1. コマンドー
《ネタバレ》 「悪」をどんどん始末。「悪」なのかどうか不明な人たちをもどんどん始末。それにリアルに対応する事柄というのは、要するに、死刑制度容認はもちろんのこと、誤爆容認なんてことも含むだろう。こんなに政治的な映画を無批判に観るということ自体が、きわめて政治的な態度表明になってしまう。 [DVD(字幕)] 1点(2013-05-27 16:02:44)(笑:3票) |
2. インデペンデンス・デイ
《ネタバレ》 アメリカは戦争が仕事の国で、ハリウッドはその宣伝省であることを実に明確に見せる。異星人は醜く描かれ、対話の可能性は一切無く、異星人からの「地球の独立」をアメリカ大統領が宣言するという、猛烈に政治的な映画である。 [映画館(字幕)] 2点(2011-03-21 12:24:47)(笑:1票) (良:2票) |
3. 冷たい熱帯魚
《ネタバレ》 「映画の映画」ということばがあるが、この映画は、「映画館の映画」である。つまりでんでんが主人公に陰気な犯罪への加担を迫るのとパラレルに、この映画は観客に、この映画の悪趣味に耐えられずに映画館を出るか出ないかを迫ってくる。この映画の凄さはそこにしかないが、私はそんな「凄さ」を求めてはいない。 [映画館(邦画)] 2点(2011-02-22 23:48:03)(良:3票) |
4. 花とアリス〈劇場版〉
《ネタバレ》 真ん中の木立が画面を二つに分けている。センパイを引き連れているアリスが、木立につかまって、左のフレームに体を乗り出して、花に電話をする。この人どうするの?センパイは右のフレームにおとなしく収まって料理されるのを待っている。花が答えて曰く、「記憶喪失」のセンパイはアリスの元カレっていう設定なのよ。アリス目を点にして「うっそぉ、はやく言えよ」。このなんとも可笑しいシーンだけでも、ほんとうによくできた瑞々しい「映画の映画」だ。映画の筋の展開を、登場人物がフレーム内フレーム(木立)につかまって相談するという「映画の映画」。 [DVD(邦画)] 10点(2011-08-19 13:14:38)(良:1票) |
5. フローズン・リバー
《ネタバレ》 ぎりぎりのレヴェルで食いつないでいる白人と先住民、ほとんど暗い夜のシーンばかりで、つまりそのような幽閉・囚われが人生なのだ。賭けとしての「凍れる河」への逃走、映像的な良さはここだけ、ここだけが良い。リアル調で構わないのだが、この映画は好きにはなれない。好きになれた人はエライ。 [DVD(字幕)] 5点(2012-08-29 13:38:18)(良:1票) |
6. 桐島、部活やめるってよ
《ネタバレ》 丹念に作った名品という感じである。「桐島」なるマクガフィンが引き起こす運動と細部がいちいち面白いのが身上で、「別の視点からの別の見え方」という造りは本気のねらいではなさそうだ、が、これをもっとねらってもよかったかも(『運命じゃない人』みたいに)。恋人にするならアスリートかアーティストかという古典的な二者択一がとっくに無意味のはず(アスリートの圧勝)なのに、まだ、アーティストのルサンチマン(ゾンビに化ける)は生きていた、というのが面白い。 [DVD(邦画)] 9点(2013-02-25 15:36:42)(良:1票) |
7. 八月の鯨
《ネタバレ》 老年のリリアン・ギッシュをなんとか確認できるが、ベティ・デイヴィスにいたっては全く同定不可能である、しかし、それはベティ・デイヴィスの知ったことではない。ひとはせっかく長年に渡って対世間用に作り上げたペルソナを老いとともに失っていくというのではなく、老いという名の熟成の時間が「あらためて自分のために深く生きる」顔へと作り直していくのだ(と思いたい)。それは絶対的で神秘的な時間だ。二人の往年の大女優に失礼のない美しい撮影である。 [DVD(字幕)] 7点(2012-12-20 11:43:46)(良:1票) |
8. 愛怨峡
《ネタバレ》 フィルムセンターでついに観ることができたときは嬉しかった。期待通りの凄い作品であった。映画館という「暗い部屋」でこの映画の暗さに包まれなければならない。ほんとうに暗い。だがこれは克服されるべき暗さであるというのが溝口の仕掛けなのである。堕ちたときから強くなる女性という溝口パターン。 [映画館(邦画)] 10点(2011-03-19 10:32:04)(良:1票) |
9. 運命の女(2002)
《ネタバレ》 ダイアン・レインの体当たり演技に感謝というような映画で、それにつきる。邦題がだめ。「浮気」なのである。「運命の女」なら、「家庭」を棄てるべきところ。白人有閑階級の退屈には同情できないし、ただただ「家庭」のために尽くす夫という設定も平板である。だから「家庭」という設定が聖域のように君臨するのが、アメリカ映画の基本中の基本。暴力・破壊が大好きなアメリカ映画は「家庭」を守るという大義名分のもと、なんでもするということ。 [DVD(字幕)] 5点(2012-08-27 10:30:19)(良:1票) |
10. 天国と地獄
《ネタバレ》 警察が列車の中から撮っていたフィルムを上映するシーンがぞっとするほど素晴らしい。このドキュメンタリー的なものが「つくりもの」のクロサワ調のなかに突如侵入してくるという希有な瞬間である。 [映画館(邦画)] 9点(2011-03-17 20:04:37)(良:1票) |
11. ニュー・シネマ・パラダイス
