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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1922
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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1.  スラムドッグス 《ネタバレ》 
あのサイテー野郎のチ〇コに噛みついてやる――。彼の名前はレジー。ミックステリアという種類のちょっと小さめのワンコだ。生まれたばかりの自分を拾ってくれた飼い主ダグがレジーは大好き。でも、ずっと一緒に暮らしていた女の人が出ていってから、ダグはあまりレジーの相手をしてくれなくなった。そればかりか自分のことを、「このクソ犬が!」って呼ぶことも増えてしまう。それでもレジーは、ダグが最近お気に入りの遊び、遠くに投げたボールを持って帰ってくるゲームに夢中だった。でもその日、レジーが連れてこられたのは、初めて見るものばかりの遠く離れた街だった。「きっと僕はダグに捨てられたんた」。あまりのことに呆然となるレジー。復讐の炎がメラメラと湧きあがった彼は、この街で知り合った仲間の犬たちとダグの家を目指して旅に出るのだった。そう、アイツが一番大事にしているものを噛みちぎってやるために……。パッケージだけ見ると、犬が喋るほのぼの系の動物ファンタジーかと思いきや、これが下ネタ・お下劣ネタ満載のブラックコメディでした。だって、主人公と仲間になるフレンチブルドックがいきなり「野良犬ってサイコーだぜ。いつでも何処でもファック出来るからな」と言い出して、近所のゴミ捨て場に捨てられたソファと〝ヘコヘコ〟し始めるんですもん。他にもアソコがデカいのに気が小さくて警察犬になれなかったグレートデンやヒステリー気質で若干メンヘラなメスシェパードとか、のちに仲間となる犬もだいぶ個性的。こいつらが元飼い主のチ〇コに咬みつくために旅に出るってどんなストーリーやねん(笑)。対する元飼い主もネットのエロ動画見ながらヘコヘコしてたりマリファナやりまくってたり浮気してたりと、だいぶクズ。いや、これ何も知らず「カワイイ犬映画だ」だと家族で観始めたらだいぶ気まずいやろ!でも、そんなお下品100%の内容なのに、これがもう振り切ってて自分はかなり笑っちゃいました。森の中で怪しいキノコを食べてラリちゃった4匹が現実に覚めた時のネタとか、ブラック過ぎてもう爆笑(モフモフのカワイイウサギたちが!笑)。全体的に、青春映画の名作『スタンドバイミー』のパロディになってるのが良いですね。とにかくこの4匹が皆、ちゃんとキャラ立ちして魅力的なのが大変グッド。最後、とうとうクズ飼い主の元へと帰ってきた4匹がみなで協力してアソコに咬みつこうとするシーンなんて、かなりやり過ぎ感半端ないけどサイコーだったし!まぁ、さすがにちょっと下ネタがしつこいのとうんこだらけの監獄脱出シーンがばっち過ぎたので、そこがちょとマイナスかな。とは言え、可愛いワンコたちとお下劣下ネタワールドとのギャップにだいぶ萌えました。続編できたら絶対観るぞ!
[DVD(字幕)] 8点(2024-10-01 11:04:50)
2.  スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース 《ネタバレ》 
世界どころか、こことは違う多元宇宙を股にかけて大活躍するスーパーヒーロー、スパイダーマンの戦いをスタイリッシュな映像で描いたアニメーション。アカデミー賞の栄誉に輝いた前作は観たのだけど、ストーリー自体はさっぱり分からずただただその独創的な映像だけはとにかく印象的でした。という訳で、今回もとにかく映像のみを楽しむ目的で鑑賞。なのだけど、前作以上のさっぱり意味不明なストーリーはもはやノイズ。こんな独り善がりでつまんないストーリーが2時間20分もひたすら垂れ流されるというのは、いくらそこには期待してないとは言え自分にとってはもう苦行以外の何者でもありませんでした。これで前作同様、映像が凄かったらまだ観ていられたたのだろうけど、映像面のクオリティもけっこうレベルが下がってるような気がしたのは自分だけ?特に印象に残るシーンもないし、前作のようなオタク心をくすぐる魅力的なキャラクターも出てこないし、ずっと同じような画ばかりが繰り返されるので自分は開始30分で早々に飽きちゃいました。好きな人には申し訳ないですけど、自分には何が良いのかさっぱり分からなかったです。4点!
