1. 言の葉の庭
《ネタバレ》 毀誉褒貶の激しい作品だろう。この世界に入っていける人とそうでない人とでは受けとめが真逆といってもいいほど違ってくる可能性があると思われる。ファンタジーとして割り切って見られれば、繊細で美しく、安らぎに満ちた世界として心地よいだろう。他方、リアリティを伴う視線で見ると、主人公二人は共依存の関係にある、かなりあぶない人たちと映るだろう。 私自身はどちらかといえば後者の感覚で見ることになった。女性が10歳以上年上というのは構わないし、先生と生徒のストーリーというのもまあよい。が、決定的だったのは、あくまで私の場合の話だが、少年はともかく、ユキノにほぼ感情移入することができなかった点である。社会的常識というものをふりかざして語る気はさらさらないのだが、どう見てもまともな女性とは思われない。まだ異性に疎いいたいけな少年が徐々にたぶらかされていく様子に危惧さえ覚えた(笑)。劇中、「ユキノちゃんはやさしすぎるんだよな」というセリフでユキノの人物描写が間接的になされ、弁護されるが、それはやさしすぎるというものではないだろ、とつっこみを入れたくなった。 物語の進行と人物のセリフも予定調和に終始し、特段どうということのないままエンディングへ(そのくせ主人公たちにはどこまでも美しく、都合よくすべてが運ぶ)。この世界にいつまでも浸っていたい向きには期待を裏切らないつくりではあったと思うが、見る者に何を伝えたいのかは不透明のままとも見えた。ちょっと辛口になるが、製作者たちはこのような視野の狭窄した世界に若者たちに生きてほしいと願っているのだろうか。また、「心を病む」ということを軽視しているところもある気がした。思うに、この時期の新海誠は、夏目漱石に相当思い入れていたのではないだろうか。 [インターネット(邦画)] 4点(2019-07-02 10:24:31) |
2. コンスタンティン
《ネタバレ》 2時間超の長尺ながら、さほど時間の経過を気にすることはなく、ということは、けっこう面白かった。ラストのパラドキシカルな成り行きによってジョンが“死に切れなかった”筋書きは、一ひねりあってよかった。パート2を予感させる終わり方でもある。 突然ショッキングなシーンと大音響が飛び出して観客を驚かせる演出はやや稚拙な印象。また、お腹の中で悪魔が暴れ回るCGもよくない。剣も、もっと重厚な意味をもって“活躍”するかと思ったが、そうでもなくちょっと拍子抜け。 ルシファーは、これが大魔王サタンかとみると、えらい軽いやっちゃな~と思ってしまうが(笑)、私はけっこう気に入った。ジョンを地獄へ引っ張っていこうとするが、とてつもなく重くなり、ルシファーでさえ引きずれなくなるシーンはよかった(キアヌの腕、もげないのかなと心配したが。(笑))。 いまとなっては(たぶんアメリカにおいても)前時代的なキリスト教的思想(死んだら天国か地獄か)をここまで完全肯定し大前提としたことは、ものすごくズレてると感じながらも、それによってこの映画を完全にファンタジーの世界へ置くことには寄与したかと思う。とはいえ、「パッション」のキリスト教完全肯定とは、まったく意味合いが違い、同じキリスト教映画(?)といっても、つくり手の思想は正反対といってもいいように感じた。6点也です。激ヤセキアヌ、役づくりも大変! [映画館(字幕)] 6点(2005-05-15 10:39:51) |
3. ゴッドファーザー PART Ⅲ
《ネタバレ》 Ⅰ、Ⅱと比べると、かなり落ちるなあというのが正直な感想。マイケルがあんなに喜怒哀楽をあらわにする男になっていたのには、かなりガッカリ。まるで別人で、Ⅰ、Ⅱでのマイケルの面影もない。物語も、3時間かけて、いったい何を伝えたかったのか? 聖と俗の宿業とか因果応報的な神の摂理とでもいうものを描き、オデッセイの世界へ昇華しようとしたのだろうと思うが、実際には何となく話がいろいろとつむぎ出されていただけといった感がある。 結局、Ⅰ・Ⅱとは完全に別物になっていたというのが私の感想。どなたかが「蛇足」と書いておられたが、同感。Ⅱとのあいだに時間が開きすぎたのが凶と出た気がする。Ⅱのラストから、せいぜい数年後を舞台にした「GFⅡ.5」を見てみたい。ということで、6点也です。 6点(2004-12-12 00:27:48) |
