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プロフィール
コメント数 3888
性別 男性
年齢 53歳

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1.  昭和残侠伝 死んで貰います
あわや一触即発となった場を収めるため、心ならずも高倉健をタコ殴りにしてしまう池部良。この展開がすでに「勧進帳」を想起させ、やるせないものがあるのだけど、後で池部良が頭を下げれば高倉健はさらに深く頭を下げる、まさに礼儀人情思いやりの倍返し。ラストの殴り込みは、ヤクザもカタギもない、二人だけの世界。そして彼ら取り巻く人々、フジ純子はともかくとしても(笑)、(あと、真田広之少年の初々しさはともかくとしても)、一宿一飯の義理から鉄砲玉を買って出ようとする弟分の松、義理の息子の帰宅を、知らないふりでそっと見守っていた義母など、「無私」と「瘦せガマン」の美学に満ち溢れた、哀しきユートピアがここにあります。無情にもすべてを断ちきるような終わり方にも、絶大な余韻あり。
[CS・衛星(邦画)] 10点(2013-11-04 10:58:04)
2.  JAWS/ジョーズ
どうしてこんな映画が存在し得るのか、もう、スバラシイです。コケオドシはリアリティを超える、ということがよく判ります。何もかもが絶妙で、シビれまくり。いくらホメてもホメ足りない! 前半、最初の犠牲者が海岸で発見されるシーン、ロイ・シャイダーの背景にカモメが喧しく鳴き叫び、不気味ですが、このカモメのモチーフはラストシーンに明るい形で再提示され、いかにも大団円、完結した印象を強めます。しかも元はと言えばこのモチーフは『白鯨』からの引用でもありますね。あと、ドレイファスが水中オリを使ってサメと戦うと主張し、三人が口論になるシーンで、喧嘩のシーンがそのままオリ組立て作業へと切れ目なく移行したり。そういう、色んな計算が詰め込まれた、楽しくて仕方ない映画ですが、勿論、最大の魅力は、そういった計算すらほとんど気にとまらない程の、圧倒的なサメの迫力であり、緊迫したストーリー展開であり、ユニークなキャラクター設定であります。
10点(2003-10-19 00:38:18)(良:4票)
3.  仁義なき戦い 広島死闘篇 《ネタバレ》 
間違いなく仁義なき戦いシリーズの一本、という位置づけの作品ではあるのですが、菅原文太は脇に回り、物語の中心にいるのは北大路欣也。しがない若者の哀しき生き様が描かれます。一方、ワルそのもの、といった印象の千葉真一も光っていて。 ラスト近くのザラついたような映像が、凄惨とも言えるような迫力を出しています。降り続く雨の絶望感。追い詰められて自ら命を絶つ北大路欣也の姿には、戦場の暗い壕の中で自決していった若き兵士たちの無念が重ねられているのでしょうか。
[インターネット(邦画)] 9点(2021-12-05 21:30:12)
4.  資金源強奪
3人組が、組織の非合法資金強奪を企む。 となると、その準備の過程が映画のメインを占めて、クライマックスでいよいよ強奪実行、みたいな展開を想像するところですが、この映画はだいぶ趣向が異なります。 強奪計画は映画最初の方で首尾良く成功し、残りの時間はどうすんだよ、と思う間もなく、物語はむしろそこから、どんどん転がり始める。3人組を追う組織は、その仕事を捜査四課の悪徳刑事に依頼、ここからがホントの現金奪い合いに。 二転三転する物語のオモシロさ、ってのも勿論あるのですが、それ以上に、3億円以上の現金というものが周囲の重力場を狂わせ、人間たちを振り回すオモシロさ。簡単な物語の仕掛けが際限なく推進力を生み出していくその様が、オモシロさに繋がってます。現金の行方は、そして生き残るのは誰なのか。 ラストの飛行場のシーンで待ち受ける「ちょっとしたオチ」が、意外なまとまりを感じさせたりして、とにかく活きのいい、サービス精神溢れる作品になっています。
[インターネット(邦画)] 9点(2021-10-17 20:42:56)
