1. 嘘八百 なにわ夢の陣
《ネタバレ》 ネタバレしています。ご注意ください。 おそらく当初の骨董詐欺計画は、相対する2つの秀吉博どちらかから多額の金銭を騙し取ることだったと思われます。しかし波動画家から自身の作品との物々交換の申し出を受け入れた時点で、小池の中で品物はおろか詐欺の目的まですり替わった気がします。金銭による売買であろうと物々交換であろうと基本は同じ「等価交換」です。等価でないから詐欺というわけ。チームかわうそ堂が創り上げた鳳凰椀と、霊感商法の波動画家の絵画。どちらも同じ「紛い物」。あるいは実態のない幻。小池に下心(信者に画を高値で売りつける魂胆)が無かったとは言いませんが、この時点では全うな等価交換であり売買だったと考えます。小池、佐輔、波動画家それぞれの思惑に違いこそあれ、共通するのは「浪漫」でした。それは偽物を本物に、幻を実物に変えること。秀吉七品幻の鳳凰然り、まだ芽が出ぬ芸術家の人生然り。波動画家の方は一足早くその浪漫を現実のものとしました。次は佐輔の番。でも「今すぐに」という訳にはいかないため、物語の都合上波動画家の画を「適正価格」で手放す必要があったのでしょう。その額100万円。この売値は今現在の贋作作家・佐輔の値打ちとも言えます。佐輔が陶芸家として世間から認められた時、作品の値段は10倍いや100倍にも跳ね上がり、鳳凰椀も本物に変わるのだと思います。 元々本シリーズは『オーシャンズ11』や『コンフィデンスマンJP』と同カテゴリーに類される「営利目的の犯罪エンターテイメント」でした。しかし本作からは「営利目的」や「犯罪」の冠が取れた気がします。いや「実体が定かでない幻の品」を「世間に本物と偽った」から「犯罪」に違いはないのかな。歴史学ってそんなものだという気もしますが。いずれにせよ「胡散臭い骨董業界」の「丁々発止の騙し合いバトル」から「まだ世間から認められていない芸術家」であっても「創作へかける情熱に嘘はない」へ物語の焦点がシフトしました。この変化が『ルパン三世』シリーズにおける『カリオストロの城』にあたる「例外」なのか、あるいはギャグ漫画からバトル漫画へ路線変更した『キン肉マン』タイプの変化なのか、次作を観てみないことには判別がつきません。個人的には虚々実々の詐欺合戦の方が好みですが、前作の感想でも触れたとおり狭い骨董業界内で詐欺を繰り返すのはそもそも無理がある設定です。この路線変更は必然かもしれません。ドラえもんが秘密道具で、ハットリ君が忍法で困りごとを解決するように、小池・佐輔コンビは骨董詐欺で問題を解決する。面白いじゃないですか。大人のブラックファンタジー。願わくは、佐輔が贋作作家のまま終わりませんように。 [インターネット(邦画)] 6点(2024-02-09 20:26:33) |
2. 宇宙人のあいつ
《ネタバレ》 ネタバレあります。ご注意ください。 主要登場人物それぞれに「課題」が設定されていました。長男・夢二は「結婚」、長女・想乃は「未婚の妊娠」、三男・詩文は「元級友からの復讐」、そして次男・日出男こと土星人トロピカルは「故郷に誰を連れて帰るか」。長男の件は兎も角も、残り3人の課題はかなりシリアスな部類。どう決着をつけるのかと固唾を呑んで見守っておりましたが肩透かしを食らいました。三男は何故和解できたのか謎ですし、長女の案件についても対応が的外れ。戦っているようで、実は全然戦っていません。極めつけはメインストーリーである次男の課題。物語冒頭で「結果」が開示されていました。『コロンボ』『古畑』スタイルのミステリーならいざ知らず、いきなりネタバレとはこれ如何に。このケースで考えられるのは「意外な真相」パターン。てっきりビッグ鰻を家族として連れて帰るものと予想していましたが大外れでした(そういう伏線ありましたよね)。つまり日出男ことトロピカルの課題は何も解決していません。振り返れば長女だって本当にそれでいいの?という決着。