1. エンジェル・アット・マイ・テーブル
《ネタバレ》 「ピアノ・レッスン」が海のイメージからはじまるように、この作品もまた海のイメージを持つ。 だが、「エンジェル・アット・マイ・テーブル」の冒頭は緑の芝の中を貫く1本の道から始まる。 自然豊かな自然、動物達の声。 「ブライト・スター」ほどじゃないが猫も出てきます。 幼いとはいえ、彼女も立派な女の子。 瑞々しい心理描写には息を呑む。 列車は彼女の人生が旅そのものでもある事を示す。 ジャネットの少女時代から学生、大人の女性へと徐々に成長していく物語。 明るい子も入れば仏頂面の子供もいる。 ジャネットも成長すればするほどどんどん垢抜け、美しい女性へと成長していく。たまに幼少時の面影が出たり消えたり。 先生が教卓で話している時に一瞬映った“剣”は何を象徴しているのだろうか。 成長した少女達の青春、タンゴで踊り狂いたくなるほどエネルギーに満ちる姿。 穏やかな日々、突然の死、涙、初潮、過去との決別・・・。 再び画面に映る列車は、彼女を次の場所へと運んでいく。 初恋?とつまみ食い、不気味な森、ショックで自殺未遂を図る衝撃。 だからっていきなり精神病院はもっと悪化しそうだけどどうなの? いい加減な説明を鵜呑みにしてしまうのだから、相当ショックが大きかったのだろう。 虫歯を放っておいたら全滅、ベッドに拘束、200回目の電気イス、ロボトミー・・・よく無事に帰ってこれたなジャネット。延々と続くかのような苦しみと恐怖を、観客も体験する。 自分を救ったのが、思いを綴った小説だったとは。 余りに精神的に繊細で脆かった彼女も、様々な経験を経て自分を変えていく。良い意味で“わがまま”な彼女は、もう他人の言いなりにはならないし、誰も彼女の想いを止める事はできない。 奪われた8年間を返せと恨むでもなく、彼女は溢れんばかりに想いを込めた小説で自分の心に溜まったあらゆる物を吐き出すのだ。 久しぶりに外に出た彼女は、家族と再会し、やがて誰にも縛られる事の無い海のある開放的な町を目指す。 故郷にも海が拡がっていたが、もっと広い広い場所へだ。 美しき母のような海原は、ジャネットが恋に落ちやがて母親になる事を暗示しているかのようだ。 「ピアノ・レッスン」のエイダもまた一児の母だった。 再び故郷に戻る彼女。その表情には、もう精神病院に送られてしまうような心の弱さを感じない。 一人の強い女性としての彼女がそこにはいる。 [DVD(字幕)] 9点(2014-10-11 15:38:26) |
2. ロード・オブ・ザ・リング
《ネタバレ》 長年映画化不可能とされていたトールキンの「指輪物語」。 小説の壮大な世界観を、実感のある実写と質感のあるCG(一部不満有り)で堪能できるだけでも凄い。 それを3本も楽しめんだぜ? 70年代にディズニーでアニメ映画化されてはいるが、騎馬軍団の壮絶な突撃が好きな俺はコチラを推したい。 ロード・オブ・ザ・リングの「ロード」には、フロドたちが乗り越えた険しい道も含まれているのかもしれない。 「旅の仲間」では、破滅を呼び込む「指輪」を巡って、人間、賢者、エルフ、ドワーフ、ホビットの選ばれた面々が指輪を破壊するための旅に出る。 敵の大将の領土内の溶岩の熱でしか破壊できないとんでもない指輪だ。 ドワーフの鉄の胃袋でも溶かせないんじゃしょうがない。 仲間たちの交流、葛藤、そして別れ。 それでも旅は続いて行く。 [DVD(字幕)] 9点(2014-04-05 13:13:14) |
3. ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔
《ネタバレ》 指輪物語第2作。 別れた事によるストーリーの厚み、 それぞれの戦いを丁寧に描いていく。 アラゴルンに力を貸したエルフたちの希望と絶望、 アラゴルンが待ち望んだ絶望を打ち払う光、 サルマンに森を焼かれた失望と怒り、 文字通り「炎のランナー」と化したオークたちの歓喜と絶望。 この物語を司る対照的な二つの巨塔同様、光と闇、生と死のせめぎ合いが印象深い。 DVDは戸田奈津子のサルマンのゲロにも劣る字幕が修正されていて感動。 [DVD(字幕)] 9点(2014-04-05 13:11:29) |
4. ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
《ネタバレ》 アラゴルンたちの死闘、 フロドたちの苦難の旅の終わりを描く第3作。 敵味方が次々と押し寄せる攻城戦、 己の弱さを強さに変えていく欲望に打ち勝つ戦い、 波乱に満ちた指輪破壊の旅、 そして訪れる穏やかな締めくくり・・・。アラゴルンたちが“援軍”を引き連れてくる場面は何度見ても鳥肌が立ってしまう。 王道の中の王道ファンタジー、堂々完結。 [DVD(字幕)] 9点(2014-04-05 13:09:30) |
5. 第9地区
《ネタバレ》 “恐怖”という意味では、作り物とハッキリ解ってしまうCGよりも生々しいアニマトロニクスの方が何百倍も怖い「エイリアン」の方が上だが、技術を抜きにしたドラマ面ではこの「第9地区」に軍配を挙げたい(そんな好きじゃないけど)。 何よりリドリー・スコットの「エイリアン」と共通する部分があるのが面白い。 スコットに出てくるエイリアンは、たった一人でリプリーたちに戦いを挑んだ。リプリーたちにとっては恐怖の対象でしかない“敵”だが、エイリアンにとっては住処を荒らしに来た侵略者(エイリアン)にしか映らない。 「第9地区」は主人公そのものがエイリアンになってしまい、人間の時は侵略者か見世物小屋でも見るように感情の移入なんて有り得なかっただろう。 そんな男が徐々に異星人に変貌していく。当然人間たちからは疎外され、その中途半端な容姿は異星人にも奇異に見られる。 スコットの「エイリアン」もまた、仲間となる存在がなく常に孤独だった。更にはその凶暴性を人間側に利用されてすらいた。 しかし、「第9地区」は奇跡的に異星人の親子と意志のコンタクトを取る事が出来た。人間だった時に失ったものを、異星人になって少し取り戻せたのは皮肉なものだ。 例え利害関係の一致で一時的な事だったとしても、異星人の子供との絆は確かなものだ。 そしてエイリアンになって初めて知った人間の凶暴さ。彼らは害虫駆除くらいにしか思わないのだろう。「何かされてからでは 遅い!!」という恐怖が人間に牙を剥かせる。 男は何者として戦ったのだろうか。人間としてか。異星人としてか。どちらにせよ、彼は“彼”でしか無い。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-27 16:23:04)(良:1票) |