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1.  THE 有頂天ホテル
「グランドホテル」の“形式”だけを真似たコミカルな群像劇。いや正確には“コミカルに描こうとした”と言うべきか。本来、三谷幸喜作品は舞台でこそ映えるものであり、映像といった表現手段ともなると、何故かその面白さが十分に伝わってこないようなもどかしさを覚える。そもそも本作のストーリーのどこがそんなに面白いのか、私には良く分らないし、極めてオーソドックスな描き方が、古めかしさばかりが目立ってしまい、目新しさというものがまったく感じられない。また、オールスターキャストと言えども、少々地味な人選が災わいしたのかも知れないが、若手のオーバーアクションとヴェテランの渋めのトーンとが上手く噛み合わないまま、登場人物たちをただ右往左往させているだけでは、なかなか面白くなってはこないし、これで2時間はもたない。どんな役柄をもこなせる日本映画のエース役所広司も、今回ばかりはどこか浮いた存在に終始し、彼にも苦手なジャンルがあることを図らずも露呈してしまったようだし、破天荒なキャラを演じる西田敏行に説教めいたセリフを吐かすという無粋な作劇も戴けない。そんな中でも、場面場面をさらってしまうYOUはまさに儲け役で、唯一の救いだ。結局、生まれも育ちも生粋の浪速っ子の私からすれば、昔から東京漫才ほど面白くないものは無く(失礼!)、本作はまさにそんな感覚の作品だと言っていい。
[映画館(邦画)] 6点(2006-10-22 18:18:03)(良:1票)
2.  サマリア
細かい状況設定を思い返すと、不可解さばかりが目立つ作品だ。例えば、援助交際の相手の連絡先を、一人残らず手帳に記していたという事。飛び降りて死んでしまったチェヨンの後日談には、さっぱり触れられていない事。しかも彼女の死顔の微笑みは謎を残したままだ。映画は彼女の死などまるで無かったかのような描き方をしているのは、チェヨンという少女がそもそも存在していなかったからではないだろうか。映画の中盤からは、主人公のヨジンとその父親のドラマへと収束されていく以上、チェヨンの存在理由はますます遠退くばかりだ。想像の域は出ないが、ヨジンは自らの心の空洞を埋める為に、もう一人の自分をチェヨンとして演じていたのではないだろうか。ヨジンにとっては理想の少女がチェヨンなのだ。思春期の少女の揺れ動く心は、シャワーを浴びるふたりの姿で表現される。それはまるで汚れを知らないかのような可憐で妖しい美しさ。男に体を売る自分と、それを外から見守る自分。分身である一方の自分が消滅すると現実に引き戻される自分がいる。映画はファンタジックな世界から、やがてリアリズムの世界へと変貌していく。後半、随所に出てくる生々しい暴力描写はギドクらしさに満ち溢れているが、父親の異常なまでの感情の爆発は明らかに常軌を逸している。彼の理解を超える行動は、娘のとった行為に苦悩していると言うよりも、まるでそれを正当化しているように見え、焦点がぼやけてしまった印象は拭えない。喧騒からやがて静寂の世界へと父と娘の癒しと懺悔の旅は続くが、父親がそうであるように、彼女のとるべき道も彼女自身すでに分かっている筈である。だから象徴的なラストは敢えて必要ではないとも思う。しかし現代人の抱えている問題を、どこまでも寓意に満ちた手法で描き切ったギドクにはやはり目が離せない。
[映画館(字幕)] 8点(2005-06-16 16:10:50)
3.  殺人の追憶
