1. 転校生(1982)
原作「おれがあいつであいつがおれで」の連載は小学生新聞だったかなと思ってたんだけど調べてみたら「小六時代」だった(懐かしい!)。当時、大の読書嫌いだった私がこれを読んでた理由はあきらかだ。女の子の体に興味があったから。全然かわいくない挿絵が想像力を妨害していたことをよく覚えている。さて映画。映画は挿絵どころではない。生身の人間がそのまま目に飛び込んでくるのだから。これでは到底映画はこの原作に勝てない。しかし、お話はどうあれこの映画は「性」への想像力を奮起させるようなものにしていない。商業映画としてのブレーキがかかったというよりも、キャスティングからして狙い通りのさわやか青春ストーリーに仕上がっているのではないか。そのかわり尾道の生活上の風景をしっかりと映すことで脇も含めた登場人物たちのこれまでの生活を想像させてくれている。ということでけして負けてはいない。映画の強みをしっかりと出している。芝居じみた演技が気になる大林演出も男女の入れ替わりによる過剰表現ということで許容範囲。 [DVD(邦画)] 6点(2011-12-05 16:14:47) |
2. 天然コケッコー
最近、夏帆の「あ、痛い、ちくちく」(シャンプーのCM)に萌え萌えです。ヨメが「なんぼでも言うたんでー、ちくちくー」って、全然萌えません。そんな夏帆の石見弁がまたかわいい。ヨメの母方の田舎がまさにこの辺りで、優しく親しみのこもった石見弁の心地良さが蘇ってきました。見せるべき画の奥のほうに人物を配してそこでもまた別のドラマがあることをうかがわせているシーンがいくつかあるのがいいです。何も起こらない物語を退屈にさせません。そしてかわいい夏帆の「顔」ではなく「足」で心情を見せる演出が印象に残りました。幽霊騒動にあわてる足たち。東京の人ごみに困惑する足のアップ。最も素晴らしかったのが学校の廊下の奥に寂しげに映る足。そういえば東京土産はルーズソックスだったけど偶然かな。 [DVD(邦画)] 7点(2011-12-01 17:03:16)(良:1票) |
3. 天河伝説殺人事件
二つの異なる場所での4人二組の会話の切り替えしが面白い。全体を暗くして人物あるいはその顔を照らすという舞台劇風演出も面白い。どうしても説明セリフが要るのでどうせなら堂々と説明しちゃえと思ったかどうかは知らんがそのための舞台劇風なのかもしれない。それとも能楽という題材を加味した演出か。にしても現実離れした画面の中でキャラが弱い。というか余計にキャラの弱さを際立たせている。こういったとぼけたキャラには盛り上げてくれるための脇を固めるキャラにも個性的に突出したものが求められるのだが、唯一の突出キャラが他作品からの借り物(一応名前が違うので別人のようですが)一人というのがなんともお粗末。 [DVD(邦画)] 4点(2011-11-28 13:32:16) |
4. 田園に死す
詩の芸術性とかよくわかんない。その方面に対する見る目が私には全く備わってない。さらにアングラ演劇が苦手(よく知りもせず苦手も何もないんだけど)。この作品のアングラ演劇的な演出にいちいちいやーな感じを抱く。いやーな感じを抱きながらも素直に凄いとも思う。かっこだけじゃない、狙って出せるものじゃない本物の独創がある。というのはわかる。だからだろうけど見た当時の点数は7点らしい(メモにそうある)。だけどそれ以降再見せず。再見しようとも思わなかった。数年後の今は、いやーな感じだけが記憶に残ってる。よって6点にする。ストーリーは奇抜なようで意外に筋が通っててわかりやすい。 [ビデオ(邦画)] 6点(2011-10-18 15:42:09) |
5. デュエリスト
