21. 続・雷電
《ネタバレ》 さて雷電物語も続編でいよいよ佳境です。続編では同時代の有名人である田沼意次や大田蜀山人を無理矢理引っ張り出してきて物語に絡めさせる展開になってます。中でも沼田曜一が演じる蜀山人は太郎吉とおきんの守護神となって八面六臂の大活躍で、沼田曜一も個性を活かしたのびのびとした演技で光ってました。 相変わらずおきんは不幸の連続で、とうとう伊豆の山奥に逃げなければならない羽目になりました。いっぽう力士・白根山として出世街道を驀進中の太郎吉ですが、お抱え大名の松平出雲守からお八重(池内淳子)との婚礼を世話されてしまいます。ここでお約束のようにおきんが江戸にもどって来て太郎吉は板挟みになりますが、力士としての出世を願うおきんが泣く泣く身を引き太郎吉はお八重と婚礼を結ぶためお殿様と出雲に向かうところで物語はお終いです。劇中でおきんはこじらせ女ぶりを発揮してけっこうイラつかせてくれましたが、さすがにこの結末には涙を誘うものがありました。 観通してみての感想は、原作小説あってのことでしょうけど、せっかくの題材なのに予想外に相撲シーンが少なかった印象です。タイトル・ロールで判りますが、当時の現役大相撲力士も出演していたみたいなのにもったいないことです。青春ものとして観ればまあまあの出来かなと思います。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2015-03-21 19:24:42) |
22. ソーシャル・ネットワーク
《ネタバレ》 若き天才起業家のサクセス・ストーリーだと思いきや、初っ端から最後までドロドロした人間関係のもつれと裁判沙汰に終始する映画だったとは意外でした。マーク・ザッカ―バーグ、オタクの中でもとても友達にはなり得ないタイプで、ここまで嫌らしく描かれてご本人も良くOKを出したものですね。この映画の製作に当たってはザッカ―バーグや訴訟相手の弁護士たちが入念にチェックしたそうですから、まあ納得はしてるんでしょうね。フェイスブックというコンテンツは革新的な技術というよりもWEBをパーソナルなコミュニケーションに結び付けた着眼点の勝利だったと私は思うので、友達が2~3人しかいなさそうなザッカ―バーグの様な人間が生みだしたと言うのは神さまの悪戯でしょうか。東部のアイヴィー・リーグの学生たちで盛り上がったフェイスブックが、魑魅魍魎の跋扈するシリコン・ヴァレーで変質してゆく過程はなかなか興味深かったです。ずっと猛烈な早口で通すジェシー・アイゼンバーグの鬼気迫る演技も良かったです。ラストに流れるビートルズの"Baby, You're A Rich Man"がけっこうきつい皮肉になっていました。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2014-02-24 22:59:49)(良:1票) |
23. その場所に女ありて
《ネタバレ》 最近『悪の階段』を観るまでは恥ずかしながら鈴木英夫監督のことを全然知らなかったのですが、昭和30年代にこんなにハードボイルドでしかも女性が主人公のサラリーマン映画を撮っていたなんて、本作を観てさらにぶっ飛びました。昼は会議室や応接室、夜は酒席でビジネスが進む、営業系サラリーマンの仕事ぶりが実にリアルに描かれています。 そして司葉子のカッコいいことと言ったら、さすが昭和を代表する美人女優のひとりです。現在はすっかりふっくらしたおばあちゃん(失礼)ですが、この映画で見せるショートヘアのいかにも出来そうな営業ウーマン姿にはもうほれぼれとしてしまいます。それまでお嬢さん女優だった彼女にこういうシャープなキャラを演じさせるとは、『悪の階段』で団玲子に悪女を演らせた鈴木英夫ならではの手腕にもう脱帽です。 ライバル社の広告デザインをこっそり手掛けて報酬をもらう主任デザイナー(完全な背任です)、社内で金貸しをやって月三分の利子を取る女子社員(超高金利!)、こういったまだ生きてゆくのに精いっぱいだった時代のホワイトカラーの生態には考えさせられるものがあります。最近『ALWAYS 三丁目の夕日』なんかで昭和30年代が過剰に美化される風潮がありますが、高度経済成長前期までの日本はまだまだ喰うのに精いっぱいだったのです。司葉子が査問に懸けられてクビになりそうになるシーンでも、「私が生活し生きてゆくにはこの会社が必要なんです」と毅然とした態度で訴えます。現代で重要視される「やりがい」とか「自分らしさ」なんて御託を並べる余裕は誰にもなかったんです。 社長シリーズや無責任男シリーズを量産していた陰で、こんなリアルでカッコいいサラリーマン映画が東宝で撮られていたとはほんと驚きでした。 [CS・衛星(邦画)] 9点(2013-12-02 23:44:44) |