ジャンルを問わず、描写の生々しさというのが韓国映画の最大の特徴とも言え、ひとつ間違うと悪趣味な印象を受けかねないものだが、本作にはその事がむしろ有機的な働きをしたように感じる。日常の何処にでもある田園風景から始まるこの作品は、実際に起こった未解決の猟奇的事件を基に、刑事たちの地道な捜査で容疑者を追い詰めていくという、サイコ・サスペンス的な要素を孕みながらも、純粋な刑事物語としての面白さを魅力たっぷりに描いた本年屈指の力作である。それはまるで初期の黒澤作品のような汗と脂でギラついた感触であり、ある種の懐かしささえ感じさせるほどの雰囲気を醸し出している。映画では、捜査方法や捜査の行き詰まりで感情が縺れ合う刑事たちの遣り場のない姿に焦点があてられているが、なんと言ってもソン・ガンホ演ずる、如何にもといった感じの泥臭い刑事ぶりは本作の白眉であり、捜査に対する苦悩や焦燥感を生身の人間として肌で感じさせる演技は見事と言う他はない。もがき苦しみながら、やっとの思いで追いつめた容疑者の逮捕を断念せざるを得ない彼らの虚無感・脱力感は、我々観客も味わう事となるが、見込み捜査のツケが廻ってきたことと、ハイテクの立ち遅れという当時の韓国の混沌とした社会情勢というものを痛切に感じさせるシチュエーションである。年月を経て、一筋の光明を見いだしたソン・ガンホの自信に溢れた顔は、まさに韓国の今を象徴しているかのようだ。
9点(2004-08-27 01:30:54)(良:2票)
4.  サハラに舞う羽根
全体的には、恋愛模様も戦闘シーンの見せ場も過不足なく、まずは手堅く纏め上げられているという印象をもったが、やや説明不足の感がある事も否定できない。で、捨て身で戦う男の真の勇気と友情というのが、本作のひとつのテーマとして挙げられるのだが、要はぼんぼん育ちの主人公ハリーが、士官以外に生きる道はないと悟るまでの心の葛藤や、勇気というには余りにも無謀で場当たり的な行動といったものに、説得力がないのである。だから再三に渡って窮地に追い込まれてしまうのだが、事あるごとに砂漠の黒人の傭兵に助けられるという情けなさ。この辺り、ほとんど通俗アクション映画のようなご都合主義で貫かれていて、この謎の傭兵こそが物語の真の主人公ではないかと思えるほど、ハリーの影は薄い。結末も予想通り甘ったるいものになっているが、それでも大スケールの迫力ある戦闘シーンは見応え十分で、砂漠で敵に四方から囲まれ攻め起てられるシーンを俯瞰で捉えた構図などは実に解かりやすく、そういう意味では、撮影の素晴らしさがこの作品を支えていると言ってもいい。
7点(2003-11-06 00:19:29)(良:1票)
5.  サラマンダー
終末感漂う近未来の物語ではあるが、舞台は中世ヨーロッパと見紛うほど。その渋くて暗いトーンは、いかにもドラゴンが暴れまわるに相応しい。ただ、核戦争や彗星の衝突の脅威といった作品群が主流を占めているのに対して、世界を滅ぼしたのが何故ドラゴンでなければいけないのか・・・と言った基本的な問題には、やはり引っ掛かざるを得ない。しかも如何にして世界が破壊されていったか・・・といったプロセスが完全に素っ飛ばされている為に、物語としてはまったく説得力を持たないものになってしまっている。さらに、安易な決着の仕方にも盛り上がりが欠ける・・・等々不満を言えばキリが無いが、希少価値といった意味でも、こういった作品世界は決して嫌いではありません。
7点(2003-08-29 23:29:18)
6.  ザ・コア
昨今流行の“地球を救う的SF映画”には、核の平和的利用あるいは核万能を謳った作品が目立つが、本作も核が全てを解決してくれるという基本的なパターンは同じで、まさに“核には核を”なんて洒落のような設定に、企画の安直さが漂う。だいたい地球の中心部に核を爆発させたら、もっと他に大変な事態が生じるのではないかと、素人は考えるのだが・・・。まぁそれはそれとして、この作品、視覚的にどのような見せ場を作ってくれるのかと大いに期待していたのだが、結果的には実に残念な作品だったと言える。目的地がまったく変化の乏しい地球の中心部という事もあって、視覚的には単調にならざるを得ないのは当然で、それを頼みのCGで再現してみても、その地底世界はまるでアニメのような実に重量感の無い薄っぺらなものとしてしか映像化しきれていない。地上での様々なパニックがリアルで出来が良いだけに、肝心の核の部分での表現の貧困さが余計に際立ってしまったという、実に皮肉な結果となった。