エンタメ志向の強い韓国映画はだいたいにおいて私の嗜好に合わない。その原因は大袈裟な芝居につきる。この作品はそれが最大限発揮されちゃってる。大袈裟すぎて笑ってしまったくらいだ。とくにヒロインの演技がひどい。わたし、女だてらに刑事なんですって歩き方。あれはひどい。わたし、女だてらに刑事なんですって顔。これもひどい。反転あの変な顔は可愛いと思ってやってるのだろうか。殺陣はけっこう面白かった。影に入って人物が消え、剣だけがチャンチャンやってるやつ。ヘンテコな構えはやっぱり笑っちゃったのだが、もうちょっとかっこいいポーズで、もうちょっと普通の表情をしてくれればけっこう好きかもしれない。まあとにかく女優が悪いのか演出が悪いのか芝居の伝統が悪いのか知らんが、演技のくささを消せればそこそこのものになってるんじゃないかと。 [DVD(字幕)] 2点(2011-03-10 15:02:23) |
6. DEAD OR ALIVE 犯罪者
いかにも三池な過激なグロが押し寄せる。どんな映画にも意外と馴染む哀川翔とどんな映画でも同じオーラを発散している竹内力がそんな三池の世界から一歩引いたところで別々の物語を生きる。その二人が遂に相見える。ああVシネっぽい、ありがちな対決シーンだ。と思いつつも両巨頭の決着の仕方を心待ちに見る。・・・。車の下から哀川が出てきた。腕をもぎ取る。え?ここでようやく二人は三池の世界に合流するのか。と思ったらそのあと。え?え? で、そのあと。えーーーーっ!? 合流じゃなくてまたいじゃったよ。別の世界に行っちゃったよ。こういうことにお金かけちゃうのってまじで凄い。 [DVD(字幕)] 6点(2011-03-09 16:20:27) |
7. 天使の眼、野獣の街
冒頭、二階建て路面電車の中、3人の男女が何度も切り返されて映される。女がある男を監視しているらしいことが伺われ、これから何が起ころうとしているか分からぬままにどんどん引き込まれてゆく。見たものを記憶すること。淡々とそのことに注力すること。警察の追跡班のクールなまでの仕事ぶりをカメラが追う。見たものをカメラもまた見る。その大量の情報を細かなカット割りでどんどん見せてゆくのだが全く疲れない。心地良い緊張だけが持続する。見たものを記憶すること。これをまたギャング団のリーダーもこなす。同じ人間を二度見た。そこから生まれる疑念。「見たものを記憶すること」から生まれる急展開。シナリオのうまさが光る。と、ここまでは絶賛するが中盤にヒロインの葛藤、成長というドラマチックな流れがあって、映画の見せどころも実はここに重きを置いてるんだけど、くさい。しかもくどい。その感動いらん。 [DVD(字幕)] 5点(2010-11-18 13:43:05)(良:1票) |
8. 天使のはらわた 赤い淫画
『~赤い教室』というビッグネームの影に隠れてしまっているがこれもけして悪くない。日活ロマンポルノとして必然的にあるエロ描写は『~赤い教室』よりかなり多く、また露骨なんだけど「からみ」よりも自慰描写が多い。それはエロであると同時に孤独を象徴してもいるのだろう。ここでの名美は堕ちるところまで堕ちた女ではなく、とことんまで堕ちてゆくのかもしれないその手前で終わっているため、「らしくない」というか物足りないところもあるんだけど、その堕ちてゆく女を純粋に愛する男・村木はどの作品の村木よりも純愛の塊で、物語を美しく昇華させることに貢献している。公園のシーンが印象的で、夜の雨に赤い傘が眩しい。あと、主演の泉じゅんはいい女。 [DVD(字幕)] 6点(2010-11-02 16:55:00) |
9. 天使のはらわた 赤い教室
堕ちてゆく女・名美、その凄まじき堕ちぶりは石井隆自ら監督した『夜がまた来る』に匹敵する。しかし全編ハードボイルドタッチの石井ワールドではその堕ちた世界が堕ちる前の世界と地続きなのに対しこちらの堕ちた世界は全くの異世界として存在する。だからこそラストがたまらなく切ない。村木に妻と子がいる日常の生活があるように名美にはヒモとの生活がその異世界にあるという生々しさ。「そっちにいてはいけない」。村木の言葉がむなしく響く。もうこのラスト数分に尽きる。名美と村木が出会った場面で旅館の一室で陽が陰ってゆくのを延々と撮ってるシーンがあるんだけど、それだけだとちょっと懲りすぎかなとも思うんだけど、その間、水原ゆう紀は延々背中を向けていて、そのせいでこの長いワンシーン、実に濃密。 [DVD(字幕)] 7点(2010-11-01 17:36:35) |
