1. ゼイリブ
《ネタバレ》 いつの間にか異星人が紛れ込んでいるという設定はカーペンターの他の作品でも見られますが、アイデア自体は古典中の古典であり大して新鮮味を感じるものではありません。しかし独特のビジュアルとテンポ感、そしてカーペンターおなじみの気の抜けた様なテクノ調の音楽が、凡百のSF映画との大きな差になっていますね。「権力を信じるな!支配されるな!」というテーマも非常にカーペンターらしい。 まあ結構オイオイと突っ込みたくなるシーンが多い映画でもあり、その辺りは笑いながら観てました。その位のテンションで観るのが正解?ですかね。例えば、サングラスに映っているものをそのまま声に出しちゃう主人公とか(そりゃ怪しまれるわ!)、次々と異星人を見破る新兵器を開発してる謎のレジスタンスの設定や、異星人の機器が何故か地球現地語(英語)だったり。 [DVD(字幕)] 6点(2014-10-09 22:21:45)(笑:1票) (良:1票) |
2. 戦場でワルツを
《ネタバレ》 アニメーションの可能性を広げた画期的な傑作、と言っても過言では無いかと思います。恐ろしくも、素晴らしい。 まず恐ろしいのは、作中で語られるレバノン紛争に関するインタビューにおいて、証言者たちの戦争に参加している“動機”がスッポリと抜け落ちていること。少なくとも劇中では「何故彼らは戦争に参加していたのか?」は語られない。大義なき闘争・戦争、これは怖い。それは主人公も同様です。するとどうなるかというと、主人公はその記憶を失う。証言者たちは淡々と記憶を語るが、その様子はまるで劇中でPTSDの心理学者が語る「カメラのレンズごしに見ている」状況に他ならない。彼らは現実に触れていないのです。 さて、現実に触れていないのは観客も同じです。たとえどんなに臨場感に溢れた戦争映画『プライベート・ライアン』だろうが、『ブラックホーク・ダウン』だろうが、『プラトーン』だろうが、我々はレンズ越しにその戦場を傍観している意識をどこかで持っている。しかしアニメーションというのは不思議なもので、実写ではないアニメという手法で語られることで格段にその戦場の風景は現実味を帯びる様になる。少なくとも私はそう感じました。イメージとしてはノンフィクション・ノベルを読む時に実際の映像を想像してしまう感覚に近いかと思います。 ただ、そうは言ってもアニメーションもレンズ越しに創造した映像であることに変わりはない。……が、最後にアニメーションの映像と実際の映像がオーバーラップする。サブラ・シャティーラの虐殺によって、居場所を失い廃墟の前で泣き叫ぶ女性、道端に山の様に積まれ転がっている死体の数々、そして頭部と手だけ瓦礫から覗かせている少女の遺体。そこで唐突に映画は終わる。正に観客は最後に現実に触れてしまった。これは地獄だ。 普通はFLASHアニメーションというと、最早時代に逆行した手法の様に感じますが、本作の様に淡々と戦場の様子を語ることが必須の作品においては実に効果的であると思いました。 [DVD(字幕)] 9点(2014-08-23 07:04:26)(良:1票) |
3. 戦争のはらわた
《ネタバレ》 戦争で最も男らしくない行為として、"身の保身"や"出世欲"が描かれます。 主人公・シュタイナーは心の底から出世を望んで戦争をやっている輩を憎んでいる。それはシュタイナーが昇進を辞退する場面や、全ての将校を嫌いとする言動等から容易に推測できます。確かにこの映画の中で描かれる悪役(ストランスキーとその取り巻き)はサイテーだ。危険な状況になると尻に火が付いたように逃げ回り、たかが勲章や身の保身の為に友軍を見捨て裏切る。責任を問われれば「上官の命令に従ったまでだ」「彼は数時間私の指揮外だった」と宣う。そんな輩をシュタイナーが最後笑い飛ばすシーンは痛快でした。弾丸の装填すらままならない程に現場を知らない傲慢で臆病で無能な上官。そういう奴、現代にも実際にもいるわ! 名匠・ペキンパーらしい迫力のある銃撃戦は圧巻。異なるシーンでは戦友同士のバカ騒ぎ(本当に楽しそうな男社会の様子)が描かれ、ラストの悲劇により悲壮感を惹き立てる。76年当時にこれだけの戦争シーンを描けていたことに驚嘆します。 [DVD(字幕)] 8点(2014-02-22 05:47:25) |
4. ゼロ・グラビティ