[DVD(字幕)] 4点(2024-08-05 08:29:01)
3.  スクール・フォー・グッド・アンド・イービル 《ネタバレ》 
ここは、昔々のおとぎ話を生みだす様々な人たちを育て上げ、立派な物語を後世に残すことを目的に創られた全寮制学園。その名も、「善と悪の魔法学院」――。そこはお姫様や王子様と言った「善」側の人間を育て上げる善の学院と、魔女や妖術使いと言った「悪」側の人間を育て上げる悪の学院とに分かれていた。田舎の小さな村で暮らす幼馴染の少女ソフィーとアガサは、赤い月が照らす夜、異形の鳥にさらわれ、そんな学院へと連れてこられてしまう。だが、幼い頃からお姫様を夢見るソフィーは何故か悪の学院へ、そして昔から魔女に憧れ不気味なものが大好きなアガサは善の学院へと振り分けられてしまうのだった。キレイなドレスの着こなし方や上品な笑顔の作り方、人を殺す毒薬の作り方や恐ろしいモンスターを召喚する方法など、それぞれ求めてきたものとは正反対の教育を受けさせられるアガサとソフィー。「違う!これはあたしたちの求めていた世界じゃない!」。それぞれの教官にそう訴えるも、学園は何も間違いはないの一点張り。だが、その裏には学園を揺るがす恐ろしい陰謀が隠されていたのだった……。おとぎ話の登場人物を養成するという謎の学校を舞台に、そんな2人の少女の波乱万丈の冒険を描いたファンタジー。と、かなりぶっ飛んだ設定のそんな本作、これがなんともはや、もう女子受け要素しか入ってない乙女純度100%のガールズ・ムービーでした。善側のキラキラ輝くようなカラフルでゴージャスなプリンセス衣装も悪側の怪しい魅力に満ち満ちたゴシックロリータな衣装も、どちらもまさに少女たちが夢見る理想世界。自分はいい歳したおっさんですが、心のどこかに乙女な部分が2割くらいあるので、そんな世界観をここまで映像化してくれただけでただただ眼福。特に主人公の一人、プリンセスを夢見る少女ソフィ―が悪側に目覚めゴスロリファッションに身を包んで現れるシーンは、息を吞むほどの美しさ。何もかもを見下すような切れ長の瞳も今にも折れてしまいそうな華奢な体つきも、もう色んな意味でヤバかった(笑)。それにファンタジー映画としてもけっこう頑張ってましたよ、これ。次々登場する異形のモンスターの映像がどれもセンスを感じさせるものばかりで、特に龍のタトゥーを本物のドラゴンに変えてしまう少女や全身に蜂をまとったラスボスの映像なんか普通にクオリティが凄い。お花畑のキレイな花が突然牙を剥き出して襲ってくるところなんて夢に出そうなほどグロメルヘンで、若干病み気味な女の子にはけっこう刺さるんじゃないですかね?とは言え、肝心のお話の方はしっちゃかめっちゃか過ぎて意味不明でしたけど。最初からよく分からんまま始まって中盤からもはやカオス、クライマックスなんて完全に破綻しまくってました。いやー、まさに内容なんてなし、映像と世界観を楽しむだけの映画でしたね、これ。とは言え、ここまでの世界観を構築してくれたらもはや自分は称賛しかありません!超個人的採点で、7点!
[インターネット(字幕)] 7点(2024-07-04 09:41:59)
4.  Smile スマイル(2022) 《ネタバレ》 
都会の総合病院で精神的に不安定な患者のカウンセリングを担当する精神科医ローズ。ある日、彼女は救急で搬送されてきた女子大生ローラを診察することに。数日前、目の前で大学教授が自殺する姿を目撃してしまって以来、ローラはずっと不安定で病院へと運び込まれてきた時にはもはや錯乱状態だった。なんとか落ち着かせようと必死に言葉をかけるローズ。だが、ローラはそんな彼女の言葉もむなしく、目の前で自ら首を切って自殺してしまうのだった。しかも何故かその顔には満面の笑みがたたえられていた――。上司から強制的に一週間の休暇を言い渡されたローズ。同棲中の彼氏にも励まされなんとか元の生活を取り戻そうとするのだったが、そんな彼女に不穏な事態が襲い掛かってくる。飼っていた猫が居なくなったり、家の中に得体のしれない気配を感じたり。追い打ちをかけるように、ある患者がローズに暴言を吐きながら襲い掛かってくるのだった。そしてその顔にもまた満面の笑みがたたえられていた……。笑顔をテーマに、ある精神科医が体験する恐怖の一週間を濃密に描いたモダン・ホラー。まあ頑張ってるのは分かるんですが、圧倒的にセンスが不足しているせいでなんとも古臭い印象が否めないホラー映画でしたね、これ。全編通じて怖がらせ演出がとにかく古臭い!なんだか90年代に大量生産されたB級ホラーの総集編を観ているようでした。特に残念ポイントだったのは、こーゆー陰鬱な映画にはどこか息抜きとなる明るいキャラが一人は必要なのに、そんな魅力的なキャラが一人もいないところ。主人公も暗くて陰々滅々としているうえに情緒が不安定過ぎてまったく感情移入出来ません。主人公、まずあんたがカウンセリング受けろよ(笑)。あと、えらいこっちゃな出来事が起きたのに次の瞬間、これは霊が見せた幻覚でしたという反則ギリギリの演出が多発されるのも自分は少しイライラしちゃいました。唯一新しい点は、加害者がみな人を襲うときに張り付いたような満面の笑みを浮かべているところかな。ここはなかなか気持ち悪くて大変グッド。ずっと笑顔でこちらを見つめてくる奴ってやぱ怖いわ。でも残念ながら、そんな魅力的な設定もいまいち上手く使いこなせていません。ここらへん、監督のセンスのあるなしが明確に浮き彫りになりますね。とは言え、ベタな設定ながらも基本に忠実に作られているおかげで最後までそこそこ観ていられる出来にはなってました。人に憑りついた悪霊?が彼らを自殺させながら連鎖してゆくという設定はやはり不気味で怖い。途中までそんな呪いの存在を明らかにさせなかった演出もけっこう効いている。きっとこの監督はホラー映画が大好きなんだろうね。とにかく観客に怖がってもらおうというのは分かるだけに、なんとも惜しい印象でした。でも、これが長編デビュー作だということでそこら辺は次作で改善されるかも?期待を込めて、甘めに6点!
