1. ALWAYS 三丁目の夕日‘64
これまでは多少強引でもステレオタイプ的な昭和感や風景を描いてきたが、今回はそれよりもストーリーに重点を置いた内容に。個人的には昭和の風景の再現こそこの作品のキモだと思っており、今回もてっきりオリンピック(特に東洋の魔女)に熱狂する東京の人々を中心に描いた映画だと思っていたので多少期待外れの感はあったが、さすがに前作、前々作からは5,6年の月日が流れているわけで、東京オリンピックに関連するエポックメイキングな出来事にカラーテレビの普及があるが、これこそテレビ時代の到来、記録映像時代の到来を表しており、当たり前のように道を横切る都電や上野駅に入線するC62や151系こだま号といった「今や見ることはできない」風景の再現も、この時代辺りからは比較的良い記録映像が残っており再現しても目新しさは薄れるわけで、作品としては今作はこれで正解だったのだろう。これまでの作品でのこの登場人物たちは昭和の風景のナビゲーターに過ぎず、そこで繰り広げられるドラマは他の人物の他のドラマでも良い感はあったが、今作を見て彼らで良かったと感じられた。昭和ナビゲート映画ALLWAYSはこれにより愛すべき登場人物の「成長」を追う三丁目の夕日という1つの物語として成立した。ここまで来たら蛇足的でもかまわないので70年万博完結編を見てみたい。 [映画館(邦画)] 8点(2012-03-15 17:02:16) |
2. ALWAYS 続・三丁目の夕日
《ネタバレ》 前作では描ききれなかった銭湯などの描写や、映画や若者のファッションなど当時の流行のナビゲートに取り組んでおり、それをつなぐストーリーが、お前それ羽田空港出したかっただけやろ!!と思わずツッコミたくなるような、ただでさえベタであった前作以上に強引で予定調和的になってしまっていることがたまに苦笑を誘い、まとまり自体は前作のほうが良かった印象ではある。しかしあえて三種の神器に感動する家族、長嶋の真似をする子供や、テレビに集まり力道山に熱狂する民衆といったある意味ではステレオタイプとも言える昭和人感を映像化し、語り草から体感的なモノへと昇華させたのが前作の魅力であるのは間違いなく、進行していく時代とそこに生きる臨場感はそのままに、前作の続き、昭和人として、日本国民としての「人生の続き」を体験できるまさしく続編映画になっているという点では期待を裏切らない。特に昭和人情の描写という点は前作よりも強化されており、「純文学なんて」と引いて見ていたが、思いがけずそれに感動してしまった3丁目の人々のような体験をまさに自分がしてしまうようなストーリーに仕上がっていて、茶川が自信を滲ませながらも「これまでで一番の駄作かもしれない」と言った小説が人々の心の琴線に触れたように、確かにストーリー的には駄作であるのかもしれないが、なぜかそのストーリーは(日本人の)心の琴線に触れノスタルジーを想起する。なんとも騙されたような気分にもさせられるが、こういうのが名作というものなのであろう。 [DVD(邦画)] 9点(2012-01-17 08:32:20)(良:2票) |
3. ALWAYS 三丁目の夕日
戦後のどん底から再び先進国へ、日々豊になる生活と、あらゆる可能性に満ちたある意味アメリカよりも「自由の国」であったあの時代の風景と空気を、東京の下町の庶民の生活を通して再現。庶民としての視点に自分が置かれるというのが最大の魅力で、家にテレビが到着するのを共に心待ちにし、冷蔵庫、洗濯機と生活レベルが向上していくのを共に体験、そして完成していく東京タワーを見ながら、劇的に成長していく国と共に伸びていく可能性を感じる。あえて三種の神器に感動する家族、長嶋の真似をする子供や、テレビに集まり力道山に熱狂する民衆といったある意味ではステレオタイプとも言える昭和感を時系列的に映像化してしまったことで、その昭和感は語り草から体感的なモノへと昇華されている。