24. 続・夕陽のガンマン/地獄の決斗
《ネタバレ》 20年ぶりぐらいに観直しましましたが、南北戦争の戦闘シーンまであるし記憶に残っていた以上の超大作だったんだと再認識させられました。もっともカネかけてるのは判るけど、はっきり言ってあの戦闘シークエンスは不要だったんじゃないでしょうか。前作に続いて善玉・悪玉・卑劣漢の三すくみ対決ですが、ここまでこってりしていれば数ある三すくみ映画の完成形と言える存在で、このプロットはタランティーノが後年になって盛んに模倣していますが未だに本作を超える域にまでは達していないのです。 セルジオ・レオーネの映画では物語の進行があまりにゆったりし過ぎるのが欠点で、本作でも善玉・悪玉・卑劣漢の三人が一人ずつ紹介されるだけで冒頭30分も使うんですから恐れ入ります。さすがのリー・ヴァン・クリーフもイーライ・ウォラックには喰われっぱなしで可哀想でした。本作でのイーストウッドは“ドル三部作”の中でいちばん個性が薄かった気がしますが、まあこの“名無しのジョー”は『夕陽のガンマン』と合わせると莫大なカネを稼いだのだから良しとしなければ罰が当たりますよ(笑)。 [DVD(字幕)] 8点(2013-11-21 22:43:07) |
25. その男、凶暴につき
《ネタバレ》 途中から監督になった経緯は有名な話しだが、すでに出来上がっていた野沢尚の脚本をたけし流に手直ししているので、以後の北野映画とはちょっと違うテイストもある。岩城刑事の家庭生活や我妻刑事の妹の過去などがTVドラマ風に書き込まれていたみたいで、その片鱗を残したまま独特のつなぎで大ナタを振るった様に感じられる。その為、北野映画の特徴である叙情性がほとんど皆無で、その殺伐とした雰囲気は彼のフィルモグラフィの中でも抜きんでている。 でもこの映画の完成度は素人の映画監督デビューとしては奇跡の様な水準で、やっぱこの人は天才なんだなとしみじみ感じる。音楽の久石譲やカメラの柳島克己といった北野映画の鉄板スタッフとはまだ組んでいないので、あの北野ブルーと言われる色調はまだ見られない。でもエリック・サティを劇中しつこく使っているところに監督の音楽センスの良さが感じられる。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2013-03-08 20:45:32) |
26. ソードフィッシュ
《ネタバレ》 ×××が×××を付けているのを×××に見られたのや、バスの中に×××があることに×××が気づくのも、すべてトラボルタの仕掛けだったと言うのかい!こいつは神か悪魔か!(確かにお名前はガブリエル“大天使”ですが) この映画を貫いているご都合主義とラストのオチは、もう夢オチみたいなもんです。だいいち、人質を連れて銀行から出てきたテロリストを、なんで警察が狙撃しちゃうのかわけ判りません。そんな粗いお話しでも、有名スターを揃えて華麗な映像を怒濤のごとくぶつけてくれば、映画としてはなんとか観られるものが出来ると言ういい見本かも。 映画史に残るムダ脱ぎをしてオッパイを見せてくれたハリー・ベリーに一点献上です。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2012-05-30 01:08:55) |
27. それぞれのシネマ