[インターネット(字幕)] 6点(2024-05-18 10:37:04)
5.  すずめの戸締まり 《ネタバレ》 
人々から忘れられ廃墟となった場所にはいつしかこの世とは違う世界へと通じる扉が開くという。災いをもたらす異形の存在ミミズがその扉から現れることによって、その地は地震に見舞われるのだ。古くから日本中を旅してそんな災いをもたらす扉を閉じる作業を人知れず続けているのは、閉じ師と呼ばれる一族。ある日、そんな閉じ師の末裔である草太と知り合った平凡な女子高生すずめは、災いを封じるための要石が猫に姿を変え日本列島を北上し始めたことを知るのだった。「このままでは未曽有の大災害が日本を襲い、また多くの人たちが死んでしまう」――。要石によって小さな椅子に変えられてしまった草太とともに、そんな猫を追って旅することになったすずめは、各地で様々な人々に出会い助けられながら北を目指して旅を続けててゆく……。日本映画界を牽引する稀代のヒットメイカー、新海誠の最新作は災害列島日本という国で人知れず人々を救ってきた閉じ師と平凡な女子高生の物語をファンタジックに描いたロードムービーでした。正直この人の映画ってイマイチ好きになれなくて(特に前作『天気の子』は酷かった!)、本作も別に観る気はなかったのだけど、今回地上波でノーカット放送されるということで鑑賞。そんな期待値ゼロで観始めたのが良かったのか、感想は「あれ、意外と悪くないじゃん」でした。いやむしろけっこう好きかも!冒頭からノンストップで描かれるすずめの旅はかなりテンポが良くて、ストーリーの強引さも気にならないくらい惹き込まれて観ている自分がいました。映像が美しいのはもはや言わずもがな、それより椅子に変えられた草太と要石猫との追いかけっこがアニメならではの躍動感に満ちていて率直に楽しい。いけ好かないキャラだった草太が、ちゃちな椅子に変えられてしまったことで逆に魅力的にさせてるとこなんてなかなかいいセンスしてるやん!今回は東日本大震災をテーマにしていることで、新海作品特有の童貞男子が夢見そうな青臭い妄想臭が幾分か抑えられていたことも大変グッド。椅子にチューしちゃう主人公をどーしても入れたかったのだろう監督の意地はご愛敬だけど(笑)。旅先で出会う人々がみんな良い人過ぎるのもどーかと思ったけど、後半叔母の心のどす黒い声が溢れ出してしまうシーンでちゃんと暗い現実も描いていて上手くバランスをとっていたと思う。311をエンタメとして扱うことにネットなどで賛否が分かれているのは知っています。確かにちょっと軽く描き過ぎとは思うけれど、自分は普通に受け入れられました。何故なら本作の根底には、震災のみならずすべての災害で亡くなった人々への祈りと鎮魂の物語があると思えたから。これまでの自らの世界観を踏襲しつつも新たな地平を築いた新海誠監督の秀作だと自分は思う。
[地上波(邦画)] 7点(2024-04-10 10:13:10)
6.  スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム 《ネタバレ》 
映像は迫力があって良かった!トビー・マグワイアやアンドリュー・ガーフィールドとの新旧スパイダーマン協力バトルも懐かしくて大変グッド!ただ、ストーリーは半分くらい意味不明だったのとピーター・パーカーが自己中すぎて若干イライラしたので、5点!!
[DVD(字幕)] 5点(2024-01-29 18:52:13)
7.  ストーリー・オブ・マイ・ワイフ 《ネタバレ》 
1920年代、マルタ島。大型貨物船の船長を務めるヤコブは、世界の海を航海するベテラン船乗りだ。一度海に出れば長く陸には戻らず、常に危険と隣り合わせの彼は、最近何か物足りないものを感じていた。それはきっと心から守りたいと思える存在がいないからだ――。そう気づいたヤコブは、久しぶりの休暇で訪れた街のカフェで友人とある賭けに出る。「誰であろうと、次にこの店に入って来た女性と結婚する」。じっと入り口を見守っていたヤコブは、その人が入って来るのを見た瞬間、自らの運命を確信するのだった。すぐさま声を掛け、結婚を申し込むヤコブ。意外にもそのリジーと名乗る女性は、何のためらいもなく彼の提案を受け入れ、一週間後には本当に結婚してしまう。そうして始まった2人の新婚生活、もちろんお互いのそれまでの人生も人柄も分からない。それでもヤコブとリジーは情熱と欲望のおもむくまま、お互いに満ち足りた生活を謳歌するようになる。だが、そんな2人の充実した毎日に謎めいたリジーの男友達が現れたことから……。これはそんな「私の妻の物語」であり、船乗りヤコブと七つの教訓の物語。監督は前作で男と女のままならなさを、センスあふれる映像と精神と身体性の相克という独自の視点で描いたイルディコー・エニェディ。この監督の知的で考え抜かれた脚本と何処を切り取っても絵になる美しい映像、そして品のいい音楽は相変わらず健在。3時間弱という長尺ながら、最後まで惹き込まれて観ることが出来ました。なによりヒロインとなるレア・セドゥの存在感と言ったら!!決してそこまで美人と言う訳ではないけれど、男を惑わす妖艶な魅力が半端じゃない。物憂い表情で常にこちらを見下すような態度を取る彼女は、この時代の雰囲気も相俟って、何処か谷崎潤一郎『痴人の愛』のナオミを髣髴とさせるファム・ファタルぶり。ちょうどいい肉付きの身体などなんとも官能的で、彼女に身も心も溺れてしまう主人公の気持ちは同じ男として痛いほど分かる(笑)。愛と嫉妬が渦巻く2人の心理劇も常に主導権が入れ替わる濃密なもので、一度でも夫婦となった人ならどれも身につまされるものばかり(と言っても僕は一度も結婚したことないんですけどね笑)。この2人以外のエピソードの見せ方も巧く、夫を惑わすいけ好かないブルジョア息子や街のしがないチンピラから裏社会で徐々にのし上がってゆく悪友の存在など誰も彼もちゃんと印象深い。中盤の豪華客船での火事のシーンなんてそんじょそこらのパニック映画よりハラハラしちゃいました。愛してぶつかりあって傷ついて、身も心もボロボロになりながらもそれでもまた愛して――。そうして迎える2人の結末。ラストシーンはなんとも切なく、自分はしばらくその心地良い余韻に浸っておりました。8点!