そう、本作の課題解決スタイルは「問題に正面から向き合わない」でした。細かいエピソードなら「サイドミラー破壊事件」、大きな括りなら「家族のかたち」にもこの法則が当てはまります。大人4人が食卓を囲み、何かあれば家族会議。微笑ましいと感じる一方、どうにも心がざわつきます。日出男が抜け、想乃の子が加入する未来。この「家族のかたち」を維持していくのが本当に幸せなのでしょうか。家族に縛られていたら自分の人生を生きられないのでは。特に心配なのが長男・夢二です。両親を亡くしてからは家業を継ぎ、大黒柱として一家を支えてきました。それが彼のアイデンティティ。「家族のかたち」は「幸せのかたち」でもあります。でも20年、30年先を見据えたらどうでしょう。いつかリセットボタンを押す日が来るかもしれない。その時、夢二は何歳ですか。勉学、恋愛、就職、結婚、出産、育児。かつては半ば「義務」であったこれら人生の課題には「適齢期」があり「家族」の形式維持に必要でした。その点、現代日本で必修課題は無くなりました。何をして、何をしないか「自由」です。ただしその結果は引き受けなくてはいけません。まさにトロピカルには自身の選択に対する清算が待っている訳ですが。私は当初夢二の課題を軽視しましたが、本当は一番真剣に取り組まなければならない、切羽詰まった課題なのかもしれません。 役者の皆さん芸達者揃い。キャラクター造形も素敵ですしファミリードラマ&SFコメディとして上質だったと思います。構造は「古き良き日本の家族、その愛と絆に笑いを添えて」が包皮、「日本人の価値観変化と社会が抱える課題」が中身と判断します。外側は口触りが良く楽しいので、そこだけ食して気分よく終わるもよし、丸ごと噛み砕いて芯に隠された苦みまで味わい尽くすもよし。公式HPをみると前者推奨のような気もしますが、監督としては当然後者を望んでいるはず。違いますかね?伏線未回収や問題解決のポイントずらしは故意としか思えず、私は監督を「一筋縄ではいかない曲者」とお見受けしました。でも「考えすぎ」も否定できません。いずれにせよ私の力量では本作のみで監督の正体を見極めるのは困難であり、予想外に「難しい映画」だったという評価です。 [インターネット(邦画)] 7点(2023-10-04 18:55:56) |
3. ウェディング・ハイ
《ネタバレ》 大賞受賞、全国制覇など偉業を成し遂げなくとも、人はいとも簡単に浮かれます。最も手頃で強制力と即効性があるのが飲酒。そして高い罹患率を誇りかつ重症なのが結婚・出産であります。人生のターニングポイントで発症しがちな流行り病と言えます。消える理性、変わる常識。「つける薬なし」の「浮かれ病」はコメディのモチーフとして格好です。この奇病にかかった人たちを憐れむでも蔑むでもなく、生暖かな気持ちで見守れるのは、みんなこの病の罹患経験者だからかもしれません。 脚本は今やドラマ畑でも大活躍の芸人バカリズム。バカリらしい人間観察眼は本作でも健在で、「あるある」から重箱の隅をつつく嫌らしい指摘まで、思わずニヤリとさせられる緻密な人物造形に感心しました。ブライダル業界への批判(ツッコミ)もチクリ。でもそんなマイナス面も含めて、滑稽で愛おしいのが人間という主張でしょう。 浮かれ病の異常さを際立たせるのが、健常者=沈着冷静なウエディングプランナーという構図でした。彼女が大いに困り、奮闘するのを応援するのが物語の中心線と考えます。しかし感情移入できません。私が「愛しさと切なさと心強さ」を知らぬ薄情者だからなのか、あるいは篠原涼子よりDAYO姐こと市井由理派だったからなのか。いいえ、中越も違う病を発症していたからです。お客様は神様病。正常な判断ができない点では浮かれ病と同じです。「NOと言わないウエディングプランナー」一見聞こえは良いですが、「絶対に手術を失敗しない外科医」や「警報が出ても祭りを中止しない主催者」に置き換えれば、ヤバさの本質が分かるというもの。