.  潜水艦クルスクの生存者たち 《ネタバレ》 
2000年にロシアで起こった、未曽有の原子力潜水艦沈没事故――。一つ間違えばチェルノブイリ級の大惨事になりかねなかった、そんな潜水艦クルスクの沈没事故をモデルに、艦内に閉じ込められた23名の生存者たちの運命を冷徹に見つめたノンフィクション・ドラマ。監督は、『偽りなき者』や『アナザーラウンド』で数々の賞に輝く実力派、トマス・ヴィンターベア。この監督らしい、手持ちカメラを多用した映像とナレーションやテロップを一切使わないというハリウッドの同ジャンルの映画とは一線を画するその演出はリアルで、まるでドキュメンタリーを観ているかのような臨場感は凄かった。そのせいで多少分かりづらい部分もあったが、後半からはこの乗組員たちがどうなるのかという先行きが気になり、いつの間にか見入っている自分がいた。潜水艦映画の醍醐味である、息がつまるほどの閉塞感も凄まじく、特に酸素発生装置のバッテリーを取りに行くために水没地区のロッカーまで冷たい水の中を泳いでいくシーンは、こちらまで窒息しそうで思わず手に汗握ってしまう。「もう諦めていったん空気のある所まで戻れーー!!」と何度思ったことか。監督のこの演出力の高さは称賛に値する。そして、後半。この事件のことをほとんど知らなかったこともあり(ただ、あの息子の救済を訴える母親が公衆の面前で注射を打たれて失神するシーンはテレビで見たことがあった。詳しく知らないながらも恐怖した思い出がある)、その邦題からきっと彼らは助かるのだろうと思いながら観ていたので、最後の展開には驚かされるとともにどうしようもないやり切れなさに包まれてしまった。自らのメンツにこだわるあまり、兵士たちの命をここまで軽視するロシア上層部の非人間性には怒りを通り越して、もはや恐怖さえ感じてしまう。そしてそれは今もかの国の大統領に脈々と受け継がれているのだろう。観終わった後、色々と考えさせる社会派ドラマの秀作であった。ただ、ロシア人たちが皆英語を喋っているのはさすがに違和感が拭えなかった。ここまでリアルに拘った演出をしたのなら、そこまで徹底してほしかった。
[DVD(字幕)] 7点(2023-12-27 08:25:11)
3.  アンネ・フランクと旅する日記 《ネタバレ》 
『アンネの日記』――。それは第二次大戦中、ナチスによるユダヤ人迫害から逃れ、アムステルダムの小さな一軒家に家族と隠れ住んでいた一人の少女によって書き綴られた日記だ。作者であるアンネ・フランクという名の少女はその後、謎の密告者の裏切りによってアウシュビッツへと送られ、そこで15年という短い生涯を閉じることになる。彼女の死後に発見された日記はその後、出版。そのユーモアを交えた瑞々しい筆致や鋭い人間観察眼、思春期を迎えたばかりの少女の不安や戸惑い、暗い時代にあっても常に希望を失わない彼女の強さは多くの人々の感動を呼び、世界各国でベストセラーとなる。そして現代、ホロコーストの悲惨さを現代に伝える歴史的名著としてユネスコの世界記憶遺産に登録されるまでになった。本作は、その『アンネの日記』で彼女の架空の友達として呼びかけられるキティーが現代のアムステルダムによみがえったらという驚くべき着想で描かれたファンタジックなアニメーション。監督は、パレスチナ紛争を題材にした政治的主張の強い『戦場でワルツを』というアニメでデビューを飾ったアリ・フォルマン。『アンネの日記』は昔読んで、そのキラキラとした才能の塊のような文才に感銘を受けると同時に、もし生きてちゃんとした小説を書いていたらきっと世界的大作家となっていただろうと思うと改めて怒りと切なさに打ち震えるような感情を抱いた思い出の一冊。なので今回期待して鑑賞してみた。