[DVD(字幕)] 8点(2023-05-13 08:09:41)
8.  355 《ネタバレ》 
世界中のあらゆるコンピューターをハッキング出来る危険なデバイスを悪の組織から奪還するため、世界各国から集結した凄腕女性エージェントたち、その名も「355」。彼女たちの世界を股にかけた大活躍をゴージャス&エレガンスに描いたスパイアクション。まあ既視感満載のよくある内容なのですが、ジェシカ・チャスティンやダイアン・クルーガー、ペネロペ・クルスという豪華なキャスト陣に惹かれ今回鑑賞。なんですが、正直演出が大雑把というか雑というか、大まかなストーリーは何となく把握できるものの、彼女たちが今何のためにこういう行動を取っているかがいまいち分かりづらく、自分はそこまで楽しめませんでした。もう少し丁寧な演出を心がけてほしかったですね。それにたくさんお金を掛けたであろうアクション・シーンは確かに迫力あったのですが、ちょっと全体的に古臭い印象を受けてしまったのも残念ポイント。あと、こーゆー軽いノリのエンタメ作品のわりに人が死に過ぎるのもどうかと思います。デバイスの危険性を強調するために旅客機を何機も墜落させるのは明らかにやり過ぎだし、主人公たちの大切な人が悪の組織に軒並み殺されちゃうのも物語として必要だったんですかね?ペネロペ・クルスの家族以外、父親や恋人やパートナーが全員彼女たちの目の前で殺されちゃうのってさすがに重すぎでしょ!なのに最後は、「今回も任務は大成功、んじゃまた次のミッションで」ってみんなで颯爽と去ってゆくのは、さすがに気持ちの切り替え早すぎちゃいまっか(笑)。観ているだけで絵になるハリウッド・セレブたちの豪華共演に+1点!
[DVD(字幕)] 5点(2022-09-02 06:54:58)(良:1票)
9.  スティルウォーター 《ネタバレ》 
彼の名は、ビル・ベイカー。オクラホマ州スティルウォーターで長年石油採掘業に従事し、現在は建設関係の日雇い仕事で食いつなぐ平凡な男だ。妻は何年も前に亡くなり、今は狭い借家で一人暮らし。唯一の肉親である一人娘のアリソンは現在フランスにいて、もう何年もアメリカには帰ってきていない。何故なら、アリソンは今、マルセイユの刑務所に服役中だから――。そう、彼女は当時恋人だった女性を殺害した罪で捕まり、刑務所でもう5年も過ごしているのだ。娘と久しぶりの面会を果たすため、この地を訪れたビル。面会室で再会したアリソンは、彼にとあるお願いをする。それは彼女の無実を証明できるかもしれない新証人を見つけてほしいというものだった。「分かった。父さんが何とかする」と約束し、娘と別れたビル。だが、担当弁護士に話してもまともに取り合ってくれない。そればかりか、ビルはマルセイユの土地勘もなくフランス語もろくに話せない。途方に暮れるビルは、偶然知り合った幼い娘を女手一つで育てる舞台女優ヴィルジニーの手を借り、マルセイユの街を奔走するのだが……。監督は、前作でアカデミー賞の栄誉に輝くトム・マッカーシー。いかにも彼らしい丁寧な演出と考え抜かれた脚本の力が光る佳品に仕上がってましたね、これ。ほとんど説明もないまま、この主人公の父親がフランスの娘へと会いにゆく旅路を淡々と描いた一連の冒頭シーン。留学中の娘に会いにいくのかと思いきや、どうやら娘は刑務所にいるらしいと段々と分かってくるところから、もう観客の心を掴むことに成功しています。セリフの一つ一つが全て意味をなし、編集や音楽の使い方もばっちり、のちに重要な登場人物となるシングルマザーの親子との出会いもとても自然で気が付いたら物語の世界にどっぷりと浸っている自分が居ました。この父親が娘の無実を晴らすために奮闘するストーリーかと思わせながら、後半、主人公を助けてくれるシングルマザーとの大人の恋愛ドラマへと変貌する手際の良さも見事。マット・デイモンをはじめとする役者陣の熱演も素晴らしく、特に9歳とは思えぬ演技を披露したマヤ役の女の子。この子の表情豊かな存在感がこのともすれば重くなりがちな物語にいいアクセントを与えてくれています。彼女と、刑務所から仮出所してきたアリソンが初対面するシーンは何とも微笑ましく、その後、刑務所に戻ったアリソンの行為には思わず悔し泣きしてしまいました。そして、大事な人と出会い、新たな生活を手に入れたと思われた主人公がそれでも犯してしまう罪。駄目だと分かっているのに、大切なものを失うかもしれないのに、それでも止められなかった彼には思わず共感。人生は後悔の連続だが、それでも大事な人のために生きていこうと決意するビルの最後の表情が切ない余韻を残してくれます。なかなか見応えのあるヒューマン・ドラマの秀作でありました。
[DVD(字幕)] 8点(2022-08-24 06:44:02)
10.  すばらしき世界 《ネタバレ》 
その日、殺人の罪を犯し、13年ものあいだ刑務所へと服役していた男が出所する。彼の名は、三上正夫。10代の頃から何度も罪を犯し、そのたびに刑務所へと投獄され、積み重なった前科は十犯。これまでの人生の28年間を鉄格子の内側で過ごしてきた彼の人生とはいったい何であったのか――。人生の終盤を迎えつつあるそんな三上の再出発の日々を、彼を題材にドキュメンタリーを制作しようというテレビ局のスタッフの視点を交えて描いたヒューマン・ドラマ。監督は、うまくいかない人生にもがく人々の苦悩を終始一貫して見つめ続ける西川美和。いかにも彼女らしい丁寧な演出は相変わらず健在で、特別なことは何も起こらないこの三上という元犯罪者の日常を淡々と描いているのに、最後まで観客を惹き付けてやまないのは見事としか言いようがない。