無理難題に困りもせず見事に対応してしまうあたり「ハケンの品格」の大前春子のようでもありました。いずれにせよ、感情移入するに足る魅力が主人公には無かったという判断です。そういう意味では個の力で不足するキャラクターの魅力を補える俳優(バカリ組の中なら、安藤サクラや永野芽郁が該当)であれば、また違った印象になった可能性はあります。 オチについては、センスのある人ほど陥りやすい「逆に、あえての、王道の下ネタ」だと思いますが、完全にすべっていました。ちゃんと気の利いた面白いオチを付けられる人なので、ちゃんとしてください。猛省を促します。 [インターネット(邦画)] 6点(2023-08-17 18:29:43) |
4. ヴィレッジ(2023)
《ネタバレ》 しんどい。兎に角しんどいです。オチも物語の構成的には綺麗ですが、偏見や差別を助長しかねない結末なので滅入ります。本作では袋小路・視野狭窄の象徴として「村」が選ばれていました。しかし、田舎が悪い訳でも、廃棄物処理施設が悪い訳でもありません。問題は器ではなく中身の方。お間違いなきようお願いします。 主人公は能面を付けて心を落ち着けました。彼女の魔法の言葉付きですから効果もてきめん。応急措置的に有効だと思いますが、外界から遮断され内に籠もる副作用もありそうなので注意が必要です。個人的には空を見上げるのがオススメ。飛行機から地上を眺めるのもいいでしょう。自分の悩みがちっぽけだと錯覚させられればしめたもの。解決策が見つからなければ、一番後悔しなさそうな手を打って後は運任せです。もっともそれが出来たら苦労はないんですけど。 それにしても何でもっと深く掘らなかったのでしょうか。あるいは燃やすとか。本当は見つけて欲しかった?でもそれなら発覚後は潔いはずです。隠蔽に慣れ過ぎたのか、あるいはゴミは埋めるのが常識だからでしょうか。いずれにしても不条理も慣れれば条理に変わるということ。理不尽に囲まれながら正気を保つのは困難を極めます。簡単に腐る。だから環境って大事。本当に大事です。変えられぬのならば、逃げるより他ありません。それがエンドクレジット後に示された「解決策」であり「希望」です。遣りきれませんが。 [映画館(邦画)] 7点(2023-05-07 08:27:57)(良:1票) |
5. 牛首村
《ネタバレ》 呼び名のみで実体のない都市伝説「牛の首」にどんな肉付けをするか?決まり事など一切無いフリーな課題に対して、ほぼ模範解答と言っていい状況設定を考えたと思います。畜生腹、口減らし、七つまでは神のうち。牛の首を被る意味。なるほど、なるほど。あの被り物は大ヒットアニメ『鬼滅の刃』の猪之助にも影響を受けているのでしょうか。いずれにしても『恐怖の村』シリーズの中では一番設定に「整合性」がある気がします。ただし、だから映画として出来が良いとならないのがホラーの難しいところ。かつて存在した忌むべき風習が現代の私たちにどんな厄災をもたらすのか。肝となる「呪い」のメカニズムについての訴求が弱く、全編緩めのファンタジー処理でお茶を濁したのは如何なものでしょう。「今度はあなたが助けてあげる番」は情に訴えかける良い台詞ですが、ハッピーエンドが確定してしまうためホラーではNGと考えます。折角上手い設定を考えたのですから、メインのストーリーでもう少し頑張って欲しいと感じます。ちなみに、ザ・たっち、マナカナ、ダイタク、おすぎとピーコなどキャスティングでもっと楽しめたと思うのですが悪ふざけが過ぎますかね。 [ブルーレイ(邦画)] 5点(2022-08-07 23:52:38) |
6. ウィッチ
《ネタバレ》 コミュニティから弾かれ孤立する家族。唯一の拠り所は信仰心。しかし柔軟性なく凝り固まった心は、最も大切にしなければならない家族の絆を断ち切っていく。行き着く先が悲劇なのは必然でした。王道のオカルト様式でありながら、スーパーナチュラル確定でなく、精神疾患(追い詰められた主人公が脳内で作り出した架空のお話)の可能性を感じさせるあたり作品の奥行きを感じさせます。派手さはないものの、ホラーとしては一級品です。恐ろしいのは魔女か、悪魔か、はたまた人の心か。 [インターネット(吹替)] 8点(2022-02-10 22:50:19) |