5.  昭和おんな博徒 《ネタバレ》 
大映の江波杏子と、同じく大映に島流しにしたのに(?)帰ってきちゃった松方弘樹とで、任侠モノ。という、東映の苦しい事情が見え隠れする任侠映画末期の一本ですが、このキャスティングが、どういう訳だかピタリとハマってしまうのです。 とにかく主演の江波杏子が、魅力的ですね~。女の脆い弱さと、女のしなやかな強さとを、見事に表現してます。一見、冷たい表情にも見えるのですが、ちょうど能面が角度によって異なる表情を表すように、不思議な陰影を見せる。 一方の松方弘樹は、と言えば、どんなにガンバっても貫録が無くって、一見、物足りない印象なんですが、観てるとこれもまた妙に役にハマってくる。江波杏子を心ならずも、しかし結果的に任侠の道へと引きこんでしまう存在。しかも彼女が映画を通じて第一級の侠客となるためには、物語上、彼は死なねばならず、彼女の肥やしとならなきゃいかんワケで、ちょうど、この頃の彼のお坊っちゃん顔の持つ果敢無さと、絶妙にマッチしてます。 もちろん彼が舞台から去っても、ちゃんと天知茂という後釜がいるから大丈夫。彼のエキスも吸い取ってますますパワーアップする女主人公。それにしてもこの、天知茂の眉間のシワの深いこと深いこと。どうやったらあそこまで眉間にシワが寄るのか。これはもう、「シワ芸」と呼んでもよいでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2019-05-26 05:08:52)
6.  地獄の黙示録
「特別完全版」公開後は、このバージョンで確定ということなのでしょうか、今回観た「通常版」のラスト、炎上シーンはありませんでした・・・。 さてこの地獄の黙示録という作品、コンラッドの「闇の奥」を下敷きにしており、実際この小説を思わせる人物も登場する訳ですが(槍で絶命する舵手、出迎えるロシア人、そして勿論クルツ=カーツ大佐)、作品から受ける印象としてはむしろ、カフカの世界を思わせます。この印象は、主人公たちが出会うエピソードの数が増えた特別完全版を観てより強くなったものではありますが、それでいて、完全版でないコチラの方がむしろ、より終わりなき彷徨を感じさせもします。特別完全版の方が、どこか、正常から異常へ、正気から狂気へ、というベクトルがはっきりしている気がして、この通常版の方が脈絡なき迷宮の感じが強いのです。それでも、やはり狂気へと向かって行く方向性というのは確かにあって、主人公が旅路の最初に出会う、キルゴア中佐のエピソード、瀕死の敵兵を称えつつサーフィンの話が始まると水を与えるのを忘れてしまったり、果ては戦場でサーフィンをするためにナパーム弾投下を要請したり。異常と言えば異常だけど、ある意味、想定内の、まだしも理解可能な異常、想像可能な世界。ワルキューレ第3幕冒頭をかき鳴らしながらの攻撃なども、我々の想像を特に超えるようなものではない、陳腐な世界でもあります。これ以降、川を上るに従い、何が起こるか、それが何なのか、想像も予想もできない世界が彼らをそして我々を待ち受ける。 そしてついに現れる、カーツの王国。カフカの長編世界は結末と呼べるものが存在しない(「審判」ですらそう言ってよいでしょう、結末は一応あるけど本編から独立している)のに対し、本作は、不条理世界の最期を何とか描こうとしています。たぶん、それ自体が無謀なことではあったのでしょう、映画自体がほとんど崩壊に向かっており、そこには相次ぐ撮影時のトラブルなども影響しているのかも知れませんが、さて、この混乱、混沌以外に、本作のラストがあり得たのかどうか。もはや作品の完成度云々以前に、やっぱり狂気の世界は狂気によってしか作りえなかったのだ、というまさにその点で、稀有の一本となった作品であります。多分これは、コッポラが「作った」作品ではなく、彼自身も作品の一部となって初めてこの世に生まれ得た作品なのでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2015-11-08 09:20:36)
