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プロフィール
コメント数 2058
性別 女性
自己紹介 周りに映画好きな人があまりいない環境で、先日はメリル・ストリープって誰?と聞かれてしまったりなのでこのサイトはとても楽しいです。
映画の中身を深く読み解いている方のレビューには感嘆しています。ワタシのは単なる感想です。稚拙な文にはどうかご容赦を。  

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1.  ニューヨーク1997
マンガの二次元キャラをそのまんま三次元に(無理やり)造型したかのようなカート・ラッセル。チープなセット。予算が少なかろうが、やりたいことをやるカーペンターらしさが炸裂。 少年漫画の良いアホっぽさを臆することなく画面にはっちゃけさせたのが本作で、何を思ったかその世界観をより突き詰めた(暴走させた)のが96年版、ということでよろしいですかね。 ああ、痛恨なことに先に「エスケープ・フロム・LA」を観ちゃったのですよだいぶ前に。オリジナルにたどり着くまで時間かかっちゃった。なのでまた「エスケープ~」を観なくては、の今ここ。カーペンターの世界に人生の一部を確実に割いている気がする。どうなんだこれは。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2024-03-28 23:03:06)
2.  日曜日が待ち遠しい! 《ネタバレ》 
いやあ・・微妙。はっきり言うとサスペンス部分は設定も演出もポンコツ。人物の相関も分かりづらいし、誰が何の動機で行動してるのか後になって考えてみてもピンと来ない。オマージュだというヒッチコックばりのどきどきは皆無です。 まあ脚本が死んでても雰囲気でなんかいい感じに仕上がる作品もありますよ。本作だってファニー・アルダンとトランティニヤンですからその可能性も多分にあったのに、キャラ付けが失敗しちゃっているのでせっかくの逸材がパアではありませんか。 アルダンの役どころはもっと軽くて若い「探偵ごっこ大好き」なお嬢さんが務めるべき。アルダンでは分別のある大人にしか見えないので、なんでそんな馬鹿な行動をするのか観ててしっくりきませんし、トランティニヤンは単なる粗暴な頭の悪いオヤジ設定しか与えられてません。こんな男にアルダンが惚れるわけない。 つまり話がすっと入ってこないうえ、人物らのやってることはさらに?が付きまくる残念映画なのですがそこはトリュフォー、画は綺麗に撮れています。女性の脚をやけに映すのにはスケベ根性も伺えるけど、アルダンのプロポーションは素晴らしくて眼福ではありました。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2024-03-21 23:07:58)
3.  ニューオーリンズ・トライアル 《ネタバレ》 
娯楽作だけど、アメリカの陪審員制度のお勉強になる一本。そもそも陪審員制度って「自分たちの社会で起きたことは住民で裁決しよう」という米国の立国精神が元だったと記憶してるのですが、今やカネと脅しでその理念も風前の灯火だというお話。コレどの程度本当なのかな。 えげつない陪審コンサルタント(そんなのあるんだ?)G・ハックマンは安定の重厚演技。敗北を悟った瞬間の憤激で赤黒く染まった顔は赤鬼のようで大迫力でした。対する良心派D・ホフマンもはまり役ですし、不思議ちゃんを演らせたらピカ一のJ・キューザックもぬるっと掴みどころ無く好演してます。 ただねえ。キューザックが人心を操って票を左右し得るというのがね、魔術師じゃあるまいしあまり説得力のあるプロットを見せてくれなかったですね。プロのハックマンが素人の小娘の提案に呑まれるとも思えないし。 それに脇役に妙な力点を置く演出もどうなのかな。ホフマンの下に売り込みに来た志高い駆け出し弁護士くんや盲目の陪審団長など、展開におけるキーマンと匂わせておいて結果さほどの活躍もないとは。 驚いたことにクレジットを見たらジェニファー・ビールスがいるではないですか。え、どこに?とかつて一世風靡した彼女を探したら、陪審員の一人として男たちのウワサにされてるだけでした・・。台詞もないなんて。せめて原告の奥さん役でも与えられなかったのかしら、とハリウッドの栄枯盛衰を見る思いをしました。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2023-09-03 18:03:58)
4.  ニノチカ 《ネタバレ》 