この監督らしい独自の画のタッチに最初は戸惑うものの、空想上の存在であるキティーが日記のインクから現実世界へと降り立つファンタジックな描写に惹き込まれる。その後、まるで中世ファンタジーに現れる悪の軍勢のようなナチスドイツや彼らに立ち向かってゆく英雄たちがアンネの愛した映画スターたちという発想はオリジナリティ抜群で、アニメ作家としてのこの監督の面目躍如といったところだろう。ただ、それに対してお話の方は僕は疑問に思わざるを得ないものだった。空想上の存在であるはずのキティーが現代によみがえって?作者であるアンネを捜すというこの設定がいまいち腑に落ちない。こういう荒唐無稽なお話こそより細部の設定を細かく詰めるべきなのに、本作はそこが非常に甘いのだ。なので全体的にフワフワとした捉えどころのない作品となってしまっている。また、アンネの足跡を追って遥か異国の地まで旅していたキティーが後半、何故か現代の難民を救うために尽力する展開となるのも強引さが否めない。もう少し脚本を練るべきだった。ホロコーストの悲惨さを現代に伝える歴史的アイコンとしてもはや象徴的存在となってしまったアンネ・フランクの、その人間的側面に脚光を当てようとする試みは好感が持てるだけに残念だ。余談だが、本作を観終わって本棚の奥に眠ったままだった『アンネの日記』を久々に手に取ってみた。まるで今もどこかでこの現代を見つめているかのような生き生きとした彼女の文章に改めて感動の念を抱いたことをここに記しておこう。
[DVD(字幕)] 5点(2023-07-31 08:09:48)
4.  カオス・ウォーキング 《ネタバレ》 
西暦2257年、ここは地球から遥か遠くに浮かぶ、未開の植民地惑星。この地を人が住めるように開拓しようとやって来た先遣隊は、この星の原生生物の反撃に遭い、壊滅的な打撃を受けてしまう。そればかりか、男たちは自らの考えた思考が映像となって見えてしまう謎の現象「ノイズ」に悩まされていた。原生生物によって女がすべて皆殺しにされてしまったこの星で生まれ育った青年トッドは、そんな男社会の中で鬱屈した日々を過ごしていた。そんなある日、なんと地球からやって来たと思しき宇宙船が近くに不時着するのだった。そしてその宇宙船の生き残りの中には、彼が生まれてから一度も見たことのない〝女〟がいたのだった――。ヴァイオラと名乗る彼女は、トッドをはじめとする男たちの思考が丸わかりになるノイズに戸惑いながらも、地球に帰る道を探り始める。そんな彼女を執拗に捕らえようとする村の首長。トッドは彼女のために二人で村を逃げ出そうとするのだが……。男の考えていることがすべて映像となって見えてしまう謎の星を舞台に、未来を求めて走り出した男女をダイナミックに描いたSFアクション。今もっとも勢いのある若手俳優トム・ホランドとデイジー・リドリーが初共演ということで今回鑑賞。いやー、久しぶりにきましたね、こーゆー設定勝負の出オチSF。『ハンガー・ゲーム』が大ヒットして以来、一時期大流行りしていたこのタイプの映画って、とにかく荒唐無稽な設定を勢いとお金だけを大量に掛けたCG映像とで強引に見せ切るのが常。ただ、本作はそんな勢いもないし、お金もそんなにかかってなさそうだしで、正直イマイチな出来でした。本作の最大のウリは、男の考えてることが女に丸わかりになっちゃうという日本のライトノベルなんかにアリがちな設定。童貞男子が大喜びしそうな、「僕のこの好きという気持ちをあの娘に伝えたい!でも、そんな勇気もないし、フラれるのも嫌だし、なんか僕の想いがあの娘にいつの間にか勝手に伝わったら良いな。ついでに僕の日々考えてるエッチな妄想も伝わっちゃって頬が赤くなったりしたら、なんかもう……ヒャハ!」というこの設定も、イマイチうまく使いこなせていないような。ここら辺、やはり日本のラノベの方が上ですね。またここまで大風呂敷を拡げといて、最後は二つの村同士の小競り合いみたいなんで終わっちゃったのも肩透かし感が半端ない。それに、あの途中で出てくる原生生物も何のために出したのか分からないくらい中途半端に退場してしまったのも残念。まあ簡単に言うと、さして面白くなかったです。