《ネタバレ》 驚異の映像体験だったと言わざるを得ません。観客は宇宙空間に放り出されたライアンと完全に一体となって宇宙で漂流する恐怖を疑似体験する。冒頭の船外作業からスペースデブリの襲来、ライアンの一人称視点による漂流に至るまでは本当に息が出来ないような臨場感でした。しかも特殊効果を用いて上手く繋いでいるとは言え、ここまでをロングテイクで撮ってしまうとは恐れ入ります。また編集の技術もとんでもない。ライアンが完全に一人で宇宙空間に放り出されるシーンでは一人称視点と三人称視点が入り混じったりする。画面構成もすごい。普通の映画では当然シーン毎に写したい対象は決まっており、それはこの映画でも同じなのですが、例えばスペースデブリがシャトルに衝突するシーン等では画面全体で明らかに観客が一回の観賞では処理できない情報量が描き込まれている。多分、何度観ても画面で色々な発見ができる作品だと思います。 では映像の凄さだけなのかと思っていたら全然そんなことは無くストーリーも素晴らしい。中盤のライアンがソユーズの中で死を受け入れようとした辺りから次第に人生の意味を問いかける様な展開を見せていく。マットの「宇宙空間は静かで孤独だ。しかしならばどこに生きる意味がある?生きて地球に還るんだ!」という台詞はあらゆる人の励みになる言葉だと思います。だからラストシーンでライアンが土を掴み、大地を踏みしめる姿は大変感動的でした。無重力・水中を経て彼女は陸への帰還を果たす。これは進化であり、再生であり、誕生の物語なのでしょう。 アルフォンソ・キュアロン監督は『トゥモロー・ワールド』に引き続き映像・ストーリー共に類い稀な傑作を撮ってしまった。彼の作品をリアルタイムで劇場の大画面で観られることを本当に幸運に思います。 [映画館(字幕)] 9点(2013-12-13 14:57:18)(良:5票) |
5. セルピコ
《ネタバレ》 警察内の汚職とたった一人で戦った実在の警官、セルピコの半生を描いた作品ですが、自ドニー・ルメット監督らしくその視線は実に冷ややかに主人公を写していると思います。この映画は結局ヒーローには失う物を持たない一匹狼しか成れないということを言ってしまっていると思います。セルピコは付き合っていた彼女にも言われた通り、どこまでも自由にしか生きられない男です。だからこそ彼は警察内部の汚職を暴くという常人ならば成し得ないことをやり遂げた。 逆に汚職に手を染めている警官の中には本当に家庭を大事に思っているからこそ、家族を養っていかなくてはいけないからこそ、賄賂を受け取っている人たちもいる。まあ欲望の赴くままに集金しているクズの方も沢山いたようですが。 証言したことで警察内部で村八分にされ、同僚に殺されるかも知れない恐怖がセルピコを襲うシーンの緊張感は並々ならぬものがあります。今見ると自由人=ヒッピーのファッションというのはやや単純すぎる気もしますが、当時としては斬新な主人公だったのだと思います。 [DVD(字幕)] 8点(2013-06-23 22:40:33) |
6. 世界にひとつのプレイブック
《ネタバレ》 他人とかけ離れている(この言い方が適切では無いと思いますが変人)同士だからこそ成り立つ珍しいタイプのロマコメ。ある意味ウディ・アレンのラブロマンスの対極と言えると思います。個人的にはヒロインが急にダンスコンテストの参加を提案したり、主人公の親父がスポーツ賭博マニアとは言えその場のノリで全財産をかけてしまう辺りの流れにやや付いていけませんでした。フィラデルフィアのチームを知らないとさっぱり面白さがわからないシーンが多いことも結構人を選ぶ作品かもしれませんね。 ジェニファー・ローレンスがあれだけ見事なスタイルだったことには驚きました。『ハンガー・ゲーム』の時には全く惹かれなかったのに、今回は主人公と同様に彼女のクビレとそれが強調する胸に目が釘付けになっちゃいました。 [映画館(字幕)] 7点(2013-04-15 23:49:51)(良:1票) |
7. ゼロ・ダーク・サーティ
《ネタバレ》 2001年から2011年までの10年間、アメリカはイラク戦争と対テロ戦争によって疲弊していった。キャスリン・ビグロー監督は前作『ハート・ロッカー』でイラク戦争によりアメリカが正義を喪失していく様を描いたが、最後にはどん底の中の希望を見せて終わった。しかしこの映画はそんな一縷の希望すら与えていなかった様に感じます。 主人公のマヤは序盤ではCIA内で行われる拷問に目を背けていましたが、徐々に徐々にテロとの戦争に疲弊し神経をすり減らし、最終的にはビン・ラディンを殺すことを第一優先とするようになる。これは10年間に同じく消耗していったアメリカを象徴しているのでしょう。そして最後に大きな輸送機にひとりポツンと座り一筋の涙を流すマヤは、9.11の報復というには余りにも大きな犠牲を払ってしまったアメリカそのものの様に見えました。そんな国を体現するかのような難しい役柄を演じたジェシカ・チャスティンは素晴らしい演技だったと思います。 ビン・ラディンの暗殺は対テロ戦争において一応の節目となった。それでも今なおテロは世界各所で続いている。