10. 手錠のまゝの脱獄
面白いんだけど面白くない。あまりにも人種差別をモチーフにしたわかりやすいエピソードの連続とそのエピソードを通過する前と後のわかりやすい変化(タバコとか歌の扱いとか)が完璧すぎて面白くない(時代性を考慮するとまたべつの評価の仕方もできるかもしれないけど。)。でもお話の根本は面白い。白人と黒人じゃなくても、例えば白人同士でも黒人同士でもいいんだけど、仲の悪い男同士が二人で脱走して徐々に友情を深めてゆくという話は絶対面白いわけで、だからこそこの映画、根本のところは面白いんだ。社会派とは無関係に映し出される「追う者」の描写があるから根本のところで楽しめるんだ。シンプルな話をシンプルにまとめた手腕も評価したい。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-09-22 17:01:21) |
11. デス・レース2000年
倫理観ゼロの「チキチキマシン猛レース」。綻びを全く気にしないバトルロワイヤルな近未来世界というのがあまりに奔放で素晴らしい。近未来であることを考慮しているとは思えない衣装や車のデザインも最高。しかしそれ以上にショボイ。そしていい加減。ショボさは低予算ゆえだし、いい加減さは味でもあるんだけど、ショボさいい加減さは残酷描写を和らげる働きもあるのであえてしているところもあって、その「あえて」ってのがちょっと目につきすぎた。カルト映画と割り切れば楽しめるかもしれないがそれはあくまで今じゃ到底作り得ないような倫理観の無さにあるのであって、1本の映画として見た場合ちときついものがある。でも冒頭に挙げたこの映画の「自由さ」だけは絶賛したい。 [DVD(字幕)] 5点(2010-09-13 14:39:53) |
12. デス・レース(2008)
《ネタバレ》 設定も展開もやりたい放題なのだが、『デスレース2000』に比べるとまだある程度の辻褄が合うような未来世界になってる。刑務所外の熱狂が数値でしか出てこないのでイマイチその未来世界の顔が見えてこないのも「逃げ」の演出か。ブラックさも自由さも先の作品に遠く及ばない。のだが、展開もさることながら車も「チキチキマシン猛レース」な前作に対して「マッドマックス」な今作ということで全く趣向が違う作品になっており、これはこれで楽しかったのも事実。というかアクション主体のこっちのほうが楽しいかも。人の命を米粒ほども思ってない前作と違い、妻を殺され陰鬱な気分にさせてくれる展開はまさに『マッドマックス』。ナビ役が女子刑務所からのビッチ系キレイなオネーチャンたちというグラインドハウス映画的アホらしさがステキ。どうせならもうちっとエロが欲しかったけど。 [DVD(字幕)] 6点(2010-09-10 11:28:37) |
13. 鉄人28号
子供に対してこんなこと言っちゃなんだが、正太郎、うざい。弱っちいのは仕方ないにしたってその弱さが半端ないうえに大袈裟。さらにくどい、しつこい。蒼井優が正太郎に「へたくそ」と言ってくれるがあそこは「へたくそ!アホボケカス」ぐらいは言っていただかないとスッキリしない。だいたいなぜその役に蒼井優なのか。というか少女なのか。客寄せパンダ以外の意味が見出せない。そもそもこの映画は何がしたいのかさっぱりわからない。もっと言うとやる気すら見えてこない。鉄人の存在、悪玉の存在、何もかもにいいかげんでありがちな理由付けがされ、純粋なアクションすら見せようとしない。サイテー。 [DVD(邦画)] 1点(2010-04-05 16:52:57) |
14. ティム・バートンのコープスブライド