[DVD(字幕)] 4点(2022-04-07 07:00:48)
5.  ウィッシュ・ルーム 《ネタバレ》 
そこはどんな願いも叶う部屋――。売れない画家の夫を支えながら、翻訳ライターとして働く妻ケイト。夢を求めて頑張ってはきたのだがそれでも夫婦の収入はずっと不安定で、今もぎりぎりの生活を強いられていた。少しでも支出を減らそうと、二人は郊外に佇む古い一軒家を購入し、そこに引っ越してくる。都会のしがらみを全て捨てて、夫と夫婦水入らずの生活を満喫するケイト。そんなある日、二人は新居で壁紙に隠された謎の部屋を発見するのだった。不審に思い、その謎めいた部屋を調べた夫は、その後驚きの事実をケイトに告げる。なんとその部屋の中では欲しいと願ったものが、一瞬の停電の後に必ず現れるというのだ。ゴッホやダビンチの名画、飲みきれないほどの高級ワイン、そして一生遊んで暮らせるだけの大量の現金……。部屋の力で夢のような生活を手に入れたケイトは、やがてずっと諦めていたある願いを口にすることに。それは、二人の赤ちゃん。だが、ケイトはまだ知らなかった。この部屋から得られた全てのものは、家の外へと持ち出すとすぐさま灰になってしまうことを――。なんでも願いが叶う部屋を手に入れた若い夫婦が迷い込む、そんな悪夢のような世界を描いたスリラー。文字通り、ただそれだけのお話でしたね、これ。星新一のショートショートか笑うセールスマン(古い!)の1エピソードを無理やり90分の映画に引き延ばしたような感じです。なんかこれ、あまりにも捻りがなさすぎじゃありせん?これじゃ脚本の第一稿をそのまま映像化したようなもんで、普通の脚本家ならここからさらにストーリーを練ってゆくもんでしょう。例えば、この夫婦のことを怪しんだ知人が家にやってきたり、部屋を守るクリーチャーみたいなんを登場させてみたりとか。最後まであまりにも想定通りに進む展開に正直、あくびが止まんなかったです。まあ映像的には若干センスを感じたんで、+1点しときましょう!
[DVD(字幕)] 5点(2022-01-25 05:47:30)
6.  ブレッドウィナー 《ネタバレ》 
ここは、まだイスラム原理主義政権タリバンが支配するアフガニスタン。女性は常に全身を覆うブルカを着用することが義務付けられ、教育や仕事も禁止、しかも親族の男性が付き添わなければ外出もできないような不自由な生活を強いられていた。そんな中、戦争で片足を失った父と露天商を営む少女パヴァーナは、貧しいながらも慎ましく暮らしていた。だが、ある日突然、父親が些細な理由によりタリバンに逮捕され、そのまま遠く離れた強制収容所へと連行されてしまうのだった。幼い弟や病弱な母のためになんとか生活を立て直そうとするパヴァーナだったが、自分一人では買い物に行くことすらままならない。仕方なく彼女がとった方法。それは、過去に突然居なくなってしまった兄の服を着て、〝男の子〟として外出することだった――。当初は恐る恐る出歩いていたパヴァーナだったが、変装は予想以上にうまくいき、彼女と同じく男装して出歩いていた幼馴染の少女とも出会い、次第に大胆な行動を取ってゆく。だが、そうして手に入れたパヴァーナの自由な日々も戦乱の予感に搔き消されていく……。2000年代、アメリカ侵攻直前の政情不安に揺れるアフガニスタンを舞台に、過酷な運命に翻弄される少女をファンタスティックな映像とともに描くアニメーション。アカデミー賞ノミネートということで何の予備知識もないままに今回鑑賞してみました。