6点(2003-07-07 00:37:43)
7.  魚が出てきた日
真夏の太陽ギラギラとした地中海を舞台にした核兵器紛失モノ。ギリシャのある島に水爆を搭載した飛行機が墜落したことから、生き残った二人のパイロットと米軍特殊部隊とが、偽装工作で秘密裡に回収処理に向かう。しかし運悪く古代遺跡が発掘されたばっかりに、島は一大観光地となってしまうハメに。映画はその喧騒の中で、必至に奪還しようとする軍部の姿と、なにも知らないまま踊り狂う観光客とが対比されながら、ひたすらコミカルに描かれていく。やがて迎える戦慄の結末には極めて効果的な作劇ではあるが、コミカルな部分が強調され過ぎた感があり、恐怖感もそれほどなく散漫な印象しか残っていない。
7点(2003-05-21 15:40:59)
8.  ザ・プロフェッショナル
強盗のプロたちの華麗な盗みのテクニック・・・と言うよりも、ここではかなり大胆な手口での強奪が小気味良く描かれていく。周到に計算されているようでいて、監視カメラで簡単に顔が割れてしまうなどという大雑把な部分もあるのだが、窮地を事も無げに切り抜けていく様に焦点が充てられている作品ともいえる。それだけに、彼らを追うはずの警察側の描写が前面に出てこない為、作品的な拡がりが感じられないのは惜しい。仲間割れや裏切りに加えて取引相手の襲撃など、結局はお約束どおりの展開に終始する訳だが、恋人も仲間も棄て、“信じられるのは己のみ”という、これぞプロフェッショナルの真髄をみる幕切れは痛快そのもの。G・ハックマンのふてぶてしさ、したたかさが、老いてなお健在だということを知らしめてくれたという意味でも、小品ながら実に味のある作品だといえる。
7点(2003-04-30 16:04:13)
9.  叫びとささやき
神に祈り、神に反撥する。そんな人間に対して神は沈黙をつづける。「人間の原罪の追求」 巨匠ベルイマンの終生のテーマだと個人的に考えてはいるが、実際のところは解らない。それほど彼の描く世界は深く難解で、おそらく説明のつけようがないもののようだ。本作は十九世紀のとある大邸宅を舞台にした、何をするにも一切召使任せで育った三人のブルジョワ姉妹とその召使との室内劇。が、ストーリーらしいストーリーはなく、二女アグネスの死を巡っての女たちのその反応や屈折ぶりを追求する事によって、人間性の深淵を垣間見せてくれるというもの。作品の雰囲気を醸し出すロココ調の室内調度品。死期を暗示するかのような古びた時計。壁やカーテンの真紅さは血のイメージで、F.IやF.Oにも滲ませている。そして、それらを殊更強調させているのが、彼女たちの白もしくは黒の衣裳などといった徹底ぶりだが、ベルイマンのそれらの効果的な映像の創造力と人間の洞察力は、凄いとしか言いようがない。そして、かわるがわる姉と妹の顔を見つめて、心から幸福を感じているアグネスの元気な頃の表情で終わるラストに、得も言われぬ感動を覚えたものだ。ベルイマン作品では比較的解りやすいと言われるが、本当に理解しているかは自信が無いと言うのが正直なところ。それでも強烈な魅力を放ち、永年、心をとらえて放さない作品であることだけは間違いが無い。
10点(2003-04-11 18:02:48)(良:3票)
10.  ザ・ロイヤル・テネンバウムズ
家族に愛されたいと願う父親と、大人になる事を拒否したかように生きる三人の元天才児とを巡る、一種のお伽噺。ここに登場する人物はいかにも個性豊か・・・と言うよりもかなりクセのある、要するに意思の疎通を欠いたダメ人間ばかり。個々のファッションのこだわり方などは、実にバラエティに富んでいて、そのことでアイデンティティーを確立しているようでもある。で、ストーリーはと言うと、大部分が様々なエピソードを章仕立てで語られていくと言う正統派的なところが、むしろユニークだとも言える。かなり高く評価されている作品だが、本当の面白さを理解しえていないというのが正直な感想だ。ここで描かれるテネンバウム家にこよなく愛着を感じるか否かで、大きく評価が分かれる類の作品だと思う。