7. 嘘八百 京町ロワイヤル
《ネタバレ》 『コンフィデンスマンJP』のジャンルを骨董陶芸作品に絞り、人情噺に特化した感じ。小池と佐輔の掛け合いが面白く(贋作提供金額の値切り交渉に爆笑)、サブキャラクターの皆さんもレギュラー固定でファンには嬉しい限り。ゲストで毎回マドンナを配せば『男はつらいよ』的なシリーズ化も望める優良なフォーマットだと思います。ただし懸念材料もいくつか。まずは佐輔の処遇。前回贋作づくりから足を洗う事を誓っており、今回その約束を反故にした点をどう評価しましょうか。『人助け』『悪徳業者の成敗』が理由であれば良しとしますか。あるいは『本物を超える贋作』に価値を見出しますか。また、骨董の業界自体が狭そうなので、そう何度も似たような詐欺が通用するとも思えません。これは『コンフィデンスマンJP』の江口洋介、あるいは『一休さん』の桔梗屋さんのように敵役をレギュラー化する事で解決できるかもしれません。いずれにしても気軽に観られる貴重な『大人向け喜劇』であり、更なる続編を希望であります。 [インターネット(邦画)] 6点(2021-11-09 19:58:30) |
8. ヴィヴィアン武装ジェット
《ネタバレ》 島田角栄監督作品は『PLAN6 CHANNEL9』で"体験済み"。氏のやり口はある程度分かっていたつもりですが、それでも本作の"やりたい放題ぶり"にはあ然としました。まともな感性で正面から向き合うと、精神をやられる可能性大です。ブラック&シュール&チープ&クレイジー。これぞサブカル系ナンセンスラブコメディの極地でありました。邦画史上最も有り難みのないおっぱいが拝める特典つきです。基本は主演を務めた鳥居みゆき嬢の持ちネタそのままと思っていただければ間違いなく、彼女の笑いを理解出来る方なら楽しめるでしょうし、そうでないなら、あるいは彼女のネタを知らないのであれば、鑑賞回避が無難と考えます。何らかのメッセージを汲み取ろうと努力するだけ無駄な気がしますが、深読みしたり、共感したりするのは自由ですので、勇気のある方(もしくは暇な方)はチャレンジしてみるのも一興かと思います。ただしちゃんと現世に戻って来られる保証は出来かねますのでご注意ください。結末だけは良かったと思います。あのラストは紛れもなく「救い」でした。大体3点満点の映画と思ってくださればよろしいかと。 [インターネット(邦画)] 5点(2021-09-29 17:14:30) |
9. ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷
《ネタバレ》 実在する超有名『お化け屋敷』をモチーフに、史実の中に噂話や俗説を織り交ぜて創作したオカルトホラー。とはいえ完全オカルト仕様ではなく、精神疾患や薬物中毒による“妄想説”は排除していません。このあたり『解釈の余地を残した』のか、実在する建物ゆえ『関係者に配慮した』のか。いずれにせよ『実話』要素が足枷となり、自由な発想を阻害しているような気がしてなりません。『歴史もの』や『ヒューマンドラマ』ならいざ知らず、ホラーやサスペンスの『実話』ってホント嫌いです。幽霊が出る訳も、増築し続ける理由も、なるほど納得できるもの。でも、だからこそ意外性がなく、予想を裏切らず淡々と進む物語に退屈しました。映画の出来としては、たぶん『普通』レベル。一般的には『普通』なら『可』でしょうが、こと『ホラー』映画においては『不可』と考えます。あまりにも退屈したので、屋敷が崩れ落ちるシーンでは『8時だよ全員集合』の例の音楽を脳内再生して勝手に楽しんでしまいました。(以下余談)この素材をオカルトで仕立てるのは前述したとおり『普通』なので、別の切り口も考えてみては。たとえば莫大な金が動いている部分に焦点をあて、裏社会の資金洗浄だったり相続税対策だったり、現実的で生々しい解釈を創作してみるのも面白いのではないかと。映画化向きの極上素材なのは間違いないので『普通のホラー』では勿体ない気がします。 [インターネット(吹替)] 4点(2020-09-15 18:54:03)(笑:1票) |