《ネタバレ》 カンヌ映画祭60周年を記念して、カンヌで賞を受けたり縁があった映画作家ち30余人に、時間は3分間テーマは映画で撮らせたオムニバスです。数あるオムニバスでもこれだけの映画作家が参加した例は今までなかったのでは。そうそうたる顔ぶれですが、個人的にはゴダール(彼の場合はカンヌとは因縁ですけど)、クストリッツァ、タランティーノが参加してないのが残念でした。それぞれの作品の傾向として、面白いことに欧米系の監督は詩的・観念的・政治的な切り口で撮った作品が多いのに対し、アジア系はノスタルジーな視点で映画を視ている傾向が強いことでした。そして“盲人が映画を観る”と言うプロットの作品が3本あって、それぞれ男性・女性・子供と別れているのが面白かったです。日本からは北野武が参加してますが、この『素晴らしき休日』はちょっとがっかりな出来で、他の監督に比べて一段落ちるなと感じました。 さてベスト作品ですが、私はエリア・スレイマンの『臆病』を選びたいと思います。自作が酷評される映画監督って大変だよなと同情しちゃいました、爆笑まちがいなしです。ワーストはたぶん観た人の意見が90%は一致すると思うのですが、ラース・フォン・トリアーの『職業』でしょう。この人、ちょっと人格異常なんじゃないでしょうか(怒)。コーエン兄弟も『ワールド・シネマ』で参加していますけど、版権の問題か何かで日本では観れないそうで残念です。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2011-10-22 21:23:01) |
28. その土曜日、7時58分
《ネタバレ》 シドニー・ルメットの映画では犯罪者には悲惨な末路が用意されている場合が多いのですが、それにしても本作は極めつけ、ルメットの遺作に相応しい陰惨さです。親殺し、子殺し、まるでギリシャ悲劇を現代に甦らせたみたいなものです。ルメットの演出は最後までシャープさが衰えないのですが、個人的にはあの時間軸や視点をいじった演出にはあまり意味がなかった様な気がしました。この手法はどんでん返しや意表を突くプロットが隠されている様な映画でもっとも効果が出るのだと思います。俳優陣ではイーサン・ホークが「うまいなあ」と感心させられましたが、やっぱ努力賞はマリサ・トメイでしょう。のっけから激しいSEXシーンを見せるわ(相手がシーモア・ホフマンと言うのにはちょっと引きましたが)、『もっとも脱ぎっぷりの良いオスカー女優』の面目躍如でした。これからも頑張ってください、期待してます(笑)。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-10-16 19:21:22)(良:1票) |
29. 続・黄金の七人/レインボー作戦
《ネタバレ》 前作よりもカネはかけてるんだけど、ヘタにセットやVFXを増やしちゃったおかげで全体にチープ感が濃厚になっちゃったかな。でも露骨に二匹目のドジョウを狙って『サンダーボール作戦』のパロディに徹した強引な脚本が、けっこうこのチープ感にマッチしていてこれはこれで味があります。前作が気に入ったファンには登場キャラのお約束ギャグを愉しみにしており、峰不二子キャラのロッサナ・ポデスタがどこで寝返るかとかワクワクしちゃいます。ほんとこのシリーズは、ロッサナ・ポデスタあっての『黄金の七人』なんですから。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2011-08-14 00:03:48) |
30. 存在の耐えられない軽さ
《ネタバレ》 “驚異の目力”が武器のプレイボーイ外科医、まさに“肉食獣”と言える女流画家、そして腋毛ボーボーの田舎娘、この三人が見せる純愛とは対極に位置するような恋愛劇ですが、ドロドロになりがちなストーリーなのにどこか突き抜けた明るさがある語り口です。ヨーロッパ俳優を多く使い撮影監督もスヴェン・ニクヴィストなので、ハリウッド資本ながら欧州映画の様な味わいがありました。スヴェン・ニクヴィストのカメラがまた美しくて、「プラハの春」の記録映像にデイ・ルイスやビノシュが映り込むところなぞ素晴らしい映像テクニックです。黒い山高帽をかぶった下着姿のレナ・オリンはポスターやパッケージにも使われてこの映画のシンボルみたいな存在ですが、本作での彼女のセクシーさはちょっと尋常ではない。人間の存在なんて「耐えられないほど」軽く歴史の激動にのみ込まれてしまうはかないものかもしれませんが、それでもそれぞれが生きた証しは必ず残ってゆくものなんでしょうね。そう考えるとラストのフェード・アウトには泣かされてしまいました。それにしても役者がいい演技を見せてくれる映画はホント上映時間の長さなど気にならないものですね。 [DVD(字幕)] 9点(2011-08-10 22:44:50) |