7.  昭和残侠伝 吼えろ唐獅子
冒頭のクレジット見て、主役は当然健さんだわな、準主役に松方弘樹か、そしてこれまた当然の池部良。そんでもって、鶴田浩二まで! とか思ってても、映画見てるうちにそういうのは念頭から消えてしまうので、後で本当に鶴田浩二が出てくると、やっぱり驚いてしまう(笑)。 この作品でも、昭和残侠伝のフォーマットは守られていて。いつも通りっちゃあいつも通りなんですが、今回は、任侠映画であると同時に、剣豪映画のようにも見えてくる。剣の達人同士、互いに通じ合うものがある、高倉健と鶴田浩二。剣の道を絶ち、今は一介の市井人として暮らす池部良。若侍・松方弘樹の運命を狂わせるのは、ヤクザ渡世の仁義というよりも、もはや、封建社会の理不尽さと言うべきか。 健さんもまた、結果的にその理不尽さに加担せざるを得ない、やるせなさ。静かな怒りが頂点に達したとき、その先にあるのは「革命」・・・とまでは言わないけれど、旧秩序を、束縛を蹴散らす、カタルシス。「その後」が描かれることが無い、映画ならではの大団円です。 一部、撮影に荒さを感じる部分もあったけど、そういうのも作品の迫力の一つ。 いや~オモシロかった! けど、そもそも親分に嫌われてるのなら、どうして、松方弘樹はムショ行きを免除されたんだろうか??
[CS・衛星(邦画)] 8点(2022-09-19 09:10:16)
8.  ジャッキー・チェンの秘龍拳/少林門 《ネタバレ》 
ジョン・ウー作品、ということですが、まだ白いハトとかは登場せず、かの御大も昔はこんなの撮ってたんだなあ、と。武術監督は、敵役で出演もしている、サモ・ハン。顔は丸いが、まだデブという程では。一部、様式美(?)に走ったヘンな格闘シーンもありますが、全般的にはハイレベルなアクションが展開されます。 邦題に「ジャッキー・チェンの」という文言が入っていることから薄々は警戒してしまうのですが、やはりというか何というか、主演はジャッキーに非ず。クレジットは三番目で、名義は陳元龍。 物語の進行に従って、武術に心得のある面々が集まり、トレーニングを積み、敵に反旗を翻す、という流れはやはり魅力的。特定のスターに寄りかからない、集団抗争劇風のカンフー映画。 敵の統領が的を弓で射るが、矢はヘナチョコな軌道で飛んでいく。従者に矢を取りに行かせ、その直後に凄まじい勢いの矢を放って従者を射殺してしまう、なんていうシーンが、ウマいですね。この射殺されるヤツが、顔を見るとどうやらこれも若き日の、ユン・ピョウ、らしいのですが、直前に微妙にアヤシげな素振りを見せていて、微かに「オヤ」と思わせた直後にブチ殺されてしまい、その驚きと同時に、彼が刺客であったことが発覚する、という流れ。いや、スバラシイ。 終盤の戦いにはたっぷりと時間をとって、これでもかとアクションを見せてくれます。一人、また一人と斃されていく味方。ジャッキー・チェンが刺されるシーンで仰々しく流れる音楽は・・・あちゃ、これはメシアンのトゥランガリラ交響曲。どうせ、無許可で使用してるんじゃないかと思いつつ。 味方の犠牲の上に掴む勝利、もしジョン・ウーのカラーがすでにここにあるとしたら、そういう悲愴感漂うヒロイズム、でしょうか。
[インターネット(字幕)] 8点(2022-06-26 13:45:37)
9.  実録外伝 大阪電撃作戦
何がどう「実録外伝」なのか。『日本暴力列島 京阪神殺しの軍団』に続いて明友会事件を取り上げたから、ということなのかもしれないけれど、『日本暴力~』の方は「すべてフィクション」という断り書きが入っており、内容も特定の事件をフォーカスしたものでもなく。一方の本作は、やはりフィクションだという断り書きは入っているものの実際の事件を基にしていることは認めていて、実際の事件に沿っている部分も多いようです。 作品の特徴は、事件で「敗北する側」を描いたこと、滅びの美学みたいなもの。 最後の晩に乱痴気騒ぎやって、一気にに追い込まれていく姿、しかしその中でしっかりと、今で言うところの「インディー魂」みたいなものを見せつける。 松方弘樹はコワモテの演技が堂に入ってて、さすがと思わせますが、渡瀬恒彦は完全に目が据わっていて、うわー何だかホンモノだなあ、と。ちょっとレベルが違う。けど出演者全員がこのレベルに達してしまうと作品が成立しなくなっちゃう。 敗れ去る者を描くが故の、独特の迫力があります。