まるでディズニーの『アラジン』のようなタッチで描かれるのは、非常に重い過酷な現実。長年続いた内戦により荒廃してしまったこの地で、理不尽な現実に押しつぶされそうになっているのは常に社会の中で弱い立場にいる人々。それでも必死に自分らしく生きる主人公がすこぶる魅力的で、そんな彼女が男の子となって手に入れた自由に胸躍らせる姿には思わず切なくなってしまいます。僕たちはこの国で普通に外出して普通にコンビニで食べ物を買い、普通に暖かい布団で眠ることが出来ているのに、どうして何の罪もない彼女がこんな過酷な日々を過ごさねばならないのか。理不尽な現実に悲しくなるばかりなのですが、彼女の語る空想の世界の物語と世界観が非常に魅力的でそれに救われます。これこそアニメという表現を最大限に活かした素晴らしい演出でしょう。主人公以外にも、同じく男装していた少女や字の読めないおじさんなど脇を固めるキャラもみな魅力的で素晴らしい。最後が幾分か腰砕けちゃったのが残念だったけど、男たちの暴力に立ち向かうにはいつの世も優れた物語が必要なのだということを改めて思い起こさせてくれる良作でありました。と、これを観ている現在、アフガニスタンではまたタリバンが実権を握ってしまいました。この先、また彼女たちのようなかわいそうな少女が沢山うまれるのかと思うと胸が締め付けられます。この現実を変えるためには、やはり本作のような優れた物語が必要なのだと僕は信じたい。彼女たちのためにも。
[インターネット(字幕)] 9点(2021-11-23 04:09:57)
7.  ソング・オブ・ザ・シー 海のうた 《ネタバレ》 
母親が謎の失踪を遂げ、以来父と幼い妹とともに小さな島で暮らす少年、ベン。家族以外誰も住んでいない辺境の地で古い灯台を管理しながら質素に暮らしていた彼だったが、都会に住むお婆ちゃんの強引な助言もあり、生まれて初めて都会で暮らすことに。母親の失踪の影響か、生まれて以来ずっと口を利いたことのない妹シアーシャと二人で、ベンはお婆ちゃんの家へと越してくるのだった。だが、新生活を始めたものの、偏屈な性格から何かというと嫌みを言うお婆ちゃんにベンの気持ちは沈み込んでゆくばかり。我が儘放題のシアーシャも彼の不満をますます増幅させるだけ。「もう嫌だ。元の家へと帰りたい!」――。そんな思いを強くしたベンは、ある日、お婆ちゃんの家を飛び出すのだった。ところが知らぬ間に妹のシアーシャも彼の後を付いてきていた。戸惑う彼を不思議な現象が襲う。なんと老人の顔をした小さな妖精たちが、妹をさらってしまったのだ。果たして妹は何者なのか?妖精たちの真の目的とは?そして、海へと帰っていった母親が彼らに遺した歌に込めた想いとは?アイルランドの伝承を基に、妖精にさらわれた妹を求めて異世界を彷徨う兄をファンタジックに描いた幻想譚。昔懐かしのアニメ「日本昔話」ならぬ「アイルランド昔話」とも呼ぶべき本作、特徴的なのはやはりその独特の画のタッチでしょう。まるで絵本の世界をそのまま映画にしたような独自の雰囲気に最初は戸惑ったものの、それもすぐに慣れ、最後はどっぷりと浸っている自分がいました。いや、なかなか良かったですよ、これ。可愛さとグロテスクさの絶妙の間を突くこの監督のセンスは自分には完全にツボでした。特にあのお爺さんの顔をした妖精たちのキモ可愛いフォルムとかナイス!すべての記憶が髪の毛に刻み込まれた妖精なんてなんともユーモラスで最高でした。悪役となるフクロウ魔女もけっこうキャラが立ってましたし。まあお話としては至極単純ですけど、それもこれくらいの尺ならぎりぎり大丈夫。主役となるお兄ちゃんが妹に見せる屈折した愛憎も僕には魅力的に感じました。まるで絵本のような独自の世界観を持つアニメーション、うん、なかなか面白かったです。7点!