それにより実現した空気感、すなわち進行していく時代とそこに生きる臨場感は、実写の記録映像では逆に表現できない映画ならではのもので、そこにこの映画の存在価値がある。一方で当たり前のように街を行きかう都電、躍動感と重量感に満ち溢れる姿で鉄橋を渡る東北本線C62晩年の雄姿、東北人の郷愁の場として隆盛を極めていた当時の上野駅の賑わい(建物は現在と変わらないところが余計に感慨深い)を日本映画史に残る渾身のVFXで見事に再現し、発展で「過去のもの」となる対象への懐古まで想起する。これほどまでに画面が切り替わる度にワクワクさせられた映画はかつてなかった。戦後、昭和、高度成長期という「空気感」を表現するためベタベタな昭和人情的ストーリーがついているが、そのベタベタの古い日本的価値観の集大成のようなストーリーがまたほほ笑ましい。アメリカ的価値観の集大成であるアルマゲドンがアメリカ人を扇情させたように、この映画は日本人のノスタルジーをとことん扇情する。日本人でよかったとまで思わされる。これほど郷愁に満ち溢れる気分になったのは初めてである。どれほどストーリーがベタで臭かったとしてもこれは傑作と言わざるをえない。 [DVD(邦画)] 10点(2012-01-17 07:07:28)(良:2票) |
4. オープン・ウォーター
《ネタバレ》 シチュエーションだけで後は創作って何が実話が元だっていう話だが、実話が映画化されたってことは生還するに違いないという印象を視聴者に与えるためだとしたらまあアリ。「興行の神様」スピルバーグが撮ったのがエンターテイメントなジョーズだとすると対極にあるリアリティ追求作品がこれ。確かに現実の状況だとしたらそりゃ海中もはっきりは見えんし、スリルのあるBGMもならんし、都合いいタイミングでサメに襲われたり救われたりするイベントも起こらないし、海上でラブラブもせんだろう。普通は波の音の中に何事もなく漂い続け・・・カップルならああいう喧嘩をするよなあw。作り上げられたホラーに飽き飽きしてきた人にはお勧めのスリラー。7点だが、こんなTVを含め使い古された題材ながらジョーズの2番煎じには終わらないオリジナリティで+1点。あ、もちろん作品としてはジョーズのほうが一枚も二枚も上手ですよ。 [DVD(字幕)] 8点(2011-06-06 23:52:40) |
5. オー・ブラザー!
カントリー版「トップガン」。ありがちな大恐慌時代のクライムロードムービーだが、センスのあるサウンドトラックで飽きさせない。「これは名作!」という類ではないが、たとえストーリーは忘れても映像や音楽は印象に残る作品である。 [DVD(字幕)] 7点(2011-06-02 17:39:20) |
6. 男と女の不都合な真実
下ネタ系ラブコメの傑作。メリーに首ったけを見て以来この手のジャンルは好きで、しかしキャメロン・ディアスやジム・キャリー辺りの安定してる俳優の作品以外はことごとくB級が多いのもこのジャンル。いや~久々にいいのきました。ラブアクチュアリーを横綱、メリーと恋するための3つのルールを大関で別格としても、ベガスの恋に勝つルール、クリスティーナの好きなコトやガールネクストドア辺りと並ぶ三役だねコレは。まあ横綱以外は俺が勝手に贔屓してるだけの八百長だから万人にはお勧めできんけど。1つ言えるのはこのジャンルが好きな人にはかなりお勧めの1本 [地上波(字幕)] 7点(2011-05-27 18:25:49)(良:1票) |
7. 俺たちは天使じゃない(1989)
佳作ではあるが原作が古いからかどうも小奇麗に纏まりすぎていてやはり古臭さは否めない。コメディとして盛り上げるか、スリラーとして盛り上げるか、一つ盛り上がり所が欲しかったところ。今のハリウッドならもっとドンパチやるんだろうか。まあ主演の2人は相変わらずいい味出してます [DVD(字幕)] 6点(2009-12-11 18:59:01) |
8. おくりびと