80年も前の作品なのに古臭さを感じさせない、卓越したセンス。台詞も笑わせ方もおしゃれです。脚本にビリー・ワイルダーが入ってるのか・・納得です。 クールな美貌のグレタ・ガルボは初めのうちの共産党の申し子みたいなカッチコチのキャラがハマってて、ここら辺が一番面白かったな。恋をしてどんどん柔らかくなってゆく彼女を見るのも楽しかったけど。 旧ソ連への批判も、笑いを削がないよう絶妙な匙加減に留めていて上手いですね。みんなとパリの歌を歌ってたら、つかつかと他人が横切って行ってしーん、となる場面とか。本来ならおっかないシチュエーションなのかもですが、笑っちゃいますよね。 ラストシーン、名前の電飾切れに抗議するやり方が共産圏のデモそのもの。最後までくすっとさせてくれました。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-01-02 16:27:24)(良:1票)
5.  日曜日は別れの時 《ネタバレ》 
苦い。中年側に身を置くと、その痛さは激痛に近いものがあります。二十代の男に惚れる三十女と初老男。相手よりはるかに培ってきたはずの人生経験も役に立たず、気まぐれなアーティストくんに翻弄されっぱなし。痛いなあ。 恋愛話っていうのは、やっぱり種の存続に必要なホルモンがさかんに分泌されている二十代のものなんですかね。気力・体力とも衰えた大人は、静かに諦めるのですね。ダニエルもアレックスも、それぞれがオトナの分別と諦念を表情に滲ませて恋愛劇の幕を下ろすのでした。うーん渋い。 愛憎劇と呼べるような激しい情動はなく、それぞれの日常である子守りの一日とか、ユダヤの成人式のもようとか本筋と直接関係のない描写ばかりなので多分20代の頃に観ていたら退屈に感じたかもしれない。ダニエルやアレックス側に到達した人たちにおすすめです。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2020-04-22 17:01:46)
6.  ニア・ダーク/月夜の出来事 《ネタバレ》 
バンパイアものとしては異色の一作。どの辺が異色かというと、  ・長生きすることに苦悩するといったテーマではない  ・バンパイアたちがグループ生活なので孤独でもない  ・血をもらうにあたっての相手は必ず殺害。プラス死体もろとも現場に火を放つといった半グレ集団のような凶暴性あり。  ・なんと輸血で真人間に復活可能  こう書き出すとバカみたいなB級ホラーに感じるけれど、さにあらず。意外にも輸血復活システムによって話は悲恋の様相も帯び、ここにきて泣かせのクライマックスを迎えたりと、予期せぬ展開を見せるのです。家族愛、仲間との絆、自己犠牲を伴う献身、こんな正道テーマを吸血鬼ホラーに落とし込んだキャスリン・ビグローはかなりの書き手とみました。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-03-11 17:37:02)
7.  ニューヨーク 冬物語 《ネタバレ》 
原作は長大で「アメリカ文学史に残る傑作」であるらしい(未読です)のだが、映画はこぢんまりしたファンタジー凡作です。うん、あんまり面白くなかったですね。ベースがファンタジーであるぞ、と心得て観れば、赤ん坊を命の危険にさらす無茶も、馬に羽が生えるのもまあ許容できるのですが、現実世界にファンタジック要素を落とし込むその匙加減がうまくいってないことが悪評ふんぷんの原因なのじゃないですかね。ああも堂々と街中を5mジャンプする馬で疾走するとか、ギャングの親玉ラッセルが宝石でホログラムを立ち上げるとかされると「?」ってなりますね。私は結核患者の彼女が妹をしょっちゅう抱擁するたびに、止めに入りたくなりました。 サタンだ悪魔だ堕天使だ、とファンタジー名鑑の常連はとりあえず出てきますがキャラが凡庸すぎる。そのうえ「善側」も個性に乏しいことに関してはいい勝負ときたもんです。最初の赤毛を間違ったのは、あの馬にも責任大あり。なんであのタイミングでやって来るのだ。誰でも間違うわ。 「使命を果たす」ために100年生かされました、とのこと。助ける相手が可愛い女子でなにより。むさくるしいホームレスのオジサンとかが対象ではないのだね決して。 救われた女の子、夜空へ駆ける白馬、輝く星々、ともうベタすぎのエンディングはひたすら安値更新するばかり。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2020-02-09 00:14:32)
8.  ニュースの真相 《ネタバレ》 