10. うしろの正面<OV>
《ネタバレ》 ≪≪≪ネタバレしております。また内容的に妊婦の方はご覧にならない方がよろしいと思います。ご注意ください。≫≫≫ 午前3時33分に『かごめかごめ』という言葉を動画検索してはならない~。本作は、童謡『かごめかごめ』にまつわる都市伝説に着想を得たオカルトホラー。呪いの動画を目にした者は精神を病み、不幸が降りかかります。動画視聴で呪いにかかる点は『リング』を、白塗り女が襲い掛かってくるあたりは『呪怨』の伽椰子を彷彿とさせるもので、邦画2大ホラーの“イイトコ取り”です。しかし、だから優れたホラーになるかというと話は別で・・・。それでは内容を整理してみましょう。本作では、3つの事案が提示されます。①妊婦が夫に腹を裂かれ死亡。②妊婦が自ら胎児を殺害③妊娠中の主人公もお腹の子を奪われる恐怖に苛まれる。③では、夢の中で白塗り女が登場し、主人公の胎児を奪おうと襲ってきます。女は死産を受け入れられなかった母親。子への強い執着心が“呪いの元凶”と示唆されます。しかし①と②のケースでも、白塗り女が出現している保証はありません。また②の妊婦は、①で死んだ妊婦に怯えていました。そこから導き出される仮説とは、“動画は『呪い』ではなく『催眠』や『暗示』の類である”ということ。『かごめかごめ』動画には、出産にかかる不安を刺激し、増幅させる作用があると推測されます。白塗り女は、主人公が頭の中で創り出した“出産に対する不安”の象徴。つまり本作に貞子や伽椰子のようなホラークイーンは存在しないワケです。もっとも、人を殺めるほど強力な暗示をかけられるなら、もはや“呪い”と呼んで差支えない気もしますが。ただし、この仮説には弱点もあります。①では妊婦自身ではなく、夫が凶行に及んでいること。③では霊媒師が呼ばれた際、かなり強力な霊体の存在がうかがわれたこと。これらの疑問には、“夫婦は一心同体であった”、“霊媒師はインチキで、ナポレオンズの大ファンであった”との解釈で乗り切ろうと思います。とはいえ、白塗り女=本作における貞子と考えると相当面白いんです。白塗り女=動画の製作者=ユーチューバー。邦画ホラー史上初の快挙ですから。白塗り女の口から「チャンネル登録お願いします」の一言でもあればと悔やまれるところです。以上、私なりにちゃんと時間をかけて考えてみましたが、これは黒沢清作品のように「考察せずにはいられないほど作品に魅力があった」からではなく、「つまらな過ぎたので勝手に解釈で遊んだ」パターンのヤツです。往年のプロレスファンの皆様には「剛竜馬の試合と同じ」と言えば伝わるかと思います。ショアッ! [インターネット(邦画)] 2点(2019-10-30 21:44:33) |
11. 嘘八百
《ネタバレ》 (ネタバレあります。ご注意ください) 中井・佐々木が悪徳骨董商に仕掛けた罠は、詐欺の罪に問われるでしょうか?知らぬ存ぜぬ(所謂善意の第三者)が通用するほど、司法は甘くないでしょう。少なくとも、佐々木が自作した陶器という物的証拠もあるワケですし。ポイントは、騙された側が訴え出るかどうか。後日談となるミニエピソードを見るにつけ、どうやら告発する気は無さそうです。もちろん、そこまで折り込み済みの詐欺計画に違いありません。つまり、後日贋作は(当然)見破られるが、それでも近藤正臣は黙ると。これは騙し取られた1億800万円よりも、鑑定士としての信用や沽券の方が大切という意味。言い換えるなら、これまで(そしてこれから)贋作を掴ませて儲けてきた(儲けるであろう)高の方が、騙し取られた額を遥かに上回るということ。