短絡的で何かというと暴力に走るこの粗暴な男が主人公なのだが、そこまで嫌悪感を抱かせないのはやはりこの監督の慈愛にも似た優しいまなざしによる部分が大きいのだろう。不器用で身勝手で社会性が皆無に等しい元犯罪者の人生を否定も肯定もせず、ただ淡々と見つめている。やがて明らかとなる、過去にこの男が心から愛していた女性の存在、今度こそ真人間になろうと誓った経緯、そして彼を子供のころに捨てて失踪した母親……。一般的な人々からすればやくざ者で人生の落伍者である彼にも、当然、人間としての苦悩や後悔、弱い部分や魅力的な部分、そして深い愛もあるという当たり前の事実を改めて気づかさせてくれる。そんな彼をそれぞれの立場から優しく見守る周りの人々の存在も素晴らしい。弁護士やその妻をはじめ、途中で出てくる何気ないキャラクターまでちゃんと血の通った人間として描くことに成功している。特に、六角精児演じるスーパーの店長が印象的だった。ただ、意図してそうしているのだろうが、三上を取り巻く人々がどこまでも良い人ばかりというのは、自分としては少々違和感があった。三上の古い友人であるやくざの組長の妻までが主人公に献身的なまでの優しさを見せるというのはちょっとやり過ぎと言えなくもない。とは言え、それも好みの問題なのだろう。社会という枠からはみ出し、今にも溺れそうになっている人々の悲哀を掬い取ろうという今作のテーマは充分に胸を打つ。血の気の多い元やくざ者をナチュラルに演じた役所広司をはじめ、キャスト陣も皆いい仕事をしている。どんな人間でも、心の持ちようによって、この世界はいくらでも素晴らしいものになる――。そう思わせてくれる、ヒューマン・ドラマの秀作と言っていい。
[DVD(邦画)] 7点(2022-08-19 08:04:43)
11.  Swallow スワロウ 《ネタバレ》 
超一流企業の御曹司と結婚し、誰もがうらやむような生活を手に入れた専業主婦ハンター。ニューヨーク郊外の一等地に建つ豪邸に住み、自由気ままな日々を過ごしている彼女は、最近妊娠が判明し、これからますます幸せになることが約束されていた。だが、横柄でプライド高い夫は常に仕事が第一で妻の話などろくに聞こうとしない。何かと干渉してくる夫の両親も結局、産まれてくる子供にしか興味がない。そんな実は孤独で満たされない毎日を過ごしていたハンターはある日、ふとした好奇心からガラス玉を吞み込んでみるのだった――。次の日、トイレでようを足してみると、そこには昨日吞み込んだガラス玉が何事もなかったように存在していた。何かをやり遂げたような充実感を味わったハンターは、その日から次々と異物を呑み込んでゆく。画鋲、口紅、小さな置物、そして電池……。当然、それは夫とその両親にも知られることとなり、ハンターは無理やりカウンセリングと24時間監視する介護人をつけられてしまう。それでもハンターは、何かを呑み込みたいという衝動を抑えることが出来なかった……。異食症という心の病に侵された専業主婦の孤独な日常を美しい映像で綴ったヒューマン・ドラマ。今回この作品で異食症なるものをはじめて知りましたが、いやー、ちょっときつかったですね~。ビー玉や安全ピンまではまだ耐えられましたが、剝き出しの画鋲を呑み込んじゃうシーンとそれをトイレで排出するシーンはさすがに痛々しく観てられませんでした。血がべちゃっと付いてる便器の中に手を突っ込んで画鋲を探すとか正直、「誰得やねん、この映像!」と思わず停止ボタンを押しそうになっちゃいましたわ。でも、色彩感覚あふれる映像や知的でおしゃれな音楽の使い方など、全編にわたって監督のセンスをビシバシ感じるのでついつい観続けることに。すると中盤、主人公の衝撃の過去が明らかにされ、そのトラウマからこのような行動に走ったのだと分かると俄然、作品世界に惹き込まれている自分がいました。なるほど、これは男の身勝手な欲望に振り回される女たちの切実な哀しみに寄り添った物語だったのですね。女は子供を産む機械だと思っているような男たちへの一種の復讐として異物を呑み込んでしまう主人公。子供なんか産みたくないのに男のために仕方なく子宮を差し出した自分への罰という側面もあるのだろう。最後、様々な女性たちが行きかう女子トイレの映像で終わるのも良いセンスしている。そう、女はそれぞれに男が知らない悩みを抱えているのだ。とは言え、生理的に受け付けないシーンが幾つかあったので自分はもう一度観るのはちょっときついです。この監督の才能は確かだと思うので、次は違うテーマの作品を観てみたいですね。
[DVD(字幕)] 8点(2022-05-04 05:45:56)
12.  すべてが変わった日 《ネタバレ》 
マーガレットとジョージは長年連れ添った熟年夫婦。もはや老境に差し掛かろうかという歳になった彼らは、人生の良い時も悪い時もともに乗り越えてきた。中でも一番辛かったのは、結婚し赤ん坊が生まれたばかりだった一人息子が、乗馬中の事故でこの世を去ってしまったこと。それでも遺された孫だけを生きがいにこれまで頑張ってこれた。そんな孫の母親であるローナが、この度再婚することに。「大丈夫、二人の新居はすぐ近くの町だし、いつでも会いに行ける」――。そう自分に言い聞かせるマーガレットだったが、ある日、可愛い孫に手を挙げる義父の姿を目撃してしまうのだった。さらには、何の断りもなくローナが義父の実家へと引っ越してしまう。いやな予感に押しつぶされそうになるマーガレット。居ても立ってもいられなくなった彼女は、元保安官であるジョージに孫を探して連れ戻そうと提案するのだった。義父の実家がノースダコタにあるという情報のみを頼りにオンボロ車で旅立つ夫婦だったが…。息子を亡くし失意の中に生きてきた初老の夫婦が、連れ去られた孫を探して旅する姿を描いたロード・ムービー。