娯楽番組に数字で負けて苦境の報道チーム。けれど権力を疑い、声を上げ続けることこそがマスコミの使命であり民主主義の根幹であるとの「60ミニッツ」の理念には多いに賛同するところではあります。でも、やっぱりメアリーは功成り名遂げて驕りがあったんだろうか。大物アンカーともツーカーの仲だし、で。取材スタッフが全員”気の合う”仲間っていうのも落とし穴かもしれない。ブッシュは軍歴詐称かも、という疑惑に皆でとらわれてイケイケで進む空気の中に「ちょっと待って」と精査する者がいないのは報道にとって危険なことですよね。 基本、彼女を擁護する姿勢で描かれているけれど、情報提供者に対する強引かつ安請け合い的な説得は誠実さに欠けていると感じるし、そもそもネットの妖しげなソースに飛びついたのもまずかったよね。細かいこと言うとキツめのメイクもやり手のキャリアウーマン臭が強く、観てるこちらの好感も得づらいと思う。つまり完全にメアリー寄りというわけでも、反共和党を謳っているわけでもなくなかなかバランスのとれた脚本と思います。 フェイクニュースというワードが世を騒がせている昨今、マスコミのありかたをテーマにした本作はきわめてタイムリーに感じました。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-12-21 01:05:16)
9.  ニュールンベルグ裁判 《ネタバレ》 
一寸の隙も無く全編を貫く緊張感、法廷劇として完璧と思います。私は「戦勝国が敗戦国を裁く」ことに異議を覚えるのですが、そんな個人的な歴史観を差し引いても、論戦の火花散る展開は見ごたえがありました。 なにしろ、判事、検察、弁護人それぞれの放つ論旨がみな言葉に重みがあって圧がすごいのです。おまけに被告とされる側までが元判事という、論戦の迷宮のような高度なやり取りが繰り広げられる。口角泡飛ばして絶叫調のマクシミリアン弁護士が、異様なまでに熱を帯びてます。元判事を裁くとは即ち、ドイツ国民全員を裁くのか。かつてヒトラーを称賛してみせたチャーチルに非は無いのか。証人への個人攻撃ともとれる激しさを増す弁護士を制するように、ついに口を開くランカスター演じる元判事の訥々とした告白はさらに深かった。この裁判そのものを否定していたヤニング元判事、彼は自らを有罪と認めます。ユダヤ人に対するナチスの行為を知らなかったとするのは無理がある。我々には目も耳も無いのか、と。法に則り、職務を遂行した徳の高い元判事の苦しげな目、バート・ランカスターも見事なら、アメリカ人判事のS・トレイシーもまた激渋。ナチ高官の妻、マレーネ・ディートリッヒは妖しく危うい存在感を放つし、J・ガーランドの必死の抗弁は痛々しい。名優らの重厚な演技にすっかり圧倒されて、くらくらしました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2018-06-04 00:13:46)(良:1票)
10.  2012(2009) 《ネタバレ》 
どうだ凄いだろうと言わんばかりの映像はたしかに凄くて、割れる地面、降り注ぐ噴石、なんとチベット山脈の高さまで到達する津波など、おおおーすっごいなあこわいなあと息を呑みっぱなしであります。もうこの画力だけで、ディザスタームービーとして満点ではあるんだけども。 なんかやっぱりねえ、人の生死の扱いのセンスが合わないとげんなりしますね。この映画ちょっとそのへん倫理観無さすぎ。どこかの大佐じゃあるまいし、おびただしい人が高速道路から次々投げ出される様を見て喜べるわけないし、脱出に尽力したパイロットやゴードンの扱い方もひどい。いらんタイミングで差し挟まる家族愛ドラマで展開がもたつくのもやだ。 ”悼む”ように見せて、その実演出のアクセサリーみたいに死を扱うのが不快です。しかも生き残った側のあっけら感。なんか頭にきて、あの船ひっくり返ればいいのに、と思いました。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2017-08-05 18:16:32)(笑:1票)
11.  ニック・オブ・タイム 《ネタバレ》 
スタイリッシュ俳優ジョニー・デップを主人公に据え、画も綺麗な90年代の作品ながら、どこか80年代の野暮ったさを引きずるミョーな手触り。なんだろうこのヘンテコな感じは。 ギャングも海賊もできるJ・デップが今作では非力なおとーさんで、こんなに共感できるキャラクターのジョニデも珍しい。 何度がんばっても悪魔のように現われるウォーケンを知事の選対本部で見つけた時の、驚愕したジョニーのあほ面はまったくワタクシとシンクロしており、ハリウッドスターと同じ表情をするなど、実に稀有な体験でありました。 一般人の範囲内で精一杯奮闘するジョニデのMAXは知事に直訴の場面なのですが、それすら起死回生の一発とならず、(なんせ話しただけでしたな)主人公の一発大逆転を期待するこちらの思惑を外し続ける脚本。なんであんなにホテル従業員が協力的なのか、知事はなぜ警告されたのに手を打たないのか。そして何より皆がつっこむウォーケンへの「あんた自分でやりなはれ」 ・・等々、言いたいことはてんこ盛りなんだけど、結局でも面白かったような気がするんですよ。なんだろうこの変な感じ。