パペットアニメーションを模したCGアニメーションだとばかり思ってました。それほどに完成されてるってことなんだけど、それってなんか損してるような。最近7歳の娘にどうぞと頂いたDVDで久しぶりに見てみると、この世界観ってもろに『スウィーニー・トッド』と同じだなと。時代もおそらくそう違わないだろうしイギリスっぽいし色が無いしミュージカルだし。でもどう見てもリアルじゃない極端な顔立ちをした登場人物たちのほうが本物の人間よりもはるかにこの世界に馴染んでいる。娘もけっこうこの作品を気に入っているようなのだが、女二人と男一人の三角関係というドロドロにしかなり得ない設定なのに三人の誰もが悪者にならないどころかむしろ三人ともを応援したくなるという話にしているところが功を奏しているのだろう。キャラクターデザインもいいし動きもいいのだが、最もいいのは照明。モノトーンの中で死んだ花嫁に当てられる逆光が素晴らしく、そのグロテスクな容姿にもかかわらず美しさを発散させている。ピアノの連奏シーンがお気に入りのうちのヨメさんはそこばかりを見て、さらに楽譜をネットで探し出し、今、娘と練習中である。 [DVD(字幕)] 7点(2009-10-23 16:55:16) |
15. 天使と悪魔
原作ストーリーに縛られた『ダ・ヴィンチ・コード 』の窮屈感とは打って変わって躍動感溢れるロン・ハワードらしい娯楽作に仕上がっている。とは言うものの順番に執行される殺人をギリギリのところで阻止できないことの繰り返しはこの手の予告犯罪の定番で、次はあっちだその次はこっちだと「印」を見つけてはどこから確信を得ているのかわからん即行動のリズミカルさと相まって段々とバカバカしく思えてくる。息つく暇も無い展開でありながらそこに強引さを見てとれてしまう。躍動感をむりやりに出している。ということはやっぱりこれも『ダ・ヴィンチ・コード 』ほどではないにしろ窮屈ということなのか。自由なようでいろんな制約があるのは間違いないだろうが。女優がからむシーンの気合の無さも気になる。これだったら女はいっそのこといらん。おそらく監督は男だけのドラマとして撮りたかったんじゃなかろうか。 [映画館(字幕)] 5点(2009-09-02 16:00:47) |
16. DEMONLOVER デーモンラヴァー
《ネタバレ》 アサイヤスとの出会いは『レディ・アサシン』というまるでアメリカのB級アクションのようなタイトルの映画だったのだがこれが凄かった。それよりも5年も前に製作された『DEMONLOVER デーモンラヴァー』をさらなる期待を持って見てしまったために衝撃を受けるまでには至らなかったが、それでも短いカットでも計算しつくされているのだろうと思わせるカメラの動きに見惚れ、かと思うと緊張が画面にへばりついたような長いワンシーンにぞくぞくさせられた。ソニックユースが作り出すノイズミュージックも緊張を煽る。産業スパイというどこか作り話的なものがビジネスの世界という現実的描写で描かれる前半から一気に映画が動くのが「人が死ぬ」シーンだ。その唐突さがいい。突如として転がり込む「死」のどこか虚構じみた感覚が怖い。勿体無いのがそこから先が長いこと。長いとまた形勢逆転という展開を期待してしまうのだが、それがないから後味悪し。 [DVD(字幕)] 6点(2009-08-20 18:00:58) |
17. デュプリシティ ~スパイは、スパイに嘘をつく~
《ネタバレ》 スローモーションでしっかり見せるむさいおっさん2人の取っ組み合いで掴みはOK。おっさんの一方はジアマッティというキャスティングが実はネタバレぎりぎり。それでも騙された。久しぶりに清清しく騙された。途中、時系列の移動と繰り返される同じ台詞に頭が混乱しかけたがクライマックスのドキドキとオーラスのどんでん返しが素晴らしいのでまあいいかと。恋愛というのは得てして相手を疑い、一方で信用し、それでもどこか心配で、でもやっぱり信頼し、という葛藤と駆け引きがぐるんぐるんと回っているもの。主人公二人が騙しのプロってところでこの恋愛につきものの葛藤と駆け引きを人一倍大きく見せてゆく。ここを面白おかしく描きながらも手を抜かずに見せているのが最後に効いてくる。(超ネタバレ→)主人公たちがしてやったりというエンディングではなく、してやられるエンディングなのにどこか清清しいのは、そのせいでもあろう。もちろんそのトリックの、騙した相手を賞賛したいほどの完璧さがあってこその清清しさでもあるが。あと、主演二人が常にクローズアップされた作品の中で、けして目立たない脇役陣が実に良かったってことに最後のネタバレシーンで気付かされる。ここは脚本の妙。 [映画館(字幕)] 7点(2009-08-18 16:16:59) |