クライマックスの途轍もない臨場感で描かれる突入作戦で、両親を目の前で殺された子どもたちが描かれますが、彼らが新たなテロの芽となっているのかも知れません。 2005年から2008年にかけてはアルカイダのテロ活動が特に活発になった年だったと強く記憶しています。イギリスのダブルデッカーが粉々に爆破され、欧米人が滞在するホテルは片っ端から自爆テロの標的にされた。新聞の国際面には毎日の様にアルカイダによるテロの記事が載り、無関係の命まで容赦なく奪うテロという行為に暗澹たる気持ちになった。その時の恐怖を本当にリアルに思い出さされた作品でした。正直観ていて自爆テロのシーンは神経に応えまくったし、もう二度と観たいとは思えませんが観るべき作品だったとは強く感じます。 [映画館(字幕)] 9点(2013-03-11 23:21:42) |
8. 009 RE:CYBORG
《ネタバレ》 "未完の傑作"とか言われていますが、個人的には原作の話は地下帝国ヨミ編で一度終わっている訳で、なんでわざわざ映画化するんだろうかと不思議になっていた作品でした。サイボーグ009シリーズの最大の敵は軍産複合体のブラックゴーストであり、連載当時は冷戦真っ只中でベトナム戦争などの軍需産業と政治との問題も注目されていて物語に説得力もありました。しかし今の世の中でも軍産複合体は存在しており、アメコミ映画『アイアンマン』は現在の死の商人を近年では一番上手くヒーローものに落とし込んでいる作品の例だと思います。なので今でもブラックゴーストを敵とした作品を作っても十分通用するのではと思っていました。しかし今回の『009 RE:CYBORG』の敵は神であり、彼の声を聞いた人々がテロを起こしている。これは原作で未完となった天使編を下敷きにしているのでしょう。それ自体が悪いとは言いません。彼(恐らく神)の声を聞いて啓示を受けたかのようにテロを人々が起こすという話が神山監督の代表作『攻殻機動隊』に似ているから二番煎じだとか言うつもりはありません。しかし石ノ森先生が壮大になりすぎるが故に畳みきれなかった作品を扱うなら、最後はキチンと畳まないと態々作り直した意味が無いでしょう。唐突な「神が許したから全部解決したよ」ってエンディングにはズッコケそうになりました。「答えが出ないからやーめた」なんて制作姿勢は私は許容しかねます。最後に地下帝国ヨミ編の感動的なラストを再現しているのもファンサービスのつもりなのかもしれませんが、正直嬉しいものでは無かったです。 [映画館(邦画)] 3点(2012-11-04 10:40:01)(良:1票) |
9. 戦火の馬
《ネタバレ》 最近多作になっているスピルバーグですが、今までのいろいろな作品の路線が入り混じっている作品だったと思います。青年のあるものへの固執は「太陽の帝国」、戦争描写は「プライベート・ライアン」、フランスの少女と馬との交流は「E.T.」など。ただこれが交じり合ってて観にくいかというと全くそういうことはなく、結構展開が早い中で一つ一つのエピソードが感動的に演出されています。そのあたりをキッチリしているのが矢張り巨匠なんだなと思います。ややひっかかったのはこういう映画には仕方ないのですが、ドイツ人もフランス人も皆英語を喋っていること。その国単体で出てくるのならいざ知らず、イギリス兵とドイツ兵が英語で話し合っていて、イギリス兵が「お前、英語上手いな」と言う。その直後ドイツ兵が自軍の兵士に英語で話すが設定上ここはドイツ語を話しているという奇妙なことに。あのシーンはすごく感動的で(さっきまで血みどろの殺し合いをしていた兵同士が軽口を言い合う)問題無いんですけどね。それにドイツ訛りやフランス訛りを使わせて頑張って表現しているのは伝わりましたし。 [映画館(字幕)] 8点(2012-03-24 21:27:50) |
10. 世界侵略:ロサンゼルス決戦
《ネタバレ》 起こっていることはID4(インデペンデンス・デイ)と殆どオチまで同じですが、この映画は闘いを一小隊の視点からのみで描いている点が大きな相違点として面白かった。視点が常に最近流行りのドキュメンタリータッチであることも違いを強調させている。残念だった点を挙げますと……、音楽が一辺倒で常に感動を押しつけて来る感じがイラつく、アーロン・エッカートが軍曹にはどうしても見えない、あとこれは完全に私の映画の見方に問題があるのでしょうが、終盤に主人公の小隊がハンビーに乗ってエイリアン(人型)を轢き殺しながら「死ね~!」「まるでボウリングみたいね!」と狂喜乱舞する姿にはなにか嫌な感じを受け取らざる得なかった。演出のやり方は理解できるし正しいのでしょうけど、アメリカ映画の戦場でハンビーが出てきたらやっぱりイラク戦争を意識してしまいます。しかも相手は正体不明のエイリアン(外国人)。なんだかなー。 [映画館(字幕)] 6点(2011-09-17 22:00:32)(良:1票) |