[DVD(字幕)] 7点(2021-05-03 18:00:12)
8.  テルアビブ・オン・ファイア 《ネタバレ》 
未だ民族対立の空気が色濃く残る中東、イスラエル。パレスチナ系のテレビ局で働くサラームはある日、ひょんなことから人気ドラマ『テルアビブ・オン・ファイア』の脚本家に抜擢される。それまで担当していた脚本家がテレビ局の方針に反発し、自ら降板したのだ。脚本など全く書いたこともなかったサラームは、突然の事態に戸惑うばかり。なんとかアイデアをひねり出そうと、彼は様々な人物から話を聴くことに。なかでも毎日通る検問所を管轄するイスラエル軍将校から聴いた話は、とても参考になるものだった。検問所を通るたびに彼の意見を聞き、順調に脚本を書き上げてゆくサラーム。だが、次第に将校はユダヤ人としての正義を通すようサラームに要求してくるのだった。当然、テレビ局はそんな彼の脚本にクレームをつけてくる。さらにそこへ主演女優やサラームの元恋人、番組のスポンサーなどがどんどんと意見を突き付けてきたからさあ大変。果たして人気ドラマ『テルアビブ・オン・ファイア』は無事に最終回を迎えることが出来るのか?根深い民族対立を抱えたユダヤ人とパレスチナ人が人気ドラマの脚本を巡り、時に協力し時に反発しあいながら右往左往する姿を描いた社会派コメディ。と、まあ内容としては昔からよくあるベタなスラップスティック・コメディなんですが、本作の特徴はパレスチナ問題を背景にしているところ。おかげでいつでも銃を突き付けてくるイスラエル軍やいざとなれば自爆テロも辞さないパレスチナなど、けっこう際どいネタをぶっこんできてます。それでもそこまで深刻にならず、最後までそこそこ笑えるコメディに仕上げたのは、素直に監督のセンスがなせる技なのでしょう。最後、ユダヤ人とヒロインが結婚するオチにしろと要求するイスラエル軍将校とヒロインが結婚式で自爆して民族の意地を通すべきだとするテレビ局の意向に振り回される主人公。にっちもさっちもいかなくなった彼が、最後になんとかひねり出したアイデアには思わず笑っちゃいました。とは言え、良くも悪くも全体的にこじんまりと纏まっちゃった感があるのは評価が分かれるところ。コメディとしてもう少し突き抜けてくれた方が個人的には良かったような気がしなくもないけど、そこは好みの問題なんでしょうね。まあこの地域は現実の方が突き抜けているので仕方ないのかな。作品としてはよく出来てるんでしょうけど、僕にはちょっと物足りない作品でありました。
[DVD(字幕)] 6点(2021-04-27 01:00:25)
9.  メアリーの総て 《ネタバレ》 
暗い墓場から誕生した醜いモンスターの悲劇を描き、いまや怪奇小説の古典的名作としてその名を残す『フランケンシュタイン』――。そんな暗くおどろおどろしい世界を描いた著者は、まだ18歳になったばかりのうら若き女性だった。彼女の名は、メアリー・シェリー。本作は、そのメアリーがいかにしてこの古典的名作を生みだしたのか、彼女の創作の裏に隠された真実を描いた伝記映画だ。過酷な運命に翻弄されるメアリーを演じるのは、人気若手女優エル・ファニング。監督は前作『少女は自転車に乗って』でアカデミー賞にノミネートされた、サウジアラビアの新鋭ハイファ・アル=マンスール。19世紀のイギリスを再現した映像は終始美しく、どのシーンを切り取ってみてもまるで中世の絵画の世界に入り込んだかのようなクオリティは見事としか言いようがない。そこで描かれる当時の社会的弱者の過酷な生活もリアリティがあり、この監督らしいフェミニズムな視点も抑制が効いていて良かった。ただ、本作はあくまで『フランケンシュタイン』の作者の半生を描いた作品である。なのに、主人公メアリーが肝心の創作を始めるのが映画も四分の三を過ぎたあたりからというのはさすがにバランスが悪い。私の個人的な考えだが、こういう名作創作の舞台裏を描いた作品は、主人公の半生四割、創作過程三割、その作品の内容三割くらいがちょうどいい配合だと思うのだが、本作はこのバランスが非常に悪いように感じてしまった。作品全体がほぼこのメアリー・シェリーと女癖の悪いダメ夫との破綻した結婚生活を描くことに割かれてしまっており、創作過程は後半にほんの少し出てくる程度、『フランケンシュタイン』の内容にいたってはほぼ皆無という状態だった。