4. ゴッドファーザー PART Ⅱ
《ネタバレ》 なんという贅沢な映画なのだろう。全編200分のうち195分は、最後の5分のために費やされた。そして、そのラストシーンによって本作は、一気に名作の仲間入りをすることができた(もし、あのラストでなかったら、私の評価はもっと低いものになっていただろう)。 数ある映画のなかでも、あのマイケルの、自分だけは満たされないものに気づいている表情で終わるシーンは、特筆されるべき素晴らしいものだと思う。いったい、どこでボタンの掛け違えが生じたのか。マフィアとはいえ、パパの時代はファミリーのあいだに温かいものが流れていたではないか。いったい、どうして自分を取り巻く空気は、こうも冷え冷えとしたものになってしまったのだろう……。 若き日のヴィトーも人を殺してはきた。しかしそれは、友のためであったり、家族のためであった。それに対して、マイケルは友を殺し、ついには肉親をも殺してしまう。ファミリーのためにと思ってのことではあったが、そのファミリーを構成する誰からも慕われることはなくなっていた。マイケルは、ゴッドファーザーとしての地位を確乎たるものとしたが、孤独である。 195分間、途中「ちょっと間延びしてるな~」とか思いながら見ていたが、最後の最後で見事にうっちゃられた。そして前作にない普遍的なテーマを含んでいた点を高く評価したい。私はⅠより上回っていると思う。ということで、9点也です。それにしても、ロバート・デ・ニーロを回想で使うとはもったいない! 9点(2004-12-11 20:33:05)(良:1票) |
5. ゴッドファーザー
《ネタバレ》 ゴージャスなホテルのバーで飲む極上のブランデーのような、最高にクールな(カッコイイ)雰囲気――それがまず本作の何よりの魅力。マーロン・ドンのしわがれた声、終始悲しみをたたえて流れるメロディ、ボスとなってからは表情をゆるめることのないアル・パチーノ新ドン……すべて決まりすぎるくらいキマッていて、しびれるような感覚を覚える。 マイケルは、イタリアに身を隠しているとき、ファミリーのルーツであるコルレオーネ村を訪ねようとする。地元の身元引受人が「車に乗っていけばいい」というのを「いや、歩いていく」と断り、自らの足で“故郷”へと向かう。そこには、やがて運命の糸に引き寄せられるようにファミリーへと入っていく男の定めが示され、「妥協」という言葉と無縁な男の生きざまがさりげなく布石される。 イタリアで一目惚れの女性と首尾よく結婚するも、新妻はマイケルの目の前で謀殺される。そこに、逃れようのない自らの宿命を見せ付けられ、以後のマイケルは自分の宿命を真正面から受け入れた男へと変貌する。 ラストシーン、妻から「義弟を殺したのか」と問われ、「No」と答える。それは夫としての思いやりからだったのか。それとも、完全にカタギの世界と決別するゴッドファーザーとしての宣言だったのか。重厚なトビラが閉じられ、それをなすすべなく見るしかない妻、という終わり方は見事! ただ本作は、描かれた男たちの生きざまや振る舞いのクールさ、しびれるようなカッコよさが最大の魅力をかたちづくる一方、同時にそのことが限界ともなっている。つまり、存分に作品世界に浸り込むことはできるが、では、そこから何が得られるかというと、感覚的な充足感という消費しかない。このあたり、のちに「地獄の黙示録」で同じ監督が、やはり同様に感じさせる欠落感の予兆があるような気がする。ということで、8点也です。 8点(2004-12-10 00:02:57) |
6. 交渉人(1998)
《ネタバレ》 警官が無実を晴らすために人質をとって立てこもるという非現実的な設定。だけど、それを補って余りある内容があった。話のテンポもこの種の作品に適度だし、最後のどんでん返しには虚を衝かれた。よくできたシナリオだったと思う。ただ、“IQ180の駆け引き”とはいえず、宣伝に偽りありの感は残った。『シェーン』をもう一度見てみたい気にも(笑)。 7点(2004-05-05 14:25:04) |