31. 底抜け大学教授
《ネタバレ》 第二次世界大戦後のハリウッドで大人気だったコメディ・コンビと言えば“珍道中”シリーズのビング・クロスビーとボブ・ホープ、そして“底抜け”シリーズのディーン・マーティンとジェリー・ルイスであることには異論はないでしょう。どちらも歌手とコメディアンのコンビという共通点がありますが、話芸のホープに対して顔芸のルイスという大きな違いもあります。日本では伝統的に顔芸で笑わすのは子供騙しのいちだん落ちる芸だという風潮があり、ルイスの全盛期でもあまり“底抜け”シリーズは受けなかったみたいです。それにしても、このレビューを書く前に確認するとこのサイトに“底抜け”シリーズが一本も登録されていないのにはちょっとびっくりしました。 ルイスはマーティンとのコンビ解消後ピンになってからは自ら監督・製作をしたコメディ映画を創る才能を発揮して、本作は監督第四作目に当たります。なので厳密には“底抜け”シリーズではないのですけど、“底抜け”という邦題はもちろん配給会社が勝手につけたわけなのでしょうがありませんね。 さて本作はもろ『ジギル博士とハイド氏』のパロディで、また原題を見ればおわかりの様にエディー・マーフィーの『ナッティー・プロフェッサー』の元ネタでもあります。ルイスお得意の顔芸はもちろんゲップが出るほど見せられますが、『ジギル博士とハイド氏』とは逆ではっきり言って気持ち悪い教授が変身して伊達男(?)バディー・ラブになっちゃうところが面白い。ルイスのギャグはけっこうパワフルで、ジムでトレーニングするシーンでの腕がゴムみたいに伸びる漫画の様なギャグには、あまりのバカバカしさに思わず「そこまでやるか!」と唸ってしまいました。“やっぱこれは日本人には合わないギャグセンスだよな”というのが正直な感想ですが、若いピチピチしたステラ・スティーブンスを拝めたのでプラス一点としておきます。こういうルイスの顔芸は、ジム・キャリーにまでしっかり受け継がれているんですねえ。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2011-05-10 00:45:23)(良:1票) |
32. その男ゾルバ
《ネタバレ》 遠く離れたアジアの我々にはギリシャ人のイメージは曖昧なものしかなく、せいぜい「陽気な人たち(南国だから)」ぐらいしか頭に浮かばないでしょう。実はあのバルカン半島の民でもあるギリシャ人の民族性はけっこう気が荒く、周辺の国とはしょっちゅう諍いをおこしてきた歴史があります。ゾルバも「戦争に行ったときは、捕虜を殺して女を犯した」と普通のことのように語っているぐらいですが、本作の舞台になったクレタ島というところはゾルバの様なギリシャ本土の人間でもビビるぐらい荒っぽい土地だそうです。イレーネ・パパスを村人総出で殺しリラ・ケドロヴァが死ぬやいなや身ぐるみ剥いでしまうといった蛮行は普通の感覚では嫌悪感がこみ上げてくるだけです。マイケル・ベイツが演じる英国人は半分ギリシャ人だと言うのにギリシャのことは何も知らずに島にやって来て、中途半端なインテリぶりで恋人を殺されるは鉱山開発にも失敗してしまい、結局この映画を通してなにも成就できないで島を去るわけです。ゾルバという男はインテリ作家のベイツと凶暴な島民たちの両者を仲介する使命があったのに、結局単なるピエロで終わってしまったなという印象ですね。ラストのベイツが踊るシーンは、やることなすこと全部ドツボになってしまい、「もうこうなりゃ踊るっきゃないよ!」という開き直りの儀式みたいなもので、人間は誰しもそういう心境になった経験があるんじゃないでしょうか。この映画、どうしてもゾルバのキャラに目が行ってしまうのですが、物語自体もけっこう奥が深い様な気がします。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-05-04 00:26:49) |
33. 卒業(1967)
