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かずくんさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 14
性別 男性
自己紹介 新作やトレンドはどこ吹く風。
思いついたときに今どき見る人もいないような映画について、レビューという名の雑文を書き散らしています。
鑑賞のご参考にはなりそうもありませんが、どこかに共感するところを見つけて面白がっていただけると喜ばしく思います。

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1.  赤い影 《ネタバレ》 
「なんてバカな死に方なんだ」。 この幕切れの台詞が面白すぎて、たとえネタバレと言われてしまおうがふれずにはいられません。 そう、この作品の主人公は最後に死んでしまいます。 極めて唐突でショッキングな死の訪れには呆然とさせられてしまいます。 この男、実はある能力に恵まれていたにもかかわらず、それに気づかずむしろそういった能力の存在に懐疑的な立場を持つ人物だったのです。 自分の持つその能力に気がついていれば、あるいはその能力の存在を認めていればこの死はさけられたかもしれないのにということで出てきた嘆きの台詞なのです。 自分で自分の正体に気づいていない系の先駆けとなる作品でしょうか。「エンゼルハート」や「シックスセンス」、「アンブレイカブル」、「ファイトクラブ」、「アイデンティティー」など、元祖といえるのはラヴクラフトの「インスマウスをおおう影」あたりの文学作品なのかな。 物語の最終盤で主人公と一緒に目が覚めるような感覚が楽しめる作品群です。 ところでロバート・デニーロも出ている「レッドライト」という作品が同じテーマを扱っていて、視点を変えただけの同じ作品と言ってもいいくらいです(言い過ぎ)。 だから、ははぁん、これは同じテーマの光と影ということで「赤い影」に対し「レッドライト」というタイトルにしたのかな、と思ったのですが。 実はこの「紅い影」というタイトルは日本だけのもの。原題はドントルックバックナウという全く違うものでした。 「レッドライト」の製作陣がこの映画の日本語タイトルを知っていてもじって付けた? それも不思議な気がします。 観光シーズンでないベニスを舞台にした寒々とした背景はなんとも魅力的です。 傑作。 この映画には謎にものすごくエロチックなシーンがあります。 でもこれが夫婦のセックスだということになると、まったく興奮しないのが不思議。 不倫ものやワンナイトものだとそれほど過激な描写がなくても興奮するのにね。 そりゃ映画が不倫ものばかりになるわけだわ。 お子様は見ないようにね。
[DVD(字幕)] 7点(2024-05-23 09:17:45)(良:1票)
2.  アマデウス
モーツァルトと言う人がかなりの変人だということは、黛敏郎氏の「題名のない音楽会」で読んで知っていました。 これは同名のテレビ番組の書籍版なんですが、これに対応する回は見ていません。 ショーマンシップがあって偏向バリバリの黛氏なので、きっと面白い番組作りだったんだろうなと思い、見れなかったことを残念に思っています。 この番組は同じタイトルで司会進行を替えて未だに続いてますが、黛氏時代の過激さがどんどん姿をひそめていってただのオーケストラの出る番組というだけになってしまいました。 僕は進行役が武田鉄矢氏になったときにもう見るのをやめました。 一方で、モーツァルトは実は殺されたのだという話も昔から有名で、「モーツァルトの暗殺」なんて小説が出ていましたが、これ以前にもプーシキンの作品とかあるみたいです。 僕は高校生のころこれを組み合わせて、性格のせいで殺されてしまうモーツァルトなんていうお話を書こうかなと思っていた矢先に東京新聞の記事でピーター・シェイファーによる戯曲「アマデウス」が発表されたという記事を見て「ああしまった先を越されたか」と思ったものでした。 でも別に先を越されたも何もなくこの後も森雅裕氏の「モーツァルトは子守唄を歌わない」などの作品が出てきたのですから、まあ要するに本当に書く気なんかなかったわけですがね。 この「モーツァルトは子守唄を歌わない」はなんとベートーベンが探偵になってモーツァルトの死の謎を追っていくというミステリーで、ベートーベンがまるで安物のハードボイルドの探偵のような感じに描かれているという珍品です。 森雅裕氏はこの作品で江戸川乱歩賞を東野圭吾氏と同時受賞をするぐらいの大した作家さんなんですが、常習的に出版社の人と喧嘩をするために今ではどこの出版社からも作品を出してもらえないという豪傑らしいです。 モーツァルト絡みの人ってやっぱり変わり者が多いみたいですね。 この映画アマデウスの原作になったのは先述した舞台劇なんですが、こちらはほぼサリエリのモノローグで語られ、その合間に演者たちによるエピソードが演じられるという舞台です。 これを映画では、発狂して自傷を試みたサリエリに懺悔をうながすためにやってきた司祭にサリエリがことの一部始終を話すという形で物語が進められていきます。 ナレーションの多い映画は鬱陶しいのでこの変更は非常に良いです。 背景となるウィーンの宮廷がこれでもかというほど戯画化されていて面白いです。 