映画館で観たときからべたついてくる映画だなという感じがあった。映画を好きになるはずの映画、ということを押し付けるような感じと言おうか。子供をあしらっているが、子供にとって映画はむしろ怖いものである。この映画の否定派の感想をいろいろ聞きたい気がする(ここまで2011年のレビューで評点が4)。いま見直すとフェリーニ感もあるし切ない味も良くて、評点の変更(2024年)。 [映画館(字幕)] 7点(2011-03-25 11:46:46)(良:1票) |
12. 僕と彼女とオーソン・ウェルズ
《ネタバレ》 「彼女」を加える邦題が微妙にひどい。さてオーソン・ウェルズという人物の「感じ」はよく伝わってくる。彼はこの映画で描かれたような強引な感じのままに映画界に進出したのであろうし、その「強引な感じ」による「革命的な」映画手法が長回しだったわけだ。 [DVD(字幕)] 5点(2012-10-08 12:38:08)(良:1票) |
13. サラエボ,希望の街角
《ネタバレ》 原題が「何かに向かう途中」であるそうで、ならばこの邦題はひどい。淡い「希望」に託すとかではなく、自覚的に生き方を選び取る映画だ。歩み寄れないカップルが、決裂し、それぞれの道を行く。「家庭」や「ひとつになること」がゼッタイに大切という発想ではこういう映画は作れない。 [DVD(字幕)] 7点(2012-09-16 05:30:40)(良:1票) |
14. 女ともだち(1956)
長回しという言い表し方では済まないような巧みな撮影・演出手法で、目まぐるしく動く人物たちが主体として浮上しては脇へ外れてゆく様を描き出す。けっして、人物たちの間に割って入って見交わしをモンタージュするようなことはないのは、ほんとうにすごいことだ。ほとんんど取るに足らない筋で不思議に充実しているアントニオーニ作品たち! [ビデオ(字幕)] 9点(2022-11-13 23:06:25)(良:1票) |
15. 洲崎パラダイス 赤信号
《ネタバレ》 完璧である。主人公カップルが脱出してきた洲崎パラダイスへと架かるあの小さな橋は、カオスとコスモスを分節する橋であり、そのカオスへの逆戻りをこのカップルはぎりぎり踏みとどまる。しかしこちら側カタギの空間とて「コスモス」となりはしない。50年代の時代の寵児たる「オートバイに乗ったラジオ商」が、彼女を奪い去る。 主人公は人に尋ねる、二人が去った方角は「橋の中か外か」。「外の方」だという答え、つまりカタギの物象化された都会。同時代のイタリアでも「自転車泥棒」(デ・シーカ)すら捕まらないご時世に、相手がオートバイでは探し当てることは不可能だ。そうしてさらに、ひとりの純情娘がこの橋に現れ、主人公へのかなわぬ恋心を水面に映す。見事な橋の映画である。 [映画館(邦画)] 10点(2011-03-02 17:57:39)(良:1票) |
16. ションベン・ライダー
《ネタバレ》 有名な丸太のシーン(「作った感じ」が惜しい)よりももっとさりげなく素晴らしいのは、例えば次のシュールなシーン:川の中で相談する三人が、やがて川の柵を身軽に越えて陸に上がり、落ちていたボールでキャッチボールをしながら相談を続けるなかで、そのボールが川に投げ込まれるとき三人ともまた柵を越えて川へ戻る。信じられないくらいにキツい撮影現場を、乗り切った俳優たちに拍手。 ストーリーの辻褄あわせであしらわれる通常の映画観客が、奥の奥の間に通される感じといおうか、ほんものの何かを作り上げようとする黙々たる動態に加わるのである。 [DVD(邦画)] 9点(2014-03-09 10:47:37)(良:1票) |
17. ロボコップ(1987)
《ネタバレ》 無機ロボットに襲撃されて、サイボーグ有機体である(が「人権」はない)ロボコップ危うしというとき、そこは階段で、追いかけて来た無機ロボットは階段に対応できずあえなく階段落ち。階段という繋ぎの領域で無能なのが無機的なもの。それとは逆に有機的なものは繋ぐが必ずしもその「人権」は保障されていない。ナショナリズムという冷酷な有機体主義を連想させる『ロボコップ』。 [DVD(字幕)] 6点(2013-04-29 10:28:08)(良:1票) |
18. 8 1/2
《ネタバレ》 映画館で数回観た。なんという美しい黒白映画。なんという豊饒さ。映画監督役マストロヤンニにもはや映画は作れないとなり、セットが壊され始めて地面に落ちる鉄パイプの無粋な音、それさえも映画の夢の側に加担する。風が強いなか、マストロヤンニが記者会見の席でテーブルの下に逃げるのがなぜか無性にいい。そして「人生は祭りだ」は万感胸に迫る。この映画は「映画の映画」の社会学的なスタイルをとっておりその分だけフェリーニ・ワールド噴出に程よく歯止めが掛かっていて、最高の味となっている。 [映画館(字幕)] 10点(2011-03-10 19:01:26)(良:1票) |
19. キャプテン・フィリップス
《ネタバレ》 手持ちカメラで単純に写しまくった感じの撮影。望遠気味レンズで背景をとばすとか、ピント移動とか、そういうのが無いので、画像的に飽きてくる。内容的には、海賊をはなから殺すつもりのアメリカの姿勢を告発しているのかなとも思ったりする(でなければ、ひどいなこれは)。そういえば、ソマリア人側にも多少寄り添う表現がなされるが、もうちょっとソマリアの現実と向き合う姿勢がなければ、映画になんかできないだろと思う。 [DVD(字幕)] 4点(2014-06-22 19:17:13)(良:1票) |