[DVD(字幕)] 7点(2017-05-02 23:39:16)
12.  にっぽん昆虫記 《ネタバレ》 
どえらく濃厚な映画である。ぎょっとしたり呆気にとられたりしてるうちに観終わった。筆致はむしろ淡々としていて感情を煽るような演出は一切無いし、箇条書きのようでもある。だけど、演じる左幸子の演技熱量がもの凄いんである。 女の社会的地位が相対的に低い時代に、娼婦以外に稼ぐ術のない主人公の境遇は大変キツイ。ところが主人公とめのしたたかさときたら。元締めママに取り入るためには見舞いに来てくれた同僚を速攻で売る。売春組織のママに成り代わった後は、人が変わったように毒々しくヤル気に満ち溢れる。置かれた境遇によって、とめって女はくるくるとペルソナをいくつも変えていく。あこぎでキツイ性格ゆえ、男とは長続きしないし、女友達もいそうにない。娘だけが父親亡きあとは真に心を預ける存在だったのに、情婦に堕ちたと知った途端泣き崩れた。この場面は とめの、数少ない真人間ぽい描写の一つ。 日本が貧しかった時代の、東北の寒村のいかにも前時代的な考え方(娘を借金の方に売るとか、赤ん坊が女の子なら口減らしするとか)には心が寒々とするしで、まあラストまでキツイ描写が続くのだが、監督は驚きの展開で話を締める。性の谷底に落っこちず、踏みとどまった信子は、唯一の健康な希望として観客に与えられた。「この子も父無し子を産まなきゃいいが」の婆さんの予言が不吉に響くのではあるが。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2017-04-15 18:14:15)
13.  NY心霊捜査官
これって現代版「エクソシスト」ですが、悪霊払い映画を観たいなら73年版の「エクソシスト」をおすすめします。断然怖いです。 本作は実話ベースと言いながら、実話ならではの怖さは特にありません。憑依→事件→お祓い、の一連の流れはそのまんまで特にひねりも無いですし。神父が不良中年だということぐらいですかね、目新しいのは。 で、”悪魔憑き”の作品を観るといつも思うんだけど、「言葉」ってすごく大事でして。というかお祓い等は基本英語なんですよね。じゃあ(特にキリスト教圏内の)悪魔って日本語やスワヒリ語や諸々の言語で生きる人間には気付いてもらえないべな、と常々思ってましてね。けれど、この映画ではイラクでそれも古代ペルシャ文字を発見したことで取り憑かれたとか。あの兵士の人たちはすごい教養があったのか?ペルシャ語の文法で発せられる怨念みたいなもの、わたしは絶対キャッチできないぞ。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2017-01-18 18:37:21)
14.  28日後... 《ネタバレ》 
これを一口に”ゾンビ映画”と言ってしまうと誤解を招くような。描かれているのは”対ゾンビ”のあれやこれやでなくて、終末と化した世界で人間のコミュニティはどうなるのか、といった社会学論でした。 見ごたえのあるのは断然前半で、無人という状況をこうまでの迫力でもって描いた画はあまり見た事ないです。広々と見事に寒々しいロンドン。人がいないということの空疎な恐ろしさ。そこへぼうっと灯るイルミネーション、吸い寄せられるような灯。絶望したり望みを持ったり、尋常じゃない状況下での人の心をうまいこと描写している導入部であります。 後半になると人間のエゴがゾンビをおしのけて脅威になっております。統制のおぼつかない軍隊が悪役をつとめます。「女を与える」のが部下を統率するための手段というのも即物的だなあ ずいぶん。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2016-03-17 23:51:22)
15.  日本のいちばん長い日(1967) 《ネタバレ》 
私は「宮城」とあったら「ミヤギ」と読む世代である。「キュウジョウ」とは。驚愕した。知らない日本語だった。この時代、入り口からして違うのだと思い知った。 学校の授業では戦後日本史は空白だった。だから「帝国日本」が終焉を迎えるその一日は何もかもが初耳で、陸・海軍トップが草案の文言を巡って譲らない議会の様相にも、青酸をしのばせて書記官らが職を全うしていたことにも、宮内庁の政治色が強いことにも、驚いてばかりだった。 東宝のスターがずらりと並んでの、圧倒的な重厚感は他のどの作品で観られるだろう。三船の眼力、それに対峙する笠の穏やかな矜持、天本、黒澤らの怪演。 映画作品としての到達度はどうなのかわからない。 けれど、日本人の一人として深く深く心に刺さった映画だ。減点などしようがない。