特に皇帝のを演じたジェフリー・ジョーンズは最高です。 宮廷のお抱えの音楽家たちはサリエリを除いてみんな漫画からそのまま飛び出してきたような感じで楽しくなります。 でもこの人たちがそれぞれの思いでモーツァルトに意地悪するんですね。 嫌な奴らなんです。 サリエリのモーツァルト殺害の動機は、モーツァルトの才能への嫉妬と羨望。 才能は神からのギフトという考え方が根っこにあるから、まあ、日本人に想像できる範囲を超えています。 サリエリはどういう方法でモーツァルトを殺そうか思いつかないまま結局過労でモーツァルトを死に至らせてしまいます。 この過労死の直接の原因となるレクイエムの口述作曲がすごい! モーツァルトは何十段もあるようなスコアを口伝えでサリエリに頭に浮かぶと同時に伝えていくんです。これを書き留めるサリエリもただものではない! まあ実際にこんなことができただろうかというと難しかっただろうと思いますが、こりゃ過労死もするわと納得の情景でした。 映画の中でモーツァルトが「ここで一休みしよう」と言って作業を中断したところが実際に彼の絶筆である、とか、映画でこの口述筆記した部分は、レクイエムのほかの部分と違う五線紙が使われている(サリエリが持ち込んだ?)、とか音楽愛好家なら誰でも知っているようなモーツァルトにまつわるエピソードが全編に散りばめられていて、思わず「あー知ってる知ってる」という満足感で楽しめてしまいます。 モーツァルトの愛好家がどう思うかは知りませんが、格調高い一方、時には漫画的で面白いよくできた映画だと思います。
[レーザーディスク(字幕)] 8点(2024-03-05 22:55:27)(良:1票)
3.  哀愁
美男美女による悲恋物語。 ルッキズム批判の現在のハリウッドでは作れない映画でしょう。 「哀愁」という日本語タイトルは、いささか微妙だと思います。 映画の前半部分は戦時の暗い世相ということはありますが希望の感じられる雰囲気で語られます。 時々コミカルな描写も挟まれるくらい。 だからこのタイトルはやや結末のネタバレという気がします。 まあこの映画が輸入された頃は 漢字2文字タイトルが流行りだったようなので、漢字熟語のリストから順番につけられていったのかも。 もしかすると他の映画が「哀愁」になってるってこともあったかもしれません。 お話は第一次世界大戦が舞台ですが、動員が格段に増えた第二次世界大戦以後同様の話が何本も作られています。 「シェルブールの雨傘」からロックオペラ「トミー」まで。 日本映画にも何度もリブートされています。 緩やかな反戦映画と言えるかもしれません。 「蛍の光」を三拍子に編曲したテーマ曲は、サウンドトラック盤が手に入らなかったため古関裕而氏が耳コピして楽譜にしたものが販売されたそうです。 今でもデパートなどの閉店時にこの「別れのワルツ」が流されるごとに小関氏側に著作権使用料が支払われているとかいないとか。 うまいことやったなあ。 そうそう通天閣で有名なビリケンさんもこの映画がもとですよ。
[DVD(吹替)] 7点(2024-02-16 01:08:24)
4.  アメリカ交響楽
原題は「ラプソディインブルー」。 ジョージ・ガーシュウィンの言わずと知れた代表曲。 大胆にジャズのイディオムを取り入れたセミクラシック楽曲で今もよく聞かれます。 「のだめカンタービレ」でもサブテーマ曲として使われていましたね。  僕が最初に聞いたバージョンは グレン・ミラーによるスイングアレンジでしたが、これもとても楽しい名曲です。 このアレンジでは原曲の冒頭大胆なクラリネットのグリッサンドがないのがやや寂しいですが。 とはいえこの原曲のオーケストラアレンジはガーシュウィン自身がしたものではないようです。 作曲は巧みでも編曲がやや苦手だったらしく彼のほとんどのオーケストラ曲はグローフェ他の人の手を借りたものだと言います。 その意味ではこの「アメリカ『交響楽』」 というタイトルはいささか的が外れていると言えるかも。 『交響曲』じゃないだけましかな。 物語中で交流があることが描かれているモーリス・ラベルは「オーケストラの魔術師」と呼ばれるほどの人だったのに、ガーシュウィンにオーケストレーションを教えてあげなかったのかな。 食えないじいさんだよね。 まあどちらも多忙な人だったということがあるのでしょう。 ガーシュウィンが亡くなって数年後に作られた映画ということで、生前に交流のあった当人が何人も出演している映像がとても貴重。 特に「スワニー」を歌ったアル・ジョルスンの映像は顔を黒塗りするという芸の性質上現在のアメリカでは事実上見ることが不可能でしょう。 日本のコンプライアンスは健全なのです。 長い指揮棒を振りまくるキングオブジャズ、ポール・ホワイトマンの映像も見られます。これはジャズとクラシックの融合が世に現れた 貴重な瞬間の再現なのです。 ショービジネスの分野から多彩な人材がクラシック音楽の変革を目指していく。 こんな時代がかつてあった。 それを教えてくれる映画です。 現在のクラシック音楽の世界というのがやや硬直し面白くないものに見えるのは何でですかね。
[DVD(字幕)] 7点(2024-02-16 00:57:49)
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