これでは、彼女がこの名作に託した思いというのが感じられなくて当然だろう。当時の女性の虐げられた思い、彼女が生後すぐに失くしてしまった娘の存在、愛も金もない結婚生活、これらがいかにしてこの名作を誕生させたのかにいまいち説得力が感じられないのだ。美術は文句なしに素晴らしく、一流どころを配した役者陣の演技も華があって大変良いのだが、映画のテーマ性という観点で言うとどうしても物足りない。フランケンシュタインの怪物を映像としてその片鱗すら見せなかったのは、映画として致命的だろう。期待していた分だけ、残念な出来栄えだった。
[DVD(字幕)] 5点(2019-10-01 01:42:50)(良:1票)
10.  コロニア 《ネタバレ》 
1973年、政情不安に揺れる南米チリ。大統領支持派として活動していたドイツ人青年ダニエルは、突如として起こったクーデターによってその身柄を拘束される。碌な裁判も受けることなく彼が送られた先は、謎の宗教団体が建築したコロニア・ディグニダという世間から隔絶された秘密施設。そこはチリ人なら誰もが震え上がる一度入ると二度と生きては出てこれないと言われる地獄のような世界だった――。ダニエルの恋人であるレナはなんとしてでも彼のことを救うため、単身この地へとやってくる。彼女を迎え入れたのは、元ナチス党員でこの施設で絶対的な権力を有する教祖シェーファーとその狂信的な信者たちだった。恋人のためにこの地で生きていく決意をしたレナは、やがてこの施設の地獄のような惨状を目にすることになる。わずかな食事と過酷な労働、日常的に行われる暴行や拷問、自由を奪われ男女の接触も家族との交流も極端に制限され、ルールを破れば明日の生活すらままならない。果たしてレナは捕らわれた恋人と無事に再会することが出来るのか?そしてレナとダニエルはこの地獄のような施設から生きて脱出することが出来るのか?ピノチェト政権下で秘密警察の拷問機関として使われた施設〝コロニア・ディグニダ〟を舞台に、囚われの身となった恋人たちの過酷な運命を描いたサバイバル・ドラマ。主役は子役からのイメージ脱却を図る若手女優エマ・ワトソン。史実を基にしたということで今回鑑賞してみたのですが、うーん、なんかいろいろと突っ込みどころ満載の作品でしたね、これ。ご都合主義や整合性の合わない脚本に終始「?」が止まりませんでした。なんか地下に秘密トンネルが張り巡らせてあって、そこが脱出の重要なカギとなるのだけど、その入口が誰でも入れる倉庫の床にあってしかも鍵も掛けてないなんて不用心にもほどがあるっしょ。また、人気女優エマ・ワトソンに気を遣ったのか、彼女が大して大変な目に遭わないからこの施設の過酷さがイマイチ伝わってこないのも大いにマイナス。それに本作の重要なテーマとなるこの教祖様の狂気性の描き方がかなり中途半端なため、説得力が皆無なのもいただけない。少年への性的虐待をぼやかしているのはいったい誰に気を遣ってのことなのでしょうか。最後の空港での脱出劇も明らかに『アルゴ』のパクリでは?いろいろと残念な作品でありましたけど、エマ・ワトソンの可愛さに+1点で。
[DVD(字幕)] 5点(2017-11-15 15:36:35)(良:1票)
11.  コングレス未来学会議 《ネタバレ》 
かつて類まれなる美貌でもって栄華を誇ったもののいまや落ちぶれ、障害のある息子と共に質素に暮らす中年女優、ロビン・ライト。ある日、そんな彼女に大手映画会社から特異なオファーが舞い込んでくる。「君には映画会社が自由に操れるCG女優となってもらいたい。君は映画の中で永遠の若さを得ることが出来るのだ。その代わり、現実の君は今後一切、公の場に出てきてはならない」――。当初は断ろうとしたロビンだったが、息子のために仕方なく契約書にサインすることに。永遠に年を取らない女優となって見る見るうちに人気を得ていく〝ロビン〟。だが、20年後、事態は意外な方向へと転がり込んでゆく……。実写とアニメを融合させた独創的な映像で知られるイスラエルの映像作家アリ・フォルマンの新作は、そんないかにも彼らしい前衛的な作品だった。前半、コンピューターでスキャンされCGとなった主人公を軸にハリウッドの内幕をシニカルに見つめたドラマになるのかと思いきや、後半から物語は予期せぬ展開を見せ始める。