[CS・衛星(邦画)] 10点(2015-05-13 00:44:09)
16.  25年目の弦楽四重奏 《ネタバレ》 
クラシック演奏家と聞くと、そのアカデミックな威光にハハー、と畏れ入ってしまうクラシックオンチなワタシである。しかし芸術畑もまた人間社会なのだなあと感じ入る一本でありました。 カルテットの一人が引退を表明したことから連鎖のように噴出する人間関係のわだかまり。それは凡庸な生活を送るワタシらとなんら変わることがないわけで、まるで同級生の熟年トラブルを聞いているようだ。 人間関係というのは微妙なバランスで保たれているもので、たとえ25年という月日を抱えてきたものでも、ちょっとしたきっかけでガラガラといってしまうのね。第二奏者の、第一奏者への屈折した思い、父と慕うチェリストの病にショックを受けるジュリエットには夫の不倫という追い討ち。その娘の秋波にまんまとやられてストイックの仮面が剥がれるダニエル。 私が思うに、若いアレックスが最も良くない。ダニエルに取り入ったのは母への当て付け気分が七割ほどと感じる。ころりといったダニエルが気の毒だ。ピーターにも「恥を知れ」ともっともな説教をされちゃったじゃないか。おじさんなのに。 メンバー間が不穏な中、一人弦を置く孤高の音楽家C・ウォーケンの静かで覚悟の伝わる演技が見事。個人的に好きなホフマンはついてない役どころで(たいていそうね)可哀相だなあ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-04-12 01:03:11)(良:1票)
17.  人間の証明 《ネタバレ》 
“母さん、僕のあの帽子、どこへ行ったのでしょうね”と西條八十の詩を多用して文学的な奥行き(?)を醸し出し、渓谷にひらりひらりと麦わら帽子が舞うようなシーンはいかにも映画らしく広々と幻想的であり、さらにアメリカにまで行って派手なカーチェイスも盛り込みましたよ、とうわあ角川映画ぽい。「すごい映画をつくりたい!」という意気込みは大変感じる。でも残念ながらずっこけ映画の分類に入りますねこりゃ。若き松田優作と岩城滉一の一本調子な下手くそさはもー無茶苦茶じゃないですか。デザイナーの母はなにゆえはるばる訪ねてきた息子を拒否するんだろう。この、話の肝のとこが全然理解できない。原作読めばわかるのかな、ってそれじゃ映画としてだめでしょ。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2014-08-18 00:30:38)
18.  21グラム 《ネタバレ》 
私もこの時系列ツギハギの嵐にはやり過ぎを感じてしまった。登場人物が重たく苦しいお芝居しててただでさえ観ててしんどいのに、脈絡無く切り替わる場面のひとつひとつをとても記憶していられない。特にナオミ・ワッツなんて状況によって顔立ちや雰囲気までがらりと変えられるカメレオン女優なので、子供部屋を片付けてた一主婦が次のショットで安モーテルの廊下で赤パン丸出しでタバコ吸ってる女と同一人物だとは脳が理解しないんである。観直せばああそういうことかと分かるけど、いつでもそんな観賞環境でいられるわけではないし。俳優陣は安定の演技力で鬼気迫るほどの苦悩を表現してて圧倒的だけど、いかんせん演出に興を削がれた感じがする。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2014-01-10 00:54:53)
19.  2001年宇宙の旅
観ているこちらも無重力でキューブリックの脳内を漂っているような。猿と石碑。生と死。何かの暗喩なのかもしれない記号が飛び交うけど、それらの解釈は私の手には負えない。ただもう圧倒的な映像と荘厳な音楽に口が開きっぱなしで口腔内が乾くし、それに眠い。宇宙船の内部、それはそれはもう天井から床、椅子、スイッチ一つに至るまで目が潰れそうなまでにスタイリッシュで、点数すべてはこの美術に捧げるものであります。
[DVD(字幕)] 6点(2012-11-08 01:02:46)(良:1票)
20.  ニューヨークの恋人(2001) 《ネタバレ》 
年齢を考えてか、今回はやり手のキャリア・ウーマンに扮しているメグが容貌の衰えと闘ってぎりぎり踏みとどまってます。ラブコメにまずまず及第点。なんといってもH・ジャックマンの貴族っぷりが素晴らしい。クラシックな顔立ちで得をしているし、白馬にまたがってパカパカ疾走された日には、膝から下が脱力して全部許す気になりますね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2012-10-09 17:14:20)
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