[インターネット(邦画)] 8点(2021-12-18 20:25:43)
10.  新・仁義なき戦い 組長の首
とうとう、これはフィクションです、というテロップが冒頭に登場し、もはや仁義なき戦いでも何でも無くなってしまったのですが、これが意外に面白い。とは言っても、こんなのを面白がってていいのか、という不安は何となくあるんですけど、面白かったんだから仕方がない。 刑務所で過ごした7年間の補償として500万円を要求する、菅原文太の狂犬ぶり。というほど自身で何をするわけではないけれど、それでも「何をやらかすか判らない」という危険な匂いがプンプンと。それ以上に異常な、山崎努の狂人ぶり。それって、いつも通りじゃないの、という話もありますが、兎に角、危険な匂いが充満していて。 若者が呆気なく命を落としていく、という点、仁義なき戦いの世界を感じさせる部分ではありますが、芋クサく泥クサいカーチェイスは実録路線から大きく逸脱していて、意表を突かれます。さらにはひし美ゆり子姉さんの脱ぎっぷりの良さ。確かにこりゃ、フィクションだ。 という、だいぶ変な路線にはなってますが、単純に欲望が突っ走ってる感のある内容が小気味よく、これはこれで、魅力的な作品だと思います。
[インターネット(邦画)] 8点(2021-12-14 22:45:23)
11.  仁義なき戦い 代理戦争 《ネタバレ》 
冷戦下、世界のあちこちで勃発した戦争は、大国間のいわば代理戦争だった。一方、日本のヤクザ社会もまた、そういう代理戦争の様相を呈していた、というのがタイトルの由来ですが、どうでしょうね、そんなに「代理戦争」感は強くない、ってか、もともとこのシリーズ自体が、消耗品としての男の生き様を描いてて、むしろシリーズの世界観そのまんま、という気も。 代理戦争、というよりは、心理戦。吹き荒れる暴力の背景には、裏切り、謀略が渦巻いている。上は金子信雄から、下は(一見何も考えてい無さそうな)川谷拓三まで、とかく要らん策略を張り巡らせては、事態を悪化させ、その結局犠牲になるのは、渡瀬恒彦のような若者。ただ死んでいく者が多い中で、渡瀬恒彦演じる若者は、母との関係が作中に織り込まれ、息子を失った母親の哀しみをこれでもかと描く。こういう、殺伐とした映画にウェットな情を絡めてくるのが、深作監督らしいところ、と言えましょうか。 危険なニオイをプンプンさせる菅原文太ほか、コワモテ俳優がずらりと並ぶ中(眉毛が無いとは言え梅宮辰夫の顔が、コワモテに分類されるのかは正直よくわからんが)、スター・小林旭がそこに顔を並べているのが、ちょっと異彩を放っています。正直、東映に来てもこういう「非・スター映画」の中に放り込まれてしまうのでは、もったいない起用、という気がしなくもないのですが、確かに作中で独特の雰囲気は醸し出しています。 ラストは、まさにここから、という場面でオシマイ。イジワル。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2021-01-02 07:13:48)
12.  地獄の逃避行
『トゥルー・ロマンス』の原点、な訳で。 テレンス・マリック=“マジックアワー”の監督、などと思って本作を見ると、決してそんな気合マンマンの作風じゃなくって、どっちかというと気まぐれに撮られたような印象すらあります。映像美をわざわざ作り出そうというよりも、撮りたいときに撮りたいものをそのまま撮ったような。 まあ、もともと、主役の二人の行動自体が気まぐれっぽい、ってのもあるんですけれども。 まったくアテも何もないような、殺人と逃避行。カーチェイスっぽいものまであったりして。背景に広がるのは、どこまでも続く大平原。 それにしてもこの雰囲気、抒情性と呼んでいいのか、それとも一種の倦怠感なのか。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-04-16 20:33:18)