なんとまあ、恐ろしい世界でしょうか。それに欲に目が眩むという状態も(中井は体験済ですね)。大金をせしめ、因縁の相手に一泡吹かせて溜飲を下げて終わりではなく、佐々木の陶芸家としての将来へ目をむけた未来志向の落としどころも良し。おそらく佐々木が背負った十字架は後々彼を苦しめると思いますが、コピーではなく本物を越えるオリジナルを目指した点に、陶芸家として死なずに済んだ、というか僅かな救いがある気がします。物語の構成や人物造形はシンプルで分り易く、役者も達者揃い。気楽に観られる娯楽作品として充分な価値がある映画と考えます。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2019-04-05 21:57:21) |
12. うめく排水管
《ネタバレ》 白塗りのラブラドールレトリバー似の女が躍り狂い、シンクでシンクロナイズドスイミング。未見の方は何を言っているのか分からないでしょうが、私も分かりません苦笑。ホラーのつもりで鑑賞しましたが、もしかしたら全く新しいジャンルの映画かもしれません。原作者&監督は、あの『富江』と同じコンビ。相性が良いのやら悪いのやら。出口はおろか、入り口さえ見えないストーリー、摩訶不思議なアプローチ、イマジネーションの集合、斬新すぎる演出、素人同然の演技、何故そこで歌う主人公。結局何なの?純愛がゆえの悲劇なのかな。戸惑いと苦笑の中で、あなたは、新しい自分を見つけるかもしれませんし、見つけないかもしれません。はい、もうお気付きでしょうか。もっともらしい言葉が並んではいても、何を言っているのか分からないでしょう。この文章には、中身がないのです。実はこの映画にも同じ匂いを感じるワケであります。あくまでも、おそらく、ですが。奇作、珍作、カルトの仲間。有名映画監督の意欲作といわれても、専門学校生の卒業製作といわれても、納得してしまいます。新しい体験をしてみたい映画上級者の方は、本作に挑戦してみるのも一興ですが、普通にホラーを楽しみたいのであれば、レンタルDVDのホラーコーナーで目をつぶって選ぶ方をオススメします。以下余談。本作では配水管にお湯を流して詰まりを直そうとしておりますが、温度にはくれぐれもご注意を。熱湯を流すと塩ビ菅が変形してしまい、逆効果もいいところです。 [インターネット(邦画)] 3点(2018-10-15 19:43:43) |
13. ヴィジット
《ネタバレ》 (激しくネタバレしておりますので、未見の方は閲覧ご注意ください……) サスペンスに慣れた人なら真相を見破るのは難しくありません。伏線と呼ぶにはあまりに“あからさま”なフリばかり。それでもなお、本作に“観る価値”があるのは、人物造形が見事だからです。老夫婦は、ただの狂人、あるいは殺人鬼でしょうか。いいえ、違います。確かに病んでいますし、社会規範や善悪の判断がつかなくなってはいますが、悪意の人ではありません。偽爺の言から汲み取るに、孫のいる人生を羨み、カウンセラー夫婦の身分を盗んだと。限定1週間、孫のいる人生を味わうため。子供たちを殺める気などハナからありませんでした(オーブンの奥を拭いて~のシークエンスが、子供たちへの殺意が無いことの証拠です)。それに事件を隠ぺいする気力も能力も備えていません。ですから見方によっては、2人の最期は巧妙な「自殺」とも見て取れます。子供たちの殺意が自らに向くように仕向けたと。姉弟2人のトラウマ解消のプレゼント付き(もちろん結果論として)。物悲しい後味と僅かな救いが本作の魅力と解します。 [DVD(吹替)] 7点(2017-03-25 23:24:34) |
14. WOOD JOB! ~神去なあなあ日常~