綺麗に仕上げようとしすぎているいかにもな日本映画だが、そこらに溢れるただのお涙頂戴日本映画として埋もれなかったのは、感動ストーリーとか綺麗なストーリーとかどうでもよくなるくらいのスピリチュアルなメッセージを発信してしまっているからだ。意図的であろうとなかろうと儀式として理解している日本人ですら感じさせられるもので、宗教も文化も違うアカデミー会員はわけもわからず揺さぶられてしまっただろう。関係者ですら予想しなかったアカデミー賞受賞は、結局投票者がいくらクオリティを考えても、結局エモーションには勝てなかったということだろう。見る「価値」のある映画 [DVD(邦画)] 9点(2009-06-25 02:09:14) |
9. お葬式
決してエンターテイメントではないし脚本的にもこれと言って見所は無いんだけど…しかしこのシニカルさ。これはお葬式を題材とした映画と言うよりも日本の伝統的な仕来り、儀礼・儀式、親戚関係を主題にしているんだろう。「ストーリー」を無視してもこれでもかというくらい仕来りをねじ込んだシニカルさは、お葬式というあえて暗い儀式を下敷きにしたせいもあってコミカルさが漂うほど。ある種こち亀に似た、世間体や定式儀礼に異常に拘る日本人の世相をリアリスト的観点から皮肉った社会派映画。あまりにも儀礼に拘るあまり簡単なことですら難しく考えてしまうわけだが何度も繰り返される「そりゃそうだ」で目が覚めさせられる。しかしそう評しながらも「この映画は勉強にもなるなあ」と思ってしまう自分、ああ日本人だ。名作。同じ題材では「結婚式」も面白いかもしれん。欧米式と和式どちらにしますか?「ウェディングドレスが着たいから欧米式にやりたい~」とか言いながら無き祖父の仏壇に結婚の報告をする娘、ポクポク、チーン。儀礼に拘りながらもそれを生み出した宗教的な意味は考えない日本人。好きだ [DVD(邦画)] 9点(2009-06-09 19:54:23) |
10. 俺は、君のためにこそ死ににいく
別に自分は石原慎太郎の考えに否定的なわけではないが、戦争美化とかそんなのはどうでもいいんですよ。石原慎太郎の言っていることが全て史実だと仮定してもいいです。だからといって映画のストーリーを左翼への反論にする必要があるのか。大体、左翼以外の人間なら「常識」としているようなことまでいちいち主張せんで欲しい。そんなこといちいち反論しなくても誰も左翼の言うことなんぞ信じちゃおらんから!!いや、描くのはいいけど「主張」はいらん。いちいち鼻について全く楽しめなかった。しかも主張したいイデオロギーを盛り込みすぎてストーリー破綻してますよ芥川賞作家さん。映画なんだから少しは面白くしてください [DVD(邦画)] 4点(2008-03-31 07:17:14) |
11. 奥さまは魔女(2005)
ノーラ・エフロンのラブコメディはこの都会的な明るさと軽さが好きだ。決して細部まで作りこまれた作品ではないがテンポの良い演出が爽快。出演陣も楽しんでいるのがわかる。シャーリー・マクレーン最近頑張ってるね [DVD(字幕)] 7点(2006-05-15 16:01:57) |
12. 俺たちニュースキャスター
いくらなんでもはちゃけすぎじゃあ…昔の映画ならこれでもいいけど。いかにも「笑ってください」という作り、それ自体は悪くないがこれだけ面白くないと痛々しい。 [DVD(字幕)] 3点(2006-05-01 17:25:22) |
13. オーシャンズ12
なんて幼稚なストーリー、こういうの「名探偵コナン」で見たことあるぞ。アホらしすぎてこれじゃあどうしようもない [DVD(字幕)] 3点(2005-12-05 22:26:32) |
14. 大通りの店