13.  仁義 《ネタバレ》 
片や、刑務所長から何やら良からぬコトを吹き込まれて出所する男がいて、片や、何やら良からぬコトをして捕まり護送中に逃亡する男がいて。で、その二人が出会って意気投合、と言うにはあまりに静かな出会いなんですけれども、ここでアラン・ドロンがタバコとライターを投げてよこすシーンが、闇雲にカッコいい。まるで相手の手元に吸い込まれるように投げ渡されるもんだから、この後じゃ、そりゃ拳銃だって何だって簡単に投げ渡そうってなもの。 後半はこの二人にイブ・モンタンも加わって、何をするかと思えばコソ泥なんですけれど、ただでもセリフが抑えられたこの映画の中で、さらにセリフが無くなって、ただその宝石泥棒の一部始終が、静かに、緻密に描かれていきます。 突如、警報が鳴り響き、計画は一巻の終わり。逃げ行く彼らの背景には、風の音。シビれますね~。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-04-13 15:11:45)
14.  白い肌の異常な夜
南北戦争時代、イーストウッド演じる北軍の伍長が南部の戦線で負傷し、女ばかりの寄宿学校みたいなところに匿われる。さまざまな年齢の女性数名に対し、男が一人、もうより取り見取り。これがイタリア映画ならお色気コメディ映画にでもなったかも知れませんが、ドン・シーゲルとイーストウッドが組んだら、ほとんどホラー映画みたいなサスペンスになりました(何度か出てくる真っ赤な血の描写がコワイ)。密度の高い、緊張感に満ちた映画で、「イーストウッドがモテモテ役だなんて、許せんなあ」という気持ちもすぐに引っ込みます。 まずそもそも、学校の外部というものが、戦時下で秩序というものが無い不安な状態。その中において、舞台となる女学校は、厳格さに満ちた閉ざされた世界、であるのですが、そこに負傷した男が一匹。負傷してたって、男としてヤルことはヤル、っていうかむしろ体の不自由さゆえに性的な方向に暴走しがちなもんで、女ばかりの秩序だった世界(それはもともと表面的なものに過ぎなかったらしいのだけど)に、嫉妬に満ちた大きな波紋を投げかけることになる。それは、映画後半におけるあるショッキングなエピソードによって、男をより純粋な性的存在へと変化させ、事態をより深い混沌へと導きかねない展開にもつながっていきます。が、それでも危ういバランスは保ち続けられ、そしてそのまま、一連の混乱は唐突に、断ち切られるように終わりを告げる。あとに残るのは、不気味極まりない、秩序の世界。まあ実にヤな感じで気持ちの悪い、「異常な」映画です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-11-15 08:24:20)(良:1票)
15.  仁義なき戦い
文太さん追悼放送で久しぶりに観ました、昔はゴールデン洋画劇場なんかでやってて、あの頃は正直、この“乱暴な”描写が、何というか一種の安っぽさのように感じられて、少々苦手だったりもしたのですが(あと、早々に主人公が小指を詰めちゃうシーンがあって、この後映画が終わるまで小指がカメラに映らないように、うまくできるんだろうか、とかいうどうでもいい心配をしてしまったりもしたのですが)。しかしいいなじゃい、“乱暴”で。このむせ返るようなエネルギー。あと、学生の頃見るのと違って、社会人になってから見ると、活き活きと暴れまわった連中が次から次からドンドン死んでいって、その一方で金子信雄演じる山守がしぶとく生き残っていく姿、ってのが、どうにもこうにも、身につまされちゃうのよね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-02-02 23:03:00)
16.  ジャッカルの日 《ネタバレ》 
