1. 007/慰めの報酬
《ネタバレ》 この映画で、ボンドはあらゆる感情を押し殺した虚ろな姿で描かれている。表情をまったくかえずに女とキスし、悲しみの表情をまったくみせずに死んだ友を、ゴミ箱に捨てるという仕方で悼む。同様に、アクションやストーリーの点でも、この映画は徹底的に虚ろだ。観客にシーンを味わう余裕を与えないほどに切迫感をもって重ねられるカット。したがって、この作品をみた観客は、虚ろなボンドに共感するには忙しすぎるカット割りのせいで、あらゆる感情移入が中途半端になったまま、非常に煮え切らない鑑賞感を抱くことになるだろう。事実、この作品は一つのスパイものとしてみれば非常に煮え切らない作品だ。しかし、もしこの作品が、ボンドの虚ろさを描くのに、一つ一つのシーンではなく、作品全体を用いようとしたのであれば、このなんともいえない中途半端な鑑賞感は、この作品の狙い通りだったことになる。また、歴代のボンドのなかで、突出してクールなダニエル・クレイグの持ち味を生かすという点では、この作品は007ものとしては、ひそかに記念すべき一作になっているのかもしれない。 [映画館(字幕)] 7点(2009-02-14 19:30:28) |
2. ダーウィン・アワード
超人的なプロファイル能力をもつ主人公の見せ場もさることながら、文学趣味の講じたプロット展開もなかなかの味わい。変な人たちの変な死に方が分かるのもたのしいし、ジュリエット・ルイスがなぞのセクシーな役柄を担当しているという意味でも掘り出し物の佳作。予定のない休日の夜には最適の一本でしょう。 [DVD(字幕)] 7点(2009-01-06 15:16:43) |
3. 太陽(2005)
戦争で引き裂かれた愛はたくさんあるだろう。でも、本当の愛は、そんな劇的なものではなく、むしろ何の変哲も抑揚もない毎日に耐えるところで静かに紡がれるものではないだろうか。この映画の統治者の姿は、いつも通りの日常に身をおくという、人間にとって実は最も困難な生き方を表現しているように思われた。統治者だけが、戦時下の日本において、一人だけ「変わり映えのしない日常」を生きていた。だから、彼だけが、敗れゆく日本の姿を、唯一の仕方で感じ取っていたはずなのだ。それゆえに、ソクーロフ監督の映像の中の日本は、日本人にとって誰も見たことのない雰囲気と色彩に満ちている。この映画はドキュメンタリーではないのだから、歴史的な考証が正しいとか正しくないとか、昭和天皇は本当にこの映画に描かれるキャラクターみたいな人だったのかとか、なるべくそういう考え方から離れて観てみるとより楽しく見れる。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2008-07-25 23:25:55) |
4. 大帝の剣
久々に「くだらない!!」と笑いながら胸を張っていえる作品であったわけで、その意味では「よくやった!!」と拍手を献じてもいい気がする。最後のオチもよかったので+2点。ところどころ内的なストーリーの整合性が崩れてさえなければ、語り草のC級映画になっていたかもしれないところが惜しい。 [DVD(邦画)] 6点(2008-05-15 16:04:03) |
5. ただ、君を愛してる
宮崎あおいの稀有なキャラクターがなしえた奇跡的な映画。本当に大切なのは、玉木宏演じる主人公の映画の後の生きかただと思うけど、それをいっても始まらない。ここは、満足しておくべきところだろう。 [DVD(字幕)] 7点(2007-11-05 22:38:05) |
6. ダメジン
《ネタバレ》 この映画のすごいところは、「俺はなんか大事なことを見落としてしまったのではないか?」という感情を観客に抱かせてしまう所ではないかと思う。いろんなところにいろんなものがひそんでいて、こういう映画をみると、世界を見る目が鍛えられる気がするのは僕だけだろうか? [DVD(邦画)] 7点(2007-07-16 20:56:18)(笑:1票) (良:1票) |
7. 007/カジノ・ロワイヤル(2006)
《ネタバレ》 007の中では、愛する女性を失う悲しみを描いている点で出色な訳だけれど、これも「スパイダーマン」シリーズの成功にあやかったものだと思うと、すこし、ワンパターンにも思える。しかし、アクションは相変わらずパワフルで、てんこもりジェットコースタームービーとしてはよくできている。エヴァ・グリーンの化粧を落とした時の美しさがとても素晴らしい。 [映画館(字幕)] 8点(2007-01-14 13:48:33) |
8. 丹下左膳 百万両の壺
《ネタバレ》 大傑作とはいえないにしろ、面白く出来てますよ。僕もオリジナルをみてから本作をみましたが、会話の妙、間は踏襲しつつ、アクションの面では新しい魅力も加わっているし、また麻生久美子も見れたし、満足な一本でした。オリジナルと比べるとカメラの感覚というか、人物との距離感が本作の方が遠かった気がします。それがどういう効果を生んでいるのかは知りませんが、すくなくとも、オリジナルのような近さで人間を撮ることに感覚として抵抗があるのだなぁと思いました。時代でしょうか。 [ビデオ(字幕)] 7点(2006-10-01 18:39:50) |
9. タイヨウのうた
ストーリーなんかどうでもいい。ここまでの密度でドラマを描いたことに脱帽です。登場人物の奥行きがとてもしっかり描かれている。はじめのころのあんまり会話が弾まないときの二人のシーンとかやられました。純粋というよりは骨太にリアルな映画だと思った。いい。 [映画館(字幕)] 9点(2006-07-07 01:47:59)(良:1票) |
10. タイムレスメロディ
「かってにはいってごめん」「コーヒー飲んでいきなよ」「ううん。帰る」「飲んでいきなよ。飲んだらすぐにかえっていいからさ」 だれにでもなんとなく、1人になりたいときがある。誰とも話したくないときがある。相手が1人でいたいなと思うってるだろうとき、こういう接し方があるのだとこの映画を見て学んだ。 緩やかに確実に変化を起こしていく時間。とどまりたくてもとどまれない場所の美しさが、伝わってくる。物語としては目立った所はないが、なんか雰囲気があって、それだけでも見る価値はあるような気がする作品。 [ビデオ(字幕)] 7点(2006-01-18 01:04:50) |
11. ターンレフト ターンライト
《ネタバレ》 コ、コレハ…。主人公の二人が(かなりありえない状況で)再会したシーンで映画は終わるけど、僕が心配なのはこの二人、「ちゃんと連絡先と名前交換してそれぞれの新しい職場に向かったのだろうか?」ってこと。もしまた名前を聞き忘れたりしたら…終われない。なんか、観終わった後に妙に二人の行く末が心配になってしまって、今でも気になってます。こんなのはじめて。 [ビデオ(字幕)] 7点(2005-05-03 19:58:44) |
12. タイムトラベラー/きのうから来た恋人
こういうの好きな人って必ずいます。むしろそういう人のほうが多いかも。僕もその一人です。原色のシェルター、精神いかれそうです。こういうテンションこそアメリカ映画。面白かった。 8点(2004-06-20 18:02:33) |
13. 丹下左膳餘話 百萬兩の壺
ひとつの壺をめぐるユーモアに満ちた展開。この展開の面白さは、映画にしかできない面白さだと思う。その意味で山中貞雄さんはすごい監督だ。また、こういうテイストの映画が、またこういう形式のユーモアが、おそらくは日本にしかなく、しかも日本人にしか通じないだろうところが、この映画の価値を高めている。ぜひ一度は見ておくべき作品。京都文化博物館で鑑賞したが、多少音声が聞き取りにくくて残念。 8点(2004-06-04 23:00:47)(良:1票) |