ナチスの政策に関して、アウシュビッツをケバケバしく描いた映画などよりもある意味ではリアルに感じられる。作中のセリフにも出てきた諸悪の根源は恐怖にあるというのを地でゆく映画で、それを強調するかのようなラストは少しやりすぎではと思ったが。ラストシーンでまず天井を映したり、後に手のひらを返すのを予期させるかのように冒頭からしつこいくらいに冷えた夫婦関係を描いたり、そして迫ってくる「その時」を諷示するかのように着々と完成へ向かう塔など、最初から最後まで常に先を暗示させるようなシーンを先行させており、製作者がこの作品で語りたいことの意図はよくわかる作りとなっていてその点は、先が読めるからつまらないというよりも逆に作品に引き込まれた。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-11-27 04:21:10) |
15. オーシャンズ11
ミッション The Job。無名俳優だけで作られた映画なら絶賛されてただろうなあ。よくもまあこれだけ集めたという豪華キャスト、肩透かしだったというのも納得はできる。確かに迫力ゼロ、緊張感ゼロ、絶体絶命の危機ゼロ、それ以前に危機感ゼロと内容は薄い。それでも十分に面白かったので高得点はつける。この肩透かし感はスティングに通じる物がある。あれほどの名作じゃないけどね。「カジノ」を見た直後なのでどうにも全体的に登場人物がチャラチャラしすぎている感は否めないが、たまにはドンパチの無いクライム映画も良い。 [DVD(字幕)] 8点(2005-11-25 07:41:59) |
16. お熱いのがお好き
コメディと思って油断して見だすといきなりドンパチシーン。そして棺桶から流れ出る液体を見て「禁酒法の話かよマフィア映画みたいな展開だな」と思い出す。それもそのはず。カポネのパロディキャラが登場し、聖バレンタインの虐殺なんてハードな物までネタにしてしまう。この時点でこの作品の方向性がわかった。今の何でもネタに持っていこうとするおバカ系コメディの走り。かといって今の同類映画のように下品ではなくスタイリッシュに洗練されている。あまりに狙い過ぎたジョークにネタフリの時点で笑いが吹き出す。バレンタインのパーティと聞いた瞬間爆笑してしまった。おバカ系映画・マフィア映画好きにとっては文句のつけようがない名作。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2005-11-22 11:59:41) |
17. 狼たちの午後
《ネタバレ》 次第に犯人に同情的になっていく人質達や、犯人を熱狂的に支持する野次馬たちがいかにも権力に卑屈に反発するこの頃の低俗な社会イデオロギーを醸し出す実話に基づいた映画。飛行機を要求し海外へ逃亡しようとする点でよど号事件と被るが、この事件では犯人の片方を強行に射殺、もう片方には重刑が課せられた。この強行さはよど号事件をまんまと成功させ日本人連続拉致事件の足場を作ったり、浅間山荘事件で犯人を生かしておいたばかりに「超法規的措置」を許しその後の日本赤軍テロに結果として加担した日本警察も見習うべきところがある。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-08-24 21:07:30) |
18. 王子と乞食(1977)
原作はハックルベリー・フィンやトム・ソーヤーを書いたアメリカ児童文学の大作家マーク・トウェインの名作。アーネスト・ボーグナインはじめチャールトン・へストン、ジョージ・C・スコット、レックス・ハリソンらアカデミー賞俳優が揃った異様に豪華な「脇役」陣には驚いた。このキャストを見る限りかなり気合の入ったエンターテイメント大作だったんだろうが、どうでもいい些細な原因に起因する理不尽な本格格闘がやたら多く、どうも一昔前の大作風で安っぽさ(B級臭)を作ってしまっている。が、やはり原作が名作なだけあってストーリーラインは素晴らしいし、当時の英国の雰囲気などよく描かれた社会派ドラマの範疇の映画にはなっている。いかにもアメリカ人的な、王室・貴族文化をはじめとする英国に対する皮肉がキモ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-08-14 06:04:17) |