私の場合は、映画を最初に観たのは随分昔で、かなり後になってから原作小説を読んだのですが。いやあビックリしました、面白いの何の、この小説(笑)。映画の方は、どっちかとうとドキュメンタリータッチの抑えた表現で、劇中で実際に背景に聞こえてくるBGM以外、音楽も無し。原作小説も、ノンフィクション小説風(現実の事件の関係者に取材し、そこにフィクションが織り交ぜられる)ですけれども、後半の盛り上げ方がとにかくスゴい。一気に広がる捜査網と、それを掻い潜ってターゲットに迫るジャッカル。追うルベルの焦り。ジャッカルの暗殺失敗からルベルとの対決に至る場面なんて、映画の方が実際の時間の流れに忠実なところがあって、小説の方がむしろ映画的とも言える、一瞬時間が止まったような緊張感あふれる筆致なんですね。こういう、原作と映画化作品との、不思議なアプローチの差異が、意外性があって面白いところ。映画の方が小説よりも一見地味なんですけれども、これは、映画でも小説と同様に煽るような描写に走ってしまうと、オーバーになってかえってシラケかねない、ってこともあるだろうし、それだけじゃなく、つまり映画が単に地味路線なのではなくって、映画ならではの緊張感がここにはあります。冒頭の暗殺未遂からOAS幹部の処刑に至る、畳み掛けるようなスピーディーな描写。中盤はジャッカルの行動と捜査側の様子がじっくり描かれますが、各エピソードが(特にジャッカルの行動にまつわる部分が)、あと数秒ないしあとワンカットあるのが普通かな、というタイミングで切れて、次のエピソードへ移行していき、小説とは異なる形でのテンションが維持されています。そしてクライマックスのパレードの場面、集まった群衆の光景と軍楽隊の音楽とが、もうどうにも引き返せない、どうにも止められない焦燥感に繋がって、小説とは異なる形での盛り上がりを見せます。実際、今回久しぶりに観て、というかかなり記憶が薄れていたので初見のつもりで観ていたのですが、それでもこのクライマックスシーンは強い印象が残っていて、懐かしき興奮を再び味わうことができました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-11-03 10:32:32)(良:1票)
17.  シノーラ 《ネタバレ》 
ジョン・スタージェス作品ながらカラーはイーストウッド調、マカロニっぽいノリの作品。一匹狼の主人公、冒頭から何をやらかしたのか、禁漁区で鹿を撃ったとか何とかヤヤコシイことになっていて、「とにかく一筋縄で行かぬ、なかなか言うコトを聞かぬヤツ」という設定。ついでにオネーチャンに手が早かったりもして、どこまでもアナーキーな男。いったんは断った“人間狩り”の仕事を引き受けたかと思えば、雇い主に反発してアッサリと敵側についたり。雇い主のロバート・デュヴァルは確かに悪人として描かれてはいるけれど、勧善懲悪の物語ではなく、あくまで作品の基調は、アナーキズムであり、反骨精神。シノーラの町に戻り、機関車を建物に突っ込ませ、ラストは判事席に座ったイーストウッドがデュヴァルを仕留める、「オレが法律だ」と言わんばかりに。荒削りでワイルド、それが本作の魅力。
[DVD(字幕)] 8点(2012-05-13 09:13:05)
18.  ジャスティス(1979)
裁判制度のいい加減さ。そのために人生を狂わせ、破滅する人がいる。そういう重いテーマを、コメディタッチで軽妙洒脱に描いた手腕が見事。脇を固める様々なキャラクターと、彼らが織りなすエピソードの数々が、時に重く、しかし基本的には楽しく映画を盛り上げながら、物語をクライマックスへと導いていきます。それが実に上手い。まあ、クライマックスの法廷シーン(のアル・パチーノ)には、賛否両論あると思いますが(そんなオチでいいのか~との声も多いでしょうが)、この辺りはもはや、勢いでイッチャエ、てな感じですね。
[DVD(字幕)] 8点(2010-12-20 23:15:51)
19.  ジュリア 《ネタバレ》 