18. デビルマン
あまりの酷評ラッシュに「ビー・バップ」の学ランがデビルマンコスチュームに変わっただけみたいなのを想像してしまってたので原作漫画を彷彿させるCGデビルマンのグロテスクなかっこよさに正直驚いた。いいんじゃないのと。ストーリーも原作漫画に沿っている。が、シリアスなテーマを含んだ漫画の世界観を壊さないようにしているためかやたらと説明台詞が多い。そのうえその台詞の棒読み演技に唖然とさせられる。ここだけでも改善してくれればかなり見れるものになったと思う。唯一の好評と言っていいシレーヌだが、不満である。オッパイが隠れてる。多くのカメオ出演もいらん。大沢樹生はとくにいらん。密告は嫉妬を引き金にする必要はなく、密告者は変質者である必要はない。密告者はどこにでもいる人間であり、多くの人間のなかに埋もれなければならない。でも実はカメオ出演者によるマンガチックな味付けは永井豪的世界観だったりもするから厄介だ。ミーコと少年のエピソードもいらん。人間の差別心や暴力性を見せるのは牧村家襲撃で十分果たしている。エピソードを極限まで削いで、台詞も極限まで削いで、そうしたら必然的に浮かび上がってくるだろう飛鳥了と不動明の同性愛的ストーリーを示唆することができれば、、、面白いだろうなあ。 [DVD(邦画)] 3点(2009-08-11 16:09:42)(良:1票) |
19. D坂の殺人事件(1998)
乱歩の「D坂の殺人事件」と「心理試験」の合わせ技ではあるがこの作品において殺す者も殺される者も原作二作には登場しない。「D坂の殺人事件」からは団子坂の古本屋で殺人事件があったこと、古本屋の向かいが喫茶店であること、古本屋の並びに蕎麦屋があること、登場人物のSM趣味、ぐらいが抜き出されているだけでストーリーじたいはオリジナルと「心理試験」を巧みに融合させたものである。このオリジナルの部分に名前だけ登場する責め絵師「大江春泥」は乱歩「陰獣」に登場する人物の名を借りたもので、これは乱歩ファンへのサービスでしょうか。本作同様に嶋田久作が明智を務めた前作『屋根裏の散歩者』のアパートの住人も責め絵を描いていましたが、絵は本物の裸よりも艶かしく、とくに本作における真田広之によって描かれる贋作作りの過程は圧巻と言えるほどの艶かしさ。真田は前作の三上同様に怪しい色香を発散しており、このシリーズのキャスティングはなかなかに巧いなと思った。一番怪しさ満開なのは最後にちょっとだけ登場する三輪ひとみの小林少年だが。前作のような無駄なエロシーンや怪しい世界観のための過剰な演出が抑えられているのも好印象。 [ビデオ(邦画)] 6点(2009-07-28 14:07:27) |
20. ディア・ハンター
ロシアン・ルーレットはたしかに怖かったけど、鹿狩りシーンの雄大な画のほうがずっと印象に残っている。どれだけ時間とお金をこの芸術的な画のためだけに費やしたのだろう。鹿がヌッと現れるシーンなんて今だったら間違いなくCGなんだろうな。出兵前の鹿狩りの神々しい画から一転、突如現れるのが戦場シーン。動かないカメラが動き、静寂がヘリの爆音に変わる。長尺の作品の中で実に短い戦場シーンは死と隣り合わせのロシアン・ルーレットに凝縮される。帰還後には出兵前のようなバカやってる小さな幸せが無い。数十分前に映されていたはずの鹿狩り前のしつこすぎる置いてけぼりシーンが妙に懐かしく感じる。ボーリングのアホな出来事も懐かしい。長い長いダンスシーンも懐かしい。何かを奪い去り変貌させてしまう戦争の悲劇をビフォー・アフターで見せる。変わらない友情と移民同士の繋がりが取り返しのつかない「変貌」をより鮮明に浮き上がらせる。 [DVD(字幕)] 7点(2008-12-16 15:45:11) |