《ネタバレ》 ダスティン・ホフマンがあたりまえだけど若い! これが実質映画デビューで、すでに30歳だったとは思えない新鮮な演技です(この人『マラソンマン』でもほとんど40歳でまだ大学生が演じてるから凄い)。今の若い人にはなかなか理解できないベンとエレインの行動だけど、あの時代のカルチャーというか若者のパワーに心を揺さぶられる人もいるはずです。ニューシネマ全盛期ですが、この映画はそのまま絵になる様なショットが多くて、マイク・ニコルズの才気には感服です。そしてキャサリン・ロス、この瑞々しさは永遠にフィルムの上に刻まれていくでしょう。 しかし数ある恋愛映画の中でも、このカップルほど長続きしそうもないと感じられるキャラは他にないのでは(笑) [映画館(字幕)] 7点(2011-04-13 01:04:05) |
34. 続・激突!/カージャック
《ネタバレ》 本作が実際のところスピルバーグの劇場映画第一作目なのですが、瑞々しい感性が感じられる良作です。とても実話とは思えないアホみたいな脱獄手段には笑ってしまいますし、映像も美しくて名手ヴィルモス・ジグモントのカメラは夕方から夜にかけての風景が印象に残りました。前半はロードムービーとしても楽しめるのですが、中盤からだんだん笑えない展開になってきます。銃社会アメリカに対するスピルバーグの厳しい眼が感じられ、民間人が勝手に犯人たちを射殺しようとするシークエンスなど、マジ怖いですね。ゴールディ・ホーンたちも所詮頭カラッポな若造なのは判りますが、彼らをどんどん英雄視してゆく民衆もバカとしか言いようがない。そこら辺が良く伝わってくるのは映画の出来が良いからですが、それにしてもアメリカ人ってやっぱ変な人たちだなと改めて感じさせられました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-11-07 01:46:44) |
35. ソフィーの選択
《ネタバレ》 メリル・ストリープは本作で二度目のオスカー受賞してから延々とノミネート・クイーンを続けていますが、この映画の演技を見ればそれも止むをえないと納得しました。それほど本作での彼女の演技は鬼気迫る迫力があり、今後も本作を超える演技を披露することは無理ではないでしょうか。もちろん賞はその年に選ばれた候補者との競争ですが、審査員の記憶にソフィーの印象が残っている限りは彼女には不利になるでしょうね。 メリルの演技は確かに凄いのですが、自分にはどうも観終わってピンとこないところがあり、それはなぜだろうかと考えてみました。本作ではほのめかす描写だけで終わっていますが、ポーランド人であるソフィーは戦前は積極的ではないにしろユダヤ人に対する差別意識を持っていました。ポーランドには歴史的にも反ユダヤ主義の根強い土壌があったことを忘れてはいけません。皮肉にもそんなソフィーはユダヤ人と一緒にアウシュビッツに送られて、そこで悲惨な体験をするわけですが、解放されてから収容所での「選択」の記憶に苦しむだけでなく、自分も反ユダヤ主義の一員だったという原罪と向き合ってさらに苦悩したはずです。映画ではその原罪との葛藤する苦しみが無視されているので、ケヴィン・クラインと心中する意味が曖昧になってしまった気がします。 この映画は、単純に理解することのできない重いテーマを持っています。 [ビデオ(字幕)] 6点(2010-09-29 10:26:23) |
36. ソイレント・グリーン
中学生ぐらいのときに初めて観ましたが、E・G・ロビンソンが安楽死するときの全周スクリーンに美しい風景が映される場面で、大阪万博で観たどっかのパビリオンの映画みたいだと思ったことを鮮烈に覚えています。この映画の時代設定は西暦2023年ですが、E・G・ロビンソンが演じるソルは、実は自分とほぼ同年代の生まれであることに再見して気がつきました。ちょっとブルーな気分です。彼はこの後すぐに亡くなりますが、この映画が101本目の出演作でした。101本も映画に出演する俳優は今後でてくるのでしょうか。映画の出来は落ちの強烈さの割にはグダグダなのですが、未来予測としては地球の気候が暑くなっているということだけは的中しています。現在は地球温暖化が深刻な問題ですが、70年代当時は逆に氷河期が来て人類が滅亡すると予想する学者が多かったのですよ。 [映画館(字幕)] 6点(2009-06-04 22:21:22)(良:1票) |