原作は、リリアン・ヘルマンの短編集『ペンティメント』に収録されている『ジュリア』。大学の英語の授業のテキストが、この『ジュリア』でした。この映画のビデオを少しずつ観ながら進められた授業が、思い出されます。もっとも、原作を翻訳で読みなおしたのも、映画をちゃんと通しで観たのも、実は最近だったりするんですけれど。で、この『ジュリア』という作品ですが、『ペンティメント』収録作品に共通の、時間の流れを超越した自由な回想による独特の詩情、これに加えて、反ナチ活動の友人のためにベルリンへ現金を運ぶ、という劇的な内容を孕んだ、スリリングな作品でもあります。と同時に、「実はこの作品は“創作”であって、ジュリアという女性は実在しないのではないか」ということで物議を醸した作品でもあるのですが・・・。さて久しぶりに本作を観てみて、やっぱり面白いなあ、と。回想によって時代を自由に行き来し、幼少時代にジュリアと野山を駆け回る自然児としてのリリアン。劇作家としてタバコをスパスパ吸いながらタイプライターを叩く都会人のリリアン。タバコの吸う姿が、この映画では強調されてますね。ある時はダシール・ハメットとくつろぎ、またある時は危険な現金輸送の役目を引き受ける。この映画中盤のスリリングな場面、現金輸送作戦の全貌を彼女だけが知らないまま(そして我々にも明かされないまま)、何やら意味ありげに、作戦が進められていくところが面白いですね。そう言えば、列車で同室のオバチャン、リリアンがタバコを吸おうとするとゴホゴホ咳き込むもんだから、リリアンはタバコを吸うのを断念するのだけど、無事に国境を過ぎると、オバチャンもちゃっかりタバコを吸っているのが、意味がありそうで無さそうで、面白いところ。そしてついにジュリアとの再会。二人とも嬉しそうには違いないのだけど、リリアンの再会の嬉しさのみに舞い上がっている姿と、ジュリアの「この現金で仲間が助けられる」という喜び。二人の異なる情熱の表現、であると同時にそこには、異なる世界に住む二人の、すれ違いもまた内包されている訳で。ジュリアはドイツで命を落とし、リリアンはアメリカのダシールの元へ帰る。でも彼女は闘わなかった訳ではない、後にダシールと共に、赤狩りへの闘いを挑むのだから。でもそれは、映画とは別のオハナシ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2010-10-04 23:13:38)
20.  ジャガーノート
某レンタル屋を覗いてみると「面白くなかったら返金します」キャンペーンをやっていて、その対象作品が、よりによってこの『ジャガーノート』とは。ちょっと心配、でもニコニコ。逢坂剛『百舌鳥の叫ぶ夜』なり、藤原伊織『テロリストのパラソル』なり、野沢尚『魔笛』なり、爆弾モノにハズレ無し、と個人的に思い込んでいるのですが、その原点ともいうべき作品ですね。豪華客船に仕込まれた爆弾と、それに立ち向かう爆弾処理専門家との、静かで息詰まる死闘。「ナンボなんでもこんな手の込んだ大量のドラム缶爆弾を誰にも気づかれずに船に積み込むのは無理やろ」とか「犯人は、船が嵐に巻き込まれて乗客が逃げられなくなることまで予想していたのか?」など、しょーもないツッコミをしてはいけません(そういうケチをつけてレンタル屋に返金を要求してはいけません)。ただただ、緊迫感に満ちた爆弾処理が微に入り細に入り描かれる過程の、そのサスペンスを堪能すべし。配線を切断する瞬間の恐怖。爆弾に仕込まれた数々のトラップの不気味さに対して、それに立ち向かうのは、無機質な工具の数々。それらを操り冷静に作業を進めるリチャード・ハリスが、めちゃカッコいい。最後に行きつくのは、『魔笛』でも語られていた通り、赤か、青か。まさに永遠の課題、永遠のスリル。ところでどうでもいいことだけど、犯人の“ジャガーノート”の電話の声を聞くと、正体は“まんが日本昔ばなし”の常田富士男としか思えないのですが。
[DVD(字幕)] 8点(2010-08-15 22:37:39)
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