初老の域に達した主人公が「未来学会議」という謎の会合に出席するため全てアニメで構築されたアブラハマシティへと迷い込んでからは、この監督の面目躍如といった独自の世界観が開陳されていくのだ。現実世界は全て原色系のカラフルな世界へと変貌を遂げ、人々はユーモラスでありながら何処かグロテスクなアニメキャラとなって主人公を迎え入れる。やがて、この世界は革命を起こし何不自由ないユートピアとなるのだが、当然、そこには不都合な真実が隠されている…。離れ離れになった息子を求めて、何不自由ないアニメ世界から現実へと戻った主人公が目にする真実には大いに戦慄させられた。この監督の前作『戦場でワルツを』を髣髴させるこの反転構造はやはりこの監督独自のものだろう。素晴らしい。だが、本作には決定的な弱点が一つ。それはストーリーの要所要所に腑に落ちない部分が幾つも散見されるところだ。何故、CGとなったはずの主人公が迷い込むのはアニメ世界のみなのか?何故、主人公は新たなユートピアのシンボルへと祭り上げられたのか?そして何故、主人公は〝ロビン・ライト〟という実在の女優でなければならなかったのか?そこに明確な理由付けが感じられない。そこが本作のレベルを一段低いものにしてしまっている。この独創的な世界観は文句なしに素晴らしかっただけに、惜しい。
[DVD(字幕)] 6点(2016-07-23 22:01:45)
12.  ハンナ・アーレント 《ネタバレ》 
「聞いたでしょう、アイヒマンは法律に従っただけ。彼は自分で手を下していない。ただ、ユダヤ民族抹消という上からの命令に従っただけ。その証拠にアイヒマンは、自分にユダヤ人への憎悪はないと主張している。そう、彼は単なる役人なの。ホロコーストという、想像を絶する残虐行為と彼の平凡さを同列に裁くことは間違っている」――。1960年、多くのユダヤ人をガス室へと送ったナチス戦犯アイヒマンが、イスラエル諜報機関によって南米で逮捕される。すぐにイスラエルへと移送された彼は、人道に対する罪で裁判にかけられるのだった。ドイツ系ユダヤ人であり、自らも迫害された過去を持つ高名な哲学者ハンナ・アーレントは、彼の罪を冷静に見つめようと、すぐにイスラエルへと飛ぶ。「こんな残忍な怪物はすぐに処刑すべきだ!」という空気に満ち満ちたそんな裁判を傍聴していく中で、ハンナは彼が裁くに値しない凡庸な人間であるという考え方を強めていく。やがて、「ホロコーストという未曾有の悲劇を起こしたのは、彼のような人間だけではなく、ユダヤ人にもその責任の一端がある」という主張を表明すると、彼女に嵐のような批判が巻き起こるのだった……。実話を基に、ナチス戦犯であるアイヒマン裁判をあくまで冷徹に見つめた一人の女性哲学者の凛とした生き様を淡々と描いたヒューマン・ドラマ。恥ずかしながらハンナ・アーレントというこの哲学者もアイヒマン裁判もほとんど知らずに本作を鑑賞してみたのですが、これがなかなか見応えのある人間ドラマの佳品へと仕上がっておりました。とにかく、本作の主人公であるハンナ・アーレントが人間としてすこぶる魅力的!!ヘビースモーカーだった彼女が煙草をくゆらせながら(ほんと、ず~~~っとプカプカ煙草喫ってます笑)延々とディベートする姿がとにかく格好良い!!どれだけ批判に晒されようと絶対に自分の信念を曲げない鉄の女であった彼女。でも、家庭では一人の女性として夫を気遣う姿がとても印象的でした。そして、ユダヤ人でありながら、自らの感情よりも冷静な知性でもって真実を見つめようとしたハンナの姿勢は大変興味深いものでした。誰もが自分で考えることを放棄し、ただ上からの命令や時代の空気に流されてホロコーストという未曾有の悲劇を巻き起こしてしまった人類……、今回も感情に流されてアイヒマンを死刑にしてしまったら私たちは何も時代から学ばなかったことになるというハンナの思想は、徐々に右傾化する現代日本に警鐘を鳴らしているようでもあります。時代の風潮に安易に流されることなく、自分で考え判断することの重要さをあらためて教えてくれる佳品でありました。
[DVD(字幕)] 7点(2015-06-25 12:45:19)
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