名優ダイアン・レインとケビン・コスナーがそんな長年連れ添った夫婦役を演じているということで今回鑑賞してみました。とにかくこの二人の、本当に夫婦としてずっと暮らしてきたんじゃないかとしか思えないくらい自然な姿にやられちゃいました。もはや人生の終わりが見えてきただろう二人の枯れた佇まいがとてもいい。そんな夫婦が古い車で旅する前半部分は何とものんびりしていて、でも息子を亡くしたという哀しみも充分に伝わり、上質のロード・ムービーを観ているようでした。ところが後半、孫を強引に家へと連れてきた義父家族が登場してから作品の空気ががらりと変わります。特にこの家族を精神的に支配するお祖母ちゃんの強烈な存在感!次に何をするか分からない不気味な言動がすんごく怖い。でも、こういうきっついおばさんって結構居るよねと思わせるところがまた巧いです。物語はここから、明らかに虐待を受けているだろう孫とその母親を主人公夫婦がどうにかして救い出そうともがく展開になってゆきます。この脚本も良く出来ている。血縁的には孫にあたるのだけど、息子が死んで母親が再婚したのだから法律上は赤の他人。客観的に見れば、明らかにこの主人公の方が誘拐犯となってしまう。ここら辺、何とも歯痒い。そんな八方塞がりの状況を打開するために夫婦が最後に取った行動……。きっと孫を救うにはこの方法しかなかったのだと思うと、何とも言えない切ない余韻を残してくれます。観終わった後、「良い映画を観たなぁ」としみじみ思える良品でありました。
[DVD(字幕)] 8点(2022-03-29 02:02:41)
13.  スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム 《ネタバレ》 
誰もが知るスーパーヒーロー、スパイダーマンの大活躍を描いたエンタメ・シリーズ最新作。アベンジャーズに参入してしまった前作から、アンチアベンジャーズの自分としてはもう観る気が全く失せてしまったんですけど、サム・ライミ版からのファンとしての義務感から一応鑑賞してみました。冒頭、アベンジャーズシリーズからの続きみたいな展開にもうげんなり。指パッチンどうのこうのとか知らんし(怒)。純粋にスパイダーマンを楽しみたい自分みたいな人間にとっては、ニック・フューリーとかアイアンマンとのどうのこうのとかもうノイズでしかありませんって!!とはいえ、中盤に明かされる驚きのどんでん返しとかは素直に「おぉ」とはなりましたけどね。大量のドローンが飛び交う中でのバトルシーンなんかもいかにも金がかかってそうで、そこらへんはまぁ楽しめました。それだけに僕は、純粋にスパイダーマンの物語として楽しみたかったです。
[DVD(字幕)] 6点(2022-03-10 23:00:53)
14.  ストックホルム・ケース 《ネタバレ》 
1970年代、ストックホルムの大手銀行で起きた人質立てこもり事件。銃と爆弾で武装した二人組の犯人は、銀行員の女性二人を人質にすると警察に無理難題を要求する。その様子は全国にテレビ中継され、当時の首相を巻き込んだ一大事件へと発展するのだった――。だが、時間の経過とともに双方のやり取りが膠着状態に陥ると、事件はおかしな展開を見せ始める。なんと本来は人質であったはずの女性行員二人が犯人に協力姿勢を見せ始め、さらには愛情に近い感情を吐露するようになったのだ。果たして彼らの間には何があったのか――。これはのちにストックホルム・シンドロームとして有名になる、そんな実際の事件を基に描かれた犯罪劇。荒くれ者で粗野な言動を繰り返す犯人を演じるのはまさに嵌まり役のイーサン・ホーク、そんな犯人に何故か心惹かれてゆく人質役には実力派女優のノオミ・ラパス。他にも主人公の相棒役でマーク・ストロングらも出ております。とにかく彼らの真に迫った熱演には圧倒されました。何をするかわからない危険な匂いをビンビン感じさせながら時に繊細で優しい一面を見せるイーサン・ホーク、子供のことを第一に考えながらもそんな彼に何故か惹かれてゆく人質ノオミ・ラパス。どちらも熟練の技を感じさせる素晴らしいもの。ただ、肝心のお話に関しては、僕は若干踏み込みが甘いような印象を持ってしまいました。ストックホルム症候群の語源となった、被害者と加害者の間に生じる不可解な連帯感。自分を殺すかもしれない犯人に人質であるこの平凡な女性がどうして協力姿勢を示し、さらには犯人が捕まると涙さえ見せたのか。その過程にいまいち説得力が感じられない。そこにはもっと観る者の魂を深く揺さぶるような真実があったはずなのでは。事実をただ忠実に再現しただけではやはり、上っ面をなぞっただけという批判をまぬかれないではないだろうか。題材や役者陣の熱演は良かっただけに、僕はどうしてもそこのところに物足りないものを感じてしまいました。惜しい。
[DVD(字幕)] 6点(2022-01-27 06:01:38)
15.  ストレイ・ドッグ(2018) 《ネタバレ》 