《ネタバレ》 新しい環境で、初めての仕事を、人間関係ゼロの状態から、身に付ける。勇気は新社会人ですから当然の事とはいえ、本当にキツイ作業です。実は私もこの4月に異動となり、彼とほぼ同じ状況と言えます。ですからその気持ちは痛いほど分かるつもり。私の場合、新人ではないので仕事の質に対する要求は彼よりも厳しいでしょうが、その分職場の人間関係ではアドバンテージがあります。やはり人との繋がりは、最も重要な要素。そう、どんなに大変な仕事でも、人間関係さえ良好ならば乗り切れるのです。乗り切れるはず。乗り切れるといいな、ですかね。正確には。主人公には、強烈な先輩が居たワケですが、きちんと信頼関係を築けた事が厳しい研修を遣り遂げられた最大の要因でしょう。ストレスを受け流す技術と、対人スキルの高さは、間違いなく彼の長所。私には不足している能力なので、見習いたいものです。仕事の厳しさ、苦しさを知り、その一方で喜び、誇りを知り、そして居場所が出来たのならば、それに勝る幸福はありません。駅で与喜と抱き合う勇気を見て泣きました。私も勇気のように、職業人としても、人間としても、成長したいと思います。おちゃらけ要素は不快ではなく、林業に対する理解とリスペクトもしっかりと感じられる点は好感度高し(伊藤のチェーンソーの扱いには感心しました。手元に集中するのではなく、周りに気を配るのですね)。私の、今現在の個人的な境遇もあるでしょうが、実に沁みる映画でありました。ただ、一点注文を付けるとすれば、勇気と直紀の別れの場面。「さようなら」と「さようなら」の往復は清々しいですが、少々味気ないです。『愛羅武勇』タオルでの“告白”の破壊力は抜群なので、直紀には「さようなら」の中に混ぜて一言「ばかやろう」くらい言わせても、ラブストーリー的にはアリだった気がします。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2015-05-15 00:59:14)(良:1票) |
15. ウォンテッド(2008)
実写だと嘘臭くって適いませんが、脚本・演出はそのままにスタジオ4℃あたりでアニメ化してくれたら傑作になったのではないかと思われます。日本語吹き替え版は『バック・トュ・ザ・フューチャー』の織田裕二・マーティ以来の衝撃でした。 [地上波(吹替)] 5点(2014-10-27 20:22:48) |
16. ウルヴァリン:X-MEN ZERO
《ネタバレ》 スギちゃんより100倍ワイルドなヒュー・ジャックマン演ずる人気キャラクター、ウルヴァリンの誕生秘話。踊る筋肉、揺れるモミアゲ、今日も切れてるベアークローを存分に愛でられます。ミュータントの特殊能力は単純なものが多く、格闘アクションは見応えたっぷり。ファンは勿論ですが、一見さんでも問題ありません。むしろ本編『Xメン』シリーズより一般向けで観易いかと思います。ところで気になったのはウルヴァリンの肉体再生能力。合成超人の能力をみる限り、もしかして首くらい刎ねられても大丈夫なのでしょうか?驚異的な“新陳代謝”でウルヴァリンの不死身ぶりを説明するならまだしも、頭が胴体から離れても生きていらたらヴァンパイアと変わりません。ミュータントを人間と捉えることがXメンのアイデンティティ。自然の理から外れない匙加減が必要と感じました。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2013-09-15 21:50:00)(笑:1票) (良:1票) |
17. 宇宙人王(ワン)さんとの遭遇
《ネタバレ》 素直な人、騙されやすい人ほど楽しめる、なかなかイカしたSF映画。イカにも低予算なつくりは、日本でいえば河崎実監督作品に似ている気がしました。イカツイ政府関係者の見立てを信じるか、はたまた中国語を喋る謎の宇宙人ワンさんの言い分を信じるか、スミズミまでよく観察しながら鑑賞することをおスルメします。ワンさん最後の言葉に痺れてくだサキイカ。これはB級映画の中でもアタリメの部類。設定上、幾つか致命的とも思える粗が存在しますが、スルーしてはイカがでしょう。 [DVD(字幕)] 6点(2013-05-12 19:56:37)(笑:1票) (良:1票) |