11. 戦艦ポチョムキン
《ネタバレ》 オデッサの階段での虐殺が有名過ぎる作品。アンタッチャブルのシカゴ駅での銃撃戦の元ネタが観れたことでも十分満足なのですが、矢張り凄いなと思ったのはモンタージュ技法による多々の演出でした。甲板で戦友を射殺する時のカットと、ポチョムキンがオデッサ劇場を砲撃する時のカットが印象的。 [DVD(字幕)] 8点(2011-01-30 10:15:02) |
12. 精神
月並みな言い方ですが、映画全体が優しさで満ちていました。想田監督のいう所謂、"カーテン"の向こう側をありのままに映しただけで価値があると思います。この映画を観た人によって、その感想は異なるかもしれませんが(そういう撮り方をしているので)、精神病にかかっている人の"そのまま"を観たという事には違いない。精神病患者を知るという意味で、この映画を観たことは無駄にはならないと思います。 ただ個人的にはいらないと感じたカットが多々あったのが惜しいです。(女子高生とか、女子高生とか、女子高生とか……) [映画館(邦画)] 8点(2009-09-23 23:36:06) |
13. 千と千尋の神隠し
アニメーションとしては凄く映像は綺麗だし、話もしっかりしている、あとテーマもまあ良く観てると自然に伝わってくる。でもこの映画はどうも好きになれません。宮崎監督がある映画雑誌で「この映画は現代の援助交際などの性風俗を扱っている」といった事をインタビューで答えていたのを読んだのですが、そこまで性風俗について若い女性に警鐘を鳴らしたいならもっと直接的に訴えても良かったのでは?この映画で湯屋が舞台というだけで、それを読み取れる女性は非常に少ないでしょうし。ジブリが子ども向けアニメを作り続ける必要なんて別にないのですし(実際、前作のもののけ姫は子ども向けとは言えない)やるなら徹底的にやって欲しかったです。 [DVD(邦画)] 6点(2008-10-02 10:13:04) |
14. 戦場のピアニスト
かなり冗長な様に感じました。最後のシーンに至るまでに、戦争の内容を事細かに描くのは別に構わないのですが、あまりにもそれが多く主人公が只逃げ惑う映画といった印象を受けてしまいました。つまりピアニストじゃないじゃんって思ってしまいました。 [地上波(吹替)] 6点(2008-08-12 00:03:49) |
15. セブン
《ネタバレ》 7回起こると(観客は)分かっている犯罪が、途中で犯人が自首して止まってしまった時は、「え?どうなんの?」って本気で思いました。まあそんな考えを起こすこと自体がデヴィット・フィンチャーの思うツボだったわけですが……。 次々と猟奇殺人が起こってゆく様も見物ですが、本作の魅力は俳優の演技の上手さが大きなウエイトを占めていると思いました。とりわけサイコキラーを演じるケヴィン・スペイシーと最後のブラッド・ピットの苦悩する演技は素晴らしいの一言!これで何故主演男優賞と助演男優賞のアカデミー賞がノミネートすらされ無かったのか非常に疑問です。 [DVD(字幕)] 8点(2008-08-09 10:07:40) |
16. セルラー
《ネタバレ》 脚本の勝利と云うべき作品。良く練られているなぁと関心しました。携帯一つであそこまで盛り上げる作り手の手腕は素晴らしいです。携帯電話が壊れた時はホントにこっちまで焦っちゃいました。 [DVD(字幕)] 7点(2008-07-31 10:00:05)(良:1票) |
17. ぜんぶ、フィデルのせい
アンナ役の子役の女の子の演技力が物凄いです。あの歳ですごいなぁ。 結構難しい社会体制の上に物語を置いているので、日本人は少し理解しにくいかも。一般人にオススメは出来ませんが、時代背景が好きなら一見の価値ありだと思います。 [映画館(字幕)] 6点(2008-07-30 14:57:16) |
18. ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
個人的にここ数年の文芸映画の中ではダントツで一番です。ここまで宗教をネガティブに、否定的に描いた映画も少ないでしょう。こういう映画がキリスト教が盛んなアメリカで造られたのには素直に関心します。普通、批判が怖くて出来ませんよ。 そんな重苦しいテーマにも関わらず、結構エンターテイメントにも寄っている気がするし、そこら辺の配分も上手だなぁと。特にラストシーン、ダニエル・デイ・ルイスの気が狂った様な暴れっぷりは一見の価値あり。 [映画館(字幕)] 10点(2008-07-29 00:02:54) |