17年前のとある事件がきっかけで心を病み、以来酒に溺れ荒んだ生活を送ってきた女性刑事エリン。ロサンゼルス市警内でもお荷物扱いされ、夫とも離婚、16歳の一人娘からも嫌われ、生きる希望も見失いかけた彼女はただ刹那的に日々を生きていた。そんな折、エリンの元に差出人不明の一通の封筒が届く。中に入っていたのは、紫色の塗料で染められた、一枚の薄汚れた紙幣だった。そしてそれは、17年前に封印したはずの忌まわしき記憶を彼女によみがえらせるのだった――。17年前、エリンはFBI捜査官であるパートナーのクリスとともに、とある犯罪組織内で潜入捜査任務にあたっていた。だが、そこで彼女は取り返しのつかない失敗を犯し、犯罪組織のボスであるサイラスを取り逃してしまったのだ。そしてその紙幣は、以来潜伏生活を続けていたサイラスが再び、現役復帰を果たしたことを宣言するものだった。17年前の忌まわしき記憶にけりをつけるため、エリンは執念の捜査を再開するのだが……。オスカー女優ニコール・キッドマンが、過去の記憶に苦しめられ酒浸りの生活を送る刑事役を熱演し、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされたクライム・サスペンス。全編に横溢する、このひりひりとした緊張感はなかなかのものでした。過去と現在を行き交いながら描かれるストーリーも全く先が読めず、最後まで飽きさせません。特に中盤辺りで突発的に開始される銀行強盗のくだりは、非常にサスペンスフルで見応え充分。大胆な老け顔メイクを披露したニコール・キッドマンもなかなかの熱演ぶりで、回想シーンの美しかった時との激しい落差がより、この女刑事の悲哀を浮き彫りにさせている。そして、クライマックスで明かされる主人公の衝撃の過去…。と、クライム・サスペンスとしては充分面白かったのですが、惜しいのは脚本に突っ込みどころが多い点。現代と過去の銀行強盗パートがさすがに都合よく行き過ぎる。ここまで大胆な行動を取った主人公をほっとく警察署は明らかに無能すぎだし、事故を起こした逃走車の近くにあるごみ箱を調べない鑑識も不自然。冒頭の殺人事件が実は…となるミスリードもイマイチ効果を発揮していない。と、そこらへんに不満は残るものの、総じて満足度は高い。なかなか密度の濃い犯罪劇の佳品でありました。
[DVD(字幕)] 7点(2021-08-21 02:07:33)
16.  SKIN 短編 《ネタバレ》 
過激な白人至上主義者である、とある一家族の日常とその崩壊を研ぎ澄まされた感性で見せる短編ドラマ。後にベラ・ファーミガ主演で長編映画化されたものの原型となった作品で、アカデミー短編映画賞を受賞している。先に長編の方を見てからこちらを鑑賞したのだが、こちらはこちらでよく出来ている。と言うか、物語としては正直こちらの方が面白い。黒人を人間とみなしていない差別主義者が、スーパーの駐車場で絡んできた黒人に制裁を加えたことがきっかけでさらわれ、そして全身にあるタトゥーを彫られてしまうというストーリー。まあ単純で荒唐無稽ではあるが、ちゃんと起承転結がしっかりと纏まっているし、オチの切れ味も鋭い。一言で言うなら、世にも奇妙な物語の社会派版といった感じか。なにより素晴らしいのは、この暗鬱な世界観よ。社会に蔓延る闇を冷徹に凝視しながら、それをエンタメへと昇華してしまえるこの監督の手腕は大したものだ。社会派に特化した長編もなかなかのものだったが、次はこの短編のようにエンタメに寄った作品も観てみたいものだ。
[DVD(字幕)] 7点(2021-06-11 22:39:20)
17.  SKIN/スキン 《ネタバレ》 
全身に禍々しいタトゥーを彫り込み、常に社会に対して鋭い目を向けるその男の名は、ブライオン。幼いころ親に捨てられ、たまたま白人至上主義団体の代表を務める夫婦に引き取られた彼は、以来ずっとアメリカの白人の権利を守るために生きてきた。黒人やユダヤ人、同性愛者をアメリカから追い出すために、彼は日々、暴力と犯罪に塗れた生活を送っていた。そんなある日、ブライオンは3人の子供たちを女手一つで育てる貧しいシングルマザーと出会う。彼女や子供たちと過ごすうちに彼は生まれて初めて心の安らぎを感じ始めるのだった。「彼女たちと一緒に平穏な暮らしを手に入れたい」――。そう決心したブライオンは、差別主義者たちの転向を手助けしている団体と連絡を取る。だが、人種差別の闇は簡単には彼を手放してくれず、さらには全身に彫られたタトゥーが彼をより一層苦しめるのだった……。実話を基に、全身に禍々しいタトゥーを彫り込んだ白人至上主義者たちの真実を描いた社会派ドラマ。全編に横溢する、この濃厚な空気にとにかく圧倒されてしまった。カギ十字や髑髏などのタトゥーを全身に纏った男たちが大声で喚き散らしながら酒やドラッグをきめ、そして黒人を次々と血祭りにあげてゆく。しかもそこには当然のように子供たちの姿も…。噂には聞いていたが、そんな狂った世界が実際にあることに戦慄せざるを得ない。いったい何が彼らをそんな悪意に満ちた行動へと駆り立てるのか?この作品が優れているのは、ドラマの焦点をそこに絞るのではなく、主人公のそこからの厚生まで描いているところ。入るのは簡単だが、そこから出て社会復帰することの難しさを冷徹に見つめている。要所要所に挿入される、いかにも苦しそうな入れ墨除去手術の映像など、この監督のシャープで研ぎ澄まされた感性はなかなかのものだった。特に、雪の積もった真っ白なスクラップ置き場で放火された車から黒煙がもうもうと立ち上ってゆくシーンは、なんとも言えない暗鬱な美しさに満ちている。と、映像や世界観は文句なしに素晴らしかったのだが、惜しいのはストーリー面。単純なお話である分、一編の物語として観客を引き込む力が若干弱い。もう少しストーリーの見せ方を工夫するか、それかもうちょっと短くするべきだったのでは。90分くらいでコンパクトに纏めてくれたら、もっと完成度は上がったはず。とは言え、全体として非常に見応えのある社会派ドラマの秀作であることは確か。この監督の次作を楽しみに待とうと思う。
[DVD(字幕)] 7点(2021-06-11 22:02:40)
18.  ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 《ネタバレ》 