18. 宇宙人ポール
『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ』の主演コンビには絶対の信頼を寄せているものの、監督がエドガー・ライトでは無いという1点において、いくばくかの不安を抱いて鑑賞に臨みましたが、杞憂に終わりました。いつもの映画愛溢れるパロディ&オマージュに嬉しいやら胸を熱くするやら、大変楽しいひと時を過ごす事が出来ました。特に素晴らしかったのが脇役たちです。宗教女にお馬鹿エージェント2人組。愛すべきサブキャラクターが活躍するコメディにハズレはありません。『僕らのミライへ逆回転』もそうでしたが、こういうお遊びに付き合ってくれるシガニー・ウィーバーには本当に感謝します。そしてお疲れ様でした。ただ、冒頭に挙げた2作品と比べるとやや物足りないと感じるのも事実。ポールとの友情、グレームと宗教女のロマンス等、ドラマパートの処理が淡白だった気がします。喩えるならそうめんのようなアッサリ感。もちろん悪いワケでは無いのですが、観る者の心に楔を打ち込むような“引っ掛かり”が欲しいと思ってしまいます(当日の夜初めて食した某○古タンメンのような忘れられない何かが欲しい。好みではなかったけれど、あの味は忘れません。)そういう意味では、みんな“物分りが良すぎ”でした。『E・T』未見。『未知との遭遇』はどんな話か忘れた。そんな自分でも楽しめたのですから、意外と間口の広い作品かもしれません。本作がキッカケで『ショーン~』や『ホット・ファズ』を観てくれる人が増えると嬉しいです。(2011年9月18日。したまちコメディ映画祭in台東『映画秘宝まつり』・浅草公会堂にて鑑賞) [映画館(字幕)] 8点(2011-09-19 21:28:38)(良:1票) |
19. 運命のボタン
《ネタバレ》 (いきなりネタばれあります。ご注意ください) 物語のポイントは“ボタンを押すか否か”ではなく、“夫婦はみな、子を救うために配偶者の命を奪う選択をする”という部分にあると考えます。キャメロンがボタンを押した瞬間と、別の被験者が妻を撃ち殺したタイミングが一致している事から、まるでボタンが別件の射殺の引き金になっている印象を受けますが、違います。箱に送信機能が無いのは確認済み。ボタンは、被験者夫婦の一方を殺す羽目になるスイッチでした(正確には、ボタンを押した者が配偶者に殺される)。宇宙人は多分こう考えています。自分の幸福のために他者に犠牲を強いるエゴイストならば、遺伝子的に無関係な配偶者よりも、血の繋がりのある子供の利益を優先させるだろうと。残ったクズたちは従業員として、こき使えばいいと。でも待って欲しい。最後の選択は、子供をトラブルに巻き込んだ親の罪悪感や責任感がさせること。我が身可愛さの選択とは違います。(もし子の障害が先天性のものなら、障害が消えるとしても夫は妻を撃ったりしない)。それに配偶者を失う事がどんなに辛いことか。血縁でなくても、自分の命と同じ、いやそれ以上の価値を認められる命があるのです。人間には。殺される妻だけでなく、殺した夫もまた苦しみます。だからもう人の弱い心に付け込むような調査は止めて欲しい。利己主義がいけないのなら、地球上全ての生き物の存在が否定されます。目先の欲に溺れてしまうのは愚かだけれど、我が身を犠牲にできる良心を持っているのも人間です。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-08-31 19:26:16)(良:1票) |
20. 上島ジェーン
《ネタバレ》 このロングコントの見所は、上島のグダグダ感タップリの言い訳です。ですから何だかんだで最後の最後まで上島には海に入らないで欲しかった。で、サーファーたちは荒れ狂う海に挑んでいって、最後は揃ってご臨終と。こんなオチで如何? [DVD(邦画)] 4点(2010-09-25 19:35:05) |