3. 台風クラブ
《ネタバレ》 『ションベンライダー』が思春期一歩手前の少年少女の子ども時代との決別を描いていたとするならば、『台風クラブ』は望まぬ思春期を真っ只中にむかえてしまった少年少女の反撃の映画である。画面には常に後ろめたいような性の匂いが横溢し、いまだ無邪気に見える彼らの背後には、小学生でも高校生でもなく中学生特有の自分の体が大人になっていくことへの畏れと悲しみがそこはかとなく漂う。そんな台風到来直前の思春期的性衝動と渦巻くような胸さわぎ、そして後半の原始的な台風がもたらす不思議な昂揚感と開放感、さらにはそれらをねじ伏せんばかりに見せつける生々しい映画的興奮とがないまぜとなり、まさに台風のように徐々に強大化し、また収束していくさまが圧巻だ。この規格外の豪速球っぷりは、ただごとではない。それほど衝撃的で、それでいてこの映画の粒子一つ一つがまるで自分の細胞の一つ一つであるかのような、あたかも自分の心象風景をまるごと映写されているかのような、そんな懐かしさがこみあげるのはなぜなんだろう。夜のプールの空気感、木造校舎のたたずまい、大西結花が朗々と読みあげる高田敏子の詩「忘れもの」もたまらなくいいが、相米印の型破りな選曲センスも抜群だ。バービーボーイズからはじまりPJのレゲエ、歌謡曲わらべの「もしも明日が」に、エンドロールは運動会の実録音源って!そんな破天荒なDJされちゃった日にはもう、全面降伏でシビレるしかない。恐るべし相米慎二。台風がのこした爪痕である校庭の巨大な水たまり。それを軽々と進んでいく工藤夕貴は、心にのこるであろう爪痕もまた乗り越えていくんだろうか。 [DVD(邦画)] 10点(2009-07-23 21:58:42)(良:3票) |