少女小説の古典的名作『若草物語』の原作者の半生を美しい映像で綴った青春ストーリー。名作と名高い原作の名はもちろん知ってましたが、これまで1ページも読んだことがありませんし恐らくこれから先も1ページも読むことはないであろう、僕にとってはジェーン・オースティンの『高慢と偏見』と並んで全く食指の動かない古典の代表格。でも、キャスト陣がやたら豪華なことと幾つもの賞を受賞しているということで今回鑑賞してみました。結果は……、やはり僕の感性とは全く合いませんでした。お年頃を迎えた四姉妹の惚れたり冷めたり、付き合ったりフラれたり、喧嘩したり仲直りしたりがひたすら続いて、正直僕は最後まで観るのがちょっと(いや、けっこうかも)しんどかったです。確かに、華のある役者陣が織りなすまるで絵画のように美しいシーンや現代と過去を絶妙にシンクロさせる練られた脚本の力など、監督の演出力の高さは素直に認めるところなんですけどね。この監督の前作を鑑賞したとき、自分の求める世界とは微妙に違うなぁと感じたのですが、どうやら本作でそれは確定したようです。
[DVD(字幕)] 6点(2021-05-07 23:39:32)
19.  スキャンダル(2019) 《ネタバレ》 
全米最大の巨大メディアFOXニュースを根底から揺るがせたセクハラ事件――。長年経営を一手に担ってきたカリスマ経営者によって、多くの女性ニュースキャスターがその被害に遭ってきたというのだ。仕事欲しさから泣き寝入りを余儀なくされてきた女性たちだったが、ある一人の女性キャスターが声をあげたことによりその実態が明らかとなる。そしてそれは全米を揺るがす巨大スキャンダルへと発展するのだった……。本作は、この実際にあった事件を基に描いた社会派サスペンスだ。シャーリーズ・セロンやニコール・キッドマン、そして最近めきめきと頭角を表している若手女優マーゴット・ロビーという新旧トップ女優の豪華共演ということで今回鑑賞してみました。確かに、この三人の共演はとんでもなく華があって見応え充分。特に、エレベーターに偶然乗り合わせたこの三人の間に漂う微妙な緊張感は観ているこちらまでピリピリしちゃうほど。いやー、これって実際にこの三人が揃うとこうなるんじゃないのなんて思ったり(笑)。ただ、内容の方は正直微妙。最近流行りの実話を基にした系にありがちな、登場人物たちがカメラ目線で観客に直接語りかけるという演出が個人的にあんまり好みじゃないんですよね~。それにトランプ大統領の実際の映像が流れるんですけど、それがこのセクハラ案件と関係するのかというと特にそんなこともない。これならトランプの名前は出さずにとある共和党大統領候補にセクハラまがいの発言を受けたくらいの演出にとどめた方がよかったのでは。なんだかトランプを出したことによってドラマの焦点が若干ブレてしまったような印象を僕は持ってしまいました。という訳で好みの問題もあり、僕はそこまで嵌まらなかったです。いつまでもお美しい美熟女お二人の豪華共演に+1点!ってこの発言も訴えられそうですけど(笑)。
[DVD(字幕)] 5点(2021-03-04 01:00:11)
20.  スケアリーストーリーズ 怖い本 《ネタバレ》 
ホラー好きで学校でも少し浮いた存在であるティーンエイジャー、ステラ。ハロウィンの夜、同じくクラスのはみ出し者の男の子たちと街へと繰り出した彼女は、何かと噂の絶えない町外れの廃墟へとやって来る。そこはおおよそ100年前、家族から監禁された末に自殺した女の子サラが、何人もの子供たちに自作の物語を聴かせた挙句残虐な方法で殺したという恐ろしい言い伝えが残っているのだ。鍵を外し、興味本位で中へと侵入した彼女たちは、そのサラが監禁されていたという秘密の地下室を発見する。そして、そこでサラが殺した子供たちの血で書いたと思しき本を見つけるのだった。ホラー好きのステラは、思わずその本を家へと持ち帰ってしまう。だが、彼女は知らなかった。そこにはいまだ恐ろしい物語が書き継がれていて、そこでつぐまれた物語は現実になってしまうことを――。全米であまりの恐ろしさから図書館へと置くことに論議が巻き起こったという児童書を映画化した本作、制作を務めるのがあのギレルモ・デル・トロと言うことで今回鑑賞してみました。しかも監督は前回、『ジェーン・ドゥの解剖』と言うフェティッシュ・ホラーの快作を撮ったアンドレ・ウーヴレダル。この二人がタッグを組んだというなら、もう観ないわけにはいきますまい。とにかく特徴的なのは、ホラー描写の禍々しさに容赦のないところ。日本的なじわじわ来る怖さとは正反対の、もういちいち人の生理的な部分を逆撫でする描写のてんこ盛り。最初に出てくるかかしのお化けの顔に毎回ゴキブリが這いずり回っていたり、仲間の男の子が食べたシチューの具に人間の足の指が入っていたり、可愛い女の子のニキビから大量の蜘蛛が飛び出してきたり……。いったいどうやったらこんな嫌なエピソードばかり思いつけるんですかね(笑)。極めつけは、廊下の向こうからゆっくりとやって来る太った女のお化け。もうこいつの気持ち悪ーい外見なんて夢に出てきそうなほどです。うん、確かにこれは子供が観たらトラウマになりますわ。肝心のストーリーの方も無駄を削ぎ落したシンプルなもので、最後まで小気味よく観られて大変グッド。ベトナム戦争や移民への偏見と言う社会問題へとさらりと目を向ける視点の幅広さもポイント高いです。主人公が最後に迷い込むことになる、サラが住んでいた洋館のおどろおどろしい雰囲気や彼女の悲劇的な最期なんていかにもデル・トロ的ですね。いやー、なかなか面白かった。やんちゃ盛りのお子ちゃまへの教育用ビデオとしても最適です(笑)。
[DVD(字幕)] 8点(2020-08-27 19:16:17)
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