6点(2002-12-25 18:03:29)
11.  サイン
「大山鳴動して鼠一匹」。本作はまさにそんな印象の作品で、“な~んだ、結局その程度の事だったのか・・・”と文句のひとつも言いたくなる。今や“虚仮威し”の天才となったN・シャマラン。そのサスペンスを盛上げる演出力の巧さや確かさとは裏腹に、単なる彼のマスターベーションに過ぎない世界観(おそらくこの人独自のものだろう)には、正直ついていけない。その大仰さには、半ば呆れてしまうほどだ。恐怖映画の新しい創り方の指針を示した点は買えるが、果たしてご覧になった方々は納得して劇場を後にされたのでしょうか。
4点(2002-12-12 16:49:38)
12.  13ゴースト(2001)
こういった“お化け屋敷モノ”は、ストーリーなどあって無きが如しで、要はどのような仕掛けでいかに観客を怖がらせてくれるかがポイント。“全米を恐怖に陥れた作品”というフレコミだが、怖いと言うよりは凄まじいと言ったほうが妥当かも知れない。それほどこの作品に登場する様々な幽霊たち(・・・と言うよりゾンビに近い)は極めて攻撃的・暴力的で、主人公たちを執拗に追い詰め、積極果敢に痛めつける。“彼ら”のその特殊メイク及びコスチュームの凝りようから、むしろ中世の戦士のイメージに近い。だからRPGの映画化といった趣きを感じる作品となっている。それにしても舞台となる近代建築の粋を集めたようなセットデザインは特筆モノで、広大な部屋といい迷路のような通路といい、そのほとんどの壁面・天井・床がガラス張りという凝りようで、CGを駆使した視覚効果も含め、制作費の大部分がここに費やされているのではないだろうか。
6点(2002-11-25 00:15:02)(良:1票)
13.  ザ・リング
オリジナル版を観ている人にとってはきっと不評なんだろうなぁ・・・って、ある程度予想の範囲だが、幸か不幸か日本版を観ていなかったこともあって、個人的には存分に楽しめた一編。オリジナルとほぼ同様の展開ということは、日本的な怨念の世界がそれだけ全米でも支持されたということで、当然の成行きだと思う。むしろ日本的なテイストを損なうことなく、そして直接的な描写を極力避けながらも強烈なインパクトを与える手法は、いかにもG・ヴァービンスキー監督らしいし、恐怖映画としては一種の品格すら感じる。それにしても死顔の特殊メイクの強烈さは、やはりこれまでにないおぞましさだが、一方で“絶叫する美女”が絶品のN・ワッツの魅力もなかなかのもの。
7点(2002-11-23 23:03:56)
14.  サウンド・オブ・サイレンス(2001)
サスペンスの冴えを感じる演出も散見されるが、所詮は裏切りによる報復と宝の在処を探るための、実に遠回しなそして巧妙なだけにかえって大袈裟に思えるほどの作劇が展開されていく。子供を守る為に奮闘する父親像のイメージ通りM・ダグラスを中心として映画的に盛り上げていくのは結構だが、クライマックスはいくら何でもやり過ぎでしょう。
7点(2002-08-25 14:42:22)
15.  ザ・ワン
「マトリックス2」への出演以来を断ってまで本作に拘っただけの成果があったのだろうか。期待していたのは“125人のJ・リー”とやらの一大バトルだったのに、肝心のその部分はストーリー上で語られるだけで(要するに映画的には既に決着済みで)結局最後の“もう一人のJ・リー”と闘うことだけに焦点が充てられるという、見事に肩透かしを喰らってしまった。それならそれでもう少しストーリーに工夫やヒネリがあってもよさそうなものなのに・・・。これでは所詮、普通のアクション映画(どこかで見たような)の域を一歩も出ていないではないか。
