1. 沈黙 ーサイレンスー(2016)
原作既読です。楽しみにしていました。原作が個人的に映画のように光景を想像しやすい作品だったのですが、スコセッシ監督は原作にかなり近い形で映像化していると思います。宗教であったり、政治的な問題が延々と出てくるわけなんだが、ロドリゴが最後に決断した理由など、(原作も映画も)神の沈黙という問いに一つの結論を結び、一人の人間を描き切った所が素晴らしいと思っています。 また、この作品は日本人の宗教観(日本人は人間を超えた存在を考える力ももっていない。基督神の実体を変えている)であったり、幕府側の認識であったり、普段日本人には取っ付きにくい問題を説得力のある描写ではっとさせられます。 あとは個人的にスコセッシ監督がリスペクトする溝口健二監督を思い起こすシーンがいくつか出てきました。 雨月物語の小舟で移動するシーンへのオマージュ?や処刑する所を遠くから俯瞰する司祭二人のアングル、カメラをパン(水平に旋回)するシーンも多かったです(なんでも溝口にみえてしまってるのはいかん)。あと日本人の演出がしっかりしていた(ラストサムライのような違和感がない)のも良い。 音についても極力無駄を省いており、これもハリウッドなら演出のために意図して省くということはあると思うが、スコセッシ監督は音も重要な描写として考えている点が非常に好感が持てました。 最後に自分は原作を読んでいなかったら、映画の意図する処を理解できぬまま終わっていたかと思います。あと、欧米の方は理解できたのか?どういう感想を持ったのか興味深いですね。 [映画館(字幕)] 9点(2017-01-26 17:39:47) |
2. 近頃なぜかチャールストン
ATGの低予算ながら豪華なベテラン俳優陣で、しかも滅茶苦茶面白い作品です。千石規子・小沢栄太郎もそうですが、田中邦衛の陸軍大臣が面白かった。 設定から高度成長を迎えつつある世相に、「右」を意識しているのでしょうか、だからこそ役者もその時代のベテラン役者を起用たのか。ただ、作風がとにかく肩の力が抜いていて、それが逆に物悲しいような気持ちになった。 [DVD(邦画)] 8点(2010-04-07 17:04:18) |
3. 血槍富士
シンプルな演出に見えますが、従来のお決まりの時代劇とは違う、何か淡々としたロードムービーのような印象を持ちました。 宿における群像劇のような展開・演出は次作の「たそがれ酒場」にも感じます。リアリズムといっても溝口健二よりももっと距離を置いた、自然的なものも感じます。主人や槍持ちというよりも、むしろ、まわりの登場人物たちの哀歓や、その背景にある社会そのものを描き出すところに内田監督の狙いがあったのではないかと感じました。 とはいえ、片岡千恵蔵さすがです。常に仏のような表情だった彼が鬼の形相に変わる最後の場面は、やはり彼以外には出来ないと感じました。必見です。 [DVD(邦画)] 7点(2010-04-05 16:01:47) |
4. 血とダイヤモンド
DVD化を強く期待する、東宝アクション映画の隠れた傑作です。悪党らの行き詰るダイヤの争奪戦。最後の倉庫内での沈黙と緊張の場面は60年代の作品としては出来過ぎ!福田純監督は「100発100中」のような作品を撮りながら、こういうフィルムノワールをも撮ってしまう。驚きました。「レザボア・ドッグス」の元ネタのようです。また、観たい作品です。 [映画館(邦画)] 9点(2009-11-02 17:55:56) |
5. 父と暮せば
《ネタバレ》 宮沢りえと原田芳雄の会話は、生者と死者という狭間ではなく、宮沢りえの願望にも感じられる。ラストシーンの宮沢りえの台詞と笑顔はマイ邦画史上ベスト3に入る名シーンです。あまりにも痛い苦悩を自ら越えて悟りを開いたかのような彼女の表情にドッと涙が溢れました。菩薩といって良いでしょう。 [DVD(邦画)] 10点(2009-09-22 06:03:25) |
6. 直撃地獄拳 大逆転
石井輝男監督作品ではじめて観たのがこれです(笑)「ルパン三世」の実写版のような内容だが、確信犯のギャグ満載活劇でとにかく可笑しい。劇場もワッハッハの大爆笑。千葉真一の登場シーン(なんじゃありゃ!)で一気に力が抜けました。阿呆さ加減がたまらない。佐藤允も歳を召されても、変わりませんね。やりたい放題ハメ外してるが、所々にしっかりと見所があり、ビル侵入⇒金庫破りのシーンなんかは最近のスバイモノよりよく出来ていると思います。アラカンも登場したり至れり尽くせりです。(池袋・新文芸座オールナイト) [映画館(邦画)] 8点(2007-10-11 14:34:51) |