1. AKIRA(1988)
《ネタバレ》 わたしの知る(そんなに数は多くないけど)日本アニメの中で一番‶かっこいい”のが本作。 猥雑なネオ東京のブレードランナー味、狂気の度合い強めな暴走族、政治屋。一見無秩序な近未来都市を疾走する金田のバイクの鮮烈さ。 カオスで暴力的な社会にさらに暗い影を落とす圧倒的エネルギーの存在と、その中にあっても尚信じるに足る金田の熱さ。対照的に心に刺さる鉄雄の卑屈。 硬質で容赦無くて美しい。どこに連れていかれるのかどきどきした。 クール・ジャパンの代名詞のようなAKIRA。30年経ってもこのジャンルでAKIRAを超える作品をわたしは知らない。 空を切る真っ赤な金田のバイクを、わたしは本当に東京オリンピックの開会式で体感したかった。MIKIKO案が見たかった。 [ビデオ(邦画)] 8点(2023-10-06 23:19:31) |
2. アナザー・カントリー
美麗な英国男子総動員ということで当時の腐女子の間で大騒ぎになってたもんです。ブリティッシュな様式美は感じ入るばかりで、わーキレイ、美しいーといったミーハー目線でしか捉えられず、舞台となる英国のその時代背景や貴族社会の特性を浅いながらも学んだのはずっと後のことでした。 時は1930年代、大陸ではファシズムが台頭し、英国では政治はまだまだ貴族が仕切るものであり、一方でケンブリッジ・ファイブと呼ばれるスパイの存在も不穏に影を落とす。特権階級の主人公らにとっては価値観が大きく揺らぐ時代だったのは間違いありません。 狭い貴族社会の中でパブリックスクールの十代ですら出世競争に神経をすり減らす美しきボーイズ。繊細で悩み多い季節をきらきらと演じた若き俳優陣の瑞々しさは普遍の青春群像と言えましょう。 ああそしてやっぱり特筆すべきはコリン・ファースの美貌。キングスマンも好きだけど、この映画に出て若い輝きを永久に残してくれたことに誰にか分からないけどとても感謝したくなるのでした。 [DVD(字幕)] 6点(2019-07-15 23:57:43) |
3. 紅いコーリャン
《ネタバレ》 20世紀初頭の中国についてその風俗も風景もほとんど未知だったので、目に映るすべてが珍しかった。 貧農の困窮ぶり、ハンセン病への偏見、むきだしの土の上に並べられた酒壷。嫁いびりの風習と、やりすぎてちょっと反省する男ども。意外にしたたかで生命力の強い女。 結婚・子供の誕生・そして戦争と、流れゆく人々の人生を淡々と子孫の声で綴ってゆく。 音は静かに、だが視覚的には強烈な赤色が全編にまぶされる。コーリャン畑、濃い酒の色、夕陽、流れる血。赤・赤・赤と鮮やかに網膜の裏に刻まれる、一編の詩のような作品だ。 [ビデオ(字幕)] 6点(2016-04-12 11:45:29) |
4. アメリカン・ジゴロ
《ネタバレ》 80年代の享楽的で軽薄な社会を生き写しにしたようなヒモ男役にギアがはまって もうぴったり。R・ギアはこういう感じがベストだと思うな。炭酸飲料のCMでも本人楽しそうだし。 薄味のサスペンス風味だけども、正直 犯人は誰か、ということに興味を抱く客は少ないと思われる。見どころは女優なみに御召し替えするギアのアルマーニ姿だったり、女をくどく手管だったり。 それにしてもアホだなあ こいつ。「乾いたオバサンたちを3時間かけて濡れさせる」ことを誇り、「俺以外、誰ができる?」と。何言ってんだ、オマエ。 大型犬みたいな顔でうろうろと飼い主の金持ちオバサン達に代わる代わる取り入るも、結局は全員に切られる哀れなギア。でもまあ、あんな豪勢な恋人が手に入るとは、ありがたい脚本ではありませんか。 [ビデオ(吹替)] 5点(2015-05-03 23:39:13) |
5. 悪魔の陽の下に
パルムドールが万人受けするものではないとは知っていたけど。こりゃあお手上げだ。正直言って良いも悪いもわからない、というか感想が無い。・・のででかい顔してレビュー欄にやってくる資格もないんだが、このお話の解釈をキリスト教圏の方にでもご教授願えたらと思う次第であります。くっそ寂しいフランスの寒い景色がとても印象的ではありましたのでその分の採点です。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2015-01-31 23:48:46) |
6. アンタッチャブル
デ・パルマなのに常識的(?)な王道をゆく作り。どうしたんだろう、いつもの“オレの趣味”な部分は。それはさておき、キャスティングがぴたりとはまって座りが良く、画も明るくクリアで大変観やすい。善人VS悪人の対立構図も極めて分かりやすく、このライトな感じは昔楽しく「刑事コロンボ」を観ていた時を思い出すような。S・コネリーが頭ひとつ抜けて良い。この人の重鎮感が、この作品を軽すぎにせずに済んでいる。次点はA・ガルシア。 [映画館(字幕)] 7点(2013-07-07 23:00:03) |
7. アマデウス
《ネタバレ》 ああー、サリエリ、貴方の心のありようが私にも手に取るようにわかるよ。嫉妬と、一方でモーツァルトの芸術を完全に理解できるのは自分だけという強烈な自負心。神は残酷なものだなあ。創り出せはしないけど、理解できる能力だけを与えるなんて。皇帝には“聴く耳”が無かった。完璧なオペラを前に欠伸をする皇帝を見て、うすく微笑むサリエリの暗い喜び。モーツァルトとの作曲に精魂を傾ける姿からもわかる倒錯した愛情。光り輝く稀代の天才の傍らにいたばかりに、その影となってしまった男。悪魔と取引したばかりに代償を晩年に支払うこととなってしまった。美術も演技も脚本も音楽も全てが濃厚で、息もつけないくらい。完璧。 [映画館(字幕)] 10点(2013-04-19 00:44:51) |
8. 愛と哀しみの果て
《ネタバレ》 夫の浮気あり性病感染ありロマンスあり経営破たんに永遠の別れ、ときた。はあ。「女の一生劇場」を見せられたようなおなかいっぱいになる濃厚さを、アフリカの広大な自然が見た目の伸びやかさでうまく中和してくれている。ロマンスの二人がM・ストリープとレッドフォード・・って今ひとつ食指が動かないんだが。でもほとんど地球創生のような圧倒的な大地に押し負けせず、堂々演じきるにはこれ位大物感のある二人じゃないとだめなのかも、とも思うけど。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-12-27 02:02:20) |
9. 愛に関する短いフィルム
ポーランドだってお天気の日はあるのだとは思うけど、この映画の曇天具合、どんより感が東欧=抑圧のイメージをますます増幅してしまう。屹立する団地群の愛想の無さと、重ーい灰色の空。屋上で氷をかみしめるオタクな少年。人々の服もカラフルじゃないし、ミルクの白とパンの色と灰色の空の三原色みたいだ。心弾む要素がこうも少なくても、愛は育つ。自閉的ゆえに極めて純度が高くて危なっかしい。案の定傷つく彼。哀しい展開に、覚悟して見届けたけど意外や救いのあるラストにじわっときました。 [映画館(字幕)] 7点(2011-11-19 00:09:00) |