6点(2002-06-14 23:29:22)
16.  サスペリア(1977)
当時、音が映画館の中を“走り回る”といった、「サーカム・サウンド方式」という立体音響と独創的でシュールな色彩効果で、現実を超えた不安感というものを嫌と言うほど体感させられた記憶がある。まさに生理的な怖さとはこういう作品を指すわけで、D・アルジェントの手腕は遺憾なく発揮されたと言える。ヒロインが夜の空港のターミナルから屋外へ出た瞬間の“ある演出”が、これから始まる恐怖のドラマを予感させて、実に新鮮に感じたものだった。
7点(2002-02-08 00:37:02)(良:1票)
17.  魚と寝る女
 お国柄とはいえ池に釣客専用の小屋舟が点在しているという、なんとも不思議な光景にまず目を奪われてしまう。映画は、ひとことも話さない謎めいたこの釣り場の女管理人と、恋人を殺して自ら死に場所を求めてやって来た男とを中心に描かれていく。共にワケありの孤独な男女は互いに惹かれあうものの、その関係はなかなか一筋縄ではいかない。性愛描写はそれほど際どいものではなく、むしろ釣り針の生理的な痛みというもうひとつの意味を嫌というほど感じさせられる。無駄なセリフや描写がほとんど無く、先の展開が読めないそのドキドキする面白さには興味が尽きないし、ラストの象徴的なシーンはさらに強烈だ。
9点(2001-11-25 15:28:57)
18.  ザ・メキシカン
S・ペキンパー作品を連想してしまう程、内容はかなり殺伐としたものではあるものの、その味わいは不思議なほど爽快ですらあるのは何故なのだろうか。それはいかにもスター然とした主役二人のキャラクターの果たした役割も決して小さくはないが、むしろ多くの殺戮シーンの直接的な描写を極力さけるというG・ヴァービンスキー監督の方法論が効果的に働いたということなのだろう。さらにJ・ロバーツに恋のカウンセリングをする、J・ガンドルフィーニの殺し屋とのエピソードや彼の生き様に力点を置いているという視点もまたユニークだ。今後、注目しておきたい監督だ。
7点(2001-09-15 23:16:20)
19.  サテリコン
F・フェリーニ監督が“映像の魔術師”と呼ばれるようになったのは、この作品あたりからだろうか。キリスト教的倫理観が浸透する以前の古代ローマの享楽と退廃を、フェリーニが自由奔放にイメージを膨らませて、独自の夢幻世界を描いてみせる。その次々と展開される鮮烈で絢爛たる映像美と、圧倒的なスケールとエネルギーは見る者を魅了してやまない。そしてこの貪欲なまでの享楽ぶりや道徳観・倫理観の欠如そして絶望感や暴力等々はまさに普遍的であり、鋭く現代を突いている。それと同時にこのローマ人特有のエネルギッシュでバイタリティ溢れる生命力を賛歌しているようにも思う。
10点(2001-08-25 17:42:17)(良:1票)
20.  ザ・ダイバー
激しい人種差別の名残の時代にあっても尚、主人公が黒人と言うだけで、"なぜ”差別(虐め)を受けなければならなかったのかという根本的な描写が、あまり深く掘り下げられていない。例えば、他の訓練生が彼と寄宿舎で一緒に寝泊りすることを拒否しているのにもかかわらず、実習の場面に変わればすでに行動を共にしているという何とも不可解な描写がある。差別を扱う作品としては全編が何とも中途半端で、もっと執拗にねちこく徹底的に描くべきではなかったか。又、本来感動的なシーンであるはずのクライマックスにしても、彼の姿勢に周囲が感服したとは言え、あのパーフォーマンスだけで果たして現場復帰させられるものなのだろうか。実話の映画化という事だが、ドラマチック性重視でかなり脚色された分、どうしても甘さが残ってしまう。
7点(2001-07-07 23:33:17)(良:1票)
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